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明日があるなら



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明日があるならの評価: 9.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点9.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(9pt)

今読むと古さは否めないがそれでも面白い!

『ゲームの達人』でその面白さに開眼した私は、生来のコレクション癖も手伝ってしばらくこの作家の新作が出るたびに買っては読んでを繰り返していた。
で、この作品も導入部からスリリングに展開する。なんと結婚を控えた主人公の女性がいきなり逮捕され、刑務所に入れられてしまう。幸せの絶頂から不幸のどん底に落とされるというシチュエーションは数多の本を読みなれた現在であれば、さほどの驚きはないものの、当時は本当に開巻と同時に物語に惹き込まれたものだ。

で、本書を読んでもう20年近く経つのに未だにこの主人公の名前は覚えている。トレイシー・ホイットニーというのがその名前なのだが、読んだ当初は何かの冗談かと思った。というのも読書当時2大黒人女性歌手が有名で、片方は今でも知名度が高いホイットニー・ヒューストン。そしてもう1人はトレーシー・チャップマンというアコースティック系のアーティストがいたのだ。作者はこの2人の名前を組み合わせたのかしらと読中そればかりが頭を駆け巡っていた。

さて本題に戻るが、本書の特徴は銀行員から資産家との玉の輿に乗った、才色兼備の女性トレイシーがその運命の悪戯から刑務所に入り、それから自らを罠に陥れた者たちへの復讐のため、刑務所を脱獄し、稀代の女詐欺師に転身するという設定にあると思う。
大体高校生の読むライトノベル系の小説ならば勧善懲悪物が一般的であり、この展開は当時の私にとって新鮮に映った記憶がある。書き忘れたが『ゲームの達人』の主人公ケイトも決して聖人君子などではなく、むしろ自らのエゴを満たすためには殺人さえも厭わない残酷さを持っていた。そういう善悪の曖昧さみたいなものをシドニー・シェルダンの作品で学んだように思う。
そしてうろ覚えなのだが、確か男の詐欺師のライバルが現れ、2人で腕を競いながらも惹かれ合うというベタな展開も、マンガばかり読んでいた当時高校生の私にとってはすんなりと受け入れられ(そういえば『キャッツ・アイ』というマンガもありました。その頃ではないけど)、素直に作者のサービス精神を喜びつつ読んだ記憶がある。

しかしそんな世間を知らない高校生の私でも本作に挙げられていた詐欺には首肯しがたいものがあった。
確か豪華客船で行われる世界一のチェスの名人2人とトレイシーが対決するシーンがあったと思うが、あのトリックにはどう考えても無理があるだろう。ネタバレになるので詳細は省くが、同じ船上にいる客が移動しないとでも思っているのだろうかとだけ苦言を呈しておこう。
また確か本書であったと思うが、最新鋭の計算機の売り込みで大金をせしめるという詐欺があったが、あれも少し考えれば気づくはずである。実際私はそのトリックに途中で気づいた。ネットがない時代とはいえ、少し調べれば解るはずである。
その点が私をして満点を与えることができない理由になっているのだが、それでもやはりトータル的には面白く、もうこの作家、一生ついていくぞ!とまで決意した。

そしてシドニー・シェルダン熱は私の高校(クラス?)で過熱していき、学園祭で作った創作ビデオのタイトルは『明日があるから』というパロディめいた題名をつけるまでに至った(しかしその内容は全く本書とは関係なかったことを付記しておこう)。
そして数年後テレビでアメリカドラマ版が放映された。作中で絶世の美女のように描かれていたトレイシーをどんな女優が演じるのかと期待パンパンに膨らまして観た思春期の私はその普通っぷりにかなり失望した。いや、美人ではあるのだが、ごく普通の美人だったのだ。シドニー・シェルダンの描く美人の容貌の描写は思春期の私には想像を絶する美女の競演のように想像が膨らんだ。これも彼の功罪の1つといえる。

Tetchy
WHOKS60S

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