六月の雪
評判
六月の雪の評価:
4.17/5点 レビュー 24件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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声優になるという夢をあきらめ契約社員として働いていた主人公、未来が、体調を壊した祖母が昔住んでいたという台湾の地をおとずれ、そこで様々な人と出会い……というもの。
台湾というのは、近くて案外遠い国で、私はその歴史にも疎かったので、読んで勉強になりました。
作中、祖母が住んでいた家に現在住んでいる老女やその娘と出会うシーンがあるのですが、老女の娘は逆にかつて日本に住んでいたことがあり、やや強引に彼女たち母娘の身の上話を聞かされることになります。そのあたりは、異国の地で偶然見かけた家で女の幻にひきこまれ、その家にまつわる因果を知るという、佐藤春夫の小説を思わせます。多分、作者もそれを意識してその名を作品中で出しているのでしょう。
不幸で悲しい女の物語なのですが、それがよくある東洋の身世打鈴や秋風泣女の類にならないのは、ガイドの洪春霞の独特の語りです。彼女の日本語は理解のレベルは高いのですが、口調がかなりちゃらんぽらんです。ですが、それがかえってとても魅力的で、彼女を通して語られる女たちの歴史に引き込まれます。外国の文学や小説を読むときは、訳者のセンスによって作品の雰囲気が違うように、彼女を通しての語りであるからこそ、女たちの物語は興味深く、苦しく辛くはあっても、あまり暗くならなかったです。なにより、たんなる不幸話、お涙ちょうだいの話にならないのは、作者の冷静かつ巧妙な視点や筆致です。作者自身が、鋭い観察眼で女たちの物語を見てきたように思わせられます。
結局、いつの時代もどこの国でも人間の幸せの原点は親子関係であり、家族の問題は人間が背負う永遠の重荷と学びなのかもしれません。
面白い作品でしたが、できれば洪春霞の物語や事情などを、もう少し知りたかったです。あと、最後のてんまつが、ちょっと……。未来といっしょに叫びたくなりました。