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ただ、それだけでよかったんです
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ただ、それだけでよかったんですの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.69pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全68件 21~40 2/4ページ
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私は初めて電撃文庫を読みましたが、いろいろと衝撃を受けました。 結果的に誰が悪者だったのでしょう? 人間力テストを作った校長? それとも昌也くんの歪んだ家族? 昌也くんの友人たち?(特に取り巻き三人組) 拓くんの性格そのもの? でも私はどうしても主犯者?である拓くんが、悪いとは思えません。 だって彼はこれから先ずっと「級友を追い込んで自殺させた悪魔」というレッテルを背をわなければいけないんですよね? あまりにも残酷です。 この作品を拙い文章だという方も多いいと思いますが、私はその率直な心理描写がかえってわかりやすく、人々の心を掴むのではないかと思います。 おもしろいわけでも、後味がいいわけでもないですが、現代の社会を背景としているので、いろいろと考えさせられる作品だと思いました。 | ||||
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身内、関係者がイジメ絡みの死を原因究明しパズルのピースを徐々に埋めていく。 ライトノベルの分野では今までになかったストーリーなのでしょうか? さほど斬新なストーリーではなく、もっと各主要人物の心理描写が書き込めていれば、 より奥行きのある作品となり得たと思います。 他者との繋がりを絶ち(繋がり様もない環境なのですが)、自身の決意、行動を「革命」と称す独りよがりぷりは、 中学生らしい幼稚さで、良く描けていて良かったと思います。 | ||||
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おもしろすぎて一気に読みました。 普段、ライトノベルは読まない方なのですが、作者が大学で社会学を学んだという経歴とタイトルに惹かれて買いました。 この小説は電撃小説大賞〈大賞〉受賞ということに以上に、そのライトノベルっぽくない作風が話題になったようですが、私もその通りだと思います。 物語は、ある中学校のクラスの中心的人気者だった〈少年K〉こと岸谷昌也が自殺した事件の顛末が、事件の真相を探る昌也の大学生の姉・香苗と、昌也を自殺へと追い込んだとされる同級生・菅原拓の二人の視点で展開されます。 提示される謎は、なぜ大人しく目立たない主人公・菅原が人気者の天才中学生・昌也を自殺まで追い込めたのかというシンプルなもの。 しかし作者の松村涼哉さんは、普通のミステリーを書くのではなく、ミステリーの仕掛けを使って、教室という閉鎖空間で起こる〈イジメ〉のポリティカルな構造を浮き彫りにしてゆきます。 これは作品テーマであると同時に、作者の本領である社会学の知識が存分に発揮された、他のミステリー作品ではあまり見かけない、特筆すべき要素です。 イジメを題材にした作品は沢山あっても、勧善懲悪ではなく、日本の教育システムや社会のバブル崩壊後の後期近代化の問題と、リースマンのいうところの〈他人指向〉の問題から切り込む小説は、意外なほどほとんどないからです。 (ここは、他のレビュアーさんの言うように、ある意味、宮台真司さん的といってもいいと思います) 以下、ネタバレを含みます。 この作品で奇妙な印象を放つのは、主人公・菅原拓と、自殺した岸谷昌也の通う中学校で採用されている実験的な教育システム〈人間力テスト〉。 これは、学校が生徒へのアンケートとして、生徒同士の格付けをするものです。生徒は様々な項目からなる質問の回答としてクラスメイトの名前を記入し(例えば、クラスの中で1番優しい人は誰か、など)、学校は票を集計する。 人気者ほどこのランキングが高く、それは生徒へ公表され、生徒達自身の間での立場や人間関係に如実に影響を与えています。 つまり、自分は他人にどう思われているかという『他人からの評価』を表面化されることで、他人の目線をより意識するようになる、というシステムです。 「いや、ありえないでしょ、そのシステム」と思われる方もいるでしょうが、これは、その〈人間力テスト〉制度を導入した校長が語るように、『他者同士で格付けし合う生徒の行為を、ただ顕在化しただけ』ということになります。 つまり、『人間力テスト』という設定を使うことで、社会学でいう〈他者の眼差し〉や〈他人指向〉を描いているということです。 校長の藤本が探偵役の昌也の姉に語るには、「バブル崩壊後に経済が衰退し、後期近代化する日本においては、絶対的な成績優秀=善、と言うような単純な価値基準はなく、超高学歴フリーターが普通の現代で、いま必要とされているのはコミュニケーション力」だと言う事。 これは校長の極論ではありますが(むしろ経済の停滞する近代過渡期以降の資本主義国では、卓越的な才能を持つ人材が必要だからです)、校長の求めるのは、今の社会に適応できる、生き残れる子供たちを育てる事であり、その根幹には、昔自分の生徒を就活難で自殺させたという過去があるためです。 藤本校長は、再び自殺という悲劇が起こらないようにするために、〈人間力テスト〉を実験的に導入した。 しかし、その為に、昌也の自殺という最悪の結末を迎えます。 『悪魔』とまで呼ばれたイジメの加害者の主人公・菅原拓は、コミュニケーションの苦手な、人間力テスト底辺の『自称・クズ』でした。昌也はその反対の天才と呼ばれた人気者。 (ここからは物語の核心に触れます) しかし、事実はマスコミが加熱して報道するような〈悪魔のような、何を考えているかわからない孤立した少年〉がクラスの善良な人気者を追い詰めた、という単純な事件ではなく、本当にイジメられていたのは加害者とされる主人公の方だった。 しかも、物語後半であきらかになる、主人公と昌也は元々は友人同士だったという事実・・・。 昌也の自殺事件は、そのイジメが教育システムにあると理解した主人公が、自分にイジメを行う昌也と、自分を褒めてくれた人間関係の重さに苦しむ初恋の相手を救うために起こした〈革命〉が引き金となり起きた。 しかも、その事実が明らかになる中で、モンスターペアレントの昌也の母の異常性、探偵役だったはずの岸谷香苗の弟への暴力が、『罪と罰』のポルフィーリのような直感を持ち〈最終兵器〉と呼ばれる女性と主人公の手により暴かれてゆく。 少し普通の犯人探し型のミステリーとは違いますね。 私は読みながら、感情や語彙が抑制された文体、犯人探しではなく、事件に至るまでの登場人物の心理を丹念に描くスタイル、散見されるポリフォニー性や容赦ない暴力の描写は、ライトノベル的ではないという以上に、芥川賞作家の中村文則さんの作風を連想しました。 大切な存在の幸福を守るため、倫理的一線を踏み越えて圧倒的な存在(システムと、それを生み出した校長)に挑む主人公の姿は、どことなく、中村さんの傑作『悪と仮面のルール』を思い出させます。 物語のクライマックスで主人公がはじめて読者と昌也の姉に明かす、親友だった岸谷昌也とその仲間から受け続けた逃げ道のないイジメを他人事のように語るシーンは、名シーンだと思います。 そしてその後、再び今歩いている通学路の道を通ることはないだろうという覚悟で、校長を殺害しに向かうシーンの悲しさは強烈でした。 全てを変えるために圧倒的なクズになろうと決め、昌也の自殺に苦しむ自己を乗り越え、サバイバルナイフを手に校長と対峙した主人公は、そのシステムを生み出した神の如き男を殺害できるのか・・・気になる方はぜひ読んでみてください。 読み終えた直後の興奮のあまり、長々と駄文のレビューを書いてしまいましたが、私個人的には、この1年で読んだ小説の中でも傑出しておもしろい傑作だったと感じます。 タイトルの『ただ、それだけでよかったんです』の意味が分かる最後の場面は、あまりに悲しく、『悪と仮面のルール』や『罪と罰』のように感動的でした。 オススメです! | ||||
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表紙で完全にラブコメだと思い購入。だがしかし!読み進めていくと、シリアス満載の事件簿だった!完全にあっけにとられたんですが、読んでいくうちに面白さを感じてきました。シリアスな話題なので、あれやこれやと批判する人はいると思いますが、良点のほうが断然多いと思いました。イジメはデリケートな話題なので、それを書き切った松村さんはすごい!と思いました。 | ||||
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ここまで仕組まれ、考え込まれたミステリーを読んだのは初めてだ。 全てが予想を裏切ってきた。 狂おしいほどに完璧な物語。 感動してしまった。 あと、1つ付け加えるなら、菅原は、球磨川禊の一歩手前までいき、球磨川禊にならなかったような人物だった。 | ||||
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約1年ぶりに小説で、泣きました。 イジメをしていたと思わせておいて実は,、、、、 これ以上は、ご自分で確認してください。 自分は、とても好きです。 | ||||
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実はこうだった、という1文にかさ増しをして1冊にした印象。 ネタ自体はそこそこなんですが、展開や登場人物に魅力がないので、「ふーん」で終わりました。 | ||||
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重いですが、多くの人が読むべきものだと思います。 とても心に響く作品でした。 | ||||
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30代女です。 普段から物事についての二面性を考える性分なのですが、この作品はそれが極端に表されていて考え方が広がりました。読まないジャンルの内容だったので、皆さんがどういう感想を持ったのか気になって、こちらを拝見しましたが、結局思ったのことは以下の通りです。 評価なんて好みだと思っています。 ・一気に読んでしまった ・9/10発売の次回作も読みたい ・アニメでも映画でもいいので映像で見たいと思った と思っている事実が自分にはあったので☆5です。 | ||||
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大筋の謎については納得のいく答えが用意されていました。 一般小説をラノベレーベルで売っているだけという印象ですが、まあそれは置いといて。 ラスト数十ページ、謎が明かされた後の「ソーさん」のくだりは蛇足としか言いようがありません。 リアリティがないし、納得もできません。 いじめの謎だけ解いてスパッと終わっていれば☆4でした。 あと、「人間力テスト」はこの作品の唯一のファンタジー要素ですが、別にこの設定がなくても同じ物語を作ることはできたと思います。 | ||||
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リアルな題材にも関わらず設定や物語、登場人物の行動や感情にリアリティーがない。また表現力や語彙力があまりにも低く登場人物を描写しきれていない。主人公の惨めさが何度となく描写されていたが安っぽく、それならば『人間失格』のようにもっと徹底すべき。 | ||||
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すーっと気が付いたら、最後まで読んでいて、 最後に思ったのは、そんなことのために。 と、いうのが自分の感想でした。 言葉1つ1つにドンドン惹かれていく。 怖いくらい次が知りたいとどんどん読んでいきました。 | ||||
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作者が可哀想。 ・ライトノベル大賞受賞作 ・鎌地和馬大推薦!!! ・最初の一文字目から仕掛けは始まっている ・みんな同じ顔をした描き分けも糞も無いイラスト 編集は何か作者に恨みでもあるのか?売れてるけど売る気が無いとしか思えない。いや売れてるなら俺の感想がおかしいのか でもとにかく、上記の素敵すぎるセールスポイントのおかげで手を出す気が微塵も起きませんでした。 発売から5ヶ月も経過し ふとクラスメイトが自殺する小説読みたいなと思ったおかげでようやく読んだ。面白かった。外装で敬遠していた自分を恥じてはいるが、これは編集の責も大きすぎる 客観的に見るなら満点ではなく、内容に悪い点もあるとは思う あらすじについてはネタバレレベルで他レビュー様方が紹介してらっしゃるから書かないけど 物語の真相については、後付けとは違うが(伏線無さすぎるうえに、その時点での一人称でも微塵も触れないので)後付け言われても仕方ないと思うし キャラが中学生とはいえちょっと語りが中二臭すぎるところもあるし 全体的な設定とかもちょっと薄っぺらいよなーと感じもする。 でもすごい好き 肉まんが中華スープになる話とか、本筋と何の関係もない文章が、ピッタリと俺の感性に合いまくっている とてつもなく好きなんだ ちょっと卑怯じゃねえかなと感じても、それでも明かされていく事実にはワクワクしたし、さっきも言ったけど文章が本当に俺好みすぎて読むの楽しかったし、主人公の性格も共感できるとこ多々あったし、何より物語が優しい。 個人的にはもうちょい微塵の救いもなく絶望に沈まされる話の方がより共感はできるのだけれど この話は、ご都合主義と言われてもおかしくないくらいに優しい救いがちゃんとある その甘さに吐き気がするし、同時にすごく癒される。こないだ読んだ他作品で「物語は願いだ」という一文があったけれど、そういう綺麗事やっぱり嫌いじゃないんだよなぁ。 | ||||
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電撃大賞ということで読み始めたものの、途中何度投げ出したくなったことか。言葉の選び方や演劇のようなセリフがまさに中2病で、読んでいる方まで恥ずかしくて恥ずかしくて……。それでも投げ出さなかったのは、大賞を取るだけの何かがきっとあるはずという思いだけ、3分の2を過ぎるころには、ああ電撃大賞もここまで落ちたかと諦めかけていました。 が、残り3分の1が熱かった。拙さの中にも、どうしようもなくこれを伝えたい!という思いが溢れ出し、一気に読まされてしまいました。 おそらく作者はまだ高校生くらいかと思われるので、今後に期待します。 | ||||
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何と言うか、「ミステリーの謎」と「後出し設定」は、根本的に違うんですよね。確かに読者を引き付けるストーリーやどんでん返しが作れるのかもしれませんが、そのほとんどがただの後出し設定です。しかも、ちゃんと伏線を張ったうえでやるのならいいんですけど、唐突なんですよね。だから読んでいて物語がチグハグに感じてしまう。 まあ、流行りの『異世界ファンタジー(笑)』ではなく、こういう内容の小説がラノベの大賞に選ばれたのは意義のあることだと思いますが、もっと編集が付いた時点でページ数を増やして、伏線をきちんと張った方が良かったように思います。 | ||||
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ここ数年、電撃大賞の受賞作は出来が今一つで、買って読んでも途中で投げるか、「はあ」と溜め息ついて、本棚の奥の奥にねじ込んでいました。 今作はタイトルから見ても、いわゆるファンタジーではなく、現実社会を描いているのに期待がありました。この世の真実を語るには、現実社会でよりも、 ファンタジー世界で描く方がずっと楽だからです。きっと読みごたえのあるものだが理だろう。期待しました。 しかし、読了後の感想は「残念」の二文字でした。物語は主人公と、主人公が自殺に追い込んだらしい少年の姉の視線を交互に移動しながら進んでいきますが、ほとんどがいわゆる「後だしじゃんけん」的で、粋な伏線がありませんでした。「粋な」というのは、読んでから「ああ、なるほど!」と膝を打つような文章の妙技です。それがこの物語では少し未熟な感がしました。(意地悪に言えば、これは減点対象にはならなかったのでしょうかね?) (ここからネタばらしあり) あまりひねらず、もっとストレートに物語を描くべきだったと思います。学園を舞台にした推理物、としてはあまりにもお粗末でした。私は序盤で物語のキーマンである「ソーさん」の正体が大体掴めていて、ラストやっぱりそうでした、とがっかりしてしまいました。何よりも不可解だったのが「人間テスト」と呼ばれるもの。劇中で名前は何回も出ますが、そのもののシーンが描かれることが無いので、主人公達の行動、言葉からしか、この不可解な試験を想像するしかなかった。この物語の背骨として、この「人間テスト」はきちんと説明しておくべきだったと思います。それにこんなテストに対して、普通の子供達なら要領よくクラス全員結託して、主席と落ちこぼれを作らず、平均的などんぐりになろうと画策するだろうと思ってましたが、どうも今の現代っ子はそんな発想も出来ないようです。ここら辺でクラスの数人(主人公達)を除いた全員がみんなアホに思えて、読む気をぐっとなくしてしまいました。主人公は成績も悪く、体育も不得意で、何も取り絵が無い、なんか私の中学時代みたいな子ですが、こういう子なら、なおさら要領よくテストを潜り抜けることを考えませんか?主人公も、その盟友も、ヒロイン(らしい)子も、そしてもう一人の主人公であるお姉さんも、みんな拗けていて、結局物語の中で一番まともだったのは、このお姉さんの友人でした、ってオチも何か釈然としません。 学校の生徒全員がこの「人間テスト」に反感していて、どうにかこれを止めさせるという話にしたかったのなら、主人公一人にその役を背負わせるのでなく、味方も何人かいるべきでした。主人公を除いて、誰もこんなテストにストレスを感じない子供ばかりという図式の方がずっと不気味ですし、何より不自然です。それゆえに、主人公の小さな革命は、そのままマッチに点いた火のように、あっけなく消されてしまいます。敗北感を背負ったままで、あまりにも無残です。だから今、この本は私の部屋の本棚の、一番奥の奥にねじ込まれています。 こんな救いようのない暗い話は、大賞ではなく銀賞くらいが妥当だったのでは、と思うのですが? | ||||
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この本は結構前に買ってはあったのですが、重そうな内容なのでしばらく放置しておきました。 それで暇があったので、ふと手に取ってみました。 読み始めると止まらなくなりました。 内容は、二人の語り手による話が交互に繰り返されます。 一人がいわば探偵役で一人が犯人役。 最後はどんでん返しの結末。革命ってそういう意味だったのね、と妙に感心しました。 いわゆるライトノベルのカテゴリーとは少しずれるし、 続編が出ることもないのかなと思いますが、 こういう小説を大賞にするのは、なかなかい選択だと思います。 | ||||
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この作品が大賞だと知った時、「あれ?アスキーメディアワークス文庫ではないのか?」と思ったが、あらすじをよく読んでみれば得心がいった。 つまり端的に言って、期待したのだ。ここ三年くらいの電撃大賞作は首を傾げるぐらいのものばかりだったので、なおのこと期待してしまったのだ。 結論から言って、期待し過ぎた。 まずこの作品の根底にある『人間力テスト』なる代物、これが余りにも作り込みが甘い。客観的に考えて、よくこんな穴だらけのシステムを多感な時期たる中学生の学校に採用できたものだと思った。 大学が今までのセンター試験を廃止して人物評価なるものを重視する、という方針が出て記憶に新しいが、まさに人間力テストはそれを真似たようなものだろう。 多面的な評価、社会人として生きていく術を身につける、聞こえのいいお題目である。コミュニケーション能力を向上させれば社会でやっていける、何故なら社会がそういう人間を求めているから、というのが立案者たる校長の言である。 これ、冒頭での発言なのだが正直に言って虫酸が走った。 教え子の女の子が社交スキルに欠けたから就活に落ちまくって、それで鬱になって自殺した。 学力だけではやっていけない、詰め込み教育だけではコミュニケーション能力は育たない、それを分かっていながら卒業させて見殺しにする。故にそれを防ぐために人間力なんて曖昧なものを数値化して、序列化して、生徒間に公表こそしないものの本人には『自分がこの程度の価値しかない人間』だと思い込ませる。 問題の解決はおろか解消にすらなっていない、いやそもそもこの問題の解決自体が一個人の力でどうにかなるものではないし。というか校長、あなたのやり方は生徒の自殺を早めているようにしか思えないが。 だってあなたのそれは「お前なんてこの程度の人間なんだよ」と無慈悲に突きつけているだけなのだから。しかも大人サイドからの評価ではなく、同じ子供サイドからのそれなのだから尚更タチが悪い。これが大人からの評価であれば「けっ、先生が何か言ってやんの」で済む話なのだが。 と言ってもだ、もし作者が校長を吐き気を催す邪悪な悪役のつもりで描いたのなら、おめでとう。作者の目論見は成功した、何故なら私は長文を書く程に苛ついているから。 ともあれ、校長の話もそうだが、人間力テストと言うわりにはテストシーンは出てこない。というか基本的にこの物語は主人公にしろ自殺した生徒の姉にしろ、どちらの視点でも伝聞ばかりなのだ。今こういうことが起こっています、と伝えるためのシーンがあまりに少ない。だから実感を伴わない、それは人物表現にまで及んでいる。 自殺した生徒をことあるごとに天才だのなんの言っているが、ならばそれを読者に納得させるような言動を場面として見せてほしい。いくら学力が中学生離れしてるとか、弱小チームを全国まで導いたとか、そんな結果だけ書かれても説得力がない。 これはヒロインに関してもそうで、人間力上位になる所以が見えてこない。ただ可愛いければ投票されるものなのか?主人公に話しかけることができた?だがそれは日陰者に話しかける勇気であって、コミュニケーション能力と言えるのか?もっと主人公以外の人と話しているシーンを見せてほしかった。 このように浅い人物描写や設定の甘さが相まって、リアリティを感じない。だから突き放したような読み方をしてしまう。後半のネタばらしのために敢えて断片的なシーンばかりを描写したのだろうが、そのせいで誰が死のうが傷つこうがどうでもいいと思えてしまう。キャラのバックボーンを伝聞ではなく、ワンシーンとして掘り下げてくれればまだ愛着が持てたのだが。 あと、展開が唐突過ぎる。後半、真実が一気に開示されるのだが、それまでの地の文で重要な事実のヒントが一切書かれていないので予想しようがない。伏線なしでどう推理しろと、これ推理小説読み慣れてないとまず分からんだろ。 実はこうだった、本当はこうだった、ばかりである意味意外な真実の連続である。そして極めつけはラスト数十ページ、またもや真実が明かされるのだがもはや後出しジャンケンのようだ。なんというか、作者の読ませたいように読めれば楽しめるみたいな感じ。それ以外は「いやそれ流石に無理があるだろう」になる筈。 以上ここまで批判ばかりだったが、それでは何故評価を☆1ではなく、☆2にするのか。 それは思春期の、特に中学生に焦点を当てているからだ。これが高校生なら私は間違いなく評価を☆1にしていただろう。 他の方のレビューで、人間力テストなんてものを鵜呑みにしてその順位を上げるため、維持するために異常なまでに気を張ったり遣ったりする彼彼女らの心理が理解し難いという意見があった。 そう、確かにそうなのだ。だが、それは大人や高校生ひいては青春を諦めているような、そんな冷めた視点で世界を見ている主人公だからこそ分かることなのだ。まあだからこそ、主人公は革命実行に踏み切れたのだろうが。 よく、子供にとって親は神様同然だと言われる。そんなこと少し考えればすぐ違うと分かる、いや見える筈なのだ。だが分からない、何故なら視野狭窄に陥っているから。 中学生ぐらいの思春期の子供にとっての世界とは、家と学校の二つしかないのだ。だから友好関係に異常に気を配るし、親に認められたくて、友達に必要とされたくて過剰に努力したり、空回りしてしまったり、墓穴を掘ったりする。 中学生にとって学校とは呉越同舟の監獄であり、あまつさえ虐めなんてものがあれば教室は地獄と化す。いや、人によっては高校すら似たようなものに感じてしまうだろう。 確かに、順位が高かろうが低かろうが大した意味はないのだ。ご褒美が貰えるわけでもなければ、ペナルティを食らうわけでもないのだから。 だが、それでも、たとえ自分の順位が他人にバレなくても、順位というただの数字には他人の気持ちがまとわりついているのだ。 こいつは私より上、あいつは俺より下、選民思想や功利主義が順位となって示される。学校ひいてはクラスとは一つの共同体だ、もし自分の順位が低かったらその中で排斥される、ひどければ『いないもの』として扱われるのだ。これではもはや承認欲求や所属欲求をズタボロに引き裂かれるようなもので、目には見えない心から夥しい量の血が溢れることだろう。 昨今、ネットやSNSで代替的にその二つの欲求を満たすこともできるだろう。だがそれはあくまでネットを介してであって、知り合った相手が同じ学校でもない限り毎日は会えないのだ。そうなれば、毎日顔を合わせるのは自分のことを見下しているクラスメイト、或いは自分を蹴落とそうとするクラスメイトなのだ。 未来に先回りして点と点をつなげることはできない。君たちにできるのは過去を振り返ってつなげることだけなんだ。 私がこの作品を読んでいる時、脳裏に過った言葉である。言わずもがな、スティーブ・ジョブズのスピーチだ。 過去は振り返ることしかできず、未来は先読みできない。つまり、今を生きるしかない。人間力テストで上位だろうが、下位だろうが、学校が監獄だろうが、教室が地獄だろうが、生きるしかないのだ。これを脱するには不登校になるか、不幸な病死や事故死として果てるか、自殺するしかない。 今時、中退で生きていける世の中でもないのに。いくら家でストレスを発散しようが、また登校日はやってくるのだから。 中学生の世界は途徹もなく狭い。家と学校だけで、外国で紛争が続こうがテロが勃発しようが、クラスの空気や雰囲気がぶっ壊れるわけではない。 人間は社会的な生き物で主観でしか世界を見れず、どれだけ足掻いたところで自分だけでは『自己』を評価できない。 だから徒党を組む、だから党員からの評価が気になる。 クラスメイトからの評価=自分の価値、が成り立ってしまうのだ、残酷なことに。 0才から14才までの、減点方式で他人との同調性が求められる狭い世界の中でたった十四年しか生きていない彼彼女たちに、『他人のことなんて一々気にしてたら埒が明かないぞ』『一人でも生きていけるさ気楽にいこうぜ』『自尊心がなんだ、自己愛がなんだ、他人が必要としてくれないなら自己肯定でその二つぐらい満たせばいい、それができない奴を蔑みながらさ』なんて、それで割り切れなんていくら何でも酷ではないだろうか? この作品のストーリーは好きだ、完璧だと思われた計画が上手くいかなかった時の空回りするところも含めて。 そして、結末はハッピーでもあり、バッドでもある。 どちらの意味にも取れて、中学生を題材にしていたからこそ、この作品は魅力的なのだ。この物語を通して思ったことは、愛とは万能ではなく匙加減が重要だということ。けれど、やはり彼の死についてもっと人間力テストを絡めてほしったところ。 そして少なくとも私は、ハッピーエンドだと思っている。 この物語の結末は伝聞ではなく、実際に読んで知ってほしい。散々批判したが、この作品には朧気ではなく、確固とした情けなくて惨めでどうしようもない読後感があったから。 駄文、失礼しました。 | ||||
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’キモオタコミュ障ボッチ童貞ゴミクズ野郎’ を自覚する主人公が、スクールカースト的に最上位にいる文武両道に秀でたクラスメイトの男子生徒を、名指しの遺書を残した自殺に追い込む、という一見奇妙な事態が物語の最初に提示される。 その後、自殺した男子生徒の姉が真実を探る過程と、彼を自殺を招いた主人公の独白とが交互に語られて、この事態の裏側にある事実が明らかになる、というプロットである。 これは、絶望的な状況下でいじめを受ける中学生の、捨て身の反撃の物語であり、細かい未完成な点は多々あるものの、読者には隠された謎を知りたいと思わせることに成功しており、読み進むにつれて先を読みたいと思わせるような魅力的な作品に仕上がっていると思う。 ミステリとして読んでも、骨格の優れた作品と言ってよいのではないか。 | ||||
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あらすじと表紙に惹かれて購入しました! ストーリー自体は嫌いじゃなかったです。 人を選ぶ作品ではあると思いますが… ただ、登場人物が…まあ、人間臭いですね(笑) 心が綺麗な人はあまりいないです。 唯一まともな人だったのは紗世ぐらいでしょうか… ストーリー自体は引っかけもあり考えされられ、引き込まれる物だったと思います。 ただ、もう少し長くても良かったと思います。 駆け足で進んだ感がありました。 人間力テストの設定はもうちょい深くしても良かったと思います。 全ての元凶なわけですし。 登場人物も深くやって欲しかったです。 ハッピーエンドとは言えませんし、スッキリはしないですが、ブラックなストーリーで面白かったです。 個人的意見ですが、自殺した昌はイケメンとありますが、拓の方がイラストの限りイケメンに見えますね(笑) 拓がとことん人間臭くて好きでした! | ||||
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