さよなら渓谷
評判
さよなら渓谷の評価:
3.58/5点 レビュー 88件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全32件 21〜32 2/2ページ
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さよなら渓谷の評価:
3.58/5点 レビュー 88件。 C ランク
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しかし、個人的にはテーマが使い古されたものにしか思えない。
2人が背徳的な秘密を抱え、社会から隠れるようにひっそりと暮らすというのは夏目漱石の『門』をはじめ、いくつかの優れた文学作品でみられてきたことだし、愛という幻想のもと、全てを失っていく男の姿は最近ではミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』に昇華されている。
映像となったものをみて、違和感を感じてしまうのは、主人公のレイプされた女性である。あくまでも個人的な印象だが、彼女の姿は、いわゆるボーダーラインと呼ばれるような情緒不安定な女性の姿にしかみえなかったのは残念だった。2人が一緒になる経過を描いた部分では、アンビバレンツな感情の発露が稚拙に描かれており、ついてきて欲しいけどついてきて欲しくないというのを、ほんとうに2人の逃避行になぞらえて描くのはいかがなものかと感じた。
彼女の過去もレイプ事件によって陰惨なものとなったということであるが、DVの主人やリストカットなどの経過をみていると、距離感がうまくとれない女性の典型的な姿と見えてしまう。これは男性的な視点でしかないし、女性にとっては不快感を与えるかもしれないが、そういう不安定さはひとつの女性特有のものであり、男がそういうものに惹かれてしまうというのは、アンナ・カレーニナをはじめ、至る所で描かれてきた。
奇しくも、主演の真木さんというのは前の映画『ベロニカは死ぬことにした』で、そうした情緒不安的な女性を演じており、なにかリンクするようなものがあったのだろうか。
また夫を偽の密告で貶めるというのも、明確な容疑者が先に捕まっていることから、すぐにばれることと思うのは当然で、どうしてこの作品のように主人が警察から執拗に責められるのか、そこは理解できなかった。
主人公の女性は、レイプのときに自分をおいていった女性の名前を騙り、自分を辱めた男性を屈折的に愛し、社会から隔絶されたような渓谷に暮らす。しかし、今回の事件のような揺さぶりがはいると、すぐに自分の主人の愛を試さずにはいられない。彼女はレイプされた過去におびえながら、同時にその過去(レイプした男)に依存していきている。最後に彼女が自分で決めないとというのは、そうした共依存の状況から抜けられるかどうかは彼女次第であり、主人が愛という幻想の中で生きる事を決め、自分に無制限の愛を与えてくれることが確信されたために発せられたものであると感じる。彼女が自律的に生きていくこと、それが渓谷にさよならをするということだろう。しかし、この小説のエピソードからは、そうした状況にはならないというのがわかる。だから、彼女はまた渓谷に必ず戻ってくると思われるのである。