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ただ、それだけでよかったんです
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ただ、それだけでよかったんですの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.69pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全39件 21~39 2/2ページ
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この本は結構前に買ってはあったのですが、重そうな内容なのでしばらく放置しておきました。 それで暇があったので、ふと手に取ってみました。 読み始めると止まらなくなりました。 内容は、二人の語り手による話が交互に繰り返されます。 一人がいわば探偵役で一人が犯人役。 最後はどんでん返しの結末。革命ってそういう意味だったのね、と妙に感心しました。 いわゆるライトノベルのカテゴリーとは少しずれるし、 続編が出ることもないのかなと思いますが、 こういう小説を大賞にするのは、なかなかい選択だと思います。 | ||||
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’キモオタコミュ障ボッチ童貞ゴミクズ野郎’ を自覚する主人公が、スクールカースト的に最上位にいる文武両道に秀でたクラスメイトの男子生徒を、名指しの遺書を残した自殺に追い込む、という一見奇妙な事態が物語の最初に提示される。 その後、自殺した男子生徒の姉が真実を探る過程と、彼を自殺を招いた主人公の独白とが交互に語られて、この事態の裏側にある事実が明らかになる、というプロットである。 これは、絶望的な状況下でいじめを受ける中学生の、捨て身の反撃の物語であり、細かい未完成な点は多々あるものの、読者には隠された謎を知りたいと思わせることに成功しており、読み進むにつれて先を読みたいと思わせるような魅力的な作品に仕上がっていると思う。 ミステリとして読んでも、骨格の優れた作品と言ってよいのではないか。 | ||||
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あらすじと表紙に惹かれて購入しました! ストーリー自体は嫌いじゃなかったです。 人を選ぶ作品ではあると思いますが… ただ、登場人物が…まあ、人間臭いですね(笑) 心が綺麗な人はあまりいないです。 唯一まともな人だったのは紗世ぐらいでしょうか… ストーリー自体は引っかけもあり考えされられ、引き込まれる物だったと思います。 ただ、もう少し長くても良かったと思います。 駆け足で進んだ感がありました。 人間力テストの設定はもうちょい深くしても良かったと思います。 全ての元凶なわけですし。 登場人物も深くやって欲しかったです。 ハッピーエンドとは言えませんし、スッキリはしないですが、ブラックなストーリーで面白かったです。 個人的意見ですが、自殺した昌はイケメンとありますが、拓の方がイラストの限りイケメンに見えますね(笑) 拓がとことん人間臭くて好きでした! | ||||
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【解題】 この本のあとがきには、おそらく本の内容すべてのソースとなっているだろう「社会学」なるワードが記載されています。 ここでは、あらすじを追うのではなく、この一語により、この本の背景を探ってみたいと思います。 さて、わざわざ社会学へ言及することを通じて、学恩を忘れない著者の態度には感心するとともに、 「僕のゼミ論文をボコボコに批判してくれた」なる文によって、著者の出身が国公立大学であるか、 または国公立大学出身の教授の教えを受けたであろうことが明らかになってしまいます。 国公立大の教授であるとか、国公立大出身の教授(つまりエリート)が開催しているゼミでもなければ、 いまどき学生のゼミ論文をボコボコにするなんていうコミュニケーションが許されるはずがないからです。 学部レベルでボコボココミュニケーションを実施するのは、パワハラ認定/解雇/訴訟のリスクが高すぎるので、 著者は、あるいは大学院在籍中かもしれません。 ボコボココミュニケーションというのは、傍から見ればパワハラ、いわゆるいじめにほかなりません。 「意味がわからない」「ばかじゃないの」「そういうところがだめなんだ」「質問に答えてない」「嫌いだ」 もしくは、論文の筋のぶちこわし、細部の揚げ足取りが、居並ぶ10人ぐらいから一斉に集中砲火される。 そんな針のむしろの「数時間」の「数年」に及ぶ繰り返しを想像してみてください。 世に言うブラック企業の「かわいがり」と何ら変わりありません。 救いは、それが全人的な人格否定ではなく、「論文の著者」というごく一部の人格に限られていること、 そして参加者が順番にボコボコにされていくということです。教授だって例外ではありません。 一方的な関係ではなく、相互にボコボコに死合う関係。なんとまあ美しい風景であることでしょう。 このボコボコゲームは、高度に発達した知性(たとえば国公立大学に入学できる程度)が、 自身と論文とをはっきりと「別物」として切り離す、つまり、一種の離人症状態を作り出すことで、 ゲームのプレイヤーとして、論文を通じたバトルにより、論文の質を高めることを目的として行われるものです。 このゲームにおいて、フィールドは、広大な荒野ではなく、限られたゼミ空間であり、 レベルアップが実感できるまでになるのは相当の時間が必要です。 学恩というのは、エンカウントした全ての論敵、全てのモンスターへの感謝とでも言い換えられるでしょう。 質を高めた論文、つまり異常な言説を理解可能な形に仕立てたものは、 最終的には社会に新知見として還元されますので、 ボコボコゲームを一般化強制装置といってみてもいいでしょう。 RPGとあまり変わらないということがわかれば、装置に連結されるのはあまり辛くないものです。 逆にいえば、RPG的な離人状態を作り出せるまでの知見があれば、現実は生きやすくなるのかもしれません。 あるいは古きよき2chの煽り合いを思い出してみてもいいでしょう。 だれだってネット人格を通じた悲哀とともに人格と自身の切離経験をもっていることでしょう。 別の言い方をすれば、このボコボコゲームは、宮代真司言うところの「小乗仏教」というやつですね。 でも、物語というのは、そんな小さなカテゴリを超えて「大乗仏教」であるはずのもの、 もしくは、そんなくくりつけすら拒む荒野/地平線/豊穣さであるべきものです。 ところが、著者は、社会の片隅で行われてきたボコボコゲームを、 あとがきにさらりと書いてしまうほか、本文にも「ただ、それだけでよかったんです」の 「それ」にあたるものとして理想化して書いてしまっているのです。 この一点をもってして、この本の書き手は、どこまでいっても著者であり、 作者ではありえません。 実際には、ボコボコゲームを文中へ翻案した仕方は丁寧であり、 ボコボコゲームの血塗られた臭みを感じることはほとんどありません。 しかしながら、全人的状態(本文中ではあろうことか「欠落」と呼ばれています)から 離人症状態への移行のススメしかない、著者による文章は、 物語と呼ぶには単純化が過ぎ、論文と呼ぶにはあまりに可能性のないものです。 徹頭徹尾、社会学から離れない(離れられなかった)著者に 与えられるのはB評価まででしょう。 この著者をもってして「作者」と呼ぶのは許しがたいことですが、 社会学への招待としては、一流の物と思い、星五つを付けています。 【展望】 この本は、柔らかなカテゴライズと、いくつかの叙述トリックから出来上がっています。 その結合は、宮代真司と湊かなえの遭遇とでもいうべきものであり、 著者の頭の良さ、編集能力の高さが感じられます。 叙述トリック部分については他のレビュアーが さんざん書かれていますので、その部分を抜きにして、 本のあらすじを宮代真司流の社会学風味で語れば、次の3行です。 --- 学校という「閉鎖空間」における濃密「コミュニケーション」がもたらす「ムラ」感に苦しむ若者が、 「ネット」という「自由な空気」を手段とすることで、ボコボココミュニケーションを目指すが、 より高次の「レイヤー」である「社会」に包含され挫折。が、「愛」によって癒やされ、日常は続く。 --- ここでいうボコボココミュニケーションは、 相互にルールをわかった上でゲームをやりとげる態度、 「俺たちわかってるよな」という紐帯、絆、傷のなめ合い、 からかい合いとでも言い換えられます。 物語の作り方として、ボコボココミュニケーションを目指す主人公を「革命」側とし、 社会を非ボコボココミュニケーションとするのは、ライトノベルとしては当然のお手前ですが、 最後に「愛」を持ち出す仕方がいただけません。 「愛」を象徴する人物が、「社会」的権威を象徴する人物と密接に関係している、というか 区別をつけられないとされており、結局、中学生は「超越的なものに敵わない」という 図式にしかなっていないのです。 ここが90年代生まれの著者の頭の良すぎる点なのでしょう。 現実的には、社会に敵わないというは妥当で蓋然性のある着地です。 破綻はなく、しっかりと完結した文章になっています。 しかしそれは「こども」を切り捨てた図式化によるものです。 実際、著者の後書きには、おそらく名門校に入ったであろう中学校以上の話しか記載がありません。 教育の効用を理解してしまっている著者は、小学校半ばからもはや大人であったのかもしれません。 わたし達が中学生であったころ、わたし達はこどもであり、 こどもというのは、賢しらなものではなく、教育の効用など理解しなかったものでした。 社会に馴致されること、社会に包含されること、それがもたらす利益、 すなわち教育の経済学なんて、こどもには通用しないのです。 すすんで勉強するこどもは、果たしてこどもなのでしょうか。 もちろん、偽悪的態度により革命を目指す中学生がこどものわけがなく、設定上、 文章を上手く収めるための着地点がほかに見当たらなかったことも理解できます。 それでも図式化により切り捨ててしまった豊穣を著者がいつか取り戻し、 物語としてくれることを願ってやみません。 ボコボココミュニケーションは、物わかりのよい大人を作るためのものではなく、 聞き分けのないこどもを守るためのものでしょうから。 | ||||
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用意されたルールにリアリティが足りない。 その一言で片が付く筈だった作品。 私の視野が狭かったのか、現実は奇だからこそ現実なのか。 どうもそうでは無かった様なので 考えるには良い機会だと思いレビューする。 新人としては大変良く描けているラノベ。 それ以上を期待するべきではないだろう。 あくまでラノベ。あくまでもフィクション。 割とやり過ぎな後付けは加筆修正でもしたのだろうか? やや粗っぽ過ぎるが、とりあえず本質は損なっていない。 何かを強く感じたなら、それには意味が必ずある。 例え違和感でも、不快感でも、嫌悪感であっても。 結局何てことはない。サスペンスでもミステリーでもない。 ただの嘘みたいに普通のライトな日常物だ。 この国では空気は人を殺すのだ。 それを忘れてはいけない。 そこから目を背けてはいけない。 理解出来ない人は幸福だ。 幸福なまま理解しないままでいて欲しい。 無理に理解しようとしたふりをすれば 多分お互い不幸にしかならない。 「空気なんてよまずに笑っとけ、笑顔笑顔、笑うかどには福来たる」 興味が有ったならこれを鍵に探してみて欲しい。 多分あなたが知りたかった宝の箱がそこにある。 これは現実の学生達の現実、その一側面だ。 さて普通って、リアリティって何だったかなあと 虚しくなると同時に流石に溜め息がでる。 例え情報化社会でも ネットは無限に広がっていても 学生達のリアルな世界はまるで広くなってなどいない。 そんな物であの四角い監獄の重みは まるで軽くなどならないのだろう。 それがリアルだとするなら、 現実味が無いのはどちらなのか。 救いがないのは、どちらなのか。 | ||||
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この作品はネタバレが痛い作風で、あらかたは他の方が語っているので私が個人的に思った事を書きますね。 この作品、主人公がしばしば「オナニー」という単語を使います。 『僕はもう14歳ですよ。オナニーだってできる』『○○さん(表紙の彼女)の事を思って何度もオナニーした』 主人公は根暗な無気力系男子のはずなのに年上の女性に対して「オナニーできるんですよ」と唐突に下ネタを振ります。 なぜ? 最初はただのウケ狙い、作者の悪趣味な下ネタだと誰もが思うでしょう。 インパクトのある単語を使えばそれだけで「オナニーwww」と中学生は条件反射で喜びますからね。 小学生が「チンコ」「ウンコ」というだけで笑うのと同じことです。 オナニーという言葉にはそれだけで読者の目を惹きつけるインパクトがあります。 なんや、たいそうな謳い文句の割には幼稚な小説やのぉ、障子をペニスで破る某都知事のお下劣小説的みたいやのぉ。 私はそんな事を思いながら読み進めました。 しかし、全ての真相が明かされてからもう1度読み直すと、これらのセリフが全て繋がってある一つの結論を導きだすのです。 ライトノベルなので全貌は語られません。あくまで僅かな単語から読者が想像するのみです。 しかし、作中で行われていたその『主人公のオナニー』を想像するだけで私はとても胸が締め付けられました。 それが本当なら、あまりにも哀しすぎる。虚しすぎる。 序盤、中盤ではただの下ネタだったオナニーで、ここまで切ない気持ちにさせられるなんて。 全部読めば意味が分かります。気になった方は買いましょう。 | ||||
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これが電撃大賞をとったのいうのが驚き。いい意味で。 対象年齢層が上気味と言われるメディアワークスっぽい。 すこしミステリーっぽく、サスペンスぽくもある。 異能も異世界も出てこないし、学園ものではあるけど、ラブでもコメでもない感じ。 でも面白かったです。 | ||||
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読了後、この小説のタイトルが胸に響きます。 『ただ、それだけでよかったんです』 とても悲痛な叫びです。本当に、誰も彼もが浅はかだった。結果、悲劇が起きた。 私はこの作品が大好きです。 けれど、この作品は人に勧めるべきではないのかもしれません。 | ||||
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本屋で見かけて、久し振りに電撃小説大賞の受賞作を買おうと思った。 ライトノベルテンプレや、あるいは出来が良くても優等生的な作品なら買いたくはなかったが、タイトルが印象的だったし、何より現実寄りのどちらかと言うと一般娯楽小説に近いテイストを感じ、それに『イジメ』がテーマみたいだったから。 買って帰ってからAmazonレビューを確認し、高評価が山積していたからこれは面白いのだろうと思った。 数日が経過し、冒頭三十ページくらいを読んで『なにこれ酷い』と思った。 文章が酷い。かなり酷い。内容というより何だろう、ディテールの描写が酷い。 これで大賞なのか。今回、電撃小説大賞に応募された四千五百七十九作品の中にはこれよりも文章力で秀でた作品は確実にあっただろう。俺自身は公募作すら完成させられないワナビにすらなれない男だけれど、しかしお世話になった批評サイトにも、この作品以上の文章レベルを誇っている作品はいくらでもあったように思う。 具体的にどこが酷いかと言うと、まず自殺した被害者の、大学生の姉が、あまりにも大学生離れした幼稚なモノローグを使っているのが酷いし、いきなり高校の校長にアポイントを取って、実際に会えてしまう、というのがかなり荒唐無稽に感じた。校長の筋肉の発達具合を描写しているのが意味不明だと思ったし、また校長の語り口もお前もうすぐ六十歳になるんだろ、しっかりしろよ、と言いたくなるような感じである。この時点で、リアリティがないというか、物語の展開のために登場人物を都合良く動かしている感じがした。あと、年上に対する敬意や期待の欠如は、主人公である『悪魔』、菅原が一番頭が良いように見える(ようなモノローグを割り当てられている)ことからも明らかだろうとは思う。 菅原視点の方はかなり読める感じだけれど、これは多分、俺が菅原というキャラクターにかなり感情移入できたからだろうな。勉強も出来ない、運動も出来ない、捻くれた考えを持つことしか出来ない、当然友達だっていない。そんな菅原にどれくらい自分を重ねられるかで、この物語の印象は大きく変わってくるのではないだろうか。ライトノベルを好む層はある程度共感できるだろうけれど、ある程度カースト(とか今は言うんだよね?w)の上位にいる層が読んで共感できるかはかなり謎。 この物語の白眉は、菅原の語り(「」「」「」と連続する)部分だろう。ここで、弟を自殺に追い込まれた被害者の姉と、悪魔のようなイジメを行っていたはずの菅原の立場が完全に逆転する。そこにカタルシスがある。被害者の姉との対峙において、菅原が小市民性を最後まで保っているのもいいと思った。同時に、そこまで演技を徹底し、事態を拡大させる一貫性を持った菅原に『そこまで出来るのか、すげえな』と俺は素直に思った。まあ、物語の中だから出来るんだけれど、学校生活における多くの透明人間達、いじめられっ子達は当然、こんな『革命』なんて起こせずに黙殺されていくんだよな、と俺は俺と俺以外の誰か達に黙祷を捧げる。 菅原はヒロインらしき女の子と結べないし、悪の親玉の校長も倒せない。しかし、校長が終始一貫していないのはさほど問題ではないんだろう。これは菅原の物語であり、校長は要するに『宿敵を倒せずに終わる』という、菅原の人生のアンチクライマックス性の象徴に過ぎないから。 宿敵を倒せなかった菅原はしかし、得られなかった母性を、愛を与えてくれる存在に最後巡り合う。 まあ、そんなもんなんだよな。一人でも、全存在を認めてくれる人がいてくれれば、それで個人の人生なんていくらでも救われちまうもんなんだ。 だけど、問題は何も解決していないのだった。 これはやはり、事態を何も変えられない個人のただの悪あがきの物語に過ぎないのだ。 『人間力テスト』もそれを実施した藤本校長も、ただただ変えられない非情な現実の象徴に過ぎないのだろう。『人間力テスト』なんてなくたって、個人はいくらでも評価に左右される。 SNSで、アプリで、ニコニコ動画で、いや、それはマンガでもアニメでもそうかもしれない。より多くの人から評価を集めたモノこそが正義! 人気者こそが正義!! そうじゃない人はいくら排斥してもイジメても構わないし、犯罪を犯したらどんな悲惨な家庭環境があっても、ぬるま湯の中からいくらでも投石してぶっ殺しても構わない!! これは要するに、日本の縮図であり、ただの現実でしかないのかもしれない。 あなたは『悪魔』にならなかっただけの菅原拓なのかもしれないし、罪悪感を覚えながらも周囲に同調し石を投げることを試みる石川琴海なのかもしれない。 しかし言うまでもなくあなた方の多くは、炎上騒ぎが起こる度にネットに湧き上がる『最大幸福』なのかもしれない。最大幸福に従っていれば皆、幸せ、幸せ。考えないで手を汚さないで皆で石を投げよう! 皆で『悪魔』を殺そう!! ――というワケで、かなり今日的な日本の問題に感情移入しながら読めば、この物語はとても優れた寓話として機能するだろうし、そうでない人には稚拙な文章による、描写の薄い小説に見えるのかもしれない。 十人十色の感想がつく作品は傑作だと思う。 だから、この作品は傑作だ。 以上。 | ||||
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今現在学生の人にはキツい内容かもしれない 心情描写も文章表現もまだまだだが、読んでよかったと思える作品 少なくとも、それらがしっかりしていても読んだ後何も残らないような小説よりは、こういう荒削りながらも光る部分がある作品に出会いたい 同じイジメを扱った作品と比べると、心情描写が弱い分真に迫ってこなかったのが残念だが、そこは斬新な展開でカバーできていたと思う 十分大賞にふさわしい作品だろう | ||||
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自分は「電撃大賞」を受賞した作品だからとすぐに飛びつくような 思考は持っていませんでした。 「設定が奇抜で自分には合わなそう」、「萌え要素が前面に出ていて手が出しにくい」 などがその理由です。 しかし今回の大賞受賞作は 近年とうって変わって中学校でのイジメという「現実的」なテーマに革命という 「非現実的」なテーマを取り入れた作品であり、どうしても気になって購入。 読了後の感想としては「素晴らしい」の一言に尽きます。 あらすじで示された内容から二転三転と物語は どんでん返し。しかも「どんでん返し」だけでなく 登場人物の穏やかな面、狂った面の描写が 本当に21歳の新人が書いたものとは信じられないほど上手く、 そしてラスト数ページで明かされるタイトルの意味と 「彼女」のあらゆる意味で心優しい行動には涙が流れました。 綺麗に締めくくられているので2巻は出ないかもしれないですが この作者のこれからの新作の登場が楽しみで仕方がありません。 中高生は勿論、世代を超えたあらゆる人にどうか読んでほしいです。 素晴らしい作品をありがとうございました。 そして「電撃大賞」受賞、本当におめでとうございます。 | ||||
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舞台は性格の他者評価が数値化される中学校。それ以外は、リアルと何も変わらない。そんな舞台で私が知らないだけで世の中にはいっぱいあるであろういじめをテーマにした作品。普通の世界でありふれた出来事を話の主軸にして作品を書いた著者の力量と発想に素直に驚いた。文章も読みやすく、すらすらと頭に入ってくる。 特殊能力等は一切出てこないので、そういうのが読みたい人には向かないと思うが、時間とお財布に余裕がある方は読んで後悔しないと思う。 | ||||
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あらすじから文章の導入まで一気に引きこまれてしましました。 序盤までは自分の「知りたい」という欲求のもとガンガン読み進めていきすが、 読んでる途中でだんだんと「キケン」を感じるのです。「このまま最後まで知れば自分はどうなってしまうのか」と。 そして、読了後の私は表題の通りのありさまですが、これは私の元来の胃腸の弱さからくるもの ですからあまり深刻に捉えないで頂きたい(笑)。 でも、それほどの衝撃を伴うものであり、読中に「キケン」を感じた読書体験は久々のものでした。 皆さんが言われている通り、これを「電撃文庫」「ラノベ」という括りにおくかは難しいところであります。 しかし、最近の「売れる諸要素のツギハギ」と化している作品群に飽々して、何か新しい刺激を望んでいるそこのあなた。 そんなあなたにこそ、この本を手にとって読んでそして私と同じ衝撃を味わって欲しい、そんな作品です。 その衝撃が、快楽か苦痛になるか、どちらになるとも、保証できませんが。 | ||||
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最近は昔から買ってる作者のラノベしか買わなくなっていたので、最近の電撃がどんな作品を送り出しているのか殆ど把握してなかった。 ふと、何かの拍子で2015年の電撃小説大賞を見ると、SFでもファンタジーでも無い、「いじめ」を題材にしている小説が大賞を受賞していた。 選考委員のミステリ小説のような煽り文句が気になり、発売日に購入。一気に読破した。そして、この作品が電撃文庫として出版された事実に改めて驚いた。 この作品は、現代の平成日本をかなり如実に表現している。私がこの作品で気に入ったのは、主人公と周辺人物だけの閉じた物語にしなかったことだ。所謂、「キミとボク」のセカイ系ではなく、マスコミによる報道、twitter、2ちゃんねる、Youtube LINEグループ……。 私が高校を卒業する頃にはまだ導入されていなかった技術を通し、主人公と日本社会を直結させる構造は見事だった。そして、現代の社会が抱える、病のようなモノの一端を垣間見ることが出来た。電撃文庫で出されたのは、おそらく今を生きる中高生に読んで欲しかったからだろう。この本が社会に一石を投じる「革命」の一冊となることを祈る。 | ||||
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驚異的なデジタル音痴という事もあって今をときめくSNSにはおよそ縁遠い小生であるけれど、SNSを嗜まれる方々がこのAmazonレビューも含めて 見知らぬ他人からの肯定、即ち「参考になった」や「いいね」、「ふぁぼ」、「RT」、「友達申請」といった諸々の承認によって己を満たす風潮に 「奇妙な時代であるなあ」と思う事が多くなった。同じ様な違和感をふとした瞬間に持たれる方も少なくないかと思われる 第22回電撃小説大賞の「大賞」受賞作はそんな時代の病とでもいうべき他者からの承認を評価システムとした「人間力テスト」なる奇妙な制度を 導入した学校とその中で生じた息のつまる様な学生生活に革命を起こそうとした一人の少年の物語。物語の冒頭で語られる状況は スポーツ万能・学業優秀の完璧超人とでもいうべき中学生・岸谷昌也の自殺とその遺書に残された「菅原拓は悪魔です。誰も彼の言葉を信じてはならない」 という謎めいた言葉。弟を含めて四人の生徒、それも人間力テスト上位の優秀な生徒が菅原拓という一人の生徒に虐めを受けていた挙句、 その中でも最も優秀だった筈の弟が菅原に暴行を受け菅原と他生徒との直接的な接触が禁じられていたにも関わらず、暴行事件の一ヶ月後に 自殺に追い込まれたという状況に納得がいかない昌也の姉、香苗が調査に乗り出したところから物語は本格的に動き始める 「教師時代に懐いていた生徒が有名大学を出たにも拘らず、就職活動での面接が不得意だった事で精神を病み自殺した」との理由で昌也や拓の通う 中学校の校長・藤本が導入したガリ勉だけで得た高学歴だけでは通用しない時代に合わせた新評価法「人間力テスト」。生徒に第一問で社会で 役立つ能力を挙げさせ、第二問でその能力を持つ生徒を実名で挙げさせる相互評価システム。一見すると非常に奇妙なシステムではあるけれど、 個人的には見事に現代社会を反映している制度だと感じられた。この評価システムはマズローの言う所の「所属と愛の欲求」に基づく高学歴・有名企業への 「所属」が万能では無くなり、ステータスや肩書が以前ほどの重みを持たなくなった代わりにSNSなどを通じて個人の「生き方」「考え方」で 「承認・尊敬」される事をより多くの人が求める様になった現代社会の縮図と見ても良いのではないだろうか? ストーリーの方は藤本校長への聞き取りから始まった香苗の調査と事件の中核に位置する少年・菅原拓の語りが入れ替わり続ける様な形で進む 特に菅原拓の語りは時系列を作者が意図的にシャッフルしている事もあり、初読では若干の取っつきづらさも感じられるかもしれない 暴行事件を起こし昌也の遺書で「悪魔」と呼ばれた事や、虐めに対する糾弾に対し「革命は止められないよ」と放言するなど不敵な態度を取り続け PTAも含めた学校関係者だけでなく、マスコミも世間も敵に回した事で全教室で土下座をして回るという菅原拓が置かれた現在進行形の異常な状況と、 それとは対照的な意図的に空気を読まない拓が自身の態度をクラスメイトの少女、人間力テストで上位の石川琴美から「菅原君はすごいね」と 誉められた事に始まり、人間力テストの産み出す「友達は重くて潰れそうになる」という閉鎖的な空気に疲弊し切った琴美の追い詰められた事情を 知った事から人間力テストに支配された状況を変えようと立ち上がった過去の回想が入り混じりながら進行する事で虐めの裏に重層的に 覆い隠されていた「真相」が明らかにされていく独特の構成はなかなか楽しませてくれた 香苗が調べを進めれば進める程、菅原拓という少年の無力さ・存在感の薄さが明らかになり、そんな少年がクラスの中心に居た同級生四人を どうやって虐めたのか、という疑問が香苗と読者の胸中には渦巻き始まるのだが、明かされていく事実は琴美を助けようとしたものの 「愚図は何をやっても無駄」「昌也との間には超えられない壁がある」という冷たい現実に打ちのめされた拓の経験や有能過ぎる息子に狂った愛情を 注ぎ続けた香苗と昌也の母親にしてPTA副会長の明音の暴走する真の姿であったりと、どうにも胃が重くなってくるものばかりである 空気を読む事に何の価値も見出せず、無力で誰からも認められない身でありながら「人間力テスト(=他者評価)がビリでも幸せになれるのだ、と。 他人にいくら蔑まれようとも、自分が信じた物を守れるような、空気の読めない様なクズになる事を決意した」と決意し、人間力テストをぶっ壊す革命を 成功させようと、あらゆる憎悪を耐え、革命を成功に導こうとする拓の姿はかなり悲惨。「本物のクズはこんな事で傷付いてはならない」 「人間力テストに縛られて、そのストレスのはけ口を虐めにむけるお前らはカスだ」と信念を抱えボロボロになりながら突き進み続ける拓を ヒーローとして描く事が可能なのは、やはり現実の日本社会に異常なレベルで見知らぬ他者からの評価を得たいという承認欲求を拗らせている方が 多い現状が反映されているのではないだろうか? 最終的に事件は拓と昌也、二人の少年の生い立ちにまで根源を遡る事になるのだが、考えてみれば「親からの愛情」というのは承認欲求の根源として 不動のものであり、その部分が歪んでしまっていた二人の少年が人間力テストのカギを握り、生徒を疲弊させ続ける「どうでも良い相手からの承認の数」 ではなく「自分は誰に承認して欲しいのか?」という問題に行き着くのは当然の流れかと。本作はどこまで行っても承認欲求がベースにある物語 なのである。このクラスの対極的な位置にある二人の奇妙な関係はこじれ切ったまま終わり、その点においては何とも救いが無いが、拓自身が 「誰に認めて欲しかったのか」が明らかにされる事でこの重苦しい物語に付き合って来た読者に僅かながらの「救い」が齎されるのである 最終的にカタルシスが得られるわけでもないので万人向けとは言い難いし、伏線の張り方や時系列の置き方などで多少引っ掛かる部分があり、 スムーズに読めない部分もあるので満点とまではいかないが、誰とも知れぬ相手からの承認を掻き集める事ばかりに振り回され、他者の承認を 得る為に自分を見失い、自分が本当は誰に承認されたいのかを省みる余裕を失っている現代日本のSNSに見られる病理の一つを見事にテーマ化した 作品という意味で非常に興味深く読めた。作風的に量産は効かないタイプの作家さんである事は分かるし、作家性を強く出すタイプと言う事もあって コアな読者向けではあるのだろうけど、半年、それが無理なら一年に一作でもこのレベルの尖ったテーマを追究する作品を発表し続ける事が出来れば、 ラノベ界に何がしかの地位を築けるのではないだろうか? 本来は幅広い層の支持を得るタイプの作品が多い大賞受賞作品から「なかなかの曲者が出てきたな」と期待させてくれた本年度の大賞であった | ||||
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一気に引きこまれ、ページをめくる手が止まらない。 この感覚は本当に久々。十年前、自分にとってライトノベルが全盛期であった時期の感覚だ。 大賞を取るのも納得という他ない、とてつもない名作。 この本を「ライトノベルらしくない」、「ライトノベルでは評価されない」という人もいるだろう。 確かに、十年前ならいざ知らず、萌えに強く偏った今のライトノベルでは、なかなか評価されないのかもしれない。 しかし、自分はこう思う。 この本こそ「ライトノベルらしい」になるべきだ。 それだけの力が、この物語にはあるのだと。 | ||||
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少しこの作品のことを調べればなんとなく察することはできるでしょうが、全編ダークな雰囲気を漂わせている。 にも拘わらず次々と読者にページをめくらせる文章力に加え、何がどうなっているのかを読み手に想像させ、最後にくる衝撃的事実。 自分は読むだけ読んであまり語れない性分なのでたいしたことは言えませんが、 小説発表の場として文句なしの大賞作。一般文芸入門作といってもいいと自分は感じました。 入門といっても決して劣っているわけではなく、ものすごく読みやすいということを比喩しての表現ですのであしからず。 | ||||
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あえて「面白かった」とは言いません。けど、とても良かったです。 読む前は「悪魔ってことはDクラッカーズみたいにファンタジー要素を含むんだろうな」と勝手に思っていましたが、違いました。 しかし、だからこそ、そういうファンタジー的な要素に頼ることなく「こいつ悪魔だろ・・・」と思わせてくる筆力には感銘を受けます。 菅原拓の数ページの供述?みたいな部分など、読んでいて背中にくるものがありました。 伏線やどんでん返しの連続という構成力、思春期の心情描写や、社会問題を取り扱ったテーマ性など、 一冊の小説としてはとても素晴らしい完成度だと思いました。 とはいえ少しここ数年の大賞に比べて、電撃っぽくはない気はします。 メディアワークス文庫で出ておかしくない作風だったかなと。(昔の電撃っぽくはありますが) 作者の次回作はメディアワークス文庫で出そうだなぁ・・ともあれ期待しています。 | ||||
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読み終わった余韻が覚めないうちに感想を書く。 近年、ライトノベルの新人賞でも『いじめ』がテーマの小説が出てくるようになった。 この作品のテーマもまた『いじめ』がテーマである。 私の中で『いじめ』がテーマとして取り上げられた小説は湊かなえの『告白』という絶対的な指標があったので、正直あまり期待していなかった。 しかし、期待はいい意味で裏切られた。 この小説は面白かった。 物語はバッドエンドになるのだろうか、読み手によっては意見が別れるだろう。とにかく構成が素晴らしい。誰かの幸せを願うことは同時に誰かを呪う、それはひょっとすると自分かもしれないし、幸せを願った先の誰かかもしれない、そんな残酷な世界を見せてもらった。 特にこの小説のマクガフィンにあたる『人間力テスト』この仕掛けが非常に巧妙であった。実社会だとしたら本当にくだらないものなのだが物語では生きる。被害者と加害者、復讐の暴走、個人の力ではどうすることもできない強大な悪、友情と裏切り、そして救いと報い。そこまでやるのか、と唸らされた。 語り口も軽く読みやすい、だがやはりライトノベルとしてはどうなのかと思う。主観の問題だがライトノベルではこの小説が正しく評価されないのでは、と思うのだ。あと、誰か解説書いてやれよとも思う。 この小説が電撃文庫のライトノベルではなく、有川浩、桜庭一樹の時と同様に一般小説のレーベルでの再出版がされることをいちファンとして強く望む。次回作も楽しみに待ってます。 | ||||
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