ペスト

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ペストの評価:

4.00/5点 レビュー 410件。 C ランク

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Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全605件 581〜600 30/31ページ
No.25
(4pt)

訪れることを受け入れるしかない厄災

ありふれた日常に埋もれていた北アフリカの無味乾燥な都市にペストが発生する。
最初の数10ページは、鼠の死骸が大量に発生して死者が増加の一途を辿るという
スリリングな展開。

それに続く、ペスト宣言が出た後のこの小説の中核部は、閉鎖された都市の中で
対策に奮闘する医師やボランティアの日々、患者とその家族の姿が描かれる。
ドラマティックな展開というものは少なく、感染が広がり閉鎖された生活が
新たな日常に成り代わったように淡々と描かれる。

一つ印象的だったのは、<この災いは堕落した世界に対する神の怒りであり、
我々はこの試練を喜んで受け入れなければならない>と説教をしていた神父が、
ボランティアに加わって少年が発作を起こしながら死んでいく病床に付き沿った後、
信仰は捨てないまま新たな考え方に変わるところ。
私なりの理解では、この神父の新たな考えは
<この世界は解釈できない謎だらけだが、神を信じるか信じないかの選択では、
私には信じるという答しかありえない>ということになります。

この部分を読んでいると、「カラマーゾフの兄弟」の中で同じような問題に対し、
次男のイワンが
<この世が神の意思でできているというなら、罪のあるはずのない子供が苦しむ
世界を作った神は認められない>と語った言葉を思い出しました。

ペストに限らず、訪れることを受け入れるしかない厄災というものがあります
(天災、人災であれ個人の病であれ)。
誰でも自分の人生の前に突然暗い大きな穴が開き、そこに落ち込んでしまうことが
ありえます。
このような事態になった時にも、焦らず絶望せず日常の中でむしろ淡々と戦うこと
が必要(それはとても苦しいことですが)なのです。

注: <>は訳文のままでなく私がまとめた表現です。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.24
(4pt)

訪れることを受け入れるしかない厄災

ありふれた日常に埋もれていた北アフリカの無味乾燥な都市にペストが発生する。
最初の数10ページは、鼠の死骸が大量に発生して死者が増加の一途を辿るという
スリリングな展開。

それに続く、ペスト宣言が出た後のこの小説の中核部は、閉鎖された都市の中で
対策に奮闘する医師やボランティアの日々、患者とその家族の姿が描かれる。
ドラマティックな展開というものは少なく、感染が広がり閉鎖された生活が
新たな日常に成り代わったように淡々と描かれる。

一つ印象的だったのは、<この災いは堕落した世界に対する神の怒りであり、
我々はこの試練を喜んで受け入れなければならない>と説教をしていた神父が、
ボランティアに加わって少年が発作を起こしながら死んでいく病床に付き沿った後、
信仰は捨てないまま新たな考え方に変わるところ。
私なりの理解では、この神父の新たな考えは
<この世界は解釈できない謎だらけだが、神を信じるか信じないかの選択では、
私には信じるという答しかありえない>ということになります。

この部分を読んでいると、「カラマーゾフの兄弟」の中で同じような問題に対し、
次男のイワンが
<この世が神の意思でできているというなら、罪のあるはずのない子供が苦しむ
世界を作った神は認められない>と語った言葉を思い出しました。

ペストに限らず、訪れることを受け入れるしかない厄災というものがあります
(天災、人災であれ個人の病であれ)。
誰でも自分の人生の前に突然暗い大きな穴が開き、そこに落ち込んでしまうことが
ありえます。
このような事態になった時にも、焦らず絶望せず日常の中でむしろ淡々と戦うこと
が必要(それはとても苦しいことですが)なのです。

注: <>は訳文のままでなく私がまとめた表現です。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.23
(5pt)

見事な寓意小説

[ASIN:4102114033 ペスト (新潮文庫)]ダニエル・デフォーの言葉を借りたエピグラフの一節「ある種の監禁状態を別のある種の監禁状態によって表現する」というところに、作者の創作意図とこの小説の寓意性を理解する手掛かりがある。ロビンソン・クルーソウがただ独り漂着した孤島で、いわば原始人の状態から「人間」への復活を果たす様子を描くことによって、デフォーが「文明人」には見えにくくなっている人間存在の基本的条件を再確認したように、カミュはペストの発生によって外部世界から遮断された「陸の孤島オランの住民」の生態を描くことによって、人工的な都市環境で生きる現代人には見えにくくなっている人間及びその共同的生の基盤を浮き彫りにしてみせたと言えるだろう。また「実際に存在するあるものを、存在しないあるものによって表現する」というエピグラフ中の一節は、〈事実〉に含まれる真実に迫るために有効な〈フィクション〉の持つ意味合いを示唆しており、小説家としての彼の立場が示されている。(ちなみにデフォ−は子どもの頃体験した1664-65年のペスト流行のすさまじい状況を、記録小説風の作『疫病年代記』に描いている。)

 作者は、生誕と死によって限定された人生を一種の「監禁状態」とみなし、、ペストによって「監禁状態」に置かれた登場人物それぞれの生き方と、医師の仕事を地道に果たすリウの行動を対比しながら、監禁状態における自由の可能性を探ろうしたと思われる。描かれる絵図に特徴的なのは、パヌルー神父をのぞいて、「神のない」あるいは「神が沈黙している」世界に生きる者たちの行動が太い輪郭で描かれていることだ。

 リウの最もよき理解者タルーは、この世界に存在する「絶対悪」と言うべきものに対してどういう態度を取るべきかを考えつづける。リウはそういう解決不能の形而上的問いを自分にたいして禁ずる。ペストという「悪」に苦しみ、死に怯えている人がいる以上、それを救うために全力を尽くすのが医師の務めだと考える。医師の仕事は「永遠の敗北」であるかもしれぬが、「敗北」を怖れない。彼が怖れるのは、人々が、そして自分が、監禁状態の中で掛け替えのない生を共有していることに無感動になることなのだ。「絶望に慣れることは絶望そのものよりもさらに悪い」、と彼は言う。およそ10ヵ月に及ぶペストが、この町の住民の意識をどのように変化させたかは分からない。その間医師の職務に専念した一人の人間が、多くの市民の「声」を、できるだけ私情をまじえず客観的に記述したのが本書である。
 ペストを契機として、小市民的と目されていた人物の「英雄的」行動による変身とともに、自分の利害に囚われた無惨な発狂者の行動も記録されている。だが、この小説が私たちを深く動かすのは、絶望的な状況にあっても「絶望に慣れること」を肯んじない人物たちの行動が描かれているからだ。「監禁状態」が終わる直前にペストに感染したタルーは、隔離病棟ではなくリウのアパートの一室で息を引き取る。彼の最後を見取るリウと彼の母親、それに対するタルーの無言の信頼を克明に描く一節は、映画の一場面を見るような緊迫感があり、この小説の白眉である。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.22
(5pt)

見事な寓意小説

[ASIN:4102114033 ペスト (新潮文庫)]ダニエル・デフォーの言葉を借りたエピグラフの一節「ある種の監禁状態を別のある種の監禁状態によって表現する」というところに、作者の創作意図とこの小説の寓意性を理解する手掛かりがある。ロビンソン・クルーソウがただ独り漂着した孤島で、いわば原始人の状態から「人間」への復活を果たす様子を描くことによって、デフォーが「文明人」には見えにくくなっている人間存在の基本的条件を再確認したように、カミュはペストの発生によって外部世界から遮断された「陸の孤島オランの住民」の生態を描くことによって、人工的な都市環境で生きる現代人には見えにくくなっている人間及びその共同的生の基盤を浮き彫りにしてみせたと言えるだろう。また「実際に存在するあるものを、存在しないあるものによって表現する」というエピグラフ中の一節は、〈事実〉に含まれる真実に迫るために有効な〈フィクション〉の持つ意味合いを示唆しており、小説家としての彼の立場が示されている。(ちなみにデフォ−は子どもの頃体験した1664-65年のペスト流行のすさまじい状況を、記録小説風の作『疫病年代記』に描いている。)

 作者は、生誕と死によって限定された人生を一種の「監禁状態」とみなし、、ペストによって「監禁状態」に置かれた登場人物それぞれの生き方と、医師の仕事を地道に果たすリウの行動を対比しながら、監禁状態における自由の可能性を探ろうしたと思われる。描かれる絵図に特徴的なのは、パヌルー神父をのぞいて、「神のない」あるいは「神が沈黙している」世界に生きる者たちの行動が太い輪郭で描かれていることだ。

 リウの最もよき理解者タルーは、この世界に存在する「絶対悪」と言うべきものに対してどういう態度を取るべきかを考えつづける。リウはそういう解決不能の形而上的問いを自分にたいして禁ずる。ペストという「悪」に苦しみ、死に怯えている人がいる以上、それを救うために全力を尽くすのが医師の務めだと考える。医師の仕事は「永遠の敗北」であるかもしれぬが、「敗北」を怖れない。彼が怖れるのは、人々が、そして自分が、監禁状態の中で掛け替えのない生を共有していることに無感動になることなのだ。「絶望に慣れることは絶望そのものよりもさらに悪い」、と彼は言う。およそ10ヵ月に及ぶペストが、この町の住民の意識をどのように変化させたかは分からない。その間医師の職務に専念した一人の人間が、多くの市民の「声」を、できるだけ私情をまじえず客観的に記述したのが本書である。
 ペストを契機として、小市民的と目されていた人物の「英雄的」行動による変身とともに、自分の利害に囚われた無惨な発狂者の行動も記録されている。だが、この小説が私たちを深く動かすのは、絶望的な状況にあっても「絶望に慣れること」を肯んじない人物たちの行動が描かれているからだ。「監禁状態」が終わる直前にペストに感染したタルーは、隔離病棟ではなくリウのアパートの一室で息を引き取る。彼の最後を見取るリウと彼の母親、それに対するタルーの無言の信頼を克明に描く一節は、映画の一場面を見るような緊迫感があり、この小説の白眉である。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.21
(4pt)

一瞬ノンフィクションかと思った

細かい描写と、街がパニックに陥るまでの詳細な記録に、ただただ圧倒されます。読んでる間、実は作者が実際に、ペストを体験したんじゃないの?と勘ぐった位です。でもこれフィクションなんですよね。うーん、凄いの一言。
 ストーリーとしてこれ程の傑作はないと断言できるのですが、なんというか、文章全体が読みづらい印象を受けました。和訳によるものか、カミュ独特の体裁なのか、フランス文学の決まり事なのかは分かりません。ただこの小説の事を「理解しづらい」のではなく、「読みづらい」と感じてしまったのは、私の読解力の乏しさに通ずるものだけではないと思います。

 他の人が訳したものはないのかな。あれば一度読み比べてみたいものです。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.20
(4pt)

一瞬ノンフィクションかと思った

細かい描写と、街がパニックに陥るまでの詳細な記録に、ただただ圧倒されます。読んでる間、実は作者が実際に、ペストを体験したんじゃないの?と勘ぐった位です。でもこれフィクションなんですよね。うーん、凄いの一言。
 ストーリーとしてこれ程の傑作はないと断言できるのですが、なんというか、文章全体が読みづらい印象を受けました。和訳によるものか、カミュ独特の体裁なのか、フランス文学の決まり事なのかは分かりません。ただこの小説の事を「理解しづらい」のではなく、「読みづらい」と感じてしまったのは、私の読解力の乏しさに通ずるものだけではないと思います。

 他の人が訳したものはないのかな。あれば一度読み比べてみたいものです。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.19
(4pt)

苦ではないな

偉大なるカミュの、代表作との呼び声もある『ペスト』。そもそも、何でこういう小説を書こうという気になるのか、凡人にはさっぱり分かりません。
しかも、ええっとアルジェリアではペストが流行したことがあったかな、とついうっかり調べてしまった。これフィクションですって?
登場人物は決して多くないけれど、極めて非日常的な「ペストの蔓延」という設定で、人間はどのようにふるまうのか、言わば想像で書いていることに
なりますが、これは実にありそうだなと思わせられます。
特に、街の偉いさん方がペストと認定するかどうかのあたりは、実にリアル。絶対こうなるよな。
訳者あとがきはものすごく難しいことが書かれていて、こんなふうに読まなきゃいけないのぉ?、とも思ったけれど、まあ私の感想としては「読み通す
のが決して苦じゃない小説」でした。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.18
(4pt)

苦ではないな

偉大なるカミュの、代表作との呼び声もある『ペスト』。そもそも、何でこういう小説を書こうという気になるのか、凡人にはさっぱり分かりません。
しかも、ええっとアルジェリアではペストが流行したことがあったかな、とついうっかり調べてしまった。これフィクションですって?
登場人物は決して多くないけれど、極めて非日常的な「ペストの蔓延」という設定で、人間はどのようにふるまうのか、言わば想像で書いていることに
なりますが、これは実にありそうだなと思わせられます。
特に、街の偉いさん方がペストと認定するかどうかのあたりは、実にリアル。絶対こうなるよな。
訳者あとがきはものすごく難しいことが書かれていて、こんなふうに読まなきゃいけないのぉ?、とも思ったけれど、まあ私の感想としては「読み通す
のが決して苦じゃない小説」でした。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.17
(5pt)

神の救済を問いながらも大エンターテイメントである長編 -カミュの最高傑作-

生と死、善と悪、そして神の救済の意味を問うた長編。
かつて熱烈なキリスト教信者であったカミュは、
創作を通じて神の存在を問い続けた。

「ペスト」はカミュの作品中、もっとも大きな構想、長いストーリー、たくさんの登場人物を擁した傑作だ。
疫病の前で神は沈黙し、
タルーを始めとする登場人物は、生きるため、他者を助けるために必死に行動する。
ペストが蔓延した街は封鎖され、ストーリーは一気に加速する。
物語の最後はどうなるのか、惹き込まれる。

テーマはずしりと重いのだが、
「ペスト」は娯楽小説としてのクオリティーが素晴らしく高い。
アルジェリアの港町の描写がすばらしくエキゾチック。
「ペスト」はこのノーベル賞作家の作品中で、もっとも大衆的でもあると思う。
そこが特筆すべき点なのだ。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.16
(5pt)

カミュの最高傑作

生と死、善と悪、そして神の救済の意味を問うた長編。
かつて熱烈なキリスト教信者であったカミュは、
創作を通じて神の存在を問い続けた。

「ペスト」はカミュの作品中、もっとも大きな構想、長いストーリー、たくさんの登場人物を擁した傑作だ。
タルーを始めとする登場人物は、必死に思考し、行動する。
ペストが蔓延した街は封鎖され、ストーリーは一気に加速する。
最後はどうなるのか、惹き込まれる。
テーマはずしりと重いのだが、
「ペスト」は娯楽小説としてのクオリティーが素晴らしく高い。
アルジェリアの港町の描写がすばらしくエキゾチック。
このノーベル賞作家の作品中、もっとも大衆的でもあると思う。
そこが特筆すべき点なのだ。

ぜひご一読を。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.15
(5pt)

終わりに神はない

ペストということばはこの作品においては三つほどの意味で使われている。
 1)病名であり、小説は表層的には、ペストという病原菌・極限状態に立ち向かうひとつの都市の人々が織り成す人間模様というストーリー構成をとる。
 2)世間一般の暗黙の常識。タルーが闘ってきた「死刑」というペストはこの意味である。死刑という制度を暗黙の領域として片付ける我々の思考がペストに冒されている。あるいはコタールにとってのペスト−−「孤独な、しかも孤独であることを欲しない一人の男をペストは一個の共謀者に仕立てた。なぜなら、明瞭にこれは一個の共謀者であるであり、しかも悦に入っている共謀者である」ということばも同じ意味になる。
 3)完全な悪、完全な死、無差別な悪、意志のない悪、不条理な人生を終わらせる悪=死。さまざまなことばで述べたが、P330「一見無用な悪」ということばが大仰でなく適切かもしれない。叫びながら死なざるを得なかった罪無き少年に象徴されるような死、それに何らかの意味を付与したいのなら、ペストを許容する神という存在をどうあっても受け入れ諦念するか(どんな悪も神の摂理であるというライプニッツの予定調和説)、神への信仰を捨てるか(遠藤周作が「沈黙」で取った結論だ)、という二者択一を迫るようなペストである。
 カミュにとって3)の問いが切実であったのは言うまでもない。岩を頂上まで運びながら、再び、岩が落ち頂上に運ばねばならない、そんな不条理な人生がどういう仕方で終わろうが、そこに神は関与しない、単に終わるだけだというメッセージがあくまで冷徹にペストによる死人を描写する文体から読み取れないだろうか?
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.14
(5pt)

終わりに神はない

ペストということばはこの作品においては三つほどの意味で使われている。
 1)病名であり、小説は表層的には、ペストという病原菌・極限状態に立ち向かうひとつの都市の人々が織り成す人間模様というストーリー構成をとる。
 2)世間一般の暗黙の常識。タルーが闘ってきた「死刑」というペストはこの意味である。死刑という制度を暗黙の領域として片付ける我々の思考がペストに冒されている。あるいはコタールにとってのペスト−−「孤独な、しかも孤独であることを欲しない一人の男をペストは一個の共謀者に仕立てた。なぜなら、明瞭にこれは一個の共謀者であるであり、しかも悦に入っている共謀者である」ということばも同じ意味になる。
 3)完全な悪、完全な死、無差別な悪、意志のない悪、不条理な人生を終わらせる悪=死。さまざまなことばで述べたが、P330「一見無用な悪」ということばが大仰でなく適切かもしれない。叫びながら死なざるを得なかった罪無き少年に象徴されるような死、それに何らかの意味を付与したいのなら、ペストを許容する神という存在をどうあっても受け入れ諦念するか(どんな悪も神の摂理であるというライプニッツの予定調和説)、神への信仰を捨てるか(遠藤周作が「沈黙」で取った結論だ)、という二者択一を迫るようなペストである。
 カミュにとって3)の問いが切実であったのは言うまでもない。岩を頂上まで運びながら、再び、岩が落ち頂上に運ばねばならない、そんな不条理な人生がどういう仕方で終わろうが、そこに神は関与しない、単に終わるだけだというメッセージがあくまで冷徹にペストによる死人を描写する文体から読み取れないだろうか?
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.13
(5pt)

同じ舞台、それぞれの選択

この物語には、実に多くの人間が、そして多くの人間の心が登場する。

「壁の内の人間」と「壁の外の人間」。
「嘆く人間」と「動く人間」。
「生きる人間」と「死ぬ人間」。
「信じる人間」と「信じない人間」。
「帰る場所のある人間」と「帰る場所を失った人間」。

ペストは、人々を容赦なく分断するが、同時に人々を強制的に平等にする。
死の恐怖は、誰にでも等しく訪れる。
その中でどう生きるか、どう選択するかで、その人の「生きること」の価値が問われる気がする。

ここには、同じ舞台で、さまざまな「選択肢」、そして人々の「選択」が提示されている。
自分だったらどうするだろうと、意識をペストの壁の中に放り込んで、自分なりの答えを見つけてみたい。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.12
(5pt)

同じ舞台、それぞれの選択

この物語には、実に多くの人間が、そして多くの人間の心が登場する。

「壁の内の人間」と「壁の外の人間」。
「嘆く人間」と「動く人間」。
「生きる人間」と「死ぬ人間」。
「信じる人間」と「信じない人間」。
「帰る場所のある人間」と「帰る場所を失った人間」。

ペストは、人々を容赦なく分断するが、同時に人々を強制的に平等にする。
死の恐怖は、誰にでも等しく訪れる。
その中でどう生きるか、どう選択するかで、その人の「生きること」の価値が問われる気がする。

ここには、同じ舞台で、さまざまな「選択肢」、そして人々の「選択」が提示されている。
自分だったらどうするだろうと、意識をペストの壁の中に放り込んで、自分なりの答えを見つけてみたい。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.11
(5pt)

絶妙な人間描写

カミュの、ペスト蔓延下の人間描写や考察は客観的で冷めており、皮肉めいているとさえいえます。

私はナチスや戦争を連想せずに、むしろそのことに興味を覚えました。

タルーの慈善事業にさえ、安直な判定を下さず、的確で説得性のある(という印象を私は受けました)指摘で見事(?)にあしらっています。

私にはどうも、カミュは「常識的」とされている人間心理に疑問を投げかけているように思えるのです。

文句なしに世界の名著の1つといえます。

人生に一度は読むべきではないかと。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.10
(5pt)

絶妙な人間描写

カミュの、ペスト蔓延下の人間描写や考察は客観的で冷めており、皮肉めいているとさえいえます。

私はナチスや戦争を連想せずに、むしろそのことに興味を覚えました。

タルーの慈善事業にさえ、安直な判定を下さず、的確で説得性のある(という印象を私は受けました)指摘で見事(?)にあしらっています。

私にはどうも、カミュは「常識的」とされている人間心理に疑問を投げかけているように思えるのです。

文句なしに世界の名著の1つといえます。

人生に一度は読むべきではないかと。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.9
(5pt)

恐慌時の人間模様を描き切った秀作

中世さながらに突然「ペスト」が蔓延した町。その発端から、蔓延の過程、その過程の中で暴かれる人間のエゴ、パニック心理、そして解決への努力等、様々な人間模様を描き切った秀作。作者に取っては、本書執筆前の対ナチス闘争を反映した政治に対する問いかけも含まれている。

この人間模様を冷静かつ臨場感溢れる筆致で描くため、敢えて三人称で書かずに、作品の冒頭から結末まで通して主要な役割を演ずる医者の目を通して描くという手法を取っている。しかも、この一人称が誰の手によるものかは最後まで伏せられているのだ。誰が見ても、一人称の書き手はこの医者しかいないと思えるのに、それを伏せておいた作者の考えは今でも理解できない。何か特別の理由があるのだろうか ?

「ペスト」の蔓延時には町は他の地域とは遮断されてしまう。この隔絶性が上記の人間模様をより鮮明に浮き彫りにしており、これが作者が「ペスト」を題材に選んだ理由であろう。隔絶した社会の中で恐慌が起きた状況を利用して、種々の人間模様を描き切った秀作。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.8
(5pt)

恐慌時の人間模様を描き切った秀作

中世さながらに突然「ペスト」が蔓延した町。その発端から、蔓延の過程、その過程の中で暴かれる人間のエゴ、パニック心理、そして解決への努力等、様々な人間模様を描き切った秀作。作者に取っては、本書執筆前の対ナチス闘争を反映した政治に対する問いかけも含まれている。

この人間模様を冷静かつ臨場感溢れる筆致で描くため、敢えて三人称で書かずに、作品の冒頭から結末まで通して主要な役割を演ずる医者の目を通して描くという手法を取っている。しかも、この一人称が誰の手によるものかは最後まで伏せられているのだ。誰が見ても、一人称の書き手はこの医者しかいないと思えるのに、それを伏せておいた作者の考えは今でも理解できない。何か特別の理由があるのだろうか ?

「ペスト」の蔓延時には町は他の地域とは遮断されてしまう。この隔絶性が上記の人間模様をより鮮明に浮き彫りにしており、これが作者が「ペスト」を題材に選んだ理由であろう。隔絶した社会の中で恐慌が起きた状況を利用して、種々の人間模様を描き切った秀作。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033
No.7
(4pt)

死神の鎌

疫病の流行で封鎖された都市で、それぞれに生きていく人々を描いている。医者として最前線で戦うリウー、彼を助ける多くの人。それとは対照的に、外へ出ることを関心事にする人やペストを神の裁きと説く神父。それに保身のために封鎖状態が続くことを願う男や、無気力に侵され何もしないでただ過ごすだけの人々。それらの人の中を、ペストは無差別に襲い犠牲者を出していった。

伝染病で封鎖されたときの集団心理を見事に描き出しているが、戦争とからめてペストを解釈するのが一般的だろう。ナチスだという解釈もあるが、これはもっと大きな悪そのものである。第一次世界大戦で父を亡くし、第二次世界大戦のナチスの弾圧を見つめていたカミュにとって、ペストは戦争を引き起こすことや、それに対抗することでやはり人を死に追いやることを現していたのだろう。戦争を引き起こした人間を裁くこともまた、人に死を与えることを正当化するペストである。そしてそれは誰の心の中にもある。だからこそそれを認識し、表に出ないようにしなければならないとリウーは語る。ペストは沈静化しただけで根絶したのではないからだ。
ペスト Amazon書評・レビュー: ペストより
B00G45R5CG
No.6
(4pt)

死神の鎌

疫病の流行で封鎖された都市で、それぞれに生きていく人々を描いている。医者として最前線で戦うリウー、彼を助ける多くの人。それとは対照的に、外へ出ることを関心事にする人やペストを神の裁きと説く神父。それに保身のために封鎖状態が続くことを願う男や、無気力に侵され何もしないでただ過ごすだけの人々。それらの人の中を、ペストは無差別に襲い犠牲者を出していった。

伝染病で封鎖されたときの集団心理を見事に描き出しているが、戦争とからめてペストを解釈するのが一般的だろう。ナチスだという解釈もあるが、これはもっと大きな悪そのものである。第一次世界大戦で父を亡くし、第二次世界大戦のナチスの弾圧を見つめていたカミュにとって、ペストは戦争を引き起こすことや、それに対抗することでやはり人を死に追いやることを現していたのだろう。戦争を引き起こした人間を裁くこともまた、人に死を与えることを正当化するペストである。そしてそれは誰の心の中にもある。だからこそそれを認識し、表に出ないようにしなければならないとリウーは語る。ペストは沈静化しただけで根絶したのではないからだ。
ペスト (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ペスト (新潮文庫)より
4102114033