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ずいぶんとゆるいが、映画「名探偵登場」や 東野圭吾「名探偵の掟」のような ファンのためのジュブナイル。ディリュージョン社という そもそもがファンを楽しませる会社という設定が 活かしています。作者からの挑戦にどれだけ ニヤリと出来るかが勝負。大分ニヤケられます。 | ||||
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児童文学の世界から作家を積極的に起用するユニークな戦略を打ち出しているライト文芸レーベル講談社タイガ。 今回起用されたのは児童文学の世界でもミステリに特化した作家はやみねかおる。 お名前は何度か聞いた事があったが、実際に読むのはこれが初めて。 物語は主人公・森永美月がディリュージョン社の入社試験で面接試験を受けている場面から始まる。 顧客の依頼に応じて書籍の中にしか存在しない物語世界を現実世界に構築し、 顧客に物語の主人公を体験してもらう体験型アトラクションサービス「メタブック」を提供する ディリュージョン社の幹部が居並ぶ中「あなたはどんな本を読まれますか?」という質問に 堂々と「本は読みません」と答える美月。 想定外の答えに面接官たちが唖然とする中、美月はそもそもディリュージョン社のサービス内容すら さっぱり把握していない事を披露してしまう。 数か月後、何故かディリュージョン社に採用され、打ち合わせを通じて顧客の要望を引き出し、 予算や希望するシーン、尺の長さを決める「エディター」の仕事に新米ながらも奔走していた美月だったが 案の定先輩エディター東山が指揮を執るメタブックで大やらかしをしでかしてしまい、顧客が激怒。 世界中で聖典とされるミステリを「ホームズって家(ホーム)の複数形みたいで大工さんみたいに思えます」 と苦り切る安藤局長の前でしれっと言い放った美月に局長から突き付けられたのは異動通知書。 異動先は本格ミステリーを専門的に扱うM0課。 「ミステリなんて人が死ぬ話、それもバラバラにされたり奇妙な飾りをされたり―そんな怖い話読みたくありません」 という美月だったが、M0課の平井課長は顧客の要望に応じたオリジナルのメタブック「オプションリーディング」の 打ち合わせに出向くことを命じてくる。 脚本を担当するライターでかつては天才中学生ミステリ作家と騒がれた手塚と会いに行った顧客は元大学教授で 植物学が専門だった佐々木という男。オプションリーディングは彼の別荘を舞台に展開される事になり準備が始まるが、 佐々木宛に送られてきた「永遠の恋人」を名乗る人物からの手紙が届いた事から事態は少しずつ狂い始め… 劇中劇、というのともちょっと違うか…? 顧客の要望に応じてセットを組み立て、プロの役者とプロのシナリオライターが用意した物語世界で 主人公を演じる顧客に合わせて物語を展開させるサービス「メタブック」という設定が非常に面白い。 裏方としてメタブックを準備し、時に役者の一人として物語に参加するエディターの美月が時に 自分が裏方であるスタッフなのか、物語中の人物なのかと虚実の境目がぐらついてくる感覚が 読者にも伝わってくるメタな構造が非常に特徴的。 物語の方は新米エディターである美月が元大学教授の佐々木の要望に応じてセットしたミステリ劇に 「永遠の恋人」なる人物の影がちらつく中、綿密に準備したはずのセットの中にはあり得ない様な 一歩間違えれば顧客の佐々木やサブキャラを演じるアクターたちが死にかねない罠が幾つも見付かり、 遂には重傷を負うアクターも出るが、メタブックを中止すれば多額の賠償金が発生してしまい、 やらかし続きでクビが危ない状況が迫る中、駄目エディターである美月が謎解きに挑む、というのが主な流れ。 「永遠の恋人」といういかにもな差出人名で手紙を送ってくる人物が現れたり、人命にかかわる予想外の事態が 立て続けに引き起こされるので、ついつい「現実川」である筈のスタッフの意識が物語の方に引っ張られるが、 必死で現実の方に踏み止まって「これはディリュージョン社のライバル企業のスパイによる妨害工作では」と 美月たちが「現実的な」犯人探しに挑む一方、それだけではどうにも説明が付かない謎も存在するという 二重の構造になっている、ある種のメタミステリ。 主人公・美月はかなり癖のあるタイプ。「本を読まない」というだけでも本読みである読者にはピク、と 反応してしまう部分があるのだが、なんというか徹頭徹尾空気を読まず、地雷原の中をスキップでお散歩しては 周りを地雷の爆発に巻き込みながら当人である美月自身はケロっとしている所があるので読者によっては かなり「ムカッ」とする部分があるかも。 登場人物の描き方に関しては…うーん、上に挙げた美月のキャラがかなり濃過ぎてサブキャラが若干弱いかなあ? 嫌味な性格のシナリオライター・手塚や関西弁の俳優養成担当・富田林あたりは多少特徴的であるけど、 話を大きく動かすほどのパワーが感じられないというか。 二重になった謎解きに関しては「物語を実際に妨害しようとしているライバル企業のスパイは誰か?」という 部分はなかなか意外だった。意外だったけど、事の顛末の方は大人の事情に絡めとられる結末に終わるので いわゆるカタルシス、という部分ではちょっと弱いかも。 問題なのは「永遠の恋人」絡みの方で、こっちは実は勘の良い人であれば真犯人に関する目星は割と早い方で 気が付いてしまうかもしれない。それはそれで構わないのだけど、肝心の謎解きが二つともかなり終盤寄りなのは 気になってしまった。 真犯人に関する設定が最後の方で一気に開示されるので「ちょっとご都合主義っぽくないかな?」という印象が 拭い難く残ってしまったのはどうにも勿体ない。構成のバランスが終盤に偏っていたというか… 二重ミステリという構造や虚実の感覚がおかしくなってきそうなメタ感覚は悪くないのだけども キャラクターの濃さやストーリーの展開というバランス的な部分でもう少し何とかならなかったかな、と 思わされる部分が残った。はやみねかおる氏はキャリアも長く、作品数も多いので他作を読まなければ 実際に判断するのは難しいのかもしれないが、初めて読んだ上では「あれ?」となった講談社タイガでの一冊だった。 | ||||
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