少年Nのいない世界 04
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いきなりだけど、本シリーズの購読・レビューは本巻で断念する。 いや、面白い・面白くないで言えばまだ結構楽しめるのよ、このシリーズ。 けどこれ単体で100%楽しめるか、という部分で納得がいかない部分が大きくなり過ぎたのでこの判断に至った次第。 物語の方は双葉が進めていた、かつて地球から跳ばされてきた仲間集めが進行し4人までは集結できたものの、 その一方で前巻描かれた不審な影の暗躍と、その帰結としてのかつての仲間である文乃による音色の誘拐が発生。 しかも間の悪い事に波留斗が音色の行方を追っている最中にエアボードの練習中の事故で怪我を負ってしまう事に。 音色が連れ去られた事を知った双葉や波留斗、歩巳は別の惑星に音色を連れて高飛びしようとする文乃を追い 「客船」の発着するターミナルへ。波留斗はターミナル内のカフェにいる文乃と音色を見付けるが、 エースが「彼ら」と称する勢力の襲撃を受けてしまい文乃たちは逃走。 それでもトワコたちの仲間に追い詰められてしまい文乃は絶体絶命の窮地に陥るが、 突如音色が持っていた毒薬を取り出し「道を開けないとこの薬を飲みます」と言い出し…… いよいよ話の全体像が見えてきた感。 誰が難の為に5年前に異世界の様な惑星に跳ばされてきた子供たちを集めようとしているのか、 前巻で歩巳と波留斗を襲撃し連れ去ろうとした「彼ら」とはいったい何者なのか、 その辺りが明かされ、物語がどこに向かおうとしているのかが明示されるのがこの巻。 その一方で1巻の冒頭とラストで重要キャラの様に登場したものの暫く影が薄いままで 前巻で姿を見せたと思ったら突如としてかつてのクラスの仲間である音色を連れ去るという暴挙に出た かつての6年1組で「菅沼軍団」と呼ばれた女子のリーダー格・文乃の人物像が掘り下げられているのも大きな特徴。 「異世界に行ける」という都市伝説の実行の結果、跳ばされた先に原始社会だったり、文明世界だったりと 大きな差があり、また保護された時の状況で割合に恵まれた状態で育てられたり、塗炭の苦しみを味わされたりと 「勝ち組」「負け組」に大きな隔たりが生じてしまったのがこのシリーズの特徴ではあるのだけど 今回掘り下げられるヒロイン・文乃は一番の「負け組」に近い状況で過ごしてきた事は前巻までに明かされた通り。 そして奴隷労働の中で同性が相手とはいえ「春を売る」様な事までしてきた文乃がかつての仲間の中でも 最大の「勝ち組」であり文明世界である惑星キュアで至宝と呼ばれるダンサーに育った音色に対する複雑な感情が徹底して描かれる。 音色に対してかつての「文乃ちゃん」として接しようとすればするほどにこの5年間で汚れてしまった自分を突き付けられ 心の中で音色に「ごめんなさい、自分はもう『文乃ちゃん』じゃなくなってしまったの」と詫びなければならない文乃の姿に 5年間で彼らの間に生じてしまった隔たりの大きさが描かれている様に感じられた。 そしてその文乃の惨めさはこの異世界転移の元凶である悦史に対する凄まじいまでの憎悪の感情にも表れるのだけど、 その殺しても飽き足りない悦史と文乃が「彼ら」の下で組まざるを得ない状況に陥っているというのも構図として面白い。 その「彼ら」と呼ばれる異世界転移してきた子供たちを集めようとしてきた背景として この作品の舞台では最大の文明世界として描かれている惑星キュアの発展の秘密などが明かされるのだけど、 この秘密には民俗学でいうところの「まれびと」や沖縄神話で言い伝えられる「ニライカナイ」あたりの影響が見て取れる。 最近のライトノベルでは岡本タクヤの「異世界修学旅行」がこのネタで話を作っていたが、本作も広く考えれば同カテゴリーかと。 かくのごとく話は大いに盛り上がり、いよいよ核心に向かって行っているのだけど…… 冒頭で申し上げたように本作はここで購読とレビューを断念する。 この巻では双葉の保護者である「エース」やその友人である「アン・ユー」、「トワコ」といった現地人組の描写が多い。 前巻ぐらいからこの現地人組が表に出てくる事が多くなってきたけど、個人的にはこの「少年Nのいない世界」は 異世界に跳ばされて育った少年少女が主人公と思っていただけに、現地人組が話を仕切り始めるとひどく違和感を覚える。 理由は明確でこの現地人組を把握しようと思えばこの作品の裏面である「少年Nの長い長い旅」を読む必要が生じるからである。 特に今回サットと名乗っていた「アン・ユー」の活躍する場が多く、このサットは「長い長い旅」の主人公・野依の 旅のパートナーであり浅くない仲であったと語られるのだが、やはりその部分も「長い長い旅」を読まないと 匂わせるだけ、となっており詳細が掴めない。サットがかつて経営していた「預かり屋」の面々との再会のシーンなどは 「長い長い旅」を読んでいれば感動のシーンなのだろうけど、読んでいない読者は完全に「蚊帳の外」なのである。 単体でも「それなりに」面白いけど、それがかえって「100%楽しめていない」という虚しさがこみ上げてくる。 ……やっぱりこれ企画に無理があったんじゃないのかな、と。 そりゃ「両方読めば良いじゃん」と言う人もいるのかもしれないけど、一つの作品を愉しむのに わざわざ一冊1000円越えの児童文学、それも判型が違う本を買って読むのはしたくないのである。 超個人的理由だけど仕方ないのである。せめて同じ文庫形態で出してくれればと思うのだが。 面白いのに購読を断念しなければならないのはレビュアーとして断腸の想いであるなあ、と思わされた次第。 | ||||
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