鏡の国の戦争

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評判

鏡の国の戦争の評価:

4.50/5点 レビュー 8件。 C ランク

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平均点4.50pt

Amazonレビュー一覧

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全23件 21〜23 2/2ページ
No.3
(5pt)

いぶし銀の魅力

大昔に読んだきりだったところに映画化作品があると知って映画を見てみました。それがなかなかの出来で(1970年同名映画化作品)、映画が原作に忠実に作られたものかどうか知りたくなり、再読してみましたが、こういう話だったのかと、完全にストーリーを忘れていたことに情けない思いをしました(苦笑)。映画は一部以外はほぼ原作に忠実でした。たとえば、映画では東ドイツに潜入するスパイは密入国してきたばかりのポーランド人青年でしたが、原作ではすでに英国に長年在住している40歳のポーランド系英国人です。映画は時間内におさめるという縛りがあるのでどうしても話が簡略化されがちですが、やはり原作の方が話の流れや人物の心理が詳細にわかるようになっています。

ル・カレの作品は、それでなくても地味ですが、この作品は東西冷戦時代のダイナミックな情報戦を描いたものですらなく、英国に2つ存在した外務省所属、そして軍部所属の2つの諜報組織の縄張りや権力争いを中心に描いているので、スマイリー3部作よりもさらに地味に感じられるかもしれません。弱体化して予算を縮小されていた軍部側が盛り返すために、本来必要かどうかもわからない作戦を企て、しかも最新の機器などの情報も持たず、時代遅れとなった知識と技術で、犠牲者を出しても冷酷にかえりみない、上司の虚栄心のために振り回される末端職員の運命や理不尽さがじっくりと描かれています。派手なアクションも銃撃戦もありませんので、ハラハラドキドキの作品が好きな人にはつまらないと思います。ただ、ル・カレの作品にはいつも、これこそが本当に国際情勢の裏で起こっていることなのかもしれないと思わせる、じわじわとくる怖さがあります。現実に近いことだから、かっきりした起承転結も、ハッピーエンドの読後感のよさもありません。が、渋いいぶし銀の魅力的作品です。重厚なエスピオナージものを読みたい方に、おすすめです。スマイリーの3部作以前の姿が垣間見られるのも興味深いです。
鏡の国の戦争 (ハヤカワ文庫 NV 226) Amazon書評・レビュー: 鏡の国の戦争 (ハヤカワ文庫 NV 226)より
4150402264
No.2
(4pt)

スマイリー・ファンとしての読み方ができる

彼が主人公の作品ではないが、いわゆるスマイリー三部作ではスパイの世界での理想的な人物像として描かれるジョージ・スマイリーの性格形成段階にある作品の一つとして興味深く読んだ。
三部作中の「スクールボーイ閣下」でも、彼は結果的に「ジョー」を見捨てるが、そこには、ジョー側の非も認められるし、明示的には描かれないものの、その結果に至るまでの深い苦悩や悔恨の情が読み取れる。しかし、本作における彼はもう少しドライだ。
それは、作者自身がまだ彼の人物像について固め切っていなかったからではあろうが、スマイリーの精神成熟過程とも読めるところが面白い。
一方で、本作では、スマイリー属する外務省系情報機関(サーカス)に対し国防省系の機関の話がメインになる(この辺の組織論については訳者あとがきに詳しい)のだが、「作戦」が始まるまでのこの機関の描き方がまるでコメディーで、「ここまで国防省系機関をおちょくってしまっついいの?」という感じだったが、流石にオペレーションが始まると、第二次大戦中はそれなりに鳴らした機関だけあって、単に戦後の波に乗れなかった、ということなんだな、という感じもしてくる。最初の方にあったように、平時にはダメ男でも、実際の戦争が始まると、決断力が別人のように上がる、ということはあるのかもしれない。ま、結局はその「戦争」もイリュージョンなんだけれど。
しかし、本作でのスマイリーの判断も、冷戦時代の非情な国際関係の中では正しい(やむを得ない)とは考えるのだが、やはり、最後までジョーを庇おうとするエイブリーには共感を持ってしまう。その辺に関しては、作者の視点は少し意地悪いのだけど。
考えるに、本作は、「北の国から…」で大ブレイクした作者が、「いい気になっていた」(本人の自伝に基づく)時に書かれたもの。その辺も、本作のスマイリーの人格に影響を与えているのかもしれない。
いずれにせよ、三部作でスマイリー・ファンになった人には、処女作「死者から…」、次作「高貴なる…」とともに必読の書と考える。できれば発刊年順で、この二作を読んでから本書を読むのがいいと思う。
鏡の国の戦争 (ハヤカワ文庫 NV 226) Amazon書評・レビュー: 鏡の国の戦争 (ハヤカワ文庫 NV 226)より
4150402264
No.1
(5pt)

忘れがたい作品

地味といえば地味な作品です。
派手な謎も、スーパーなヒーローの活躍も、息もつかせぬどんでん返しも何にもありません。
ただスパイの訓練と英国内の情報部門の縄張り争いが縦横のエピソードの連なりとなって、ディテールが積み重なっていきます。
悲惨といえば悲惨、滑稽といえば滑稽なラストに物語りは収斂されていきますが、それまでに描かれるのは官僚たちの見栄、破綻していく家庭、ないがしろにされる個人の姿です。
決して上段に構えた文学臭の強い作品ではありませんが、ラストの数ページを巡る感情の本流と幕切れが余りに哀切で、いつまでも記憶に残る作品でしょう。
鏡の国の戦争 (ハヤカワ文庫 NV 226) Amazon書評・レビュー: 鏡の国の戦争 (ハヤカワ文庫 NV 226)より
4150402264