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(短編集)

人間以前 ディック短篇傑作選6



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【この小説が収録されている参考書籍】
人間以前 (ディック短篇傑作選)

人間以前 ディック短篇傑作選6の評価: 4.07/5点 レビュー 15件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.07pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全15件 1~15 1/1ページ
No.15:
(5pt)

ファンタジー色が強い幻想系SFの数々。

事情はよく知らないが、近年になって改めて連続刊行されたディック短篇傑作選も本書で6冊目。2014年に発刊されたものだが、とうやらこれでひと段落らしい。ディックの全短篇約120篇の内、64篇を編纂したことになるのだと言う。
だから以前読んだことのある短編も含まれてはいるが、12篇中、『地図にない街』『宇宙の死者』『シビュラの目』の3篇だけだからものの数ではない。

本書に収録されている作品たちは、ハードSFというよりもファンタジー色が強い幻想系が取り揃えられている。
存在しない駅名の定期券を買い求める男の来訪を導入部とする『地図にない街』、ひょっこり現れた小柄な妖精たちの王に選ばれてしまった年老いた男の勇気ある戦いがなんだかほわっとさせる『妖精の王』。
間違った死、間違った蘇りが世界を変える『この卑しい地上に』、どういう発想から生まれたのかが気になる寓話的な『欠陥ビーバー』。
地球に帰属する星系内で謎の収穫に走るアダーラ人たちの目的を探る、書籍初収録作『不法侵入者』、人気の高い長篇『ユービック』と同一の設定とされるサスペンス仕立ての『宇宙の死者』。
ホラータッチの侵略SF『父さんもどき』、未来社会故の親子の断絶を短くも淡麗に描いた『新世代』。
ロボットを用いて競争社会を皮肉っている様な『ナニー』、もし、国防を国家ではなく民衆の負担で行なわなくてはならなくなったら? 『フォスター、お前はもう死んでるぞ』。
表題作の『人間以前』は資源が飢えた未来に於ける人間の間引きをテーマとしており、中絶の権利を主張する団体から非難の手紙を受け取ったという。そして最後には、異色作という意外に形容できない神秘体験に基づく晩年の作品『シビュラの目』。
これらSF12篇を収録している。

収録作品
『地図にない街 The Commuter』
『妖精の王 The King of the Elves』
『この卑しい地上に Upon the Dull Earth』
『欠陥ビーバー Cadbury the Beaver Who Lacked』
『不法侵入者 The Cosmic Poachers』
『宇宙の死者 What the Dead Men Say』
『父さんもどき The Father-Thing』
『新世代 Progeny』
『ナニー Nanny』
『フォスター、お前はもう死んでるぞ Foster, You’re Dead』
『人間以前 The Pre-Persons』
『シビュラの目 The Eye of the Sibyl』
人間以前 (ディック短篇傑作選)Amazon書評・レビュー:人間以前 (ディック短篇傑作選)より
4150119813
No.14:
(1pt)

素材は一級品、料理人は3流以下の短編集

扱っている素材は良いが、それを活かす腕が感じられない。海外文学特有の冗長でわかりにくい部分が多かった。
 短編なのに夢中になって読んでしまうということがなかった。あとどれくらい続くのだろうとページ数を確認したのも幾度となくありました。
 目新しさもないし、都合500頁もあるのでわざわざ読む価値はありません。
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4150119813
No.13:
(5pt)

表題の人間以前が秀逸

表題作の人間以前が特に秀逸。

おそらくこういう発想力が、日本人にはないだろうなと思う。
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4150119813
No.12:
(2pt)

期待しすぎた

アニメのサイコパスの元となった話があるとあったから買ったのに、あとがき曰く「アニメ「 PSYCHO-PASS」 の 設定上の根幹をなす管理 機構 シビュラシステム の( 命名上の) 元 ネタ としても知られる」とのことでほとんど関連性はなかったです
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4150119813
No.11:
(5pt)

ディックのファンタジー系、子供テーマ系を扱った寓話短編集。

ディックのピュアな目線は、そのまま寓話短編集として卓越している。【父さんもどき】【フォスター、おまえはもう死んでるぞ】【人間以前】等がそうである。特に核シェルターを扱った【フォスター、おまえはもう死んでるぞ】の、子供の心理は傑作でとても面白い。また、ファンタジー系の【妖精の王】はユーモアたっぷりで面白い。ディックの短編の代表作である【地図にない町】も収録されていて、寓話短編集して傑出している。
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4150119813
No.10:
(4pt)

他の短編も読みたい

「地図にない街」は、見ている現実に不安を覚え、「妖精の王」には現代の御伽噺で幸福感を感じる。「不法侵入者」は結末が見えているが、それにかかわらず続きが木になる。「人間以前」の不愉快だが、考えさせられる作品も。短編集なので作品の面白さはバラバラ。意味が汲み取れない作品もある(これはこちらの読解力の問題)。本書に収めれらていない短編も読みたい。
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4150119813
No.9:
(3pt)

良いものは良いのですが

傑作選と銘打ってる割に玉石混淆と言った内容で、ありきたりなアイディアや安直な結末も多かったです。12作もあったのに面白かったのは2作だけ。星新一のショートショートでありそうな話だなあと思う様なのもちらほら。別に星新一馬鹿にしてる訳でも無いですが。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」とか「流れよ涙、と警官は言った」「ユービック」などの傑作を先に読んだ印象では、ハードSF作家と言う印象があったのですが、この作品集はライトなエンタメ作家の印象。
個人的に一番期待していたのが表題作である「人間以前」だったのですがこれが一番残念。
あらすじ聞いた話では滅茶苦茶不条理な印象だったのですが、読んでみれば作者の政治的な思想が剥き出しであり、完全に白けてしまいました。作者の主張重視の為、ストーリー的には無理があるし。芸人の無理のある例え話をどや顔で聞かされた気分。
そもそも私はSFが政治的な意図を持つことが嫌いです。
SF的思考、または科学的思考と言うのは、人間の常識から超える視点を持つ事だと思うのですよ。例えば何十億年と言う先の未来を想像したり、あるいは遥か宇宙の果てや、逆に量子力学の世界など、人知を超えた世界の真実を垣間見、想像し、思考することによって現在の人間のものの観方を一旦解体し、改めて再構築して新しい人の在り方を考える行為だと思うのです。
それなのに、政治と言う思いっきり人間の尺度に合わせた狭い考えにSFを縛り付けてしまうのはSFの魅力を損なうように感じられ、何だか冷めてしまうのです。
あまり文句ばかり言ってもあれなので、良かった2作品についての感想を。

「地図にない町」
駅の切符売り場に、メイコンハイツへ行きたいと言う男が現れるが、そんな町は路線図の何処にもない。
そう出札係が言うと「俺はそこに住んでるんだぞ!」と男は怒りだす。
路線図を男に見せて、そんな町は実在しない事を説明すると突然男は消えた。
その日から、実在しないはずの町が徐々に現実を侵していく。
オチ含めて文句なしに面白かった。似たようなモチーフを扱ってるSFは多々見かけるが中々に完成度が高いと思う。これは流石だなと思った。

「この卑しい地上に」
精霊によって別次元の世界へ連れ去られた(要は死んだ)恋人を現世に取り戻そうとする男が引き起こすおぞましい悲劇。
死者になった恋人を蘇らせようとして悲劇に陥る話は神話から現在に至るまで結構あるが、これはダントツで恐ろしい。
ラストシーンの何という救い難き絶望感よ。結婚予定の恋人が死んだら無理もないけど、考えなしの行動はフィクションにおいては死亡フラグ。そんなレベルではない災厄が訪れますが。

総じてライトなSF短編集ぐらいの気持ちで読んだ方が良いかと。
傑作選とか言われると期待値上がりすぎて「そうでもないかな」とちょっぴりしょんぼりしてしまう可能性があります。
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4150119813
No.8:
(5pt)

多彩な作品を収めた短篇集

SF一辺倒ではなく、さまざまなテーマに挑んだ短篇を集めているところが非常に面白く興味深かった。
参考までに一作ずつテーマ&評価を記す。

・地図にない町・・・パラレルワールドもの (★★★★★)
・妖精の王・・・ファンタジーもの (★★★★☆)
・この卑しい地上に・・・ファンタジー&ホラーもの (★★★☆☆)
・欠陥ビーバー・・・動物寓話&ディックの女性観・女性像の典型 (★★★☆☆)
・不法侵入者・・・異星人との遭遇&駆引き&滑稽譚 (★★★★★)
・宇宙の死者・・・『ユービック』と同一設定、つまり生と死の境界 (半生者) もの (★★★★★)
・父さんもどき・・・宇宙人の侵略もの (★★★★★)
・新世代・・・未来の子供の極端に進んだ早期教育もの (★★★★☆)
・フォスター、おまえはもう死んでるぞ・・・全面戦争を想定したシェルターもの (★★★★☆)
・人間以前・・・12歳未満の子供は人間と認められず殺されるディストピアもの (★★★★★)
・シビュラの目・・・前半は古代ローマが舞台&後半は作者ディックの自叙伝(?) (★★★★☆)
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4150119813
No.7:
(5pt)

再読の価値あり

過去に読んだことのある作品が多く含まれてますが久しぶりに再読したいと思い購入。 12歳未満の子供が「生後堕胎」として処分されるディストピア「人間以前」(前読んだときは「まだ人間じゃない」だったかなあ) 現実世界が虚構に侵食されていく「地図にない町」 少年が父の異変に気づき、父が別の生物だったと判明する「父さんもどき」 いずれもディックらしい名作短編です。 一度読んでも時間がたってまた再読すると新しい発見があるというのはさすが。
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4150119813
No.6:
(2pt)

発想は豊かだが文学的な才能は無い。

この有名な作家について以前から思っていた事だが、
この短編集を読んでみて改めて思うのは、発想力には独創的なものがあるにしろ、
残念ながら小説家としての才能は低いと言わざるを得ない、と言う事だ。
小説として「面白い」とまで言えるような短編は、ほとんど入っていない。
一言で言うなら、完成度が低い。思いつきを重ねて書いていったような印象を受ける作品が多いのだ。
独自の発想力に恵まれたある種の天才だったのかも知れないが、ディックという作家は、
それほど頭の良い人ではなかったのかも。
人間以前 (ディック短篇傑作選)Amazon書評・レビュー:人間以前 (ディック短篇傑作選)より
4150119813
No.5:
(5pt)

アニメ、サイコパスが生まれる元となった作品

読むの十時間ほどかかった。

12の物語からなる短編小説です。

幻想的なものから侵略もの、
神秘的なものや、
未来ものいろんなSF物語を読むことができます。

SF小説をあまり読んだことがない人は、
アニメPSYCHO-PASSの元ネタであろう、
「シビュラの目」など読んでみてはいかがだろうか。

簡潔ながらにして神秘的な物語が綴られています。

全体を通して思ったのは、
人間の恐ろしさー競争心や恐怖心から生じる衝動ー、
科学技術の盲信からの破壊への道などが描かれているように思います。

作者からの人間や現代社会への問いかけなのだろうか。
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4150119813
No.4:
(5pt)

やっぱり面白い

既読だがなぜか持っていなかったので再購入・再読。やっぱり面白い。この調子でサンリオ文庫も頼んます。できれば「シミュラクラ」希望!中古本の3000円は出せないので。ただタイトルは「まだ人間じゃない」の方がベター。
人間以前 (ディック短篇傑作選)Amazon書評・レビュー:人間以前 (ディック短篇傑作選)より
4150119813
No.3:
(5pt)

フィリップ・K・ディック全中短篇速見表発表順1

先ずP・K・ディック中短篇集リストから

1.地図にない町1976Jハヤカワ文庫NV
2a.パーキー・パットの日々 2b.時間飛行士へのささやかな贈り物1977(日本1983)ジョン・ブラナー編ハヤカワ文庫SFディック傑作集
3a.ゴールデン・マン(1984) 3b.まだ人間じゃない1980(1985)マーク・ハースト編ハヤカワ文庫SFディック傑作集
4.人間狩り1982J集英社ワールドSF
5.顔のない博物館1983J北宋社
6.宇宙の操り人形1984Jソノラマ文庫海外シリーズ
7.ウォー・ゲーム1985Jソノラマ文庫海外シリーズ
8.悪夢機械1987A新潮文庫
9.模造記憶1989A新潮文庫
10.人間狩り1991Jちくま文庫
11.ウォー・ゲーム1992Jちくま文庫
12.宇宙の操り人形1992Jちくま文庫
13.ウォー・ヴェテラン1992J社会思想社 現代教養文庫
14.永久戦争1993A新潮文庫
15.マイノリティ・リポート1999早川書房編集部編ハヤカワ文庫SF
16.シビュラの目2000早川書房編集部編ハヤカワ文庫SF
17.ペイチェック2003英Gollancz社編ハヤカワ文庫SF
18.人間狩り2006J論創社ダーク・ファンタジー・コレクション
19.髑髏2009J論創社ダーク・ファンタジー・コレクション
20.アジャストメント2011Oハヤカワ文庫SFディック短篇傑作選(以下25.まで)
21.トータル・リコール2012Oハヤカワ文庫SF
22.変数人間2014Oハヤカワ文庫SF
23.変種第二号2014Oハヤカワ文庫SF
24.小さな黒い箱2014Oハヤカワ文庫SF
25.人間以前2014Oハヤカワ文庫SF

*邦訳出版されたもの+日本で独自に編集されたもの

※短篇集No.-書名-刊行年-編者(J仁賀克雄編、A浅倉久志編、O大森望編)-出版社・叢書名

P・K・ディック中短篇発表順速見表
※作品通しNo-題名-発表年-収録短篇集No.(未:短篇集未収録)

001ウーブ身重く横たわる(輪廻の豚)1952 1.2a.20.
002おもちゃの戦争1952 1.
003自動砲1952 11.
004髑髏1952 13.19.
005あてのない船1953 1.
006ありえざる星1953 1.
007あんな目はごめんだ1953 9.22.
008偉大なる神1953 4.11.
009火星人襲来1953 13.19.
010クッキーばあさん1953 1.
011消耗員(消耗品)1953 2a.5.19.20.
012植民地1953 2a.4.10.19.
013生活必需品1953 13.19.
014世界のすべては彼女のために1953 未
015世界をわが手に1953 15.21.
016造物主1953 13.19.
017地球乗っ取り計画1953 6.12.
018地球防衛軍1953 14.21.
019地図にない町1953 1.25.
020吊るされたよそ者(ハンギング・ストレンジャー)1953 5.7.10.18.21.
021トニーとかぶと虫1953 13.19.
022にせもの(偽者/贋物)1953 2a.4.10.18.20.
023不屈の蛙(根気のよい蛙)1953 5.7.9.19.22.
024不法侵入者1953 25.
025ペイチェック(報酬)1953 2a.17.22.
026変種第二号(人間狩り)1953 2a.4.10.18.23.
027変数人間1953 14.22.
028訪問者1953 8.21.
029ミスター・スペースシップ1953 21.
030名曲永久保存法1953 1.
031森の中の笛吹き1953 1.
032妖精の王(小人の王/矮人の王)1953 3a.5.7.19.25.
033ルーグ1953 2a.20.
034レダと白鳥1953 1.
035アジャストメント(調整班)1954 8.20.
036おせっかいやき(干渉する者/干渉者(メドラー))1954 3b.5.7.10.18.
037火星潜入1954 15.23.
038火星探査班1954 4.10.18.
039奇妙なエデン1954 12.19.
040ゴールデン・マン1954 3a.4.10.23.
041この卑しい地上に1954 9.25.
042最後の支配者(マスターの最後)1954 3b.
043CM地獄1954 3b.22.
044ジェイムズ・P・クロウ1954 15.24.
045萎びたリンゴ1954 5.7.11.
046ジョンの世界1954 11.14.17.23.
047新世代1954 8.25.
048スーヴェニール1954 11.
049スパイはだれだ1954 8.22.

※作品通しNo-題名-発表年-収録短篇集No.(未:短篇集未収録)

050以降は容量オーバーですので他のディック短篇傑作選のレヴューに載せます。お楽しみに。
人間以前 (ディック短篇傑作選)Amazon書評・レビュー:人間以前 (ディック短篇傑作選)より
4150119813
No.2:
(5pt)

ディックは良いよ、駄作傑作色々あれど、そこが人間的

ディックの短篇集は数あれど、新訳だったり本邦初訳だったりが含まれているのであなどれない。
ほぼ傑作短篇は読める様に、再編集する時はそれを考えて編集お願いしたいです。
ディックは全部揃えたいと思っているので。

サンリオの絶版ものも、創元か早川で出ることを祈っています。

創元のディック長篇でも、原作品切れ状態なものもあるので、再刊もお願いしたいです。
人間以前 (ディック短篇傑作選)Amazon書評・レビュー:人間以前 (ディック短篇傑作選)より
4150119813
No.1:
(4pt)

幻想科学小説

全127編あるディックの短編のうち、この「ディック短編傑作選 全6巻」で計65編を集めたことになる。デザインが統一された6冊を本棚に並べると、これはこれで壮麗だし、コレクター魂を十二分に満足させてくれるものに仕上がっている。
この傑作選が生まれた経緯は(2011年4月に刊行された短編集「アジャストメント」のあとがきでも触れられているが)、2004年に刊行された短編集「ペイチェック」の事情により、ハヤカワ文庫内で抱えている短編群を再編せざるを得ない事態に陥ってしまったことから始まった。さらには2010年2月に逝去した浅倉久志氏を敬して、氏が訳した短編群を再集するという目標も兼ねている。ゆえに、短編集「トータル・リコール」に収録されている「トータル・リコール(「追憶売ります」を改題)」の深町眞理子氏の訳以外は、全て浅倉氏か大森氏、もしくは新訳という布陣になっている。
個人的には、サンリオ時代からディックファンのバイブル的存在と言われていた「パーキーパットの日々」~「まだ人間じゃない」の4冊の短編集よりは、新潮文庫の「悪夢機械」「模造記憶」が大好きだったので、この65編の短編群は正直、微妙。

「われわれがSFを読むのは、それによって頭の中に発生するアイデアの連鎖反応を経験する快楽が、こたえられないからである。したがって、最高のSFは、最終的には作家と読者の共同作業となり、そこでは両者が創造行為をわかちあい、そして、おたがいにそれをたのしむ。この喜び、新しいものを発見する喜びが、SFに不可欠な決定的要素なのだ」
1981年5月 ディック知人宛ての手紙より 「模造記憶」あとがきより抜粋

現実と非現実、本物と偽物、人間とロボット、記憶と幻想。我々がディックに求めるのは、この現実は本当に現実なのだろうかという疑念、自分は本当に自分なのだろうかという存在意義、この記憶は本当の記憶なのだろうかという自我確認。そんな形而上学的なプロセスを追体験したいからではないだろうか。そういう点では、ここに収められている65編は、サイエンス・フィクションというよりは、サイエンス・ファンタジーの趣向が近いと思う。
人間以前 (ディック短篇傑作選)Amazon書評・レビュー:人間以前 (ディック短篇傑作選)より
4150119813

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