順調に進む菩提寺改築の一方で、あちらこちらで一揆、 打ち壊しの話を聞くようになった。

浜松藩井上家本家が、菩提寺である浄心寺改築のため、分家である高岡藩井上家、下妻藩井上家にそれぞれ金二百両の供出を言い渡した。

江戸の米価高騰を解消すべく、老中・松平定信が廻米の触を出した。だが、不作、凶作のなか余分な米など誰も持ってはいない。

廻船問屋戸川屋から借金百二十七両の返済を求める書状が届いた。戸川屋のひとり娘は、元国家老園田頼母の妻女だ。

血と汗を流して江戸への廻米を果たしたものの、米価高騰は続いている。

凶作のため高岡藩の米収穫高も例年の七割しかなく、藩財政がさらに困窮することが予想された。

藩主井上正国の奏者番就任を祝って、狩野派の掛軸が贈られてきた。ところが、目利きの和によれば、掛軸は真っ赤な偽物。

海賊船は正紀らの活躍で退治したが、一味の幹部と悪徳商人は捕縛の手を逃れ、米俵四千俵とともに行方をくらましていた。

一俵でも禄高が減れば旗本に格下げになる、ぎりぎり一万石の大名、下総高岡藩井上家に婿入りすることになった竹腰正紀はまだ十七歳の若者だ。

四代将軍家綱の法要の折に、二人組の侍に襲われていた身なりのいい武家の男児を助けた北町奉行所与力の山野辺に頼まれて、高岡藩上屋敷で男児を預かることになった正紀。

浦川や正棠たちの企てを打ち破り、無事高岡藩主の座に就いた正紀。

高岡藩では、河岸のさらなる発展のため納屋の普請を検討したが、先立つものがない。

正国、倒れる──。

先代藩主正森の頃から三十年にわたって仇を追っているという高岡藩の下士と出会った正紀。

藩と領民が力を合わせ「国替え」という最大の難事を乗り越えた高岡藩井上家。

金貸の鉞ばばあお絹は孫娘お鈴と二人暮らし。お絹から金を借りた絵描きの与三次の身投げをお鈴が止めて……。

知恵と根性で理不尽を跳ね返し、札差の世界で奮闘する若者の出世成長譚! 百両の“賄賂”が奪われた! 公に出来ない大金を巡って、札差笠倉屋に激震が走る。

洪水で崩れた深川洲崎の石垣普請の入札にまつわる普請奉行と岩槻屋の不正を暴いたものの、御手伝普請のための費用がいまだ足りぬ正紀たちは、窮地に追い込まれる。

定信が発布した棄捐令(徳政令)に歓喜の声を上げる旗本、御家人だったが、その喜びも長くは続かなかった。

高岡河岸の発展、〆粕や下り塩の販売など藩主正紀の指揮のもと、藩士たちの不断の努力によって、徐々に回復してきた高岡藩井上家の財政状況。

廃嫡を目論む正棠や浦川たちの奸計に嵌まり、蟄居謹慎を余儀なくされた正紀。

野分により設立間もない人足寄場が壊滅的な被害を受けた。

反・松平定信ということで急接近した尾張徳川家一門と将軍付御年寄・滝川。

金貸の鉞ばばあお絹から金を借りた商家の主が首を括って死んだ。孫娘のお鈴は、残された妻子のため、真相を……。

造酒額厳守の触が出されているなか、天領の村から手に入れた二升の酒によって窮地に立たされてしまった高岡藩井上家。

正紀と京のあいだに子が生まれ、正紀の親友、山野辺には許嫁ができた。

武士が民の頂に君臨せねばならぬという松平定信の施政に疑問を抱きつつも協力してきた尾張徳川家一門だが、尊号事件を契機に定信政権との訣別を決める。

正国の奏者番辞任で反定信の旗幟を鮮明にし、同じく反定信派の大奥御年寄滝川と急接近した尾張一門。

正国のお国入りは無事済んだものの、今度は八月の参府の費用捻出に頭を抱える正紀たち。

亀之助の一件を機に、加賀百万石の前田家と縁を結んだ尾張一門。反定信派の勢いが増すなか、公儀は『造酒額厳守』の触を出す。

銚子の〆粕を巡る騒動の末、わずかばかりの利益を得た高岡藩。

正紀の近習植村の嫁取り、待望の世継ぎ誕生と、慶事が続いた高岡藩井上家。

将軍御目見の旗本・香坂家へ婿入りし、新御番衆として、江戸城へ出仕する身分となった藤吉。

家禄三百五十石の旗本家の次男だった角次郎は米屋の大黒屋に婿入りした。

上州の水呑百姓の家に生まれた藤吉は、下男奉公先で米作りや馬の世話、雑用など何でもこなす毎日を送っていた。

旗本の小出家で、上役の悪辣な妨害にも負けず職務と武芸に励む川端藤吉。

旗本家の次男、大曽根三樹之助は家を飛び出し大繁盛の「夢の湯」に居候している。

御留守居役を勤める五千石の旗本・坂東の側室綾乃は、坂東に酷い仕打ちを受けていたが、雪の降るある夜、意を決して家を飛び出した。

大身旗本への奉公替えで更なる出世を果たした川端藤吉。俸禄も上がり、前途洋々かと思われた。

旗本家次男の五月女角次郎は、縁あって舂米屋の大黒屋に入り婿した。

百姓から憧れの武士へと出世した藤吉に、中小姓として俸禄と姓が与えられた。ある日、奉公先である永穂家の家宝が盗まれる。

武家社会の中で江戸の裏長屋暮らしだった少年・弐吉は、直参の侍の狼藉がもとで両親を亡くし、札差・笠倉屋で小僧奉公をすることに。

父の跡を継ぎ、南町奉行所定町廻り同心となった朝比奈凜之助。

同日に起こった三つの難事件。若い男女の駆け落ち、問屋の強盗事件、付け火と焼死体。

旗本家の次男・角次郎は、縁あって舂米屋に入り婿した。

本所来栖道場の師範代・豊之助は懸命にオンボロ道場の立て直しをはかるが、弟子は遅々として集まらない。

材木問屋の奉公人が刺殺され、凶器の脇差が腹に刺さったまま残されていた。

幾人もの侍に追われていたところを豊之助が救った常太郎と名のる若侍は、いかにもいわくありげな様子。

北町奉行・永田備前守正直の三男である豊之助は婿入りの話を断わり、剣客として生きる決心をした。

仇討ちの父子を道場に居候させた豊之助だったが、どうやらその仇とは、江戸を騒がす火付け盗賊団の頭らしい。

火付盗賊改を翻弄するかのような押込みがこの二年間、続いていた。決して人は殺めず、狐の神楽面をかぶっているという。

棚橋家の次男・市之丞は、母の使いで面会した寺社奉行・阿部正精に、ある寺の復興に手を貸すよう頼まれた。

江戸深川、永代寺門前の花柳街を仕切る、女郎屋女主人のおらん。町で逆らえる者はいなかったが、敵対する新興勢力が現れた。

鮮やかな緋色の襦袢に“じれった結び”の髪、唇には濡れたような紅…派手な身形で男から銭を巻き上げる無法な娘の集団に「首斬り浅」こと山田浅右衛門吉利は目を瞠った。

士分を捨てるか、妹を売るか。どちらかを選ばねばならぬ。

奉行から別御用を仰せつかった同心・楓山主税助。その御用とは、大身旗本の姫を知行地・下仁田まで護衛するというものだった。