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ミステリーの系譜

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評判

ミステリーの系譜の評価:

4.67/5点 レビュー 15件。 A ランク

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平均点4.67pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全30件 21〜30 2/2ページ
No.10
(5pt)

◆人は気付かぬうちに誰かを傷つけている

ちまたの推理小説家の中でも、群を抜いて優れているのが松本清張である。松本清張の緻密な資料集めと分析能力、それに現場百ぺんの徹底したリアリズムは、たいていのミステリー好きな読者の度肝を抜く。
頭の中でちょこちょこっとこしらえた非現実的なドラマとは、まるで違うものだ。だから事件を大げさに煽る修飾的な言葉もなければ、余計な主観を読者に植え付ける描写もない。とにかく淡々と冷静に、時系列に沿った文体なのだ。
犯罪は犯罪であり、同情をかってはならず、それ以上でもそれ以下でもいけないということなのだろう。

『ミステリーの系譜』は、「闇に駆ける猟銃」「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」の3篇が収められているが、3つとも大正、昭和史に残る犯罪実話である。
「闇に駆ける猟銃」は、映画『八つ墓村』のもとになったもので、無論、ノンフィクションだ。昭和13年の岡山県津山で起きた、いわゆる“津山事件”で、当時21歳の犯人が、その日のうちに村人の28人を死に至らしめ、他に重傷死2人、重軽傷2人という大量殺人行為をはたらいたものだ。
犯人は健康上の悩みを抱えていたようだが、どうやら本人の被害妄想、自意識過剰から来るもののようで、医学的にはさほどのことはなかったようだ。性格はいわゆるネクラタイプで、対人関係が苦手だった。とはいえ、農村にはこの手の晩生な青年は珍しくもなく、これといった異常性を見出すことはできない。学業は優秀で、容姿も悪くなく、むしろ色白の美青年だったようだ。
松本清張の着眼点がスゴイと思うのは、このようにどこにでもいそうな、平凡でありふれた青年が短時間でこれほどの大惨事を引き起こす可能性があるのだという事実に注目したことだ。
犯人に前科があるわけでもなく、田舎の農村を舞台に、ある日突然、降ってわくのだ。

この日常生活に潜む、どうしようもない不気味な現実は、過去のことではなく、現在を生きる我々にも同様の危険が孕んでいることをうかがわせる。
「人はだれでも他人からの日常的な被害感を持っている。悪口、軽蔑、中傷、妨害・・・それは“加害者”が気づかぬくらいに作為のない、些細なことであっても、受けた側の精神的な傷は、存外に深いものである」
私たちは知らない間に誰かを傷つけ、苦しませているのかもしれない。だとしたら自分の言葉に責任を持つことで、無用な噂話や無駄口は慎むべきだろう。誰かの耳に入った時、あるいは復讐に燃え滾るその人物から、腹部と乳房に貫通銃創を受けるかもしれないので・・・。
ミステリーの系譜 (1968年) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (1968年)より
B000JB1PUE
No.9
(5pt)

◆人は気付かぬうちに誰かを傷つけている

ちまたの推理小説家の中でも、群を抜いて優れているのが松本清張である。松本清張の緻密な資料集めと分析能力、それに現場百ぺんの徹底したリアリズムは、たいていのミステリー好きな読者の度肝を抜く。
頭の中でちょこちょこっとこしらえた非現実的なドラマとは、まるで違うものだ。だから事件を大げさに煽る修飾的な言葉もなければ、余計な主観を読者に植え付ける描写もない。とにかく淡々と冷静に、時系列に沿った文体なのだ。
犯罪は犯罪であり、同情をかってはならず、それ以上でもそれ以下でもいけないということなのだろう。

『ミステリーの系譜』は、「闇に駆ける猟銃」「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」の3篇が収められているが、3つとも大正、昭和史に残る犯罪実話である。
「闇に駆ける猟銃」は、映画『八つ墓村』のもとになったもので、無論、ノンフィクションだ。昭和13年の岡山県津山で起きた、いわゆる“津山事件”で、当時21歳の犯人が、その日のうちに村人の28人を死に至らしめ、他に重傷死2人、重軽傷2人という大量殺人行為をはたらいたものだ。
犯人は健康上の悩みを抱えていたようだが、どうやら本人の被害妄想、自意識過剰から来るもののようで、医学的にはさほどのことはなかったようだ。性格はいわゆるネクラタイプで、対人関係が苦手だった。とはいえ、農村にはこの手の晩生な青年は珍しくもなく、これといった異常性を見出すことはできない。学業は優秀で、容姿も悪くなく、むしろ色白の美青年だったようだ。
松本清張の着眼点がスゴイと思うのは、このようにどこにでもいそうな、平凡でありふれた青年が短時間でこれほどの大惨事を引き起こす可能性があるのだという事実に注目したことだ。
犯人に前科があるわけでもなく、田舎の農村を舞台に、ある日突然、降ってわくのだ。

この日常生活に潜む、どうしようもない不気味な現実は、過去のことではなく、現在を生きる我々にも同様の危険が孕んでいることをうかがわせる。
「人はだれでも他人からの日常的な被害感を持っている。悪口、軽蔑、中傷、妨害・・・それは“加害者”が気づかぬくらいに作為のない、些細なことであっても、受けた側の精神的な傷は、存外に深いものである」
私たちは知らない間に誰かを傷つけ、苦しませているのかもしれない。だとしたら自分の言葉に責任を持つことで、無用な噂話や無駄口は慎むべきだろう。誰かの耳に入った時、あるいは復讐に燃え滾るその人物から、腹部と乳房に貫通銃創を受けるかもしれないので・・・。
ミステリーの系譜 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625
No.8
(4pt)

「闇に駆ける猟銃」を読むためにある1冊

津山三十人殺しを松本清張節で語った「闇に駆ける猟銃」だけでも本書は読む価値があります。なぜ清張節などと書いたかというと、事件記録としては筑波昭さんの「津山三十人殺し」のほうが正確で優れているといわれ、実際、僕もそう思うからです。それでも清張さんの語りはいつものとおり読ませる。好みが入っているとは思うが、その、「読ませる」点では筑波作品よりも上だと思います。

「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」も悪くはないけれど、清張作品としてはさほどでもない。繰り返しになるが、社会派「小説」として、都井睦雄事件を知る入り口としては、最高級のものでしょう。なお、いくつかの点で「事実に反する」叙述があるとされていること、また、津山以外の2作品がいくぶん落ちることを考慮して、1点減点しました。
ミステリーの系譜 (1968年) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (1968年)より
B000JB1PUE
No.7
(4pt)

「闇に駆ける猟銃」を読むためにある1冊

津山三十人殺しを松本清張節で語った「闇に駆ける猟銃」だけでも本書は読む価値があります。なぜ清張節などと書いたかというと、事件記録としては筑波昭さんの「津山三十人殺し」のほうが正確で優れているといわれ、実際、僕もそう思うからです。それでも清張さんの語りはいつものとおり読ませる。好みが入っているとは思うが、その、「読ませる」点では筑波作品よりも上だと思います。

「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」も悪くはないけれど、清張作品としてはさほどでもない。繰り返しになるが、社会派「小説」として、都井睦雄事件を知る入り口としては、最高級のものでしょう。なお、いくつかの点で「事実に反する」叙述があるとされていること、また、津山以外の2作品がいくぶん落ちることを考慮して、1点減点しました。
ミステリーの系譜 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625
No.6
(4pt)

最初の二編だけでも読む価値あり。

本書は実際にあった三つの事件を取材した、ドキュメントである。

にもかかわらず本書を読めば、背筋の寒くなる恐怖に満ちているのはどういうことか?特に、前の二編は凄まじい。「闇に駆ける猟銃」は、あの津山三十人殺しを題材にしている。「八つ墓村」でも有名なあの事件が、清張の詳細なルポとして淡々と描かれる。彼はあったことのみを細かく積み上げて、事件を再構築していく。そしてそこに自身の犯罪心理における推理をおりまぜていく。これが、実際そうだったに違いないと思ってしまう巧みな推理で、清張の人間心理の洞察の深さに舌を巻いてしまう。

「肉鍋を食う女」も、昭和二十二年に長野県で起こった事件を描いている。タイトルから察っせられると思うがこの事件は継娘を殺害し、その肉を山羊の肉といって三人のわが子らと食べてしまったという事件だ。人肉を食う話なら浦賀や佐藤などのメフィスト賞作家でもおなじみなのだが、ここで描かれるのは実際にあった事件である。背筋が寒くなるのは犯人の天野秋子が、継娘を殺害するときに「トラや、トラや」と継娘の名を呼ぶ場面である。娘は殺害されることも知らずに無邪気に近づいていく。この一瞬の狂気が恐ろしい。魔がさしたなんて生易しい言葉では表せない戦慄がある。

これにくらべて「二人の真犯人」は少しインパクトに欠ける。

しかし、最初の二編を読むだけでも、本書の価値はある。
ミステリーの系譜 (1968年) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (1968年)より
B000JB1PUE
No.5
(4pt)

最初の二編だけでも読む価値あり。

本書は実際にあった三つの事件を取材した、ドキュメントである。

にもかかわらず本書を読めば、背筋の寒くなる恐怖に満ちているのはどういうことか?特に、前の二編は凄まじい。「闇に駆ける猟銃」は、あの津山三十人殺しを題材にしている。「八つ墓村」でも有名なあの事件が、清張の詳細なルポとして淡々と描かれる。彼はあったことのみを細かく積み上げて、事件を再構築していく。そしてそこに自身の犯罪心理における推理をおりまぜていく。これが、実際そうだったに違いないと思ってしまう巧みな推理で、清張の人間心理の洞察の深さに舌を巻いてしまう。

「肉鍋を食う女」も、昭和二十二年に長野県で起こった事件を描いている。タイトルから察っせられると思うがこの事件は継娘を殺害し、その肉を山羊の肉といって三人のわが子らと食べてしまったという事件だ。人肉を食う話なら浦賀や佐藤などのメフィスト賞作家でもおなじみなのだが、ここで描かれるのは実際にあった事件である。背筋が寒くなるのは犯人の天野秋子が、継娘を殺害するときに「トラや、トラや」と継娘の名を呼ぶ場面である。娘は殺害されることも知らずに無邪気に近づいていく。この一瞬の狂気が恐ろしい。魔がさしたなんて生易しい言葉では表せない戦慄がある。

これにくらべて「二人の真犯人」は少しインパクトに欠ける。

しかし、最初の二編を読むだけでも、本書の価値はある。
ミステリーの系譜 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625
No.4
(4pt)

わからない真犯人

この本には「闇に駆ける猟銃」「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」の3編が収められています。
どれも実話で前の2編は背筋が寒くなるようなすさまじい恐怖があり、清張独自のいつもながらの手法で犯人像を事細かに解釈して真に迫ります。
 後の1編は戦争という時代背景が問題で犯人は普通、犯行を否定し「俺はやっていない」と刑を逃れる主張をするのですが、この犯人は、逆に自供して罪を認め服役を望もうとする。しかし、自供に矛盾が生じ、「違うのでは」と刑事は思う。
そこへ新たな犯人が名乗りをあげる。何故?...刑務所の方が良いのだろうか?
兵隊に行って死んでしまうよりは...。
ミステリーの系譜 (1968年) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (1968年)より
B000JB1PUE
No.3
(4pt)

わからない真犯人

この本には「闇に駆ける猟銃」「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」の3編が収められています。
どれも実話で前の2編は背筋が寒くなるようなすさまじい恐怖があり、清張独自のいつもながらの手法で犯人像を事細かに解釈して真に迫ります。
 後の1編は戦争という時代背景が問題で犯人は普通、犯行を否定し「俺はやっていない」と刑を逃れる主張をするのですが、この犯人は、逆に自供して罪を認め服役を望もうとする。しかし、自供に矛盾が生じ、「違うのでは」と刑事は思う。
そこへ新たな犯人が名乗りをあげる。何故?...刑務所の方が良いのだろうか?
兵隊に行って死んでしまうよりは...。
ミステリーの系譜 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625
No.2
(4pt)

事実は小説よりも……

横溝正史の『八つ墓村』にもヒントを与えたという実際の事件「津山30人殺し」に興味を持ち、この作品を読みました。
「津山事件」とは、たった一人の男が、闇夜にまぎれて寝込みを襲い、日本刀と猟銃で村民の三分の一を殺戮したという驚くべき事件です。このような事件の犯人ならば、ことさらに英雄的に描かれたり、その精神の異常性が強調されたりするのが当然だろうと予想し、そのつもりで読み始めたのですが、松本清張はあくまで、淡々と実証的に事件を語り、犯人像を描いていきます。犯人の学校時代の成績表や事件調書など、数々の証言の積み重ねにより、寒村の青年を殺人者に変えた絶望的な怒りがじかに読者に伝わってきます。この作品には、ノンフィクションならではの「現実世界の恐怖」が、極めて冷静に、それだけに凄まじく描写されています。はっきり言って、白粉顔で銃剣を振り回す山崎勉(角川映画)より、こっちの文章のほうが怖いです。
ミステリーの系譜 (1968年) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (1968年)より
B000JB1PUE
No.1
(4pt)

事実は小説よりも……

横溝正史の『八つ墓村』にもヒントを与えたという実際の事件「津山30人殺し」に興味を持ち、この作品を読みました。
「津山事件」とは、たった一人の男が、闇夜にまぎれて寝込みを襲い、日本刀と猟銃で村民の三分の一を殺戮したという驚くべき事件です。このような事件の犯人ならば、ことさらに英雄的に描かれたり、その精神の異常性が強調されたりするのが当然だろうと予想し、そのつもりで読み始めたのですが、松本清張はあくまで、淡々と実証的に事件を語り、犯人像を描いていきます。犯人の学校時代の成績表や事件調書など、数々の証言の積み重ねにより、寒村の青年を殺人者に変えた絶望的な怒りがじかに読者に伝わってきます。この作品には、ノンフィクションならではの「現実世界の恐怖」が、極めて冷静に、それだけに凄まじく描写されています。はっきり言って、白粉顔で銃剣を振り回す山崎勉(角川映画)より、こっちの文章のほうが怖いです。
ミステリーの系譜 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625