羊の頭
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あらすじ
その日、ミースバッハ刑事警察の上級巡査クロイトナーは、リーダーシュタイン山の頂上を目指していた。全欧警察技能コンテストに向けてのトレーニングの一環だった。やっとの思いで頂上に着くと、小さな礼拝堂のそばになぜか大きなビール樽が立ててあった。運んできたのは顔見知りの小悪人スタニスラウス・クメーダーだった。挨拶もそこそこに、クロイトナーは突然気分が悪くなり、頂上を囲む手すりから身を乗り出して嘔吐する。だが、顔を上げて振り向くと、クメーダーの姿が消え、頭部が吹き飛んだ胴体がその場所に横たわっていた。2年前、クメーダーの恋人が失踪した。クメーダーが殺される前、クロイトナーはその失踪中の恋人の行方を弁護士のファルキングが知っていると聞かされていた。クメーダーの恋人が失踪した頃、弁護士のファルキングは、20万ユーロに及ぶ大金を義父から借りていた。ファルキングは仕事上の損失を補填するため、インサイダー取引の危険な賭けに出るつもりだった。(「BOOK」データベースより)
外部リンク
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評判
羊の頭の評価:
7.00/10点 レビュー 2件。 C ランク
羊の頭の総合評価:
7.50/10点 レビュー 4件。
感想一覧
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ドイツ人作家アンドレアス・フェーアの『 咆哮 』に次ぐ、警察小説《Wallner & Kreuthner》シリーズの第二弾です。前回同様、事件の第一発見者はクロイトナーですし、捜査の指揮を取るのはヴァルナー、ヴァルナーが暮らす祖父マンフレートは相変わらず扱いづらい行動を起こすものの、どうも憎みきれないところがある、といった具合です。
随所にドイツ語圏特有の文化や習俗が散りばめられていて、ドイツ贔屓の私には小説を読む楽しさが倍加しました。
書名になっている「羊の頭」はドイツ南部バイエルン地方で盛んなカードゲーム《Schafkoph》のこと。事件の関係者の間でこのゲームが行われていたということですが、事件そのものとの何か深い関係があるというようには思えないものの、そうしたゲームがあるということは初めて知りました。
ヴァルナーが、「俺はプロイセン式の謹厳実直を旨としている。部下が決めたとおりに動いていれば文句はない」と言い放つ場面があり、ドイツ南部を舞台にしたこの小説の主人公がドイツ北部の価値観を旨としているのは興味深い話に思いました。
ウィーンではトマトのことを「Paradeiser」ということや、戦時中、ナチス親衛隊員はトマトをアメリカから来た敵性野菜として1942年以降は食べなかったというエピソード、 その他、魔女話が出てきたり、マンフレートがカスラー(Kassler)のセロリピューレ添えを作る場面があったりと、ドイツ、ドイツしたところが次々と出てきて興趣が付きません。
そう思っていたところで、「木を見て森を見ないとかいって、日本人はそう(=全体像をみようと)する」なんて一節が出てきて苦笑します。
最終局面でヴァルナーとクロイトナーが、ある男を追跡する場面はいかにもテレビの世界で活躍していたフェーアらしい筋立てですが、そうこうするうち、最後の最後でクメーダー殺害事件をめぐる大どんでん返しがあって、息を呑みました。前著『咆哮』でも読者をうまく騙してくれたフェーアの作劇術は見事です。
この《Wallner & Kreuthner》シリーズは2021年現在、ドイツ本国で9作目までが発表されているとのことです。第3作の『Karwoche(受難週)』も酒寄進一氏の見事な邦訳で読める日が来ることを期待しています。
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