破壊された男
評判
破壊された男の評価:
4.13/5点 レビュー 15件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全28件 21〜28 2/2ページ
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破壊された男の評価:
4.13/5点 レビュー 15件。 B ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
経営危機に陥ったモナーク産業の社長ベン・ライクは買収を計画したライバル会社ドコートニイ・カルテルの社長を殺害する。心理捜査局のエスパー総監リンク・パウエルはライクを容疑者とみて追及するが、確たる証拠を見つけることができない…。
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1953年に出版され、第1回ヒューゴー賞を受賞した古典SFです。寺田克也氏のおどろおどろしいカバーイラストを目にして、これがかなり怪異に満ちた小説なのだろうと構えた上で頁を繰り始めたのですが、私のこの予想を裏切る奇妙なユーモアが全編を覆っていることに早々に気づきました。
そもそもライクがコートニイを殺すに至る経緯が、ライクの勘違いにあります。冷静な読者であれば、なぜこれが殺害の動機になるのかと首をかしげたくなるほど迂闊な話で、私は一瞬、このくだりはひょっとしたらベテラン訳者・伊藤典夫氏の誤訳ではないかと思い込んだほど。ライクの粗忽者ぶりたるや苦笑を禁じ得ません。
またライクの凶器は古風な拳銃なのですが、銃というものがこの300年ほどで姿を消してしまった世界での殺人事件であるため、死因を特定できない捜査当局の会話がなんとも珍妙な展開を見せます。ここも思わず笑ってしまいました。
さらには、エスパー2人がテレパシーで交わす会話は、頁の上下で別れて当世風のLINEのやりとりのように記述されます。そのところどころに<笑っている馬のイメージ>だの<ウィンクした眼のイメージ>だのが挿(さしはさ)まれるさまは、現代の絵文字あるいはスタンプと全く同じ。サム・@キンズと書いてアトキンズ、ワイ&(原著ではWyg&)と書いてワイガンドと読ませるところもネット時代を先取りしていると言わざるを得ません。1950年代にこうした表現方法はポップかつクールこの上なかったことでしょう。
フィリップ・K・ディックの『マイノリティ・リポート』(1956年)よりも3年早く、超能力によって犯罪を未然に防ぐというプロットを構築している点でも、この小説が時代のかなり先を行った作品だといえます。
金星に人類が移住しているなど、さすがに現代の科学知識に照らすと無理のある設定が見られるのは仕方ないとして、完全犯罪を目指すライクの手管といい、物語の終盤でパウエルがライクを追い詰めていくSF的展開といい、SFミステリ劇としてなかなか読ませる作品に仕上がっています。
残念なのはこの作品を発表から60年を経過した古典としてしかもう私たちは読むことがかなわない点です。発表当時にコンテンポラリー(同時代)な作品として読むことができた読者は、時代の最先端を行く物語として楽しむことが大いにできたことでしょう。そうした読者が羨ましくなりました。
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*97頁:「図太く」に「オーダシアス」とルビが振られていますが、英語の「audacious」の発音はカタカナ表記するなら「オーデイシャス」とするのが原音に近いといえるでしょう。
*176頁:「ライクは彼女を無視し、神経混濁銃を手に取るチューカの額につきつけた」とありますが、この場面では神経混濁銃を手に取っているのはライクです。ですから「ライクは彼女を無視し、神経混濁銃を手に取ると、チューカの額につきつけた」とするのが正しいと思います。
*192頁:「ジョン・F・ケネディ空港に連絡してくれ」とありますが、1953年に書かれたこの小説にどうして1963年に暗殺された大統領の名前がついた空港が出てくるのだろう、ひょっとして作者のベスターには未来予測の力があるのかと思って原著を調べたら、「Call Idlewild. (アイドルワイルド空港に電話してくれ)」となっていました。1963年にジョン・F・ケネディ空港に名称変更されるまであの空港はアイドルワイルド空港と言われていたわけです。ただ24世紀のアメリカを描いたこのSF小説の中で20世紀前半のアイドルワイルド空港という呼称が使われるのはおかしいと訳者の伊藤典夫氏は考えたのでしょう。
これも翻訳のひとつのありかたといえるのかもしれません。