裏切りの塔
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ミステリ→
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あらすじ
名作ミステリ新訳プロジェクト本邦初訳の戯曲「魔術」ほか全5編日本オリジナル短編集塔から消えた宝石。毒殺された貴婦人。人を食らう怪樹。不可能犯罪と謎解きの魅力に溢れた作品を新訳で贈る。鳥獣や人間をむさぼり食うと伝えられる異形の怪樹《孔雀の樹》に挑んだ大地主の失踪事件の真相とは。怪奇色に満ちた傑作中編「高慢の樹」。かつて名探偵として名を馳せた神父の元を訪った青年。彼が修道院で遭遇した宝物消失事件を顛末を描く表題作。創元推理文庫初収録となる「煙の庭」「剣の五」に加え、夢想家の姪と実際家の甥の先行きを案じた公爵の計略が思わぬ騒動を招く、三幕仕立ての戯曲「魔術」を本邦初訳で贈る。(「BOOK」データベースより)
評判
裏切りの塔の評価:
3.50/10点 レビュー 2件。 D ランク
裏切りの塔の総合評価:
6.20/10点 レビュー 5件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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「高慢の樹」
コーンウォールの海岸にある大地主ヴェインの住む土地には、「孔雀の樹」と呼ばれアフリカ北岸から移植されたと言われる不気味な樹が海辺の森に存在する。鳥を食べるとされるその樹は、近頃では近づいた人間が行方不明になるという噂がたち、付近の住民たちから恐れられている。大地主の招待客であるアメリカ人批評家のペインターほか、詩人、医師、弁護士、娘のバーバラなどが集う夕食会のあと、頑迷な大地主ヴェインは「孔雀の樹」の迷信を晴らすべく樹に登り森で一晩を過ごすといって一人で樹に向かう。しかし翌日になっても大地主は帰ってこなかった。そして季節が変わっても帰らない大地主を捜して森に出掛けたペインターは森の中に意外なものを発見する。
怪奇ものの雰囲気を併せもつミステリ作品。「孔雀の樹」の迷信と絡めた真相も面白い。
「煙の庭」
純朴な娘が名高い閨秀作家にして流行の詩人であるモーブレイ夫人の話し相手としてロンドン郊外の住宅に赴き、訪問客のフォンブランク船長に出迎えられる。夫人宅に宿泊した翌日、奇妙な匂いに目が覚めるキャサリンは、夫人の夫である医師の大声と悪態をつく声を耳にし、とある薬が失くなったらしいことを知る。そんななか、薔薇が咲く庭の中である人物が倒れているのがみつかる。
「剣の五」
決闘についての論争をしながら散歩をするフランス人フォランとイギリス人マンクは、突然若い男に人が殺されたから助けてほしいと声を掛けられる。呼び出された先のある邸宅の庭には、決闘に敗れて殺害されたとされるクレインという若い男が横たわり、双方の介添人二人ずつと決闘で相手を殺した青年が集っていた。決闘は昨晩、酔って賭博をいかさまだと絡んだクレインとの間で持ち上がったという。いさかいが起きた屋敷は荒れたままで、床には「スペードの五」のトランプが落ちている。しかし、フォランは賭博と決闘が起こったという現場のある状況に違和感をもつ。そしてフォランは殺されたクレインの美しい妹に乞われ、真相究明を約束する。
「裏切りの塔」表題作
東欧のある地に滞在する英国人外交官のドレイクは、付近の城から滞在先である修道院に戻る途中、修道院から発射された弾丸によって殺害される地元の農夫を目撃する。直後に付近から怪しい男性が現れるが、自身の犯行ではないと弁明して立ち去る。不審な事態にドレイクは当地に隠棲する、もとは有力な政治家だったスティーヴン神父の謎を読み解いてきた過去に期待して、神父のもとへ相談に訪れる。修道院の塔には高価な宝物が収められており、新たな修道院長による厳戒な警備体制によって守られていること。ドレイクが城にいる想い人に会うため修道院を抜け出していたこと。城にいる娘の兄や城主の博士にドレイクが疎まれているらしいことなど、ドレイクは彼の置かれた状況を説明する。ドレイクのある言葉に閃きを得たスティーヴン神父は、ドレイクとともに塔に向かっていくのだった。
東欧の荒野や厳戒な塔、城の存在が不穏な雰囲気をまとい、結末とも相まって詩的な空気を醸し出している。
「魔術―幻想的喜劇」
三幕の戯曲。富豪である公爵家に、ともに暮らすことになっている被後見人の甥モリスと姪パトリシアが到着する。寄付を募りにきた教区牧師スミスと開業医のグリムソープ博士も訪問するなか、公爵に招待されたという奇術師が現れる。到着したばかりの甥のモリス甥のモリスが奇術師に絡むなか、奇術師の見せる"魔術"によって騒動が持ち上がる。本書内でもっとも読後感が温かい。謎をどのように受け取るか、鑑賞者に委ねられる点も印象的である。
ミステリとしての真相も含めて第一篇「高慢の樹」の完成度が高く、個人的には本書内でもっとも面白く読めた作品だった。表題作がもつ独特の雰囲気も良い。偶然かもしれないが、全作品に恋愛のエピソードが絡んでいることも手伝って、全体に抒情的な読み心地がある。