夏と冬の奏鳴曲

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夏と冬の奏鳴曲の評価:

3.63/5点 レビュー 64件。 B ランク

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平均点3.63pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全76件 41〜60 3/4ページ
No.36
(5pt)

後にも先にも自分の中のベスト

正直、人におすすめできません。
一般的なミステリ好きはいろんな謎がでても、最後には明確な回答があるというのがお気に入りです。
ただ、そういうのに飽きちゃった。そんなに探偵が万能なら、最初から犯人を指摘して未然に防げないの?
なんて一度でも考えたことがあれば、もしかしたら楽しめるかもしれません。
少なくても、人にすすめられて読んでみて、わけわからん?どういうこと?説明して?とかはすすめた人に言わないという礼儀は持ってほしいですw
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス)より
4061817000
No.35
(5pt)

後にも先にも自分の中のベスト

正直、人におすすめできません。
一般的なミステリ好きはいろんな謎がでても、最後には明確な回答があるというのがお気に入りです。
ただ、そういうのに飽きちゃった。そんなに探偵が万能なら、最初から犯人を指摘して未然に防げないの?
なんて一度でも考えたことがあれば、もしかしたら楽しめるかもしれません。
少なくても、人にすすめられて読んでみて、わけわからん?どういうこと?説明して?とかはすすめた人に言わないという礼儀は持ってほしいですw
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)より
4062638916
No.34
(5pt)

人生とは崩壊だ。

うゆーとうゆう。
黒い服と白い服。
最後に明かされる編集長の秘密。
思えば仕掛け自体はあからさまで明瞭だった。はじめて読むときは真夏に降る雪のように、
それどころではない圧倒的事態の連続の前にただただ打ちのめされるしかないにしても。

自分が好きだと思いそのために殺人までして守ろうとしたものが、
黒だったのか白だったのか。
京都の川べりで語り合った存在がどちらかわからなくなった時に主人公を襲った衝撃を思うと。

このシリーズの最後に何が待ち受けているかも含めて、これほど哀切でこれほど暗澹とした作品は二度とないであろう。
青春の一冊。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)より
4062638916
No.33
(5pt)

人生とは崩壊だ。

うゆーとうゆう。
黒い服と白い服。
最後に明かされる編集長の秘密。
思えば仕掛け自体はあからさまで明瞭だった。はじめて読むときは真夏に降る雪のように、
それどころではない圧倒的事態の連続の前にただただ打ちのめされるしかないにしても。

自分が好きだと思いそのために殺人までして守ろうとしたものが、
黒だったのか白だったのか。
京都の川べりで語り合った存在がどちらかわからなくなった時に主人公を襲った衝撃を思うと。

このシリーズの最後に何が待ち受けているかも含めて、これほど哀切でこれほど暗澹とした作品は二度とないであろう。
青春の一冊。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス)より
4061817000
No.32
(5pt)

戦場に持って行きたい本

1993年、同じ月に出版された「聖アウスラ修道院の惨劇」と「竹馬男の犯罪」、そして「夏と冬の奏鳴曲」の3冊を持って旅行に出かけた。今から思えば荷物が異様に重かったはずである。
「聖アウスラ修道院の惨劇」、「竹馬男の犯罪」を楽しく読み、最後に「夏と冬の奏鳴曲」という順番。
他の2冊に比べ、圧倒的に小説世界への入り込みが違った。
「謎を知りたい!結末を知りたい!」
という欲求はすさまじく、帰りの列車の中でついに読了。ところが・・・
本を投げつけようと思ったことは後にも先にもあのときだけ。特急列車の通路にこれ見よがしに捨てていこうかと思ったほどである。
謎がスッキリと解明されていない。ただこれだけだったのだが、あまりにも面白すぎて・・・爆発してしまったのだ。
当然それまでも酷い小説は何冊も読んできたが、こんなに途中まで面白いのに最後で裏切られたのは初めてだった。
旅行から帰ってきて読書仲間に延々とこの本の悪口を言っていたのを覚えている。

あれから18年の月日がたち、その間も麻耶雄嵩のほかの作品はしっかりチェックしてきて思うのは
「何であの作品だけ酷いのか?他はこんなにもおもしろいのに・・・」
ということ。
「もしかして自分は錯覚してる?」

そして再び手に取る。
「・・・(唖然)」

若くて青かった自分を思い浮かべる。あの頃の自分は作者の仕掛けが全然見えていなかったのだ。
読者に「読み解く」ことを強いる作品って・・・、そして、解答はは無い。

まるで作中の登場人物である。20年ぶりに島を訪れる人たちと18年ぶりに奇書を手に取る自分。鳥肌。

「黒死館殺人事件」を戦場に持っていった話は有名だが、私はこれを持って行くだろう。
夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫)より
406524966X
No.31
(5pt)

戦場に持って行きたい本

1993年、同じ月に出版された「聖アウスラ修道院の惨劇」と「竹馬男の犯罪」、そして「夏と冬の奏鳴曲」の3冊を持って旅行に出かけた。今から思えば荷物が異様に重かったはずである。
「聖アウスラ修道院の惨劇」、「竹馬男の犯罪」を楽しく読み、最後に「夏と冬の奏鳴曲」という順番。
他の2冊に比べ、圧倒的に小説世界への入り込みが違った。
「謎を知りたい!結末を知りたい!」
という欲求はすさまじく、帰りの列車の中でついに読了。ところが・・・
本を投げつけようと思ったことは後にも先にもあのときだけ。特急列車の通路にこれ見よがしに捨てていこうかと思ったほどである。
謎がスッキリと解明されていない。ただこれだけだったのだが、あまりにも面白すぎて・・・爆発してしまったのだ。
当然それまでも酷い小説は何冊も読んできたが、こんなに途中まで面白いのに最後で裏切られたのは初めてだった。
旅行から帰ってきて読書仲間に延々とこの本の悪口を言っていたのを覚えている。

あれから18年の月日がたち、その間も麻耶雄嵩のほかの作品はしっかりチェックしてきて思うのは
「何であの作品だけ酷いのか?他はこんなにもおもしろいのに・・・」
ということ。
「もしかして自分は錯覚してる?」

そして再び手に取る。
「・・・(唖然)」

若くて青かった自分を思い浮かべる。あの頃の自分は作者の仕掛けが全然見えていなかったのだ。
読者に「読み解く」ことを強いる作品って・・・、そして、解答はは無い。

まるで作中の登場人物である。20年ぶりに島を訪れる人たちと18年ぶりに奇書を手に取る自分。鳥肌。

「黒死館殺人事件」を戦場に持っていった話は有名だが、私はこれを持って行くだろう。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス)より
4061817000
No.30
(5pt)

戦場に持って行きたい本

1993年、同じ月に出版された「聖アウスラ修道院の惨劇」と「竹馬男の犯罪」、そして「夏と冬の奏鳴曲」の3冊を持って旅行に出かけた。今から思えば荷物が異様に重かったはずである。
「聖アウスラ修道院の惨劇」、「竹馬男の犯罪」を楽しく読み、最後に「夏と冬の奏鳴曲」という順番。
他の2冊に比べ、圧倒的に小説世界への入り込みが違った。
「謎を知りたい!結末を知りたい!」
という欲求はすさまじく、帰りの列車の中でついに読了。ところが・・・
本を投げつけようと思ったことは後にも先にもあのときだけ。特急列車の通路にこれ見よがしに捨てていこうかと思ったほどである。
謎がスッキリと解明されていない。ただこれだけだったのだが、あまりにも面白すぎて・・・爆発してしまったのだ。
当然それまでも酷い小説は何冊も読んできたが、こんなに途中まで面白いのに最後で裏切られたのは初めてだった。
旅行から帰ってきて読書仲間に延々とこの本の悪口を言っていたのを覚えている。

あれから18年の月日がたち、その間も麻耶雄嵩のほかの作品はしっかりチェックしてきて思うのは
「何であの作品だけ酷いのか?他はこんなにもおもしろいのに・・・」
ということ。
「もしかして自分は錯覚してる?」

そして再び手に取る。
「・・・(唖然)」

若くて青かった自分を思い浮かべる。あの頃の自分は作者の仕掛けが全然見えていなかったのだ。
読者に「読み解く」ことを強いる作品って・・・、そして、解答はは無い。

まるで作中の登場人物である。20年ぶりに島を訪れる人たちと18年ぶりに奇書を手に取る自分。鳥肌。

「黒死館殺人事件」を戦場に持っていった話は有名だが、私はこれを持って行くだろう。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)より
4062638916
No.29
(5pt)

「自分探し時代」の記念碑的作品

「新・新本格もどき」を読んだので、久しぶりに再読したくなりました。やはり傑作です。

絶海の孤島に建てられた奇妙な館での連続殺人、美少女に迫る危機、20世紀美術と音楽を題材にしたペダントリイ。本格推理ファンを喜ばす要素をふんだんに用いながら、できあがったものは本格推理とは似ても似つかぬもの。それ自体が立体派や十二音音楽を思わせる構成です。

細部に相当無理があるのは事実だと思いますが、一つ一つは仄めかし的ながら伏線がかなり丁寧に引いてあるので、注意深く読むと事件の全体像だけはつかめるようにできています。いくつかのヒントを辿って読解して行くうちに、ポストモダンな言説が命を失っていなかった当時、全てが相対化されそうになっていた中で、「神」でも「自己同一性」でもいいのですが、何か絶対的なものを得ようとする登場人物達の必死な営為が浮かび上がってきます。それも吐き気を催すようなやり方で。このようなリドル・ストーリー的な要素がこの作品の最大の魅力ですね。

自己同一性がどうのこうのとのんびりしたことを言っていられなくなった現在、これだけの厚さの文字の迷宮を楽しむのはなかなか贅沢な時間の使い方ですね。
夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫)より
406524966X
No.28
(5pt)

「自分探し時代」の記念碑的作品

「新・新本格もどき」を読んだので、久しぶりに再読したくなりました。やはり傑作です。絶海の孤島に建てられた奇妙な館での連続殺人、美少女に迫る危機、20世紀美術と音楽を題材にしたペダントリイ。本格推理ファンを喜ばす要素をふんだんに用いながら、できあがったものは本格推理とは似ても似つかぬもの。それ自体が立体派や十二音音楽を思わせる構成です。細部に相当無理があるのは事実だと思いますが、一つ一つは仄めかし的ながら伏線がかなり丁寧に引いてあるので、注意深く読むと事件の全体像だけはつかめるようにできています。いくつかのヒントを辿って読解して行くうちに、ポストモダンな言説が命を失っていなかった当時、全てが相対化されそうになっていた中で、「神」でも「自己同一性」でもいいのですが、何か絶対的なものを得ようとする登場人物達の必死な営為が浮かび上がってきます。それも吐き気を催すようなやり方で。このようなリドル・ストーリー的な要素がこの作品の最大の魅力ですね。自己同一性がどうのこうのとのんびりしたことを言っていられなくなった現在、これだけの厚さの文字の迷宮を楽しむのはなかなか贅沢な時間の使い方ですね。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス)より
4061817000
No.27
(5pt)

「自分探し時代」の記念碑的作品

「新・新本格もどき」を読んだので、久しぶりに再読したくなりました。やはり傑作です。絶海の孤島に建てられた奇妙な館での連続殺人、美少女に迫る危機、20世紀美術と音楽を題材にしたペダントリイ。本格推理ファンを喜ばす要素をふんだんに用いながら、できあがったものは本格推理とは似ても似つかぬもの。それ自体が立体派や十二音音楽を思わせる構成です。細部に相当無理があるのは事実だと思いますが、一つ一つは仄めかし的ながら伏線がかなり丁寧に引いてあるので、注意深く読むと事件の全体像だけはつかめるようにできています。いくつかのヒントを辿って読解して行くうちに、ポストモダンな言説が命を失っていなかった当時、全てが相対化されそうになっていた中で、「神」でも「自己同一性」でもいいのですが、何か絶対的なものを得ようとする登場人物達の必死な営為が浮かび上がってきます。それも吐き気を催すようなやり方で。このようなリドル・ストーリー的な要素がこの作品の最大の魅力ですね。自己同一性がどうのこうのとのんびりしたことを言っていられなくなった現在、これだけの厚さの文字の迷宮を楽しむのはなかなか贅沢な時間の使い方ですね。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)より
4062638916
No.26
(5pt)

現実を演じる論理

キュビズムの目的は絶対性であったが、その論理には致命的な問題が存在する。故に、キュビズムを三次元に敷衍するという方式でも、現実には絶対など得られないのであるが、大事なのはその絶対性の消失の仕方だ。絶対が二つあることにより絶対が相対化されてしまう。ではそれを三次元の現実世界で考えるとどうなるか?そもそも烏有にとっての絶対とは何なのか、それを考えて行けば至極まっとうな結末なのである。
単にわけのわからないストーリーを展開させる不条理劇でもなければ、論理に縛られ飛び立てない本格ミステリともやはり一線を画す。

麻耶の作品というのは、極めて論理的で全て一直線に理解できる。しかしそれでいてその整然とした厳格な論理が自縄自縛とならず、非常にドラマティックに動こうとするのが魅力だろう。
能において大事なことはまず演者が人間でなく、人形のような「物」になることが求められるが、かといってそれがロボットのように動いたのではおもしろくない。その人形がまるで人間のように動くところにおもしろさがあるのである。麻耶の作品もまったく同じだ。神様ゲーム、鴉、瑠璃鳥などの作品にも見られるように、非現実的ではあるがその中では整合性がとれた独創的かつ非情な論理で世界を構築し、それがまるで現実のものでありたがるように行動するところに興がある。そしてこの夏と冬の奏鳴曲はそうした作風が最もよく現れた芸術作品と言える。
このように論理で世界を構築するからこそ、そこに存在するドラマが、本来水と油の関係であるはずのミステリ性と融合するのである。単に人間ドラマを充実させたミステリではなく、この世界の論理と人間ドラマが切っても切り離せない絶妙の和音を響かせている。

取り敢えずこの作品を読む時は、中盤のややこしいキュビズムの論理から目を背けてはならない。そこさえおさえれば謎はすべて氷解する。烏有にとっての絶対が如何にして相対化していくか、また相対化した絶対を再び絶対化するためには何が起こることが必要なのか(それは皮肉にも作中のある人物の論理に従うことになる)、そうした点がすべて繋がり、他の小説とは比較にならない圧倒的なカタルシスを得られるはずだ。

ただメルカトルの最後の一言と「春と秋の奏鳴曲」については痾の内容をふまえるに一種のコラージュと見るべきなのだろうが、その点については論理的ではあるがドラマティックとは言えず、蛇足である気はする。
夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫)より
406524966X
No.25
(5pt)

現実を演じる論理

キュビズムの目的は絶対性であったが、その論理には致命的な問題が存在する。故に、キュビズムを三次元に敷衍するという方式でも、現実には絶対など得られないのであるが、大事なのはその絶対性の消失の仕方だ。絶対が二つあることにより絶対が相対化されてしまう。ではそれを三次元の現実世界で考えるとどうなるか?そもそも烏有にとっての絶対とは何なのか、それを考えて行けば至極まっとうな結末なのである。
単にわけのわからないストーリーを展開させる不条理劇でもなければ、論理に縛られ飛び立てない本格ミステリともやはり一線を画す。
麻耶の作品というのは、極めて論理的で全て一直線に理解できる。しかしそれでいてその整然とした厳格な論理が自縄自縛とならず、非常にドラマティックに動こうとするのが魅力だろう。
能において大事なことはまず演者が人間でなく、人形のような「物」になることが求められるが、かといってそれがロボットのように動いたのではおもしろくない。その人形がまるで人間のように動くところにおもしろさがあるのである。麻耶の作品もまったく同じだ。神様ゲーム、鴉、瑠璃鳥などの作品にも見られるように、非現実的ではあるがその中では整合性がとれた独創的かつ非情な論理で世界を構築し、それがまるで現実のものでありたがるように行動するところに興がある。そしてこの夏と冬の奏鳴曲はそうした作風が最もよく現れた芸術作品と言える。
このように論理で世界を構築するからこそ、そこに存在するドラマが、本来水と油の関係であるはずのミステリ性と融合するのである。単に人間ドラマを充実させたミステリではなく、この世界の論理と人間ドラマが切っても切り離せない絶妙の和音を響かせている。
取り敢えずこの作品を読む時は、中盤のややこしいキュビズムの論理から目を背けてはならない。そこさえおさえれば謎はすべて氷解する。烏有にとっての絶対が如何にして相対化していくか、また相対化した絶対を再び絶対化するためには何が起こることが必要なのか(それは皮肉にも作中のある人物の論理に従うことになる)、そうした点がすべて繋がり、他の小説とは比較にならない圧倒的なカタルシスを得られるはずだ。
ただメルカトルの最後の一言と「春と秋の奏鳴曲」については痾の内容をふまえるに一種のコラージュと見るべきなのだろうが、その点については論理的ではあるがドラマティックとは言えず、蛇足である気はする。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス)より
4061817000
No.24
(5pt)

現実を演じる論理

キュビズムの目的は絶対性であったが、その論理には致命的な問題が存在する。故に、キュビズムを三次元に敷衍するという方式でも、現実には絶対など得られないのであるが、大事なのはその絶対性の消失の仕方だ。絶対が二つあることにより絶対が相対化されてしまう。ではそれを三次元の現実世界で考えるとどうなるか?そもそも烏有にとっての絶対とは何なのか、それを考えて行けば至極まっとうな結末なのである。
単にわけのわからないストーリーを展開させる不条理劇でもなければ、論理に縛られ飛び立てない本格ミステリともやはり一線を画す。
麻耶の作品というのは、極めて論理的で全て一直線に理解できる。しかしそれでいてその整然とした厳格な論理が自縄自縛とならず、非常にドラマティックに動こうとするのが魅力だろう。
能において大事なことはまず演者が人間でなく、人形のような「物」になることが求められるが、かといってそれがロボットのように動いたのではおもしろくない。その人形がまるで人間のように動くところにおもしろさがあるのである。麻耶の作品もまったく同じだ。神様ゲーム、鴉、瑠璃鳥などの作品にも見られるように、非現実的ではあるがその中では整合性がとれた独創的かつ非情な論理で世界を構築し、それがまるで現実のものでありたがるように行動するところに興がある。そしてこの夏と冬の奏鳴曲はそうした作風が最もよく現れた芸術作品と言える。
このように論理で世界を構築するからこそ、そこに存在するドラマが、本来水と油の関係であるはずのミステリ性と融合するのである。単に人間ドラマを充実させたミステリではなく、この世界の論理と人間ドラマが切っても切り離せない絶妙の和音を響かせている。
取り敢えずこの作品を読む時は、中盤のややこしいキュビズムの論理から目を背けてはならない。そこさえおさえれば謎はすべて氷解する。烏有にとっての絶対が如何にして相対化していくか、また相対化した絶対を再び絶対化するためには何が起こることが必要なのか(それは皮肉にも作中のある人物の論理に従うことになる)、そうした点がすべて繋がり、他の小説とは比較にならない圧倒的なカタルシスを得られるはずだ。
ただメルカトルの最後の一言と「春と秋の奏鳴曲」については痾の内容をふまえるに一種のコラージュと見るべきなのだろうが、その点については論理的ではあるがドラマティックとは言えず、蛇足である気はする。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)より
4062638916
No.23
(4pt)

新本格最大の問題作

雑誌編集者の如月烏有は、助手で女子高生の舞奈桐璃と、日本海に浮かぶ
孤島「和音島」で行われる、ある人物の二十周忌の取材に行くことになる。
真夏に雪が降り積もった朝、彼らは断崖のテラスで島の主の
首なし死体を発見するのだが、周囲には誰の足跡もなかった……。
著者のみならず、九十年代初頭における新本格最大の問題作。
特に前述した《雪密室》にたいし、著者が示した解法は、あまりに奇想天外であるため、
生真面目なミステリ読者には到底受け入れられず、非難と嘲笑の的となると思います。
それにも増して読者を唖然とさせるのは、ヒロインの舞奈桐璃でしょう。
萌えキャラ的人物造型であるため、年配の読者には、それだけで生理的嫌悪の
対象だと思われますが、それのみならず、終盤には彼女にまつわる不可思議な
秘密が、十分な説明を伴うことなく、唐突に明かされることになります。
あまりに一方的で、読者を置き去りにしているといえます。
(ただ、叙述の表現形式によって一応の伏線は張られている)
ほかにも、解明されずに放置される謎がいくつかあるのですが、結末で登場する、
メルカトル鮎の一言が示唆する事実だけを残し、物語の幕は下ろされてしまいます。
要するに本作は、一種のリドル・ストーリーであり、いわゆる普通の謎とその
論理的解明を骨格とする狭義の本格ミステリには該当しない作品なのです。
しかし、だからといって本作が駄作であるとはいえません。
本作以降、本作の趣向だけを安易に模倣し、ガジェットに淫して
謎解きを放棄した作品が陸続と世に出ました。そのほとんどは
センスと教養のなさを露呈するという残念な結果に終わっています。
いみじくも本作のテーマであるキュビスムの絵のように、
本物と凡人の落書きとでは、おのずと違いがあるのです。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス)より
4061817000
No.22
(4pt)

新本格のひとつの到達点

雑誌編集者の如月烏有は、助手で女子高生の舞奈桐璃と、日本海に浮かぶ
孤島「和音島」で行われる、ある人物の二十周忌の取材に行くことになる。
真夏に雪が降り積もった朝、彼らは断崖のテラスで島の主の
首なし死体を発見するのだが、周囲には誰の足跡もなかった……。
著者のみならず、九十年代初頭における新本格最大の問題作。
特に前述した《雪密室》にたいし、著者が示した解法は、あまりに奇想天外であるため、
生真面目なミステリ読者には到底受け入れられず、非難と嘲笑の的となると思います。
それにも増して読者を唖然とさせるのは、ヒロインの舞奈桐璃でしょう。
萌えキャラ的人物造型であるため、年配の読者には、それだけで生理的嫌悪の
対象だと思われますが、それのみならず、終盤には彼女にまつわる不可思議な
秘密が、十分な説明を伴うことなく、唐突に明かされることになります。
あまりに一方的で、読者を置き去りにしているといえます。
(ただ、叙述の表現形式によって一応の伏線は張られている)
ほかにも、解明されずに放置される謎がいくつかあるのですが、結末で登場する、
メルカトル鮎の一言が示唆する事実だけを残し、物語の幕は下ろされてしまいます。
要するに本作は、一種のリドル・ストーリーであり、いわゆる普通の謎とその
論理的解明を骨格とする狭義の本格ミステリには該当しない作品なのです。
しかし、だからといって本作が駄作であるとはいえません。
本作以降、本作の趣向だけを安易に模倣し、ガジェットに淫して
謎解きを放棄した作品が陸続と世に出ました。そのほとんどは
センスと教養のなさを露呈するという残念な結果に終わっています。
いみじくも本作のテーマであるキュビスムの絵のように、
本物と凡人の落書きとでは、おのずと違いがあるのです。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社ノベルス)より
4061817000
No.21
(4pt)

新本格最大の問題作

雑誌編集者の如月烏有は、助手で女子高生の舞奈桐璃と、日本海に浮かぶ
孤島「和音島」で行われる、ある人物の二十周忌の取材に行くことになる。
真夏に雪が降り積もった朝、彼らは断崖のテラスで島の主の
首なし死体を発見するのだが、周囲には誰の足跡もなかった……。
著者のみならず、九十年代初頭における新本格最大の問題作。
特に前述した《雪密室》にたいし、著者が示した解法は、あまりに奇想天外であるため、
生真面目なミステリ読者には到底受け入れられず、非難と嘲笑の的となると思います。
それにも増して読者を唖然とさせるのは、ヒロインの舞奈桐璃でしょう。
萌えキャラ的人物造型であるため、年配の読者には、それだけで生理的嫌悪の
対象だと思われますが、それのみならず、終盤には彼女にまつわる不可思議な
秘密が、十分な説明を伴うことなく、唐突に明かされることになります。
あまりに一方的で、読者を置き去りにしているといえます。
(ただ、叙述の表現形式によって一応の伏線は張られている)
ほかにも、解明されずに放置される謎がいくつかあるのですが、結末で登場する、
メルカトル鮎の一言が示唆する事実だけを残し、物語の幕は下ろされてしまいます。
要するに本作は、一種のリドル・ストーリーであり、いわゆる普通の謎とその
論理的解明を骨格とする狭義の本格ミステリには該当しない作品なのです。
しかし、だからといって本作が駄作であるとはいえません。
本作以降、本作の趣向だけを安易に模倣し、ガジェットに淫して
謎解きを放棄した作品が陸続と世に出ました。そのほとんどは
センスと教養のなさを露呈するという残念な結果に終わっています。
いみじくも本作のテーマであるキュビスムの絵のように、
本物と凡人の落書きとでは、おのずと違いがあるのです。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)より
4062638916
No.20
(5pt)

メルカルトル鮎がまさしく救世主だった作品って書くと怒られるんだろうなぁ

京極夏彦の「姑獲鳥の夏」(文庫)の解説に作品名があったので、興味が沸いて蒸発しないうちに呼んでみました。
まぁ、話の大筋はあらすじなり他レビューなりで既に充分に書かれていることなので省略させていただきますが、

先ず(何よりも先に)、絵画に基づく(または纏わり付く)思想だの哲学だの宗教的理念だの信仰心だの、やや新古典というか近代美術というかを基盤に引いてる美学だの、他に地盤の崩れに眩暈を起こさせるような(素晴らしい)設定(ここではややアンフェアなどんでん返しと解釈されているのだろうか)に浪漫を感じない方、一切興味の無い方(頭の柔らかい本格狂いを除いて)には激しくお勧め致しません、ね。

いや、私はあまりにもがたがたにお堅いがちがちの本格よりはこうした道理の有る、夢の有る、希望は無いが、なんかこう、幻想美に配慮を見せた型破りなミステリの方が文学的にはもちろん芸術的にも価値が高いと・・・あぁ、それは関係ないと言われるのか。にしても、この素晴らしい著作がなぜか所々悲しくなるような評価を下されているのは、読者が読む作品を選び間違えたとしか・・・。
 これは、そう、少し読者を選ぶ作品かもしれません。ミステリ好きだからと軽々とした気分で読むには向かないかもしれません。少なくなくとも、万人の口には合わない、少し特殊な味がするために、所々低い評価を・・・。(でも、わからないかなぁ、手抜きだなんて有るけど、この考え抜かれた設定が。問題作的名作にふさわしいプロットが・・・視えないかなぁ)

ま、こうした雰囲気に浪漫を感じる方々、眩暈が好きな方々等は楽しめるでしょう。とにかくプロットは絶品。

えーっと、ちょっとラストにやや不満があるような方々へ、
 最後に訳がわからないとか謎が解けてないとかおっしゃる方々、何を申されるか。メルカルトル鮎が最後にちゃんと全てを解明してくれたじゃありませんか。確かに活字として細部が印字されているわけではありませんが、私はあの一言で全ての不可解、浮遊感、眩暈、なんかこう、ぐるぐるとする落ち着かない吐き気にも似た不安定感が、まぁ、多少の「えっ?!何これどういうこと?!」という叫びの後に、するすると消えて行きましたよ。これは決して不条理なエンディングではありません。有る意味では本格と呼んでも差し支えない。
 読者にも推理力と称してもとくに害の無い想像力は必要ですよ。鮎の言葉から連想される可能性を考えてみることですね。全ての結果が書き記してある考えなくても解る書物が現代の当たり前となっているようですが、そんなこと。甘やかされていますよ。(古典文学を読む人にはこの感覚がきっとわかる)。確かに、疲れているときに読めば癒しどころが不快感や頭痛に見舞われるのかもしれませんが、まぁ、これは読む人の気心次第として。
私は中盤から結末までを夜中二時辺りに読んでいたのですが(こう、暗鬱とした気心で)最後にメルカルトルさんが来てくれなかったら(そこを読まずに寝ていたら)気色悪い悪夢に魘されていたことは確実。彼のおかげで安心して眠れました。裏表紙の言葉は嘘じゃない。

追伸的なもの。ー完読の三日後、「烏有に帰す」という言葉を知りました。あぁ、成る程って思いました。(ドイツ語でヌルは英語のゼロなので予想できた筈だったりもしたのですが。登場人物に対して残酷な作者だなという感想を抱きました。
 続編らしき「痾」を読んだらこの感想は変わるのかしらん)

以上
夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫)より
406524966X
No.19
(5pt)

メルカルトル鮎がまさしく救世主だった作品って書くと怒られるんだろうなぁ

京極夏彦の「姑獲鳥の夏」(文庫)の解説に作品名があったので、興味が沸いて蒸発しないうちに呼んでみました。
まぁ、話の大筋はあらすじなり他レビューなりで既に充分に書かれていることなので省略させていただきますが、
先ず(何よりも先に)、絵画に基づく(または纏わり付く)思想だの哲学だの宗教的理念だの信仰心だの、やや新古典というか近代美術というかを基盤に引いてる美学だの、他に地盤の崩れに眩暈を起こさせるような(素晴らしい)設定(ここではややアンフェアなどんでん返しと解釈されているのだろうか)に浪漫を感じない方、一切興味の無い方(頭の柔らかい本格狂いを除いて)には激しくお勧め致しません、ね。
いや、私はあまりにもがたがたにお堅いがちがちの本格よりはこうした道理の有る、夢の有る、希望は無いが、なんかこう、幻想美に配慮を見せた型破りなミステリの方が文学的にはもちろん芸術的にも価値が高いと・・・あぁ、それは関係ないと言われるのか。にしても、この素晴らしい著作がなぜか所々悲しくなるような評価を下されているのは、読者が読む作品を選び間違えたとしか・・・。
 これは、そう、少し読者を選ぶ作品かもしれません。ミステリ好きだからと軽々とした気分で読むには向かないかもしれません。少なくなくとも、万人の口には合わない、少し特殊な味がするために、所々低い評価を・・・。(でも、わからないかなぁ、手抜きだなんて有るけど、この考え抜かれた設定が。問題作的名作にふさわしいプロットが・・・視えないかなぁ)
ま、こうした雰囲気に浪漫を感じる方々、眩暈が好きな方々等は楽しめるでしょう。とにかくプロットは絶品。
えーっと、ちょっとラストにやや不満があるような方々へ、
 最後に訳がわからないとか謎が解けてないとかおっしゃる方々、何を申されるか。メルカルトル鮎が最後にちゃんと全てを解明してくれたじゃありませんか。確かに活字として細部が印字されているわけではありませんが、私はあの一言で全ての不可解、浮遊感、眩暈、なんかこう、ぐるぐるとする落ち着かない吐き気にも似た不安定感が、まぁ、多少の「えっ?!何これどういうこと?!」という叫びの後に、するすると消えて行きましたよ。これは決して不条理なエンディングではありません。有る意味では本格と呼んでも差し支えない。
 読者にも推理力と称してもとくに害の無い想像力は必要ですよ。鮎の言葉から連想される可能性を考えてみることですね。全ての結果が書き記してある考えなくても解る書物が現代の当たり前となっているようですが、そんなこと。甘やかされていますよ。(古典文学を読む人にはこの感覚がきっとわかる)。確かに、疲れているときに読めば癒しどころが不快感や頭痛に見舞われるのかもしれませんが、まぁ、これは読む人の気心次第として。
私は中盤から結末までを夜中二時辺りに読んでいたのですが(こう、暗鬱とした気心で)最後にメルカルトルさんが来てくれなかったら(そこを読まずに寝ていたら)気色悪い悪夢に魘されていたことは確実。彼のおかげで安心して眠れました。裏表紙の言葉は嘘じゃない。
追伸的なもの。ー完読の三日後、「烏有に帰す」という言葉を知りました。あぁ、成る程って思いました。(ドイツ語でヌルは英語のゼロなので予想できた筈だったりもしたのですが。登場人物に対して残酷な作者だなという感想を抱きました。
 続編らしき「痾」を読んだらこの感想は変わるのかしらん)
以上
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)より
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No.18
(4pt)

非合理的だが魅力的な作品

発表当時から毀誉褒貶が激しかった作品。20年前に起こった、美少女を中心とした仲間内で起こる孤島での殺人事件。女性上司に命じられて、その孤島へ調査に行く記者。だが、20年前の事件の謎を解くどころか新たな謎に包まれ、記者は現実と幻想の狭間に立たされる...。

夏に雪が降るのはご愛嬌としても、本作には細かい矛盾点が多すぎる。本作のキャッチ・コピーに「最後のメルカトル鮎の一言で全てが変わる」とあるが、トンデモナイ。到底全てを説明しているとは思えなかった。何故、初めて記者が島を訪れた時、デジャブを感じなければならなかったのかetc....。それにも関わらず、本作には読者を惹きつける不思議な魅力がある。迷宮を彷徨いたいミステリ・ファンにはお勧めの一作。
夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫)より
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No.17
(4pt)

非合理的だが魅力的な作品

発表当時から毀誉褒貶が激しかった作品。20年前に起こった、美少女を中心とした仲間内で起こる孤島での殺人事件。女性上司に命じられて、その孤島へ調査に行く記者。だが、20年前の事件の謎を解くどころか新たな謎に包まれ、記者は現実と幻想の狭間に立たされる...。
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