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秘密
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秘密の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.07pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全480件 241~260 13/24ページ
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これまで本は割りと読んできたが、間違いなく3本指に入る感動を与えてくれた。 これが優れた文学というものにあたるのかどうかは分からないが、家庭を持ったことのある中年男として、はじまりから共感でき、読みながら涙、笑いをこらえるのが難しかった。ここにあるのは、ひょっとしたら美しい文体というものではないのかもしれないが、稀有な物語にまとう感動を失われることなくストレートに伝えてくれる。 400ページを超える大作だが、読み始めのハイペースは最後まで落ちることはなかった。退屈にさせる要素は皆無。 娘を守ろうとする母の無意識の献身の描写は涙を誘い、主人公が娘(妻)のストーカーそのものと化す場面では、吹きだしてしまいそうになる。このあたりの異常にも思える行動を想起できる想像力は、それこそ才能なのだろう。そして、その内容を伝える文体が不器用にもストレートながら、それが逆にただならぬ主人公の心情をより際立たせている。 | ||||
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心は大人のままで、もし若返ってしまったら、大人のときの気持ちを持ち続けられるのか、、、 さらに、それが夫婦であり、若返るのが妻であり、若返り先(?)が死んでしまった娘である、という手の混んだ設定。 どういう風におさめるのか、と思いながら読み進めましたが、不覚にもラストで泣いてしまいました。 レビューには主人公二人に対する批判が多いですが、46歳(妻は6年前に他界)の私としては、二人の気持ちの変化はとても自然に感じられました。 若返ったことにより、愛していた夫を徐々に父親としか見られなくなってくる妻。そんな妻(娘)の気持ちを理解しようと努めながらもジェラシーを押さえられない夫。 どうしようもないもどかしさ、悲しさ、切なさです。 奇想天外な設定だけに、きれいごとで終わらせることはいくらでもできるでしょうが、どろどろとした人間のいやな部分、弱さも見せながら、ラストにきれいごとではない思いもよらぬ展開を用意しています。 読後になんともいえない余韻が残りました。 間違いなく傑作です。 | ||||
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スキーバスの交通事故で、妻を亡くし、娘だけは一命を取り留めた。 気がついた娘の魂?は、妻のそれが入っていた・・・という感じで始まる話です。 最初は、戸惑いながらも二人で協力して生きていく、そしてその環境が面白可笑しく書かれているのですが、やはり親心?なのか、娘がもし戻るようなことがあればということを考えたのか、私立中学への進学のための受験勉強を始める等、すれ違いがうまれる。このあたりから、続きが読みたいけど読み進める程、なんともいえない気持ちが自分の中で広がっていきます。 別の方も書かれていましたが、主人公(旦那)視点で物語が描かれているので、 妻が何を考えているのかわかりません。 ラストの秘密、主人公の考える通りだったのか? そうであれば、妻は何を思ったのか? 旦那を楽にするための秘密であってほしいけど、仮にそうであっても 納得がいかない。読み終わってここまで考え込んだ小説は初めてです。 もう1度読めば、また変わった解釈や発見があるのかもしれませんが、 当分読む気になれそうにありません・・・ ただ、最後まで読まなければならないようなストーリーは、流石!という感じです。 | ||||
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何回読み返したことか(≧∇≦)1番好きな小説です。 | ||||
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秘密を抱えて生きることはたやすくないでしょう。 だけど何故それを敢えてするのか?という所に思いをはせると、「自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ」という決断をしたからなんだと思います。 父親で無い事が分かったのに「父親の気持ちになれるかどうかということばかり考えた自分はおろかだった。好きだった息子にとっては自分が父親として振舞う事が大事なんだ」と気づく一人の登場人物の言葉は、夫も娘も愛する母親としての直子の苦渋の選択も、同様の判断に基づくものなのだという作者からのメッセージだと思います。 母親に対してずるいと感じた人もいるようですが、私は、自分を消す辛い選択をした彼女だって悩んだろうと思います。彼女にしてみれば、娘の体に母親たる自分の魂が宿っている状態では、夫と夫婦の営みができなかったし、夫は再婚にも踏み切りません。しかも、娘の姿では、同年代の異性からのアプローチは絶えず、中身は妻なのにと思っている夫は気をもむ。であればいっそのこと、娘には娘の幸せを追求してもらい、夫には妻と娘をなくした人間として再出発してもらうのはどうか・・・と。 本当に娘の体に娘の精神が少したりとも戻ってきたのかは良く分からず、そうでないとしたら母親は相当演技した事になりますし、結婚した後もずっとその演技をしょっていくと考えたら、相当辛い判断だと思います。 でも事故で二人いっぺんに失わず、一人を取り戻したかと思ったら、最終的にはどちらも失ってしまうなんて、主人公の平介には辛すぎますね。ましてや、娘が妻の精神のままで結婚したのであれば、男性としてはどんな気持ちになるのだろうと思うと、女の私には想像がつきません。また娘が25歳のタイミングで再出発しようにも遅いような気も。 ただ、これ以外にも、「父親にとっちゃあ、娘とのデートってのは、一生に何度もない晴れ舞台だからねえ」なんてくだりに、生前の父親と二人でしたデートを少ししか思い出せなかった娘としては琴線にふれるものがありましたし、家族を大事に想う心とか、家族への感謝が蘇ると思うので、総じて読んで損はない本だと思います。 書き方については、文脈からすると「直子」と「藻奈美」が逆じゃないかと思うことや、「変な気になるわけない」(変な気にならずにいられない、では?)など、誰が読んでも同じ意味に捉えられない箇所がいくつかあったのと、藻奈美の体にどちらの精神が宿っていたのかは分かりませんが、母親と娘の死を間接的に招いたといっても過言ではない男と結婚するだろうか?という所には共感できなかったので、その分評点を下げました。 | ||||
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子供が殺される、ひどい目にあうと いった作品はいくつか読んだことがある。 しかし、この作品はたしかにいろいろな苦悩はあるが、 一見、酷いことが起こったように思えない感じで物語が 進行していく。そうして、あーーーーって感じですかねえ。 私が鈍感なのか?こういう残酷なことってあるんだなあと 思いました。最高に面白かったです。 | ||||
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私がこの作品を読むのは今回が2回目なのだが、最初にこの作品を読んだときに強く感じたのが、この作品ほど、前半と後半で雰囲気の異なる作品は、珍しいのではないだろうかということだった。 私は、「泣ける」という前評判を知って、この作品を読み始めたのだが、前半では、自分たちの置かれた境遇に戸惑い、合わせ切れない夫と妻の言動が、ときにコミカルに描かれており、思わずクスッと笑ってしまい、深刻な設定のわりには、深刻感に欠けるところがあるのだ。また、事故で生き残った娘の体に死んだ妻の心が宿るという、現実にはあり得ない非科学的な設定に、深刻感を感情移入しにくいという点もあいまって、「泣ける」という前評判と、実際に読んで感じた印象との間のギャップに、かなりの戸惑いを感じたものだった。 それでも、後半になると、前半とは一転、物語は、シリアス一色に染まっていき、この作品が、なぜこれほどまでに版を重ね、映画化もされたのか、その真価が次第に明らかとなっていき、しっかりと泣かせてくれる。また、ラストでは、この作品のタイトルの真の意味も明らかとなり、この作品が、ある意味、ミステリであったことにも気付かされる。 後に読んだ文庫本「毒笑小説」の東野圭吾と京極夏彦の巻末特別対談によると、東野圭吾は、この作品について、「この作品の原型となった短編のおやじの慌てぶりのドタバタが、もっと面白くなるはずだと思い」、「最初は、笑わそう、笑わそうと思いながら書き始めたのだが、笑うスイッチと泣くスイッチは近所にあり、ああなってしまった」と語っている。 私は、この作品を傑作だと思うが、この作品の成り立ちの経緯から来る前半と後半のギャップを、「作品全体の不統一感」と否定的に捉えるのか、「コミカルな前半があるからこそ、後半の泣きが、より一層、引き立った」と肯定的に捉えるのかによって、評価が変わってくるところがあるかもしれない。 | ||||
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さすが東野圭吾。感動しました。 交通事故にあった妻と娘。 娘の体の中には妻の心が宿り、妻の体は死んでしまった。 娘として生活する妻の心、夫を愛しているが、この体ではキスを交わすことも抱き合うこともできない。 なにより娘の魂を押しのけて入り込んでしまった自分。 何故娘を死なせてしまったのか、あの子には自分のできなかった夢にむかって精一杯生きてほしかったのに。 夫も娘の中にいる妻の心のせいで前に進めない。 あなたは私を見ていたときの愛しい目で見てくれるけれど、あなたの目の前にいるのはあなたの娘なのよ。 そして妻はある『秘密』をもつ。。。。 心と心はすれ違って、奥の奥の場所で繋がっていく悲しい悲しい暖かい愛のお話です。 | ||||
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娘の体に「妻」が宿る。 そして生活が始まり、いつかはその矛盾に対する彼らなりの答えを出さねばならない。 そして、その「彼らなりの答え」が最後の数十ページにある。 読者の数だけ読後感が大きく異なる本だと思うが、超現実的な状況設定が故に、それもまた当然だろう。 私個人としては、彼らなりには、「自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ」という本にも触れられている一つの道しるべが貫かれているように思えた。 直子の行動に意見もあるようだが、結局は、愛する藻奈美がいつ帰ってきても幸せに残りの人生を再開できるように最大限の愛情を形にしたのだろう。 決して、直子が自分の人生をやり直しているようには感じなかった。 当たり前だが、「秘密」の中の答えは、平介と直美の出した答え。 読者がどういう答えを出すか、読後感を反芻しながら自分に置き換える事も考えると、長く付き合うことになる小説かも。 ん〜、読み終えた直後より、数時間、数日と経ちいろんな思いが去来する小説である。 | ||||
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夫婦の愛、親子の愛、共にかけがえがなく、決して比べることができない二つを 時に交差させ、離し。そして非現実的なテーマをあえて男目線という超現実的な 視点で読み手をリードする。 一見矛盾するテーマがバランスのいい構成の中でどんどん進んでいきます。 物語のキーとなる登場人物の女性たちにも、つい、色々な昔の思い出を重ねてしまいました。 そして最後にいつまでも共に幸せであることが許されないと分かった時、 大好きで大切な人を苦しめる運命から救い、解き放つために自分ができる唯一の事とは。 これこそ究極の答えであり、それができるのが究極の愛なのでしょう。 読み終えたあとはため息ばかりで、しばらく動けずにいました。 読んでいる間は主人公の平介にじれったくなったり、どうしてそんな風に考えたりするんだろう って思ったりもしましたが、一度読み終えた後に必ず読み返すことになるラストの展開は 見事としか言いようがありません。 もっと早く読むべきだったと後悔していますが、逆に主人公に近い年齢になっている からこそ余計に心に染みるのかもしれません。 ご同輩、必読です。 | ||||
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死んだはずの妻が娘の体内に宿ったことで、再び夫婦幸せに暮らしました・・・となりそうだが、 実際は気持ちのすれ違い、夫婦の営みの問題、孤独、寂しさ、もどかしさに悩まされる。 死んだ妻が娘の体に宿る、というと一見メルヘン的なストーリーかと思うが、極めて現実的な話だ。 個人的には平介に感情移入してしまい、直子が自分勝手に思えてならない。 直子は若返り、もう一度人生をやり直せ、ちゃっかり結婚までする。 しかし平介は、妻と娘を永遠に失い、喪失感だけが残る。 いっそのこと、ありきたりだが、直子が途中で消え藻奈美が戻ってきて欲しかった。 | ||||
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読み終わってから1年以上たってレビューを書いてます。 今思い出すのは、「ラストの展開」と「ブルーでやるせない感情」です(-_-;) ブルーな感情は後味が悪いって意味ではなくて、 いろいろな登場人物の想いをふまえるとそうなってしまいます。 個人的には、登場人物のやることに、共感や賛同はできませんがね。 感情を呼び起こすという意味では、価値がある作品で、オススメしたいです(^_^)/ ※注意:おもーい作品を読んでもいい時期に読んでくださいね。 | ||||
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おなじ男として平介にはかなり共感するところがあり、直子の行動に違和感を感じる事もあった。ただ、もし最後の秘密が秘密のまま進んでいたら・・・平介は普通の父親としてその後の人生を送れたと思う。娘夫婦と同居してたかもしれないし、違うとしても夫は平介と同じ会社だから家もそう遠くないはず。そのうち孫の顔も見れたと思う。直子が1人で秘密を抱えて生きていくつもりだったんじゃないかなぁ。それが直子の考える平介の幸せだったと思う。だから、結末はとても切ない。 | ||||
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20代の男性です。平介と直子の夫婦愛に涙してしまいました。 レビューを見ると直子は酷い、自分勝手と言ってる人 もいるようですが、自分はそうは思いませんでした。 直子は平介を本当に愛しているからこそ、あのような行動を とったのではないでしょうか。 どうしたら、平介にとって一番良いのか、このままでは平介を今以上に 苦しめるのではないだろうかと考え抜いた結果があの『秘密』だったのだと思います。 きっと直子にとっては本当に辛くて、苦しい選択であったに違いありません。 そして、『秘密』を知った平介も直子のとった行動に深い愛を感じたのではないでしょうか。 自分のために、直子は本当の感情を心に抑え、娘として何年も振る舞ってくれた。 それは、本当に心から愛してくれているからこその行動なんだと平介自身も感じていたんだと思います。 だからこそ、最後に平介は直子に『秘密』について何も触れなかったのだと思うし、触れないことが平介の 直子に対する愛なのだと感じました。 人によって受け止め方が違うとは思いますが、自分にとっては夫婦愛の尊さを感じる 名作だと思います。 | ||||
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序盤からさりげなく張られた伏線(図書館での調べものの場面等)により終盤の展開を予感させられたが、作者の術中にはまり、平介同様完全に騙された。しかも主に平介の立場から描かれる物語に感情移入したこともあいまって、ラストで平介が受ける喪失感に打ちのめされた。読後1週間は、他に選択肢はなかったのだろうか、竹輪の夜に直子は何を考えたのだろうか、と余韻が頭から離れない。 ラストは賛否分かれると思う。しかし、精神は直子でも、肉体としての脳は藻奈美のものであり、直子の精神自体も若い脳の影響を受けていることを示唆する描写が有るところがこの小説の緻密なところだと思う。いつの間にか数学が得意になっていたように、また小学生の頃は性欲がなかったように、感情面でも藻奈美の脳の影響を受けていたのだろう。そう考えれば、直子の選択は認めたくはないが、認めざるを得ないほど説得力が有るように感じた。 夫婦でも相手のことを完全に理解して/されているわけではなく、また大なり小なり秘密はあるが(さすがに本作ほどの「秘密」はないだろうが)、それでも相手のことが大切に感じる、とても良い作品だと思う。 | ||||
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―自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ― この言葉が平介の心を大きく揺さぶった。 藻奈美を直子としてではなく娘として見ようと決心し、「直子」ではなく「藻奈美」と呼んだ。 夫平介の決意を受け止め、娘として人生を歩む決意をした妻直子。 しかし平介に対しては直子の意識が消滅したかのように振舞うのが切ない・・・。 山下公園でわあわあと泣いた「藻奈美」。 自分自身にさようならをする決意を固めた敬意とさようならをした瞬間、 そしてその苦悩を平介が知った・・・全てが切なすぎる・・・。 | ||||
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本を読んでみたいと思い、姉に「何か面白い本ない?」と聞きこの本を薦められました。 秘密…東野圭吾さんの作品を初めて読んだ本です。 読んでいくうちに序盤から惹きつけられる内容で、展開が気になってしかたのない物語です。 自分は当初秘密ってこういう意味だったんだと思っていたのだが 最後に秘密の意味を知ったとき、感動がどっときた気がしました。 他のレビューで書かれているように読み終わった後ただ呆然とした自分がいました。 そして、読み返しもしました。 確かに、夫・平介の気持ちも分かるけど、直子は平介のことをずっと好きだった。 ただ、直子の体が藻奈美だということで、直子自身もどうしていいか分からなくなったと思う。だから、あの日直子は苦渋の選択をした。 きっと、あの後も平介のいないところで何度も悩み泣いたのだろう。 でも、自分が平介の立場だったらやっぱり平介と同じことをしていたと思います。そこは男として平介に同情しますからね… 映画はありますけど、今更ですがドラマもあったら良いなと僕は思っております。 | ||||
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素直に、凄い。 そう思いました。 男性が読むと(私も男です)、平介かわいそう…とか、 直子ってなんなの!?って思うかもしれませんが、 自分が女性になったとして(出来るわけないのに)考えてみたら、 いつか戻ってくるかもしれない娘のために、直子はベストな選択をしたんじゃないのかなあ… と思えてきちゃいます。 これからもこの杉田家を見守っていきたいだとか、 一読者としては、そう思ってしまいます。 私は、東野圭吾さんの作品は、ガリレオシリーズをとるのが先だったので、 秘密よりも先に市川拓司さんの「いま、会いにゆきます」 を、読破した後の感想と似ているものを持ちました。 ただ、男・女・大人・子供…そんな多重な人物像をここまで見事に表現できた今作は、 あの時の気持ちを上回った。本来、作家さんの比較とかそういうのはしたくないのですがね…。 これは、とんでもない作品です。 | ||||
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「秘密」の内容を知ったとき、なにか重く暗いものがずんとのしかかった。あまりにも残酷なふたりのやさしさ。 | ||||
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多くの人が興味深いレビューを書いているのであえて書くことはないが、二つだけ。 子供に対する描写や想いが少ないと言う意見があるが、それは仕方ないであろう。 姿形は藻奈美のそれでも中身は完璧な直子。 今ここに存在しない者よりも、目の前にいて語りかけてくる者に比重が傾いてしまうのは道理であろう。 そして、この物語はあくまで夫婦が主役。子供の存在は重要なキーワードではあるが脇役。 切羽詰った二人が、それでも体を重ねられなかったこと。父と娘を演じながら生きていかなければならないこと。 長々とは書かないが、この二つだけでも我が子への想いは十分感じられる。 論争になっている結末部。 東野氏がちょっとミスったなと感じる。 直子を消してから9年後でも、時計店主に「お父さんには絶対に話さないで」と言った藻奈美=直子であるからには、過ぎし日の平介の苦しみやもがきも忘れていまい。 そして直子の存在について二重人格論を主張したぐらいだから、あえて店主に口止めをする必然性もない。 違う言い方をすれば、平介がその事実を知る可能性があり知ってしまったときの心情を考えれば、藻奈美として生まれ変わった後の聡明な直子ならば、 単に「母の形見を再利用したい」と店主に頼んだだけであろうし、平介にもそれを積極的に提案するぐらいではなかろうか。 指輪の件がばれることもメッセージと解釈している人もいるが、それでは山下公園で夫婦であることを捨てた意味がなくなってしまう。 直子の立場から言えば、あそこでさよならをしたことが思いやりでもあるはず。それを根底から覆すような真似をするはずがない。 とするとラストはちょっとやりすぎかなと思うしかない。 東野氏が選択した結末に比べ凡庸にはなるが、平介には安らかに娘を送り出させ、読者に”直子はいまだ藻奈美の中で生きている”と悟らせるほうがずっとスムーズだったのではなかろうか。 奇をてらったり驚かせたりばかりがいいものでもない。 ただ非常に読み応えがあったし、考えさせられ、強烈な印象が残った1冊だった。 また、これだけのレビューがついてああだこうだと論争になっているのは、一作家としては大成功でしょう。 | ||||
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