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いつかのクリスマスの日、きみは時の果てに消えて
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いつかのクリスマスの日、きみは時の果てに消えての評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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富士見のスカイ・ワールドの印象が強すぎて、いつも主人公モテモテのファンタジー作品専門かと 思っておりました。こういうSFっぽい話しも書けたのかと軽い驚きを覚えております。 表紙の夭逝した銀髪の天才少女を過去に戻って助けるために、その娘の親友の、表紙の茶色いショ ートの娘と主人公が画策したりくっついたり。助けたら今度は恋人関係1週間の彼女が即・死亡。 二人ともを救うために主人公と銀髪の娘が奔走する話(主人公は行動で、考えるのは銀髪の天才 娘)。 はっきり申しまして別にさして面白くは無い。正直何度か中断した。登場人物の内面の掘り下げ が足らない?主人公やヒロインらの葛藤が足りない?物足りなさは感じた。とくに強い理由も無 く次々にヒロイン達に惚れられる話よりは現実的かもしれないが。 最後で記憶の断片が~は好みが分かれるところだが、親友と並び立つために違う人生を選んだ正 ヒロインの決断というか行動というか、「ここまでしなくてはダメだったんだ」という凄みが感 じられたシーンは最後の最後ですが、非常に良かったと思います。 | ||||
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瀬尾つかさ作品はあまり触れた事が無かったが、ファミ通文庫(とりわけネクスト)に初参戦という事で手を出してみる事に。 物語の舞台は5年前の冬に町はずれの研究所から発生した火災で町の半分が焼き尽くされた盆地の町。 主人公の梶谷悠太は「ホーキンス大火災」と呼ばれ、200人以上の犠牲者を出したその火災の中で 小学校六年生の時に大怪我をして一命を落としかけながらも野球ボール毛玉の様な不思議な生物に助けてもらう。 悠太は傷を負った筈の左手に寄生したその不思議な生物とそのまま共生関係に。 時は流れて高校二年生の冬に悠太はクラスメイトの三嶋恵から声を掛けられ、恵がもう一人の共生者である事を知る。 恵はその不思議な生き物が「ニムエ」という名前である事をかつて大火災の火元となった研究所の所長の娘だった 恵の友人であり火災の中に消えた加賀玖瑠美から教えて貰ったらしい。 人気の少ない神社の境内でお互いのニムエを見せあう悠太と恵だったが、 やはり5年前の火災で項にガラスが突き刺さった所をニムエに救われたという恵から傷跡一つ残らなかったという話を聞かされる。 試しに触ってみるかと促す恵の項に悠太が触れた瞬間、悠太の視界は閃光に覆われ 気が付けば目の前からは恵の姿が消え、雪に覆われた境内とその中に立つ銀髪の小さい女の子が。 目の前の女の子は悠太がニムエと共生する事を見抜き、悠太が未来から来たと告げる。 何の事かと悠太が問い質そうとした瞬間、視界に恵の姿と雪など無い境内が戻ってくる。 悠太が目にした女の子の特徴的な容姿から恵はその子が大火災で失った親友の玖瑠美だと気付き、 何とか玖瑠美を悲劇から救えないかと悠太に持ちかけた事で二人はニムエを介したタイムスリップで歴史を書き換えようとするが… 序盤の命を落としかけた主人公が異生物に助けられて共生関係となる、という展開に 作者がかつてハヤカワ文庫から刊行した「約束の方舟」を思い出した。 この異生物との共生関係というのが作者のお気に入りのモチーフなのかどうかは これまでに読んだ瀬尾つかさ作品が少ないため何とも判断が付かない。 概要から言えばいわゆる「冷たい方程式」をベースとした歴史改変系のSFという事になるかと。 ここ数年語られる事が増えた「トロッコ問題」にも繋がる 「誰かを助ける事を選択すれば、代わりに他の誰かが犠牲になる」というジレンマが主人公に突き付けられるタイプのお話。 こう書くとひどく重たい話の様に思われるかもしれないが、意外な位に読み口はあっさりとしていた。 その理由は何を置いてもメインヒロインである恵のキャラにあるかと。 主人公も属する二年一組の核弾頭でお猿さんというちょっと頭がアレな女の子で「ニュークリアモンキー」という ちょっと可哀そうな(そして当人はその意味を全く理解していない!)あだ名を付けられた女の子。 要するに「あほの子」なのだけど、そのスコンと突き抜けた裏表の無いキャラが 人の死が絡み、主人公がどちらかと言えば内向的なタイプである事で下手すれば陰鬱になりそうな話で救いとなっている。 特に前半はSFと言うよりもドタバタ動き回る恵に主人公の悠太が振り回されがちなラブコメ的な色彩が強い。 天然キャラの恵に振り回されながらも次第に惹かれていった悠太が恵と想いを通わせるまでの流れは非常に清々しい。 だからこそ中盤で歴史の改編=火災で死ぬ運命にあった玖瑠美の救済に成功したと思った瞬間に生じる もう一つの悲劇的な展開との落差が大きく感じられるとも言える。 後半は歴史の改編から生じた喪失を、折角助けた筈の玖瑠美が再び犠牲となる形で助けるかどうかの ジレンマを突き付けられる展開に。 後半こそ重たい話になりそうだが、これがまた不思議と読み口は軽い。 玖瑠美も玖瑠美で恵とは別のタイプの「天然キャラ」っぽい所が大きいかと思われる。 それ故にストレスフリーな作品であると言えるんだが… うーん、「冷たい方程式」みたいな割とハードなテーマを導入してここまで「軽い」というのはどうだろう? もっと主人公が自分の大切な人を取り戻す為には目の前の人物を犠牲にしなければならない、という 深刻な問題を前に葛藤したり、苦悩したりする姿を描いて良かったと思うのだが。 主人公自身、家庭というか両親が不仲な事で些か性格に問題があるタイプとして設定されているけど、 その辺りもあまり踏み込んでいないし、設定として必要だったかどうかもちょっと気になる。 歴史を改変する事で生じる、他人の人生過去のある時点から変えてしまえばその後の記憶も書き換えられて 元の時間に戻った時には別の人物になってしまうという「人の自己同一性=個人の連続した記憶」という問題を 「ニムエ」という不思議な生き物の設定を用いて見事にクリアしたのはさすがハヤカワから本を出した作家だと唸らされた。 ただ、この辺りももう少しだけ尺を割いて欲しかったなあ、と思わないでもない。 自分が書き換えた歴史と大切な人の人生・記憶を突き付けられて苦悩する主人公の姿が見たかったという気がする。 全体で250ページ弱の中でよくこんなテーマの話をまとめ切ったな、という気もするが、 出来ればあと100ページほど増量してテーマや主人公像の掘り下げに当てて欲しかった。 非常に美味しいけど量が少なく「食べたりなさ」を残したちょっとばかり勿体ない一冊であった。 | ||||
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