黒魔術の女
評判
黒魔術の女の評価:
3.86/5点 レビュー 7件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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黒魔術の女の評価:
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ところが前作の「星のふる里」「霧の神話」と続けて女性向けのサスペンス小説を書き著作の範囲を広範なものとし、一層活躍の場を増やしました。しかし本作品は女性にとってはショッキングな内容の序章から始まります。
総合レジャーランドの経営で急伸した日平開発のエリート営業マン、山際三郎・尾賀高良・海原正司の三人は週末の楽しみとしていたガールハントのため最寄りの駅前(駅名は伏せます)で待ち伏せます。電車から降りて家路へ向かう女性に声をかけ、家まで送ると巧みに近寄り二人の女性を車に連れ込みます。
ところが三人は、家まで送るどころか人気の無く光の無い沼地の畔に車を乗り入れ、二人の女性を暴行して置き去りにします。翌日三人は、ニュースを見ると昨日男の欲望を果たし棄て去ったはずの一人の女性が全裸で、しかも局部を切り刻まれた姿で遺体となって発見されたのでした。
その晩連れ去られた女は、中道鴇子と深杉啓子でした。惨殺された遺体は深杉啓子のものと確認されました。男三人は強姦(これだけでも極悪犯罪)したものの殺人はしていない。このままでは自分たちが殺人の罪まで被ってしまうと危惧します。盗人猛々しいとはこのことで、なんとか殺人の罪は免れねばと自分勝手で卑怯、下劣な考えをします。
一方、二人のうち深杉啓子を惨殺遺体となって発見されたものの、もう一人の女、中沢鴇子の消息が分からない。これだけ県下で大きなショッキングなニュースになり大規模な捜査が行われているにも関わらず鴇子の行方がどうしても分からないのでした。
三人は、この女の行方が非常に気になります。エリート営業社員として地位、さらには将来の出世が目の前に見えているだけに、少しのスリルを味わうための遊びで行ったこと(犯罪です、遊びではありません)が、自分たちの身を滅ぼしかねないと狼狽えるのでした。自分たちの行ったことを反省もせずに、なんと勝手なことでしょう。
三人は中道鴇子の所在を懸命に探り出そうとします。警察捜査でも難渋しているのに、それは難しいことでした。そんな時、三人組のひとりが変死体となって発見されるのでした。残った二人は、すぐにもう一人の女、鴇子の復讐だと気が付きます、が、警察には届けられません。
ここから中道鴇子の男たちへの復讐が始まります。しかし鴇子には復讐目的以外に知られてはいけない身体の秘密が有ったのです。秘密を知った、この三人が生きていては自分の恵まれた安穏とした生活が失われてしまうからでした。ここからが読み応えのあるところなので梗概(あらすじ)は控えたいと思います。
森村氏は、これまでに大企業や政治家、官僚といった巨大な権力を持つ者から、虫けらのように切り捨てられた若者たちが徒手空拳(なにも持たない。武器や資金が無い)で、その権力に立ち向かう姿を多く書いてきました。その若者たちの活躍により権力を失い無一物となり落ちぶれる姿に溜飲が下がる思いでした。
本作品は暴行を受けた鴇子が、悪しき三人組に復讐してゆく話です。しかし鴇子には先天的に女性器に異常があり、また謎の神秘学会と関係があるという背景を持たせて復讐行為を実にオカルティズムに描いているところに妙味があります。三人組が勤める日平開発は土地取得にあたり政界工作を行うというプロットを横軸に絡めるのですから、読み応え十分です。
森村氏は本作中で、企業の実績主義とは、社員たちの過去や学歴など問わず能力があり成績が優秀なら、その人間を評価するという、いかにも公明正大な制度のように思えるが、実績が下がってしまえば過去の実績に対し恩給は払わない“人間の使い捨て制度”なのだと書いています。使い捨てされるべき男たち、まさに三人組のことを表していると思います。