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マーチ家の父 もうひとつの若草物語
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マーチ家の父 もうひとつの若草物語の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1~10 1/1ページ
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「もうひとつの若草物語」とありますが、著者が違うので別の物語です。設定(時代とか登場人物の構成が同じだけ)が同じなので、「裏若草物語」みたいで興味深く読めました。南北戦争の血みどろの戦闘シーンとか北部軍での黒人の扱いとかマーチ夫妻の驚くような一面が容赦なく描かれてます。黒人女性のグレイスが重要な人物として登場しています。日本ではリンカーン大統領は奴隷解放を行った「尊敬される人物」として有名です。しかしリンカーン大統領暗殺事件の犯人関係者として無実の人が処刑される映画では「その中の一つの政策に過ぎない」と言ってます。そしてそれを裏付けるような会話がしばしば出てきて、読むのが辛くなりました。後書きでは「マーチ氏は理想主義者」と書かれてますが、私は「マーチ氏は暴力的では無いが自分の思った通りに物事は動くし賛同されると信じ込んでる人」「マーチ夫人は歳を重ねても暴力的に思いを遂げようとする感情をコントロール出来ない人」として描かれていると思いました。終盤にグレイスとマーチ夫人が出会う場面とか、マーチ氏の「思い込み」がグレイスに否定される場面ではとてもスッキリした気持ちになりました。マーチ夫妻の周囲の人は優しすぎるので「誰かが言わねば」とイライラしていたからです。今まで沢山小説を読んできましたが、これほど好意を持てない主人公は初めてです。マーチ夫妻のような人がそばに居たら、お付き合いは遠慮したいですね。最後に一つ見習いたい事があります。著者の母親は「若草物語」を注意を与えて薦めてます。どんな注意を与えたかは、是非読んでみて下さい。これは出来そうでなかなか出来ない事です。親の立場としては、注意を与える様な書物を見せたくないからです。(勝手に見てしまうのは別です)時々著名人の方で「両親は進んだ人で…」と同じ様な事を話されているのを見た事があります。やはりそれぐらいでないと、自分の考えを持てないのでしょう。散々制限して置いて「自分の考えはないのか!」は有り得ないのかも知れません。 | ||||
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この本を本屋で見たときに、 若草物語をきちんと読んでから、改めて手に取ろうと決めた ふと語られる姉妹たちの事を知らなければ、 この本は成り立たない。手に取る人は、若草物語に親しさを持った人だろう。 その語られなかった部分を表現しようとした、試みに挑戦したことがすごい。 その睦まじい家庭の様子が物語のすべてと思っている読者を敵にまわすことになるだろうことは当然だ。 わたしは、不在の父の、あっただろう経験と苦悩を素直に読んだ。 母の、娘たちに見せることない内面も納得した 映画も何本か見たが、最新作で母がジョー以上に感情を抑えられなかったと語る場面がとても心に残った。そうだったのか、改めて知ったと思った。 今作は、その母の気質がくどいほどに語られる。 マーチ家の父 とあるが、個人的には、母の物語であるようにも思う。 ページ数と内容は、グレースを登場させることにより、絶対的に父の物語なのだが。 母の描写になる後半の方が、物語に入り込んで読めた。 物語のスピンオフではない。 確かに、描かれなかった父と母が人間として厚みを持たされたのだろうと思う それにしても、若草物語の新訳は出ないのだろうか。 読みにくい、と思う読者はいないのだろうか? | ||||
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タイトルそのまま、マーチ家の父について書かれたスピンオフ…と言うよりはパスティーシュかと思います。 内容については他の方が書かれている通り、南北戦争に牧師として従軍した「お父様」側からの記述なので基本的には暗く重苦しいテンションが続きます。 ですが、この作者の若草物語への愛情がその重苦しさを払拭する程に素晴らしいです。 「かつてジョーよりも酷い癇癪持ちであった」と若草本編で記述される「お母様」の若い頃の話や、メグが述懐する裕福だった頃の暮らし、ジョーを殊更可愛がっていた亡きマーチ叔父や本編とは少し違った面を見せるマーチ叔母など、本編を読み込んでいれば読み込んでいる程に「あの時の話か!!」と繋がる箇所が多いです。 大人になる程に、自分の両親はあくまで一人の個人であり、子供には両親なりの理想形しか見せまいとしていた事が分かる時があります。 それを実感できるような一冊。 かつてジョーであった元愛読者達に、心からお勧めします。 | ||||
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他の方も書いているが、「若草物語」原作のファンであればあるほど、この作品を読むことでそのイメージが大変損なわれる可能性がある。 「若草物語」が逆境にある人の優しさや強さを描いたものであるとするならば、この作品は人の弱さや醜さを描いているからだ。 いっそタイトルを変えたほうがいいのではないかという気がする。 南北戦争時の様子、戦いに参加した側の心理(理想と現実)はとてもよく伝わったが、ここに描かれる主人公の姿は思い込みが激しく身勝手に感じられる。 「若草物語」の世界がとても好き、という人にはお勧めしない。 | ||||
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以前、アメリカという国に住んで思ったのは自分があまりにもアメリカ史を知らないということ。アメリカの国のあり方(成り立ち)を多少なりとも理解するという点で、一市民の視点から書かれたこの本は良いと思いました。子供のころに若草物語を愛読していたせいかもしれませんが、主人公が従軍中の「若草物語の父」という設定もすんなりと物語の世界に入り込む助けとなっています。読んでいる間は当時の空気が肌にまつわりつくような感じを受けました。軽い本ではないので3日ほどかけて読みましたが、途中で飽きるということはありませんでした。訳文もきれいです。 | ||||
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『若草物語』のなかでは背景さながらの「お父さま」と「南北戦争」に焦点を当てた秀作。 私見だが、私の場合、成長してから読んでも面白い児童書は、「主人公の世界」から一歩視点をずらして読むとまったく別の物語が浮かび上がってくることが多い。この『マーチ家の父』は、小学生の私が夢中になった『若草物語』のネガでは決してない。ただ当時の私には見えなかった左右の側面である。ころりと横に転がすとそちらこそが正面になる。「お父さま」はこの世の全てをわきまえた賢者ではなく「お母さま」は自己犠牲の化身のような聖母ではない。彼らの性愛交じりの恋物語があったからこそ今の私がいる。自分でいうのもなんだが、この世のあらゆる「育ちの良い」お子さまが成長途上のどこかで発見する目からウロコの事実である。 話題は変わるが、この作品を読んでいて無性に『風と共に去りぬ』が思い浮かんだ。「うちの娘は二十一まで結婚させません」という『若草物語』と「二十歳を過ぎたらオールドミス」の『風と共に去りぬ』。この二作が同時代の南北アメリカを舞台にした物語であるのは愕きである。アメリカ史は興味深い。魔女狩りと万有引力が共存していた十七世紀のヨーロッパのように、日常的で小市民的な要素と妙に野蛮で大時代的な要素が溶け合わずに混在している……気がする。『マーチ家の父』には「お母さま」と並ぶヒロインとして聡明で美しい南部の混血の女性グレイスが出てくる。グレイスの父は白人であり、母親は黒人奴隷である。その彼女の「私が売られなかったのは体に傷があるから」と打ち明けるシーンに私はぞっとした。体に傷がなけれグレイスは売られていたかもしれない―ーということは、父親が実の子を平然と売っていたかもしれないのだ。十九世紀後半の時点でそれが当たり前だったのだとしたら、今現在のアメリカ大統領が混血である点の凄さをあらためて感じた。小説として面白いのに加えていろいろとものを考えさせてくれる作品である。『若草物語』ファンのために付け加えれば、マーチ牧師の回想にときどき出てくる四姉妹はみなとても可愛い。とりわけベス! 「静かさん」の大活躍を見るためだけでも一読の価値があります。 | ||||
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試みも含めて、面白い作品である。 史実や先行作品『若草物語』を巧みに生かしながら、独自の物語を紡ぎだしていく手腕は見事。 主人公は、4姉妹の父。彼の若き日や南北戦争の従軍を、書簡・回想を織り交ぜ、現在と過去を行き来しながら、その時代状況や心の状態などを鮮やかに描いている。 南北戦争が背景として使われている。その南北戦争では、戦死・戦病死を含め60万人をこえ、アメリカ合衆国が体験したすべての戦争の中で、人的被害が最も大きかったものである。 上品で教養があるにもかかわらず、黒人を物として扱う南部の農園経営者や黒人に対して殺害を含めた暴力に訴える南部人たちの差別意識。一方、奴隷解放という“大義”があったものの、北軍内でも見られた黒人に対する差別意識。南北戦争の中で描かれるこの両者の差別意識は、現在に至るまで払しょくされない非常にリアルなものだろう。また、北部の経済的野望も大義の影に見え隠れする。 ソロー、エマーソン、ホーソンなど著名な文学者も登場する。 訳者によると、ヒロインのグレイスの綴りはGraceである。これは、神の恵みや恩寵といった意味で、賛美歌『アメージング・グレイス』の“グレイス”と同じものである。奴隷制度とのかかわりの中から『アメージング・グレイス』の詞が生まれたことを考えると、“グレイス”という名に込めた著者の思いには感慨深いものがある。 『若草物語』のある種のロマンチシズムに憧れる人にとっては、少なからずショックを受けるかもしれない。それでも、『若草物語』を読むか、読んでいないにしても登場人物の家族構成や設定などを知っていないと、分かりにくい部分があるだろう。 | ||||
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生々しく描かれた奴隷制と南北戦争の実態。 「古書の来歴」同様、まるで実際にその人になって、 その現場にいたような実感を持って、ビジュアルに描かれる。 Marchは行進、進軍、まさにミスター・マーチの人生の歩みの物語。 思いついても書けそうで書けない歴史もの。 膨大な資料を読みこんだ上で、ほどよく加工されている。 そのバランスがいいから、読みやすく、おもしろい。 下手な人だと史実部分が専門書っぽく浮くし、物語が色褪せるが、それがない。 紛争地域を取材したジャーナリストとしての経歴がプラスに作用している。 ほんとうに卓越した書き手。 ゆるぎない描写力とインテリジェンス、退屈させない仕掛け、どの点においても優れているし、 何よりも、物語の屋台骨である世界観がしっかりしている。 設定、主人公のキャラ等はオルコットの「若草物語」や、 そのモデルである教育者のA・ブロンソン・オルコットから借りているそうだが、 それがどの程度のものかは「著者あとがき」に。 物語の語り手はマーチ家のお父さんもお母さん、 「若草物語」の理想的で立派な人物像からふみこんで、 生身の人間として描いているところがリアル。 南北戦争、The Civil War、62万人もの死者を出したこの戦争の悲惨さ、奴隷解放の実態など、勉強になる。 内戦は犠牲者も多く悲惨であるといわれるが、まったくその通り。 そしてちゃんとエンターテインメントとしての仕掛けもあり、その秘密はラストに明かされる。 コンコードに行く前に、この本が出版されていれば、と思った。 数年前の印象だと、そこは高級住宅街で、黒人と白人が融和しているユートピアの印象はなかったけど。 オルコットの家があり、エマソンの家もあり、ウォールデンポンドもあった。 細かい点だけど、24Pなどに出てくる「トウモロコシパン」て、コーンブレッド cornbread? 94Pの「プラト―」はプラトン?とか気になりつつ読んだ。 | ||||
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『若草物語』において異様なのは、徹底した父の不在です。 オルコットにとって父である、超絶主義者であり理想だけに生きた著名な教育者の父ブロンソンは、その理想を貫徹するために家族を捨てようとした存在です。オルコットが作家として金を稼ぎ家族を養おうと子どもの時に決意した動機の1つはそこにあります。 だからといって父親を憎んでいたわけではなく、父の面倒を見続けます。その愛情は、かろうじて残されている日記の一部からも伺われます。 二人は共に危篤となり、父の死後二日目にオルコットも亡くなりました。 このフィクションは、『若草』における不在の父の側を描いています。そのための資料やインスピレーションに使われたのは、ブロンソンの著作や、言及された書物。 見事なフィクション、そしてメタ・フィクションなのですが、『若草』の舞台を借りてブロンソンを描いたと考えるなら、優れた歴史・伝記小説ともいえるでしょう。 これを機会に『若草物語』の背景(深いです)に興味を持ってくだされば幸いです。 絶品。(ひこ・田中) | ||||
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タイトルだけ見て、あの「若草物語」のスピンオフか!と思って読むと、乙女な気持ちを粉みじんに打ち砕かれます。それほどにリアルでところどころ残酷で赤裸々な物語。「若草物語」の背景にある当時のアメリカ社会と奴隷制度、そして南北戦争についてが、マーチ姉妹の『お父さま』の視点で描かれていますが、あくまでも大人の目線で見たもの感じたことなので、本来の「若草物語」の読者層には向かないでしょうね。 自分の両親もそれぞれがそれぞれの人生を歩んできた一人の人間であり、男女なのだ‥ということが理解できる年頃になった「若草物語」の読者向き。 | ||||
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