「十六歳だった。あのひとに出会うまで十六年もかかってしまったという気持ちは、後悔に少し似ている―」。

四十三歳の宇津井茂美はいまだに男性経験がない。自分と似た境遇の伯母が入院してしまい、独り身の行く末を案じていた。

人に迎合し、喜ばせることが生きがいの眉子。

ご近所さん、同級生、バイト仲間や同僚―。

深夜のバー。小学校のクラス会三次会。

31歳になった。遠距離恋愛中、年下の彼は何も言ってくれない。

デートの経験もある。男と寝たこともある、一度きりだけど。

30歳の誕生日を挟んで、ふたつの大災難に見舞われた松村鳩子。婚約者に逃げられ、勤め先が破綻。

「夫としてはたぶんもう好きじゃないんだよね」。

事務系OLの青葉は、仕事で出会った男、朔郎と結婚した。新居は彼の赴任先の札幌の築十五年3LDKのマンション。

誰もが名も無き日常を、諦めと期待の中で生きている―ともしびスーパーマーケット鳥居前店の買い物客も従業員も、彼らの帰宅を待つ家族も、遠くから想う恋人も。

朝霞、新座、志木。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。

北海道のある町で運命的に出会った中学生「ニコ」と「弥子」。

いつもだいたい機嫌がよろしい元ブリキ職人の夏目清茂・七十四歳。

B(ブス)でW(わきが)の内海恵理伊は、幼い頃から華やかな名前と地味な容姿とのギャップに悩み、自信が持てずにいた。

この子の未来を応援しよう、と決めた子がわたしたちにはいた。オリンピック代表の彼女に期待し、夢を託したが―(第一話)。

小さなまちで、男の目を引くからだを持て余しつつ大人になった地味な性格のアカリ。

平凡な街の地下鉄駅構内で通り魔事件が発生。事件はさまざまな人々に影響を及ぼす―。

愛する人との内縁関係を貫いた曾祖母、族のヘツドの子どもを16歳で産んだ祖母、理想の家庭像に邁進しすぎる母という、強烈な女系家族に育つ女子高生の若菜は、自分のキャラのなさに悩んでいた。

母親が自分に寄せる夢を体に溜め込み肥満化した節子。他人の秘め事を言い当てられるがゆえに高慢で孤独な絵理香。

たったひとりの客を待つ店。

信者が三十人いれば、食っていける。

朝倉かすみが挑む少女×ふしぎの物語。表題作のほか「留守番」「カワラケ」「おもいで」「へっちゃらイーナちゃん」の全5話。

わたしは、この「ちいさな集まり」の一員になったときの母が、もともとの母であるような気がした。

異動先の編集部で、偶然目にした未発表の原稿『聖域』。なぜ途中で終わっているのか。

サラダ工場のパートタイマー、野菜生産者、学校給食の栄養士は何を見たのか? 会社の不祥事で故郷に逃げ帰ってきた元広告塔・栄実、 どん詰まりの地元農業に反旗を翻した野菜生産者・剛、 玉の輿結婚にやぶれ栄養士の仕事に情熱を傾ける聖子。

いま旬の女性ミステリー作家による、「イヤミス」短編を集めたアンソロジー。

札幌のデパートに勤務する吉田は、中年の男性にひとめぼれしました。あとは、まっしぐらです。

夭逝した明治の日本画家・河野珠枝の「朱鷺飛来図」。

42歳の課長さん、17歳年下のキャリアガールに恋をする。おたくの職場、どうよ?ユーモアとリアリティ。

人生の「秋」をむかえたおとなたちは、家族、恋愛、仕事のあれこれに、日々惑わされている。

みんな、しあわせなのだろうか。「考えるだけ無駄か。

不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。

及川恭子、34歳。サラリーマンの夫、子供二人と東京郊外の建売り住宅に住む。

寄生して成長するコウモリラン、いつの間にやら大繁殖するホテイアオイ、暗くてじめじめしたところにいるほど生き生きするコケ…。

伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。

毎日が黄金に輝いていた12歳の夏、少年は川辺の流木に奇妙な印を残して忽然と姿を消した。

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。

1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトンもトム・ウェイツも素通りする退屈な町を飛び出し、上京する。

わたし、まだオッケーかな。ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。

「宮部みゆき流ハードボイルド」杉村三郎シリーズ第5弾。

デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。