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神の火



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神の火の評価: 6.00/10点 レビュー 2件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(5pt)

まあまあでした

まどろっこしい。

わたろう
0BCEGGR4
No.1:
(7pt)

説明は精緻、しかしプロットは二番煎じ?

読中、この人は一体何者?という思いが頭を覆っていた。
冒頭のプロローグでの原子力発電所の建築現場のシーンにおける建設専門用語の正確さから始まり、原子炉制御システムの専門的な説明はまだしも、科学専門雑誌・専門書の取次会社の業務や、潜入した大学で新しい原子炉のデータを抜き取る際のコンピュータ関係の専門用語、ウラン濃縮技術の話や操船技術、時限爆弾の作り方などそれらこの小説では余技である部分でさえ、微細に渡って描写し、説明するのにはひたすら脱帽。普通の作家なら、それらは省略するテクニックで上手く処理するのだが、この人にはそれがない。しかもそれらが全て専門家と同一レベルの知識なのだからものすごい。更に加えてこれらの知識を一切取材せず、専門書や自らの空想で描くというのだから、ほとんど天才である。
しかし、それらは裏返せば小説としての力の抜きどころがないわけで、読者もずっと力の入った読書を強いられる事になる。この辺が万人になかなか受け入れられにくいところではないかと思う。

さて、物語は三人称の文体を取りつつも、基本的に主人公島田浩二の視点で語られる。
島田はソ連側のスパイ、江口彰彦によって日本に連れてこられたロシア人と日本人とのハーフだった。日本では江口の知人、島田海運の社長、島田誠二郎の息子として育てられ、成長するにつれて江口の弟子としてスパイとして育てられつつも、原発の技術者としても知られるようになっていた。一時期疎遠になっていた二人を再び引き合わせたのは父誠二郎の葬儀の場だった。そこで島田は明らかにロシア人の顔つきをした高塚良と名乗る青年と幼馴染みの日野との再会を果たす。スパイを引退した島田はその日を境にCIA、KGB、北朝鮮、日本公安4つ巴の原発襲撃プラン「トロイ計画」の情報戦の渦中に引きずり込まれるのだった。

髙村氏は書きながらストーリーやプロットを考えるという。この小説はそういう作者の癖が如実に表れているように思った。詳細な日常な描写が続くし、各国スパイの島田への接触が断続的だし、次々と出てくる登場人物の使い方が使い捨てすぎるのが気になった。

特筆すべきはこの作家の脳みその構造の凄さである。まず専門家が素人の発言に驚かされるという描写。この小説では「世界の原子力発電所は戦争・破壊活動を想定して作られていない」、「原子炉の蓋を開けて見てみたい」という発想の斬新さを述べているが、こういう描写は専門家の頭を持っていないとまず思い浮かばない。この作家の経歴には商社勤務の経験しか書かれていず、技術者としての経験はないはずだが、何ゆえこのような発想が思いつくのか、想像を絶する。
それともう一つは隠遁中の江口が島田と行う暇つぶしの方法について。ホテルに篭ってマッサージをしてもらい、お酒をちびりちびりやりながら読書をする、このだらしなさこそが男の至福の寛ぎなのだとのたまうが正にその通り。
これを女性作家に述べられるともう敵わない。作者は男ではないかと疑うのも解る気がする。
あと原子炉の温度制御の数値入力において不適当な数値を入れたとしても1つ1つ綿密に潰していけばシステムは機能するという話はかつて問題になった建屋の構造計算書偽造問題を想起させ、興味深かった。

しかしこれほど緻密な説明や描写、血肉の通ったキャラクターを用意してもその内容はというと、首を傾げざるを得ない。結局原発襲撃は男二人の我侭による壮大な悪戯に過ぎないし、そのために犠牲になった各機関や人生を破滅させられるであろう登場人物が出る事を考えると簡単にこの小説に同意できないのだ。
世にその名が知られる前の作品だからこの辺の浅はかさは目をつぶるべきなのかもしれないが。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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