■スポンサードリンク


時生 トキオ



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
トキオ
時生 (講談社文庫)
時生 新装版 (講談社文庫)

時生 トキオの評価: 7.50/10点 レビュー 18件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.50pt

■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全5件 1~5 1/1ページ
No.5:5人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

泣かせようとしてますな

東野圭吾氏の作品には本格ミステリからサスペンス、ユーモアなど多彩だが、本書はタイムスリップ物、つまり『分身』や『秘密』と同じSF物である。

物語はまず遺伝性の奇病によって若い命を喪おうとしている息子を見つめる夫婦の話から始まる。そしてその息子が死んだからが本編の始まりだ。

まさに若き命を喪おうとする息子が過去にタイムスリップして若き日の父をある運命へと導くお話だ。

しかしなんだかいつもの東野作品のような淀みのない展開ではなく、読んでいてとても居心地の悪い思いがした。恐らくそれは主人公の宮本拓実、つまりトキオの父親の性格にあるのだろう。

物語の冒頭で語られる時生の誕生までの物語はなんとも重い話で、子供を産んでもそれが息子ならば20代になる前に死んでしまう奇病に侵されてしまうという明らかに不幸な道のりがあるのに、あえて茨の道を進む父親の決意と息子に対する思いやりや献身が語られるのだが、タイムスリップしてトキオが対面する若き宮本拓実は短気ですぐに暴力を振るい、しかも何事も長続きせず、しかも原因が自分の性格にあるのに環境や他人のせいにしてわが身を省みないという何とも器の小さい男として語られる。
この現在と過去のイメージギャップがなんともすわりの悪さを感じさせるし、まず主人公として共感できない男であることが大きな原因だろう。

そんな宮本拓実が失踪した元恋人の早瀬千鶴の跡を追うのだが、それが行き当たりばったりで、しかもトキオのアドバイスを聞かずに進めようとする。この流れに淀みを感じて、強引に力業で物語を進めているように感じられるのだ。

そして宮本拓実が改心して冒頭のような性格になるのは早瀬千鶴が彼の許を離れた理由を聞いてからだ。
しかしあれほど短気で自分勝手ですぐに暴力を振るう人間が180°変わったようになるだろうかと疑問が残る。そして肝心の妻麗子との出逢いも実に簡単すぎて拍子抜けした。

とまあ、東野作品にしては息子が過去に遡って自分の父親を導くというありふれたタイムスリップ物の、ハートウォーミングになることが約束されているような設定には安直な作りであると感じたのは否めない。

ただ本書と本書の前に発表された『レイクサイド』にはある共通点があることを付記しておこう。

『レイクサイド』では親は子供のためにはどんなことでもやるのだということを歪に、そして陰鬱なムードで語ったが、本書は子供は親にとってどんな存在なのか、そして子供は親をどこまで信用し、慕うことができるのか、と子供の側から親子の絆を描いている。
そういう意味では本書と『レイクサイド』は全く物語の色調は違うが表裏一体の関係にあると云えよう。

主人公宮本拓実は本当の親麻岡須美子が生活苦から育ての親宮本夫妻にゆだねられた子供であり、育ての親も父親の浮気がもとで家庭崩壊してしまう。それを拓実は実の親を恨むことでアイデンティティとしている。

妻麗子もまた自らが遺伝性の奇病に侵されたことで結婚を諦めた女性だ。父親からは決して結婚するなと厳命されたが、拓実の根気強い熱意から結婚をする。

そして時生はその二人から生まれた短命を運命づけられた子。

しかしそんな三者三様の生い立ちはあれど、共通することは親が子に対する思いは一緒だということだ。

本書では親にとって子供とは未来なのだ、どんなに辛くてもこの子のために生きていかねばならないという生への原動力となる存在なのだと高らかに謳っている。
しかし昨今連日の児童虐待の報道を見ると、親が子育てを放棄する自分本位の価値観には呆れ返ってしまう。恐らく本書が刊行された2002年にも既に同様の痛ましいニュースはあったのだろう。だからこそ改めて東野氏はこのような作品で子供の大切さを訴えたのかもしれない。
物語の舞台が1979年とまだ義理と人情と近所づきあいが活発だった時代に設定されているのがある意味哀しいのだが。

本書にはこの他にも失踪した拓実の当時の元恋人千鶴が巻き込まれたある政府直属の企業の贈賄汚職事件を絡めてサスペンス風味を出している。
しかしそれが果たして本書に必要だったのかどうか、よく解らない。
先般読んだ島田荘司氏の『写楽 閉じた国の幻』に配された主人公が息子を失う回転ドアの事故よりかは物語に絡んではいるが、ストレートに父拓実を更生させるために彼のルーツを探る物語にした方がバランスはよかったのかもしれない。拓実の性格を変えるファクターとして千鶴が彼と別れた理由を挙げているが、これも他の何かに置き換えられるのではないか。

今回はどこか東野氏が“泣ける物語”を狙ったのが露骨すぎてあまり愉しめなかった。次作に期待しよう。



▼以下、ネタバレ感想

※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

Tetchy
WHOKS60S
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

時生 トキオの感想

意味もなく、東野圭吾が読みたくなった。

積読が山となっているなかから、ネットなんかで評判のよさげな 相当前に買ったままになっていた『 トキオ(改題 時生)』を選び出して読み始める。

結論、読んで良かった。

これまでに読んだ彼の作品で印象深かったガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』や、『百夜行』『手紙』『秘密』なんかは、ストーリー性はもちろんだが、それ以上に 最後のどんでんに驚愕させられる 奇を衒うものが多かった。

それらと比べ 衒い方は小さいかも知れない。

とはいえ、じゃあ それらに比べて劣るかというと、決してそうではない。

難病の息子の死の間 際に、青年時代に息子と出会っていたことを思い出す父の青春時代の回想物語と設定自体は少々SFチックなれど、それ以外に意表を突くことない。

それよりは、淡々と息子がちょいグレ親父をまっとうな考えに向けさせるきっかけになるよう努力する、そんな少し変わった親子の絆の物語で、全体的にアップダウンは少ない。

とはいえ、そこは東野圭吾。

非常にテンポよく読みやすく、実に内容は濃い。

彼の代表作の1冊と十分に呼べる秀作であった。  了

とも
4ND5R58B
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

トリハダ

最後の最後にトリハダ。読めてよかった、この作品に出会えてよかった。

飴玉
RQNSS1NO
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

トキオの感想

主人公の行動
イライラしながら読みました。
最後の終わりかたは好きです。

呑んだくれ
P3S7II56
No.1:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

トキオの感想

東野作品では珍しい、タイムトラベルものです。
ただ、前半の重く悲しい部分で相当な期待が高まった分、それ以降の中盤~後半までかなり中だるみしてしまいました。SFというよりは、むしろ人情もの、家族愛という感じで、重松清の「流星ワゴン」に近い雰囲気でしょうか。

フレディ
3M4Y9ZHL

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!