■スポンサードリンク


ただ、それだけでよかったんです



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

ただ、それだけでよかったんですの評価: 3.69/5点 レビュー 68件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.69pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全68件 41~60 3/4ページ
No.28:
(3pt)

まずまず

いじめを扱った作品です。
いじめる側といじめられる側、
それぞれの背景にも着目していて分かり易かったです。
ただ、テーマゆえか全体的に重く暗かったです。
カバー絵から受ける印象とは違う内容です。
結末も救いがなかったですかね。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.27:
(3pt)

コンセプトは好き

駆け足過ぎるのが残念
二巻構成にしてじっくりやるべきだったのではと思います
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.26:
(2pt)

ただ、救いがないー。だけどリアル

タイトルに引き込まれ買って、読んでみましたが、視点がところどころ変わってくるので、正直読みづらいし唐突に展開が進むし、それにラストはまったく救いのないものだったので個人的にはあまり好きになれませんでした。けど、イジメとか学校制度がリアルに描かれていて、本当にこんな制度があったら、こうなってしまうかもしれないと考えさせられたり、それを壊そうとした結果、想定外な悲劇が起きることで現実の厳しさが表されていて面白いとは思いました。
ただ、ハッピーエンドが好きな方はあまりお勧めは出来ません。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.25:
(3pt)

悪くなかったんですがね~

設定とか物語事態はかなり好きだったんですがね~キャラかな?なんかしっくりこなかった感じですかね~作者の経験値かな~今後に期待ですな
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.24:
(1pt)

優れた作家は与えられたフォーマットに合致する作品を書く。

受け売りですが、優れた作家とは「与えられた分量の中にきっちりと収まる物語を書く」のだそうです。
本作はまったく枠の中に収まりきれていません。破綻しています。
物語の解決も、人間力テストという仕掛けも、ミステリのネタバラシも、登場人物の紹介も雑で唐突で腑に落ちません。
読んでいる最中「なんでそうなるの?」と何度も首を捻りました。
物語のキモであるテストに説得力が欠如しているため、もう何を書かれても乗れません。腐った土台に高層ビルを建てるようなものです。
「収まりが悪い」という表現がピタリとくる作品だと思いました。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.23:
(5pt)

ただ、ボコボココミュニケーションだけでよかったんです―ミニ「宮代真司」が書いた論文物語

【解題】
この本のあとがきには、おそらく本の内容すべてのソースとなっているだろう「社会学」なるワードが記載されています。
ここでは、あらすじを追うのではなく、この一語により、この本の背景を探ってみたいと思います。

さて、わざわざ社会学へ言及することを通じて、学恩を忘れない著者の態度には感心するとともに、
「僕のゼミ論文をボコボコに批判してくれた」なる文によって、著者の出身が国公立大学であるか、
または国公立大学出身の教授の教えを受けたであろうことが明らかになってしまいます。

国公立大の教授であるとか、国公立大出身の教授(つまりエリート)が開催しているゼミでもなければ、
いまどき学生のゼミ論文をボコボコにするなんていうコミュニケーションが許されるはずがないからです。
学部レベルでボコボココミュニケーションを実施するのは、パワハラ認定/解雇/訴訟のリスクが高すぎるので、
著者は、あるいは大学院在籍中かもしれません。

ボコボココミュニケーションというのは、傍から見ればパワハラ、いわゆるいじめにほかなりません。
「意味がわからない」「ばかじゃないの」「そういうところがだめなんだ」「質問に答えてない」「嫌いだ」
もしくは、論文の筋のぶちこわし、細部の揚げ足取りが、居並ぶ10人ぐらいから一斉に集中砲火される。
そんな針のむしろの「数時間」の「数年」に及ぶ繰り返しを想像してみてください。
世に言うブラック企業の「かわいがり」と何ら変わりありません。
救いは、それが全人的な人格否定ではなく、「論文の著者」というごく一部の人格に限られていること、
そして参加者が順番にボコボコにされていくということです。教授だって例外ではありません。
一方的な関係ではなく、相互にボコボコに死合う関係。なんとまあ美しい風景であることでしょう。

このボコボコゲームは、高度に発達した知性(たとえば国公立大学に入学できる程度)が、
自身と論文とをはっきりと「別物」として切り離す、つまり、一種の離人症状態を作り出すことで、
ゲームのプレイヤーとして、論文を通じたバトルにより、論文の質を高めることを目的として行われるものです。
このゲームにおいて、フィールドは、広大な荒野ではなく、限られたゼミ空間であり、
レベルアップが実感できるまでになるのは相当の時間が必要です。
学恩というのは、エンカウントした全ての論敵、全てのモンスターへの感謝とでも言い換えられるでしょう。

質を高めた論文、つまり異常な言説を理解可能な形に仕立てたものは、
最終的には社会に新知見として還元されますので、
ボコボコゲームを一般化強制装置といってみてもいいでしょう。
RPGとあまり変わらないということがわかれば、装置に連結されるのはあまり辛くないものです。
逆にいえば、RPG的な離人状態を作り出せるまでの知見があれば、現実は生きやすくなるのかもしれません。

あるいは古きよき2chの煽り合いを思い出してみてもいいでしょう。
だれだってネット人格を通じた悲哀とともに人格と自身の切離経験をもっていることでしょう。

別の言い方をすれば、このボコボコゲームは、宮代真司言うところの「小乗仏教」というやつですね。
でも、物語というのは、そんな小さなカテゴリを超えて「大乗仏教」であるはずのもの、
もしくは、そんなくくりつけすら拒む荒野/地平線/豊穣さであるべきものです。

ところが、著者は、社会の片隅で行われてきたボコボコゲームを、
あとがきにさらりと書いてしまうほか、本文にも「ただ、それだけでよかったんです」の
「それ」にあたるものとして理想化して書いてしまっているのです。
この一点をもってして、この本の書き手は、どこまでいっても著者であり、
作者ではありえません。

実際には、ボコボコゲームを文中へ翻案した仕方は丁寧であり、
ボコボコゲームの血塗られた臭みを感じることはほとんどありません。
しかしながら、全人的状態(本文中ではあろうことか「欠落」と呼ばれています)から
離人症状態への移行のススメしかない、著者による文章は、
物語と呼ぶには単純化が過ぎ、論文と呼ぶにはあまりに可能性のないものです。

徹頭徹尾、社会学から離れない(離れられなかった)著者に
与えられるのはB評価まででしょう。

この著者をもってして「作者」と呼ぶのは許しがたいことですが、
社会学への招待としては、一流の物と思い、星五つを付けています。

【展望】
この本は、柔らかなカテゴライズと、いくつかの叙述トリックから出来上がっています。
その結合は、宮代真司と湊かなえの遭遇とでもいうべきものであり、
著者の頭の良さ、編集能力の高さが感じられます。

叙述トリック部分については他のレビュアーが
さんざん書かれていますので、その部分を抜きにして、
本のあらすじを宮代真司流の社会学風味で語れば、次の3行です。

---
学校という「閉鎖空間」における濃密「コミュニケーション」がもたらす「ムラ」感に苦しむ若者が、
「ネット」という「自由な空気」を手段とすることで、ボコボココミュニケーションを目指すが、
より高次の「レイヤー」である「社会」に包含され挫折。が、「愛」によって癒やされ、日常は続く。
---

ここでいうボコボココミュニケーションは、
相互にルールをわかった上でゲームをやりとげる態度、
「俺たちわかってるよな」という紐帯、絆、傷のなめ合い、
からかい合いとでも言い換えられます。

物語の作り方として、ボコボココミュニケーションを目指す主人公を「革命」側とし、
社会を非ボコボココミュニケーションとするのは、ライトノベルとしては当然のお手前ですが、
最後に「愛」を持ち出す仕方がいただけません。

「愛」を象徴する人物が、「社会」的権威を象徴する人物と密接に関係している、というか
区別をつけられないとされており、結局、中学生は「超越的なものに敵わない」という
図式にしかなっていないのです。

ここが90年代生まれの著者の頭の良すぎる点なのでしょう。
現実的には、社会に敵わないというは妥当で蓋然性のある着地です。
破綻はなく、しっかりと完結した文章になっています。
しかしそれは「こども」を切り捨てた図式化によるものです。

実際、著者の後書きには、おそらく名門校に入ったであろう中学校以上の話しか記載がありません。
教育の効用を理解してしまっている著者は、小学校半ばからもはや大人であったのかもしれません。

わたし達が中学生であったころ、わたし達はこどもであり、
こどもというのは、賢しらなものではなく、教育の効用など理解しなかったものでした。
社会に馴致されること、社会に包含されること、それがもたらす利益、
すなわち教育の経済学なんて、こどもには通用しないのです。
すすんで勉強するこどもは、果たしてこどもなのでしょうか。

もちろん、偽悪的態度により革命を目指す中学生がこどものわけがなく、設定上、
文章を上手く収めるための着地点がほかに見当たらなかったことも理解できます。

それでも図式化により切り捨ててしまった豊穣を著者がいつか取り戻し、
物語としてくれることを願ってやみません。

ボコボココミュニケーションは、物わかりのよい大人を作るためのものではなく、
聞き分けのないこどもを守るためのものでしょうから。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.22:
(4pt)

警鐘を鳴らす

用意されたルールにリアリティが足りない。
その一言で片が付く筈だった作品。
私の視野が狭かったのか、現実は奇だからこそ現実なのか。
どうもそうでは無かった様なので
考えるには良い機会だと思いレビューする。

新人としては大変良く描けているラノベ。
それ以上を期待するべきではないだろう。
あくまでラノベ。あくまでもフィクション。
割とやり過ぎな後付けは加筆修正でもしたのだろうか?
やや粗っぽ過ぎるが、とりあえず本質は損なっていない。
何かを強く感じたなら、それには意味が必ずある。
例え違和感でも、不快感でも、嫌悪感であっても。
結局何てことはない。サスペンスでもミステリーでもない。
ただの嘘みたいに普通のライトな日常物だ。

この国では空気は人を殺すのだ。
それを忘れてはいけない。
そこから目を背けてはいけない。
理解出来ない人は幸福だ。
幸福なまま理解しないままでいて欲しい。
無理に理解しようとしたふりをすれば
多分お互い不幸にしかならない。

「空気なんてよまずに笑っとけ、笑顔笑顔、笑うかどには福来たる」
興味が有ったならこれを鍵に探してみて欲しい。
多分あなたが知りたかった宝の箱がそこにある。
これは現実の学生達の現実、その一側面だ。

さて普通って、リアリティって何だったかなあと
虚しくなると同時に流石に溜め息がでる。
例え情報化社会でも
ネットは無限に広がっていても
学生達のリアルな世界はまるで広くなってなどいない。

そんな物であの四角い監獄の重みは
まるで軽くなどならないのだろう。
それがリアルだとするなら、
現実味が無いのはどちらなのか。
救いがないのは、どちらなのか。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.21:
(5pt)

この作品の見所は「オナニー」

この作品はネタバレが痛い作風で、あらかたは他の方が語っているので私が個人的に思った事を書きますね。

この作品、主人公がしばしば「オナニー」という単語を使います。

『僕はもう14歳ですよ。オナニーだってできる』『○○さん(表紙の彼女)の事を思って何度もオナニーした』

主人公は根暗な無気力系男子のはずなのに年上の女性に対して「オナニーできるんですよ」と唐突に下ネタを振ります。
なぜ?

最初はただのウケ狙い、作者の悪趣味な下ネタだと誰もが思うでしょう。
インパクトのある単語を使えばそれだけで「オナニーwww」と中学生は条件反射で喜びますからね。
小学生が「チンコ」「ウンコ」というだけで笑うのと同じことです。
オナニーという言葉にはそれだけで読者の目を惹きつけるインパクトがあります。

なんや、たいそうな謳い文句の割には幼稚な小説やのぉ、障子をペニスで破る某都知事のお下劣小説的みたいやのぉ。
私はそんな事を思いながら読み進めました。

しかし、全ての真相が明かされてからもう1度読み直すと、これらのセリフが全て繋がってある一つの結論を導きだすのです。
ライトノベルなので全貌は語られません。あくまで僅かな単語から読者が想像するのみです。
しかし、作中で行われていたその『主人公のオナニー』を想像するだけで私はとても胸が締め付けられました。
それが本当なら、あまりにも哀しすぎる。虚しすぎる。

序盤、中盤ではただの下ネタだったオナニーで、ここまで切ない気持ちにさせられるなんて。

全部読めば意味が分かります。気になった方は買いましょう。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.20:
(5pt)

ラノベっぽくないラノベ。

これが電撃大賞をとったのいうのが驚き。いい意味で。
対象年齢層が上気味と言われるメディアワークスっぽい。
すこしミステリーっぽく、サスペンスぽくもある。
異能も異世界も出てこないし、学園ものではあるけど、ラブでもコメでもない感じ。
でも面白かったです。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.19:
(5pt)

救いようのない物語

読了後、この小説のタイトルが胸に響きます。
『ただ、それだけでよかったんです』
とても悲痛な叫びです。本当に、誰も彼もが浅はかだった。結果、悲劇が起きた。
私はこの作品が大好きです。
けれど、この作品は人に勧めるべきではないのかもしれません。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.18:
(3pt)

BL小説の新境地。

まあ毀誉褒貶いろいろあるけど、これを4万字程度に圧縮すれば、文學界とか新潮とか群像とか文藝とかの新人賞取れるから、大丈夫、松村くん作家として立派にやっていけると思うよ。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.17:
(3pt)

良くも悪くもライトノベル

MW文庫で出せばよかったんじゃないかと思う作品
後出し設定はラノベで良くある事だからいいけど、そういうのはファンタジーだけにしてほしいかな
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.16:
(2pt)

朝井リョウ氏と同じ匂いを感じる

「ちょっと今から仕事やめてくる」が良かったので他のライトノベルも読んでみようと思い、あらすじがおもしろそうなこの本を購入しました。
ですが、魅力的なあらすじほど中身はおもしろくありませんでした。
肉がおいしそうに焼ける音や、コーラの泡が弾ける音が商品を売るというのを聞いたことがあります。それと同様に、おもしろそうなあらすじがこの本を手に取らせたのだと思いました。

良かった点
・テーマとイジメという題材
 この作者さんには朝井リョウ氏と同じ匂いを感じました。題材選びとそれをライトノベルという市場に出すという目の付け所が非常にすぐれている思います。

悪かった点
・主人公の心理描写が多すぎて、他の描写や設定の掘り下げが足りない(これが評価を低くした大きな要因です)
 Kを「天才」と書くだけでなく、どのように「天才」なのか読者に伝わるように書いてほしい。クラスに一人はいそうな生徒程度にしか思えませんでした。
 個人的に興味をそそられた「人間力テスト」も掘り下げがほとんどなく残念です。
 登場人物たちが追い詰められても「なんでそうなるの?」と疑問がわいてしまいます。
 それなのに「天才って書いたから天才」、「完璧なイジメって書いたから完璧」、「クズっていう設定だからこいつのことは誰も信じない」、「人間力テストはおそろしいっていう設定だからこうなる」、「悲惨な家庭環境だからつらいでしょ?」というふうにほとんどのことが処理されるので、どんどん不満がたまっていきます。そのわりに主人公の心理描写が「それ、さっき聞いたよ」と言いたくなるくらい多いです。

・文章が読みづらい
 知らない言葉を無理につかおうとしているのが伝わってきました。

・ミステリーの仕掛けが雑
 自分を含めてミステリーが好きな人はある程度、仕掛けの予想がついても伏線が上手なら満足すると思います。しかし、そのような配慮はありません。この物語の中では「天才」と書けば「天才」となるように、「どんでん返し」と書けば「どんでん返し」になるのです。

たくさん悪い点を書きましたが、作者さんの目の付け所はすばらしいと思うので次回作もあらすじがおもしろそうなら手に取ってしまいそうです。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.15:
(5pt)

『最大幸福』に従い、『悪魔』に石を投げよう!! キャンペーン

本屋で見かけて、久し振りに電撃小説大賞の受賞作を買おうと思った。
 ライトノベルテンプレや、あるいは出来が良くても優等生的な作品なら買いたくはなかったが、タイトルが印象的だったし、何より現実寄りのどちらかと言うと一般娯楽小説に近いテイストを感じ、それに『イジメ』がテーマみたいだったから。
 買って帰ってからAmazonレビューを確認し、高評価が山積していたからこれは面白いのだろうと思った。
 数日が経過し、冒頭三十ページくらいを読んで『なにこれ酷い』と思った。
 文章が酷い。かなり酷い。内容というより何だろう、ディテールの描写が酷い。
 これで大賞なのか。今回、電撃小説大賞に応募された四千五百七十九作品の中にはこれよりも文章力で秀でた作品は確実にあっただろう。俺自身は公募作すら完成させられないワナビにすらなれない男だけれど、しかしお世話になった批評サイトにも、この作品以上の文章レベルを誇っている作品はいくらでもあったように思う。
 具体的にどこが酷いかと言うと、まず自殺した被害者の、大学生の姉が、あまりにも大学生離れした幼稚なモノローグを使っているのが酷いし、いきなり高校の校長にアポイントを取って、実際に会えてしまう、というのがかなり荒唐無稽に感じた。校長の筋肉の発達具合を描写しているのが意味不明だと思ったし、また校長の語り口もお前もうすぐ六十歳になるんだろ、しっかりしろよ、と言いたくなるような感じである。この時点で、リアリティがないというか、物語の展開のために登場人物を都合良く動かしている感じがした。あと、年上に対する敬意や期待の欠如は、主人公である『悪魔』、菅原が一番頭が良いように見える(ようなモノローグを割り当てられている)ことからも明らかだろうとは思う。
 菅原視点の方はかなり読める感じだけれど、これは多分、俺が菅原というキャラクターにかなり感情移入できたからだろうな。勉強も出来ない、運動も出来ない、捻くれた考えを持つことしか出来ない、当然友達だっていない。そんな菅原にどれくらい自分を重ねられるかで、この物語の印象は大きく変わってくるのではないだろうか。ライトノベルを好む層はある程度共感できるだろうけれど、ある程度カースト(とか今は言うんだよね?w)の上位にいる層が読んで共感できるかはかなり謎。
 この物語の白眉は、菅原の語り(「」「」「」と連続する)部分だろう。ここで、弟を自殺に追い込まれた被害者の姉と、悪魔のようなイジメを行っていたはずの菅原の立場が完全に逆転する。そこにカタルシスがある。被害者の姉との対峙において、菅原が小市民性を最後まで保っているのもいいと思った。同時に、そこまで演技を徹底し、事態を拡大させる一貫性を持った菅原に『そこまで出来るのか、すげえな』と俺は素直に思った。まあ、物語の中だから出来るんだけれど、学校生活における多くの透明人間達、いじめられっ子達は当然、こんな『革命』なんて起こせずに黙殺されていくんだよな、と俺は俺と俺以外の誰か達に黙祷を捧げる。
 菅原はヒロインらしき女の子と結べないし、悪の親玉の校長も倒せない。しかし、校長が終始一貫していないのはさほど問題ではないんだろう。これは菅原の物語であり、校長は要するに『宿敵を倒せずに終わる』という、菅原の人生のアンチクライマックス性の象徴に過ぎないから。
 宿敵を倒せなかった菅原はしかし、得られなかった母性を、愛を与えてくれる存在に最後巡り合う。
 まあ、そんなもんなんだよな。一人でも、全存在を認めてくれる人がいてくれれば、それで個人の人生なんていくらでも救われちまうもんなんだ。
 だけど、問題は何も解決していないのだった。
 これはやはり、事態を何も変えられない個人のただの悪あがきの物語に過ぎないのだ。
 『人間力テスト』もそれを実施した藤本校長も、ただただ変えられない非情な現実の象徴に過ぎないのだろう。『人間力テスト』なんてなくたって、個人はいくらでも評価に左右される。
 SNSで、アプリで、ニコニコ動画で、いや、それはマンガでもアニメでもそうかもしれない。より多くの人から評価を集めたモノこそが正義! 人気者こそが正義!! そうじゃない人はいくら排斥してもイジメても構わないし、犯罪を犯したらどんな悲惨な家庭環境があっても、ぬるま湯の中からいくらでも投石してぶっ殺しても構わない!! これは要するに、日本の縮図であり、ただの現実でしかないのかもしれない。
 あなたは『悪魔』にならなかっただけの菅原拓なのかもしれないし、罪悪感を覚えながらも周囲に同調し石を投げることを試みる石川琴海なのかもしれない。
 しかし言うまでもなくあなた方の多くは、炎上騒ぎが起こる度にネットに湧き上がる『最大幸福』なのかもしれない。最大幸福に従っていれば皆、幸せ、幸せ。考えないで手を汚さないで皆で石を投げよう! 皆で『悪魔』を殺そう!!

 ――というワケで、かなり今日的な日本の問題に感情移入しながら読めば、この物語はとても優れた寓話として機能するだろうし、そうでない人には稚拙な文章による、描写の薄い小説に見えるのかもしれない。
 十人十色の感想がつく作品は傑作だと思う。
 だから、この作品は傑作だ。
 以上。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.14:
(1pt)

合コンのルール

このレビューにはネタバレ要素が含まれています。

岸谷昌也という男子中学生がイジメを苦に自殺をした。
『菅原拓は悪魔です。誰も彼の言葉を信じてはいけない』という遺書を残して。
しかし自殺した岸谷君は人気者の天才少年で、彼をイジメていたとされる菅原君はスクールカースト最下層の地味な生徒だった。
他にもイジメの目撃者が誰もいなかったことなど、多くの謎が残る事件だった。
なぜ天才少年の岸谷君は自殺しなければならなかったのか。

というのが、あらすじです。
低い評価をつけてはいますが、魅力的なストーリーであることは間違いありません。
まだ読まれていない方はここで引き返して、買って読んでいただけたら幸いです。

物語は事件の真相を探るべく奮闘する自殺した岸谷君のお姉さんと、イジメの加害者とされている菅原君の視点を交差しながら進められていきます。
本作で最も多く使われている単語はおそらく『クズ』でしょう。
とにかく自己評価の低い主人公の菅原君はことあるごとに自らをクズ呼ばわりして、挙句のはてに自分のことを『キモオタコミュ障ボッチ童貞ゴミクズ野郎』と表現します。
なんてきたない言葉でしょう。でも、これが人から避けられるタイプだというのなら、この正反対の人格ならみんなの人気者になれるのではと思い、せっかくなので考えてみました。
『小綺麗な非処女』なんてのはどうでしょう。

さて、私が本作を低評価にしている決定的な理由は、この物語の根幹に関わるルールに全く共感できないから、その一点のみです。つまり、そこ以外は悪くないと考えています。
ここが最終防衛線です。ここから先はネタバレのパレードです。未読の方は今すぐ商品をカートに入れて読んでから戻ってきてください。

では、はじめます。
まずはこちらをご覧下さい。本文からの引用です。

人間力テストは二種類の質問事項によって構成される。
『この時代、○○に重要な能力はなんだと思いますか? 以下の群から三つ選びなさい』
『同じ学年の中で、××を持つ人物を挙げてください』
その二種類だ。
○○にはリーダー、上司、人気者、などといった言葉が入る。リーダーに必要なものは何か? 友達になりたいのは何を持つものか? 文化祭ではどんな能力を持つ者がいれば役に立つか? 将来、仕事で活躍するのに必要な能力は何か? などとなる。
そして、××には、優しさ、真面目さ、外見の良さ、などが書き込まれる。
生徒は各々の理想像やその理想に合った人間を答案に書き込むのだ。「リーダーシップには勤勉さ、優しさ、カリスマ」「学年の中で、一番勤勉なのは加奈子、二番目は妙子」などと。
最後に、すべてを点数化する。現在、生徒が重要視する能力を持った人間ほど高得点というわけだ。生徒全員の順位を公表することはないが、生徒たちは自分の順位や点数を目の当たりにすることになる。
自分という存在の価値を知る。
自分という性格の評価を知る。

——以上が、本作の柱というべき『人間力テスト』を説明しているくだりです。
自殺した岸谷君のお姉さんは、この人間力テストの存在と岸谷君の自殺に関係があるのではと推理します。後述しますが岸谷君の自殺と人間力テストにそこまでの関係性はありませんでした。
さて、生徒同士で格付けしあうこのシステムが誕生した経緯は、これの生みの親である主人公たちが通う中学の校長先生がまだ若い教師だったころ、学業は優秀だったのにコミュニケーション能力がないせいで自殺した生徒がいて、そういう生徒をもう出さないために発案したのだそうです。
マッドサイエンティスト的といえるかもしれませんが、全く問題の解決になっていません。
コミュニケーションで必要なのは相手を理解する気持ちと伝達能力ですが、他者を格付けするこの人間力テストが生徒に要求しているのは比較と区別による差別です。
校長が何を言っているのか私にはさっぱりわからないのですが、校長先生曰く、『このテストを批判するやつは何も分かってないマヌケだ。』そうで。
いいですか、みなさん。つまりこのレビューはマヌケが書いてます。いえーい。

100歩譲って人間力テストがコミュニケーション能力を養うために開発されたものとしましょう。しかし、根本的な問題が他にもあります。
この学校には人間力テストはあっても、人間力の授業がないのです。
グループワークが多い学校だと後で説明が入るのでそれが授業なのかなと思うと、それも人間力テストの採点素材だと書かれていますし、そもそもコミュニケーション能力の低い人にとってグループワークは地獄ですから。
もう一度確認しましょう。人間力テストはコミュニケーション能力が低いせいで自殺した生徒のために作られました。
言葉を変えると、英語ができないせいで自殺した生徒のために毎週英語テストをすることにしたけど、英語の授業自体はしない。それがこの中学のスタンスなんです。
校長先生のやり方だと生徒の自殺するタイミングが早くなるだけだと思うのですが。

人間力テストに関して覚えておくべき情報があと二つあります。まずはその内の一つ。
生徒がお互いを格付けして採点して順位を出すこのテストですが、安心できる要素もあります。それは、順位自体はおおやけにされることなく、トップだからといって学校内で何か良いことがあるわけでも、最下位だからといって悪いことがあるわけでもないということです。
そして、それこそがこの物語全体を異常なほど理解しがたいものにしているのです。
ここでヒロインの石川さんに登場していただきましょう。
セミロングの黒髪を持つ美少女で、人間力テストの順位も高いみたいです。
出会って数分しか経ってないのに、石川さんは菅原君にこんなことを言います。
「わたしのおっぱい触らせてあげる代わりに、次の人間力テスト、わたしに投票してくれませんか?」
ご覧ください、みなさん。まさに小綺麗な非処女です。
なぜ石川さんがそんなことを言い出したかというと、彼女はおそろしく人間力テストの順位を気にしていて精神を病んでいるみたいなのです。
石川さんに限らず、この学校の生徒たちはカルト的に人間力テストを信奉しています。
学生さんたちにとって学校こそが社会であり世界。そこでの評価こそ全て。みたいなことがいいたいのかもしれませんし、そういう描写もあるのですが、そんなことってありえますか?
この作品が1950年くらいを舞台にしているならそういうのもわからなくないですけど、おもいっきり現代が舞台の話ですし。
つまり、世界は開かれているのです。
なぜ人はコンビニのアイスケースに入ったりファミレスのソースを鼻の穴に突っ込む姿を撮影してネットにアップするのかといえば、頭がおかしいからというのは大前提として、そこに過剰な承認欲求があるからです。
すなわち、もっとリツイートしろ、いいねボタンを押せ、動画の再生数よ伸びろ、ということです。
みんなに自分を評価してほしい。そしてどれほどの数字を稼いだか見てほしい。
見せびらかせない評価に価値などないのです。異論は認めません。
誰かがよくわからない基準で投票した公表もされなければ学校生活に支障もない点数にどれほどの意味があるというのでしょうか。
実際、人間力テストがほぼ最下位の菅原君もトップクラスの岸谷君もそれが理由で学校生活は良くも悪くもなっていません。
余談ですが私も小中学生のころ、人間力テストみたいなことは何度かやらされました。
特定の項目に該当する生徒の名前を書いて採点をさせられました。
ご丁寧なことに後で順位と点数をプリントアウトして配ってきたので、この作品の学校よりも鬼畜です。自分の順位は菅原君と同じく最下位あたりだったと記憶していますが、性病の検査並みに自分には関係のないイベントでしたし、それを理由に嫌な思いをしたこともないので、作品内で人間力テストにおびえる生徒たちの姿にリアリティーを感じないのです。

人間力テストに関して覚えておくべき情報の二つ目。
物語内で最重要ともいえる人間力テストですが、作中でテストを受けているシーンが一度もないのです。
どれくらいの頻度で行われているのか、今回はどういう出題で、その回のトップと最下位は誰で、その人たちはその後の学校生活にどういう影響があったのか。
最低でもそれくらいは描いてもらわないと、人間力テストのおそろしさについてイメージできません。
特殊なルールのある学園ものといえば、幾原邦彦監督の『ユリ熊嵐』や衣笠彰梧先生の『ようこそ実力至上主義の教室へ』などがあります。
クラスメイト全員で気に入らない生徒に投票して見事1位に選ばれたら教室から排除されるとか、テストの成績が悪いと人間扱いしてもらえなくなるとか、現実味はゼロですが、敗者をしっかり描くことでその物語の中ではリアリティーがあるし、ストーリーから目を離せない魅力となっています。
このシステムの中で敗北すると、人間としての尊厳を奪われてしまう。だから立ち向かわなくてはいけないんだ。そういうものが人間力テストには欠落しているのです。
作品内リアルも緊張感もない人間力テストに異様なまでに血眼になっている登場人物がわんさか出てくるこの作品には説得力がありません。

ここで思い出したことがあります。
少し前、真昼間から牛丼屋さんで牛丼を食べていると、離れた席で同い年くらいのお兄さん二人が昨日の合コンについて談笑していました。
別に聞き耳をたてていたわけではなく、店内放送かってくらい二人の声が大きかったので、いやでも耳に入ってきただけです。
「お前と話してた子、かわいかったよな。身長162センチくらいの」
「いやいや、あの子、身長163センチはあったよ」
まさかこの世に『豚汁』は『ぶたじる』と読むのか『とんじる』と読むのか以上にくだらない議論が存在するとは思いもしませんでした。
しかし二人の意見は対立し、譲らず、ヒートアップして、最終的に殴りあいとなり、警察沙汰にまで発展しました。
二人はお酒でも飲んでいたのか特殊なお薬にでも手を出していたのかは不明ですが、実はここには重要な情報が一つぬけています。
私自身が合コンなるものに参加したことがないので、合コン参加者にとって出会った女性もしくは男性の身長がどれほどの意味を持つのか見当もつかないということです。
『マジで』の音階だけで会話を成立させ、九九は二の段までしか言えなくて、頭の中は交尾のことでいっぱいの、いやしい身分の人たち。
というのが合コンをたしなむ方の基礎知識だと思っていたのですが、これでは、ラノベってあれでしょ? とりあえず異世界いって美少女と出会ってチートもらって美少女と出会って居酒屋はじめて美少女と出会って森を歩いてたら美少女と出会ってと思ったらそいつは実は男の娘でそれでも次は美少女と出会って姫騎士はオークに襲われてるんだろ?
とかなんとか中途半端な知識で偏見をぶつけてくる人と変わりません。
相手の身の丈を1センチでも間違えることは許されざること。訂正も謝罪もないのであれば決闘も辞さない。合コンとは、そういう貴族の社交場なのかもしれませんね。

話を戻します。
人間力テストに苦しむ石川さんを救うべく菅原君はそれを破壊するための革命を起こそうと決意します。ここから物語の飲み込みづらさは爆発的に上昇していきます。
菅原君の目的は人間力テストをやめさせることです。そのための手段が無意味かつ遠回りすぎます。
詳細を書いていたら文字数制限に引っかかったので割愛しますが、風が吹けば桶屋が儲かるみたいな、一見よくわからない理屈でも順を追って説明されたら納得いくようなものではなく、一歩目から破綻しているし、仮にうまくいったとしてもテストがなくなるとは思えませんし、実際、作中では失敗します。
くどいようですが、人間力テストの結果が良かろうが悪かろうが生徒たちの人生には何の影響もないのです。それなのになぜそこまでテストに執着しているのかわかりません。あまりにも価値観が違うので実は物語の舞台が地球ではなく猿の惑星だったみたいなどんでん返しがあるのかなと勘ぐったくらいです。異世界転移もの流行ってますし。
とりあえず『人間力テストをやめないなら自殺します』といった内容の手紙を学校とマスコミに送ればそれでよかったような気もします。ただ、それだけでよかったんです。
とはいえ、この流れ自体は嫌いではありません。
小説の中盤で菅原君は読者に、この物語は僕の愚かさを笑いながら読むのが正しい読み方であると推奨してきます。今のところ順調に愚かです。
それに、頭の中で完成した完璧で素晴らしい計画が後から考えたら清々しいほど無意味だった、なんてことは誰でも一度は経験あると思います。
これまであれこれ書いてきましたが、ここまでの印象は決して悪くありません。Amazon的に評価するなら星四つはつけます。

さて、物語も残りわずかとなりました。ページ数でいうと248ページ。問題はここからです。
万策つきた菅原君は最終手段として人間力テストの生みの親である校長先生を殺害しようとします。
それを紗世さんという女子大生に阻止されます。
紗世さんは岸谷くんのお姉さんの幼馴染みです。小学校から高校まではずっと一緒で、岸谷君のお姉さんに依頼されて今回の事件の解明に協力をしていました。この情報はとても重要なので覚えていて下さい。
人間力テストのせいでどれだけの人が傷ついているのかわかっているのか、と叫ぶ菅原君。
校長先生は言います。「もちろんわかっている。テストは不完全だ」だからこそ順位の低い生徒には個別に連絡を取っていたことを明らかにします。
そこで菅原君は気づきます。「お前が『ソーさん』だったのか?」と。
ソーさんというのは、主人公とネット上でメッセージのやりとりをしていた友達です。
校長先生は言います。「キミがソーさんに学校のことを相談していれば今回の悲劇は起こらなかったのに」と。
意味がわかりません。
どこの世界にハンドルネームしか知らない赤の他人にリアルの情報を提供して問題解決を頼む人がいるのでしょう。「いやー実は僕、学校でむちゃくちゃなことされて困ってるんだけど、もしあなたがその学校の校長だったりしたら、なんとかしてもらえませんか?」とでも言えと?
このソーさん(校長)はすごいんです。自分の学校でイジメが発覚して真っ先にしたことが、イジメの起きたクラスの担任のYouTubeのページに匿名で突撃して荒らしをはじめることですからね。それだけじゃおさまらなくて、あろうことか、その担任の個人情報をマスコミに拡散します。
落ち度のある人間には何をしても許される。なぜならそいつは悪であり、それに怒りを覚えた自分たち正義の側は無限の制裁を与える権利がある。その結果そいつが死のうが破滅しようが知ったことじゃない。なぜなら悪いのはそいつだから。なんていう歪んだ価値観は教育者が絶対に認めてはいけないものだ思うのですが。
そして校長は決定的な一言を放ちます。「ただ、キミは情けない。困ったら周りに相談しなさい。それだけのことを言わねばならないなんて」
あのですね、そもそも校長が人間力テストなるものをはじめた理由は『コミュニケーション能力が低くて自殺した生徒のため』だったはずです。コミュニケーション能力が低い人がどういう人なのかというと、そこまで追いつめられても、それでも声をあげることができない人なんです。そういう人をさらに追いつめたらどうなるか。説明の必要はないと思います。
物語のラストで突然異世界に転移した校長がそこにいたオークとゴブリンに惨殺されてしまえば、私は迷わず本作の評価を五つ星にしたのち、もう一冊買って近所の図書館に寄贈したことでしょう。

多少の矛盾やご都合主義、後出し設定についてはそこまで気にしません。しかし、物語の根幹への不誠実さは無視できません。どうしてここまでふざけた話になってしまったのか、そのこたえは簡単で、作り手が信じていないからです。
作者の松村涼哉先生は信じてないんです。こんな話あるわけないって。だから自分が作ったルールの間違いにすら気づけてないんです。
後出し設定は気にしないと書きましたが、この作品に関してはちょっとひどすぎます。
話の発端となった人気者の岸谷君が菅原君にいじめられていた問題ですが、実際には岸谷君が菅原君をいじめていました。でも二人は同じ悩みを抱えて同盟を結ぶほどの親友だったんです。それなのに岸谷君は菅原君に暴力を振るいます。家に帰れば姉から振るわれる暴力からのストレスが原因の一つなんだそうです。
そうです。なんともう一人の主人公である岸谷君のお姉さんは岸谷君に暴行をくわえていたのです。弟を殺したのは人間力テストではなく自分だったのです。意外な展開です。伏線とかありませんでしたし。
二回読み返してみたのですが、唯一の理解者であり心の支えであるはずの菅原君を岸谷君がいじめるという展開には無理がありすぎると感じます。
後出し設定で忘れてはいけないのが紗世さんの存在です。こちらの紗世さん、なぜか終盤まで名字が明かされず、そしてそれが明らかになった瞬間、ある人物との関係がわかるという、ファンタジーの世界ならともかく、現代を舞台にした物語で2016年に使っていいテクニックなのか考えものの仕掛けがほどこされているのですが、それはいいとしましょう。しかし、紗世さんとある人物との関係を岸谷君のお姉さんが知らなかったというのは無理があるというより、不可能だと思います。
幼馴染みで、弟の事件の調査を依頼するほどのなかよしです。相手の家族のことを何も知らないなんてありえるでしょうか。

最後に最大の謎は本作が第22回電撃小説大賞の大賞受賞作ということです。
帯によると4580作品の頂点だそうです。他の4579作品は何がいけなかったのでしょうか。
一行目にガールズ&パンツァーの悪口でも書いていたんでしょうか。
鎌池和馬先生曰く『最初の一文字目から仕掛けは始まっている。』そうなんですが個人的には259ページある物語のなかで256ページのラスト2行目から後出しで設定を追加してくる卑怯な話だなという印象です。

本作が大賞受賞作と知って、とても嬉しかったことを覚えています。
『無職の俺が異世界に転生したけど何もできないので趣味の料理で居酒屋をはじめたら魔王が常連客になってしまったようです。一方そのころ妹は悪役令嬢に転生していた』
みたいなオリジナリティーあふれるタイトルの作品を選ばずに、こういう挑戦的な話に光をあてようとする電撃文庫はさすがトップランナーとして志が高いなと。
個人的にも学園ミステリーは大好物なので。
だからものすごい期待と応援の気持ち、それからやさしい心で予約して買わせていただきました。
でもこれは、あんまりじゃないかなと。
これを読んでいる途中で思い出したことが二つあります。
一つは、何年か前に爆発的なヒットをしていた『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』という本を読んだときの気持ちです。
絶賛の声しか聞こえてこなかったので、どれほど素晴らしいのかと期待して拝読すると、これはいかがなものかと思い、かなりの酷評レビューを書いたのですが、なぜかそのレビューは消されてしまったので証拠はありませんが。
もう一つは前述した牛丼屋さんでの合コンの一件です。
1センチの身長をめぐって殴りあうような、自分には理解できない価値観や評価軸でこの作品は大賞に選ばれたのかなと。
作者の松村涼哉先生は現在23歳と、とてもお若い方です。
かなり年配の方が書かれた作品なのかなと思っていました。
というのもこの作品、一言であらわすと『年寄りの愚痴』なんです。
若者はみんな狂ってるとか、ネットは闇であふれてるとか、そういう周回遅れの価値観で書かれているので。
プロフィールによると、松村先生は最近、ワインが飲めるようになったそうで。私はお酒飲めないのでうらやましいです。
ワインといえば、貴族の飲み物であり合コンの必須アイテム。
電撃小説大賞の大賞受賞者という人生の勝者となった松村先生は合コンでも大人気かと思われます。
メジャーで相手の身長を測ったり、「おっぱいを触らせてくれたら次の人間力テストでキミに投票してあげよう」とか自作ネタをぶちかましたりしているのでしょうか。さすがに言いすぎました。すみません。

大切なことは一つです。
どんな作家さんであれ、新人賞受賞作というのはその一冊しかありません。
はじまりの一冊です。
そして物語の素晴らしいところは、それを受けとった人によって、面白いくらい評価が異なることで、それはその人がその物語にふれるまで決してわからないことです。
この物語はあなたを不快にさせるかもしれない。あなたの宝物になるかもしれない。
つまり

絶対に買って読むべきです。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.13:
(2pt)

これで大賞はあんまりだ・・・

久々に電撃大賞作品を購入したんですが、期待しすぎたのでしょうか?
テーマは悪くないです。剣に魔法にネット世界に俺TUEEEには食傷気味で、ライトノベルから一時期離れていました。
そして今回毛色が変わった大賞作品に、胸ふくらませて読み進めていたのですが・・・。
おもしろくなかった。

以下ネタバレ
なにもかも唐突すぎる。登場人物の誰ひとり共感できないまま話がすすみ、実はこうだったんです・・・という説明で完。
実はいじめにあってたんです。・・・いじめの描写の説明はあったが、回想なし。色々つらかったが耐えてました、以上。
実は親友だったんです。・・・回想1、2回。色んなことを話し合ったんですよ、って後から言われても読者に説得力なし・・・・。
(例:真面目でやさしい熱血漢の描写に、「彼は真面目でやさしい熱血漢だ」っていうのは単なる説明。言動・描写を積み重ねて輪郭を書き出すのが小説。もっと具体的には、自殺した生徒は才能あふれる少年だったそうだが、回想に出てくる会話にまったくその描写がない。別に難しい言葉を使わなくてもよい。ちょっとした知的な雰囲気でも、神がかり的な洞察力でもなんでもいい。普通の少年同士の会話シーンに「話しているだけで彼の天才性がわかった。才能にひきこまれた」って言われてもはぁ? てなものである)
実は真相はこうだったんです。・・・予想通りなのは全然悪くない。ただやはり説明に終始して緊迫感がない。ヒス姉の心情変化、頼れる姉さんキャラ登場、なによりエンディングが色々唐突でぽかーん。
(自殺した生徒はいじめっ子? いじめられっ子?という小説では「ソロモンの偽証」あたりが有名ですね。私はライトノベルが大好きですし、一般文芸に勝るとも劣らない素晴らしいコンテンツだと思っています。だからこそ「これだからラノベは・・・」なんて言われたくないし、大賞作品ならそう言われないような内容を見せて欲しかった。残念)
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.12:
(4pt)

イジメのコペルニクス的転回は見事

今現在学生の人にはキツい内容かもしれない
心情描写も文章表現もまだまだだが、読んでよかったと思える作品
少なくとも、それらがしっかりしていても読んだ後何も残らないような小説よりは、こういう荒削りながらも光る部分がある作品に出会いたい
同じイジメを扱った作品と比べると、心情描写が弱い分真に迫ってこなかったのが残念だが、そこは斬新な展開でカバーできていたと思う
十分大賞にふさわしい作品だろう
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.11:
(3pt)

ライトノベルの限界。

これはメディアワークス文庫から出版して、もっと内容を掘り下げて書いたほうがよかったと思う。

文章力は洗練されているけど、他の電撃の作家さんでもこのレベルの方はいらっしゃるので、目新しさはなかった。
また序盤に社会問題??的なことを文章に取り入れていたが、それが逆にキャラの底の浅さを感じさせたので、なかったほうがよかった。

一番気になったのは、語り手の切りかえと時間軸がわかりにくかったこと。
移動中に読んでいたせいもあるけど、すぐに内容に入っていけずに、何度も読み返すはめになった。
語り手は菅原拓一人か、一般文芸にあるように、各章ごとに語り手を変えるスタイルのほうがよかった気がした。

問題の「いじめ」「虐待」「モンペ」「人間力テスト」も深さがない。
おそらくラノベ向けに書かれているせいだろうが、どれももっと深く追求すべき問題だと思えたのでリアリティに欠けていた。
今時ネットで調べれば、この手の根深い問題はありふれていると言えるくらい多くヒットするので、テーマを絞ればよかったと思う。

最近は忙しくて話題作しかチェックしてないけど、アニメ化、漫画化を前提とした作品の受賞が目立っていたので、この手の作風を読んだのは久しぶりという意味では新鮮だった。
そして文章から伝わる透き通るような悲哀は、読み手の心を打つには十分な威力を持っていた。

次回作がどうなるか楽しみです。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.10:
(5pt)

文句無し。期待の新人登場と言って間違いは無い

自分は「電撃大賞」を受賞した作品だからとすぐに飛びつくような
思考は持っていませんでした。
「設定が奇抜で自分には合わなそう」、「萌え要素が前面に出ていて手が出しにくい」
などがその理由です。
しかし今回の大賞受賞作は
近年とうって変わって中学校でのイジメという「現実的」なテーマに革命という
「非現実的」なテーマを取り入れた作品であり、どうしても気になって購入。

読了後の感想としては「素晴らしい」の一言に尽きます。
あらすじで示された内容から二転三転と物語は
どんでん返し。しかも「どんでん返し」だけでなく
登場人物の穏やかな面、狂った面の描写が
本当に21歳の新人が書いたものとは信じられないほど上手く、
そしてラスト数ページで明かされるタイトルの意味と
「彼女」のあらゆる意味で心優しい行動には涙が流れました。

綺麗に締めくくられているので2巻は出ないかもしれないですが
この作者のこれからの新作の登場が楽しみで仕方がありません。
中高生は勿論、世代を超えたあらゆる人にどうか読んでほしいです。
素晴らしい作品をありがとうございました。
そして「電撃大賞」受賞、本当におめでとうございます。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623
No.9:
(2pt)

違和感が酷い

読んでる間中ずっと頭には収まりの悪さがつきまといました。
人物にも、設定にも、物語にも。
この手の話は最後にスッキリさせてくれると信じて読んだのですが・・・・。

テーマは良かった。
しかし物語の構成を優先させて人物はちぐはぐ。
文章もまだまだ稚拙。
物語の繋ぎ方も雑。
それより重要な設定である「人間力テスト」は作り込みが浅かったのが致命的かな。
こういう所で手を抜いちゃ説得力が無くなるとおもうのです。

あと独り言の多すぎる語り部(特に姉)にはエロゲかなんかの影響があるんじゃ無いかと感じました。
ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)Amazon書評・レビュー:ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)より
4048657623

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!