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パーフェクト・ブルー



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パーフェクト・ブルーの評価: 6.00/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(6pt)

初期の作品だけあって

なんだかなぁ、、、って感じだった
まず、高校球界のスター選手が惨殺されるというテーマが、東野圭吾の「魔球」と同じ、発表された時期も近いせいもあり、二番煎じ感を持って読み始めた。
元警察犬から見た事件という面白い切り口(過去にも猫とかあったが)は良かったが、どの人物も思い入れできるような魅力に乏しい
また、最終的な敵となる謎の女性のことももう少し人物を描いて欲しかったし、最終的にどうなったかをもう少しつっこんでエピローグで説明してくれないと、読後感は、なんだかなぁぁとなってしまう
主人公?の犬の活躍もイマイチ(傍観者としての存在か?)、主人公?の若い女性探偵もハッキリ言ってヘボ探偵だ。
父親の所長はもう少しまともに推理を進めるが、結局、何も掴まない段階で襲われ拘束されてしまう。
被害者の弟Sにしても、もう少し活躍させても良かったのではと思う。
兄と弟の絆をメインに持って来たのも「魔球」と同じで気になった。
単発的に代表作を何篇か読んで面白かったので、1作目から順に読んで行こうと楽しみにしていたが、物語が進むにつれて、今まで何も示唆されていなかった新しい展開が何度も繰り返され真実に到達するという、ちょっと強引な解り辛いストーリーだった。
警察、探偵たち、敵、犬も含めて事件が終結した時に真相をすべて知っていた人が皆無というのは、如何なものか?
東野のデビュー作が粗削りではあるが、若さや新味を感じただけに、(女流作家ということもあり)今回、期待して読んでみたが、少し期待外れでした。
最も魅力的な登場人物:スナックのマスター

mustang
PCGQIQ4X
No.1:
(5pt)

宮部作品の毒味役的作品?

いまや現代女流作家の代表格となっている宮部みゆき氏。デビューしたての当時は同時期にデビューした高村薫氏が高村薫女史という呼称で呼ばれたのに対し、宮部みゆき嬢とかミステリ界の歌姫などと呼ばれていたのが非常に懐かしい。
私が彼女の作品を読んだのは既に『火車』まで刊行されており、その評価は既に固まっていた時期。一連の創元推理文庫の日本人作家シリーズの一角にこの作品は名を連ねられていたが、当時私は本格ミステリの方に傾倒していたこともあって、どうも毛色が違うなぁと思っていたことと、ブルーのバックに赤いボールペンのような物で殴り描きされたような表紙絵がなんとも食指を動かされず(ちなみに今出回っている文庫本とは絵が違う)、ずっと買うのを躊躇していたが、『火車』が93年版の『このミス』に2位にランクインしたことを契機に手にとってみたのがこの作家との出会いだった。

開巻していきなり高校野球児の焼身死体というショッキングな幕開けで物語は始まるが、そこから物語のトーンは一転してライトノベル調になる。もはや有名なので誰もが知っていると思うが、この作品は警察犬を引退して蓮見探偵事務所に変われることになったシェパード犬マサの一人称視点で物語が描かれるのだ。つまり語り手は犬という大胆な構成で物語は進行する。
一人称叙述というのは作家の方なら誰もが知っていると思うが、実は非常に難しい。なぜなら主人公が関与した事柄でしか物語を進行させられないからだ。既に賞を受賞していたとはいえ、実質的にはデビュー前である宮部氏がいきなりその一人称叙述に挑戦し、しかも語り手は人ならぬ犬という二重のハードルを課していることに作家としての意欲よりも不安が先に立った。

この文体についての感想は、よく健闘したなぁというのが正直な感想だ。綱渡りのような物語進行を感じ、物語そのものよりも作者が馬脚を現さないかとヒヤヒヤしながら読んだ記憶がある。しかしやはりこの奇抜な叙述を押し通すのは難しく、途中で三人称叙述を採用せざるを得なくなっているのは致し方ないところか。
また大げさな比喩も気になった。物語に溶け込むようではなく、どちらかといえば、ページを繰る手を止めさせて、どんな例え?と考えさせるような比喩だ。大げさ度でいえば、チャンドラーを想起させるが、味わいは全く逆で、実に軽く、ライトノベル調をさらに助長させていると感じた。

物語は焼身死体の高校野球のエースの家出した弟ともに進行する。内容は昔よく挙げられていた高校野球に纏わる不祥事の隠滅もあるが、さらに大きな陰謀もある。それがタイトルの由来ともなっているのだが、作者のストーリーのための設定という枠組みから脱しきれてなく、その嘘に浸れなかった。
今まで書いたように宮部氏のデビュー作である本書は実は私にとってはそれほど面白かったものではなく、むしろネガティブに捉えられていた。恐らく『火車』の高評価が私に過大な期待をもたらしたのだろうとも思う。しかし読後感は悪くなく、前向きな気持ちにさせられる爽やかさは感じ取った。
この作品を読んだからこそ、続く『魔術はささやく』、『レベル7』が面白く読めたのは事実。この2作品のテーマに挙げられた作者の嘘を許容する下地が本作を介して私の中に出来上がったといえる。そういう意味では宮部ワールドを理解するための毒味役ともいうべき作品なのかもしれない。

Tetchy
WHOKS60S

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