ゼロの焦点

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ゼロの焦点の評価:

3.99/5点 レビュー 107件。 B ランク

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全113件 81〜100 5/6ページ
No.33
(5pt)

松本清張入門

初めて読んだ松本清張の小説。

心の底から面白いと感じた。

ほかの作品も読破したい。

ミステリー一気読みにはお勧めの一冊
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.32
(4pt)

推理小説の体裁で戦後の社会を描いた作品

この小説を推理小説という観点からだけ見た場合には、それほど高い評価を付け難いと思う。何故ならば話の中盤あたりの、禎子が立川に行って夫が警察官時代にパンパンの取り締まりをしていたことが判明した時点で、犯人の目星がついてしまったからである。その後もいくつか事件は起こるが、大きなどんでん返しはなく、ほぼ予想通りの筋書きで終わる。ただ、この小説は単なる推理小説ではないと思う。終戦後10年以上が過ぎた昭和30年前半が舞台であるが、戦後に生じた混乱を生きた女性が社会的にどのような影響を受けたかが描かれており、そのような時代を全く知らない自分にとってはこんなことがあったのかと新鮮な驚きがあった。著者の狙いも時代の中で翻弄された女性の運命を描きたいという点にあったのではないかと思う。また、本書の舞台は僅か50年程前にも拘らず、その間の日本の変わりようにはびっくりする。携帯電話やコンピュータがないのは当然なのだが、話し言葉が全然違うことに驚かされた。主人公の禎子と母親の会話がしばしば出てくるが、当時は親に対してこのような丁寧な言葉使いをしていたとは。戦前教育と戦後教育の差によるものだろうか。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.31
(2pt)

私は裏表紙の文章を読んでからこの小説を読んでいるので、全然驚かない。

このミステリーにも探偵はいる。松本清張は本格探偵ものを推理小説として嫌ったと聞いているが、探偵のいない推理小説はないのである。 それより、(新潮文庫版)裏表紙の簡単なこの作品の特徴を含めた紹介文のなかで、失踪する主人公の夫が2つの名前を持つ2重生活者だったことが書かれてしまっている。これは明らかなネタバレなのではないの?文庫本半分以上(!)読み進んでから、その謎は紆余曲折した後、ようやく話の展開として衝撃的に明かされるのである。しかし、私は裏表紙の文章を読んでからこの小説を読んでいるので、全然驚かない。読む前に知っている「謎」だから(笑)。読者に対しておかしいですよ。 この小説の探偵役だが、それはもちろん主人公の禎子である。それと、彼女に恋慕の気持ちを持つ彼女の主人の同僚の本多である。このふたりは警察そっちのけで、とにかく良く動き回り、つかんだネタも警察には一切話さない。なぜそこまでこの事件の真相を自分で追うのか、理解に苦しむ。この理解に苦しむところが「いわゆる探偵」役なのである。探偵ってそういうとところがある。特に禎子は、主人を最愛の伴侶として愛していたから何としても自分でという執念のようなものも感じない。見合いで結婚して愛するようになる前に裏切られるように失踪してしまうのだから。しかし憑かれたように事件の真相を追い続ける。ここにも探偵の特徴が表れている。 この小説は禎子を中心にして、そのきわめて狭い社会的空間を舞台にしているだけなので、報道や警察や夫の会社など当然描かれるべき社会的要素がまったくと言っていいほど欠落している。冬の東北の暗うつな閉塞空間では、都会のように開かれた社会描写はできなかったのだろうか。 解決章「ゼロの焦点」でも、ほとんど禎子の想像による犯人像、犯行動機、犯行過程である。読んでいて、そのあまりの犯罪の機微に通じた精緻さに感心し、やがてゲンナリした。これが、刑事の推測なら納得できるのだが。 社会の非情な現実に押しつぶされる人間を冷徹に描破する松本清張の短編をこよなく愛するものだが、どうもこの長編は感心しなかった。 追伸。北陸の岬の海を観てある外国詩を案暗唱するのだが、この詩の内容が理解できなかった。自分は詩が嫌い、ミステリーもあまり読まない。なぞは解かれないことに意義がある。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.30
(1pt)

リアリティーの欠如

自分はなぜか推理小説、探偵小説が好きになれないのだが、本著を読んでいてはじめてその理由が氷解した。被害者は夫。探偵役は新妻。本業の刑事でなくても、配偶者がその役回りを担うのは、モチベーションの点から何らおかしくない。お金と時間をかけて謎解きに精を出すのは不自然なことではない。だが、そこから先が問題。組織力に頼らず個人よる犯人捜しには限界がある。ということで夫の兄や夫の会社の同僚が探偵役の一翼を担う。つまり、有給を取り、自腹を切って被害者の足取りを追ったりする。嘘でしょう。絶対無理。そんな奇特な奴はいないし、そんな懐の深い営利企業はない。普通なら「そのへんは我々では無理ですね。もう、警察に任せましょう」の世界ではないか。やっぱり。そこでシラけてしまった。だが、ミステリーファンは違うのだろう。そんなことを言い出すと野暮と言われるのだろう。なぜなら、彼らにとって犯人捜しと殺人事件はすべてに優先される最重要事項なのだろうから。「それを言っちゃあ、おしまいよ」てか。(違ってたらすみません)。清張自身の言葉に「探偵役を誰にするかが悩みの種。いつもいつも警視庁の刑事でもあるまい」というのがある。『点と線』や『砂の器』は探偵が刑事だから嘘臭くはなかった。『砂の器』のプロトタイプともいえる本作は、残念ながら以上の点でリアリティーが感じられず、私にはしんどかった。
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4101109168
No.29
(4pt)

作者が自分でハードルを上げまくっているのが、とても印象に残った

新婚一週間で、夫が失踪した。
ゆくえを求めて調べていくうちに、夫にはある「秘密」があることを突き止める。
しかし、夫の陰の生活がわかるにつれ、関係者がつぎつぎに殺されてゆく。
そこまでして隠さなければならない「秘密」とは、いったいなんなのか。
作者が自分でハードルを上げまくっているのが、とても印象に残った。
失踪してまで、守らねければならない秘密とはなんなのか。
殺人を犯してまで、守らねければならない秘密とはなんなのか。
本文の中で、繰り返し繰り返し、書かれている。
そこまでこの「秘密」に自信があるのだなと感じたほどだ。
その結末は、納得はできるけども、リアリティはないかな というのが正直な感想。
全体を通じて、きちんと筋は通っている。
しかし、人はそう論理的には、というか、そう簡単には動かないと思う。
ミステリー小説単体としてはやはり弱いが、きちんと最後には驚きがあった。
昭和30年代当時の雰囲気も感じることができ、そういった点も総合すると、読んでよかったです。
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4101109168
No.28
(5pt)

リアルな描写

ドラマで見て購入。
松本清張といえば大御所で読みにくいという印象がありましたが読みやすく引き込まれて一気に引き込まれた。
ドラマでは見えなかったキャラクターのリアルな描写が良かった。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.27
(4pt)

北陸の冬をイメージする暗いトーンで話が進んでいく

新婚1週間で失踪した夫、鵜原憲一の行方を追って、妻、禎子が金沢で夫のことを訪ね歩く。東京と金沢を行ったり来たりしながら、今まで知らない夫のことを知るにつれて、人が殺され、事件が進んでいく。
全体的には北陸の冬をイメージする暗いトーンで話が進んでいく。犯人は誰なのか?動機は何なのか?を探りながら読んでいくのがいいのでしょう。時代背景(昭和33年)が影響するのかどうかわからないが、何か無理があるなあという印象がある。個人情報の扱われ方についてはすごく違和感を感じるのは仕方がないところか。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.26
(4pt)

現実にあてはめて考えてみる

 松本清張作品は読んだことがなかったのだが、映画版をみて原作も読みたくなった。
 映画版同様、読了後に考えさせられることが少なくなかった。
 本作品を一言で言うならば「罪を憎んで人を憎まず」。
 
 確かに殺人をはじめとした凶悪犯罪、また万引きなどの軽犯罪は許してはいけない。
 本作はもちろんテレビの特番、たとえば万引きGメンなどを扱ったものなどを見るたびにそう思う。
 しかし私は思うのだ。
 「自分は100%正しいのか」と。
 
 全世界60億人、誰一人として同じ人はいない。
 だが、唯一共通している部分がある。
 誰にでも「悪」はあるということだ。
 作者が本作を通して伝えたかったことはまさにそういうことなのではないだろうか。
 人の「悪」をみてただ罵るのではなく、その時自分自身を対話をしてみる。
 「自分ならどうだ、同じ状況になったとしても100%やらないと言い切れるのか」と。
 そうしていくことで自分の内にある「悪」を発見し、同時に反省して行くことが、「悪」と上手につきあうことができるのではないだろうか。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.25
(2pt)

リアリティがない

隠された過去を持つ一般人が秘密を守るために殺人を犯す、という設定の割には犯人の苦悩や突出した異常性が全然描かれていない。最初の犠牲者が殺人現場に居合わせる必然性がまったくないなどプロットが都合が良すぎる。社会批判に独自の視点がない(テレビの評論家にコメントに主人公が啓示を受けてブレイクスルーが起きる、つまりマスコミ評論家レベルの社会観が精一杯)、などなど一言で言って、傑作とはほど遠い出来。高村薫や大沢在昌などの作品のほうが全然リアリティがある。世評は過大評価だと思う。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.24
(3pt)

表現力はさすが

読者はまず金沢という街を表現する文章に包み込まれるだろう。あかたも、読者自身が金沢にいるかの如く錯覚してしまうかもしれない。作者の巧みな表現力あふれる文章により、読者自身が主人公になりきれるほど感情移入できる。ストーリー自体は難しいトリックがあるわけでもなく、犯人を推理しながら読める作品というわけでもない。純粋に推理小説を読みたいだけの人には物足りなさが残るかもしれないが、素人探偵が主人公の探偵小説と割り切って読める人ならこの作品を堪能できるだろう
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4101109168
No.23
(4pt)

前半は読ませるけど・・・

映画が封切られるというので、読んでみた。
相手の素性をよく知らぬままに結婚した若妻の微妙な心の動き、夫婦とはいえどこかぎこちなさが残る二人の関係など、女主人公の気持ちが、ていねいに描写されていて好感が持てる。
しかし、いくつかの殺人事件に彼女が巻き込まれていくなかで、真相を解明しようとする彼女のアクティブな活動が目立つにつれ、最初の女主人公のあやういイメージが次第に消え、女探偵のように描かれているのは、いくら推理小説とはいえ、ちょっと違和感を覚える。
ラストシーンの描写は映像的だが、なんかうそ臭いという印象がぬぐえない(詳細はかけませんが)。
結論から言うと、人殺しの数をもっと減らして、女主人公以外の人生がもっとリアルに浮かび上がってくるような、サスペンス的味付けをした人生ドラマにしてほしかった。
余談ですが、昭和三十年代は、皆がタバコを吸い、ウィスキーがよく飲まれていたんだなあ
と、変なところに感心してしまった。それと、「プライバシー意識」が希薄だったことがわかる。当時は、警察や医師や新聞が、こんなに簡単に個人情報をもらしていたのだろうか。
その意味で、時代を感じた。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.22
(1pt)

面白くなかった・・・

評価が良かったし、映画もおもしろそうだと思ったので本を買ったのですが、私個人的には全然感情移入できなかったです・・・妻の夫に対する気持ちと、実際の行動が矛盾しているように感じて、「へ???」でした。なので薄〜い気持ちで最後まで読んでしまいました。
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4101109168
No.21
(5pt)

清張の傑作中の傑作

映画化で注目を浴びていますが、清張の作品の中の最高の傑作の中のひとつだと思います。北陸金沢周辺を舞台に
情景が目に浮かぶような文章で本のなかに引き付けられます。学生時代富山で自宅が福岡ということで、松本清張
とは以前より親しみを感じます。暮らしたこと行ったことがある場所が本の中に出てくるとたまらなくなります。
他に点と線の香椎浜、砂の器の山陰亀嵩等々最高です。今度も学生時代に読んで懐かしくて再度読みました。
本当に懐かしく感動しました。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.20
(4pt)

昭和の暗部を抉り出す、傑作

昭和30年代前半。
日本は復興と高度成長に向かっていた。
しかしながら、そこにはまだ戦争の傷跡が、深く人々の心の底に残っていた。
夫の失踪をたどる新妻のたびは、戦後日本が抱えていた一つの傷跡を現代に呼び覚ます結果になっている。
サスペンス、トラベル、現代ミステリ-のル−ツとなる作品の中にちりばめられた、避けることのできない日本の傷跡がたしかにこの作品の中に存在する。
砂の器へと続く清張作品の傑作。
昭和ブ-ムの現在、希望だけではすまない、影の昭和がここにある
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4101109168
No.19
(4pt)

“文学的”推理小説

松本清張にしては比較的短めの推理小説です。
発表から数十年を経た今となっては、数多の類似小説の影響もあり、ストーリー的にも、謎解き自体も正直目新しさはないです。おいおいと思わず言葉が出そうなくらい、いくつもの突っ込みどころも満載です。
ただし、文章の構成や、表現はとても素晴らしく、ぐいぐいと読ませる力があり、さすが松本清張と思わせる小説です。
特に東京と北国との対比や、北国の情景の描写は目を見張るものがあり、文学的な匂いがします。
全体を通じて暗いムードにもかかわらず、読後、川端康成の小説を読み終えたときのように、無性に旅行に行きたくなりました。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.18
(5pt)

清張の「探偵小説」

「社会派」と言われる松本清張にしては、古い「探偵小説」に近い作品です。
それでも、その暗い北陸(主に能登半島)の描写は、その詩情性に富み、それは暗い戦後の混乱期の象徴のようでもあります。
復興目覚ましい日本の国にあって、その暗い時代を引き摺っている人物たちが、この本の「主人公」です。そうした「主人公」にとって、相応しかったのは東京から遠く離れた北陸だったのかも知れません。
この小説の語り手であり探偵役である禎子が、見聞きし、考える通りにストーリーが展開するため、物語に非常に入りやすく、彼女と一緒に「謎」に向かってゆけます。
それに旅情感溢れる情景描写をが加わります。
しかも、バックには終戦直後の社会と、その中で翻弄された女性たちがいるのですから、文句なしの作品でしょう。
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4101109168
No.17
(5pt)

「点と線」とは対照的な事件小説

「点と線」に続き,この本も一気に読み切ることができた.
「点と線」と比較して長いし,「ゼロの焦点」のタイトルの意味するところも想像しづらかった.
事件が事件としてはっきりと提示されるまでが長いものの,ストーリーの展開に不自然な点が見えた辺りから,私は先の展開がはっきりと見通すことができた.
しかし,その展開の裏付けは「点と線」ほど明らかにはならないまま,最終章を終える.意図はクリアだが,もっと別の描き方をしないと,推理小説として成立しないのではないかと思える点がいくつもある.
この意味において,この作品は推理小説というよりは事件小説とするほうがよりふさわしいのではないかと思う.この意見には多くの読者から賛同が得られるはずだ.
「ゼロの焦点」というタイトルの意味するところは私にはいまだにわからない.しかし,上に挙げたような,この作品が必然的に持つ虚構性,あるいは不完全性を筆者が象徴したかったのではないかと思う.
これからこの作品を読む方のために,きわめて抽象的な表現しかできないのは申し訳ない.実際に読んでみて,なるほどと思っていただけたらと思う.
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.16
(5pt)

今も輝く推理小説の傑作のひとつだと思います

「ゼロの焦点」は著者自身代表作の一つと考えていたようです。50年ほど前の著作になりますが、今読んでも面白くて一気に読み通せます。物語は新婚一週間で失踪した夫の行方を懸命に探そうとする妻禎子が主人公となり進行していく。見合結婚の禎子は夫の過去をほとんどと言っていいほど知らない。そんな中非常に冷静に謎を紐といていく。何度か推理を変えながらも辻褄を合わせていく。そこに引き込まれる。
 
今も輝く推理小説の傑作のひとつだと思います。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.15
(5pt)

「ゼロの焦点」からフェルメールへ

清張の作品はいつでも、関連のある他の清張サスペンスと比較しながら、どうやって彼がこの物語を構築したかを考察することが、ストーリーを追っていく以上におもしろい。例えば、この「ゼロの焦点」は明らかに「疑惑」と同じ北陸・能登が注目されている。「疑惑」ではなにげない会話の中に、能登海岸の断崖から飛び降りる自殺者の話題がふれられている。また北陸日日新聞の記者の登場人物というのも土地柄を反映している。二つの物語は、イザナキが黄泉の国にイザナミを追って訪問するが、見てはいけないという掟をやぶってイザナミの腐乱した姿を見たため、ほうぼうの体で現世に帰るという古事記ストーリーの焼き直しになっている。「疑惑」では心中となり、「ゼロの焦点」では冥界に消息をたった夫というふうな象徴に、どちらも男女関係が古事記とは逆転しているものの、基本は同じである。逆転の理由は、現代という時代がそうさせたにすぎない。流石は日本一の古事記の理解者・清張だからできる芸当である。ここからやや手前味噌で超飛躍した話題になるかもしれないが、あの十七世紀、オランダの画家・フェルメールも清張の「疑惑」と見えない糸でつながっている。古事記と今風の殺人事件を並べる清張なのだから、こんなことがあってもちっとも不思議ではない。清張自身がそうしなくてもだ。詳しくは「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著をご覧いただきたい。
ゼロの焦点 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.14
(3pt)

推理小説というより、人情小説

松本清張と言えば、点と線、ゼロの焦点、が2大名作だろうか。
推理小説としては、点と線のほうが完成度が高いだろう。
犯人捜し、トリックあばきという推理小説の王道を追いかけたものだから。
では、「小説」としてはどうだろう。
こちらはゼロの焦点に軍配が上がる。
ただ不思議なのだ。人物設定も、それぞれの人物の行動も不自然なのだ。
中心人物の鵜原憲一はなぜ、偽名を使ってたやすく他人になりすませられたのか?
なぜ鵜原憲一は、過去の知人、千佐子と久子に、偶然出会うのか?
何故、真犯人はたやすく人を殺せるのか?
そしてついに、主人公の禎子は、名探偵でもないのだけれど、周りの協力者たちの動きを逐次整理して、やがて真犯人に迫るのだった。
真犯人は、人殺しなのだけれど、その罪を感じさせないのは、戦後の混乱期のやるせない状況を背負っているから。
ぼくは、その時代を知らないけれど、まったく「戦争は悪」だということがよくわかる。
あるいは、犯行シーンを松本清張は描かないから?
ただ、金沢や石川県は、そんな暗い街ではないのにね。
ほころびはいくつも見えるのに、とらえて放さない、不思議な小説、ゼロの焦点
ゼロの焦点―長編推理小説 (カッパ・ノベルス (11-1)) Amazon書評・レビュー: ゼロの焦点―長編推理小説 (カッパ・ノベルス (11-1))より
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