少年Nのいない世界 01
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猫殺しに巻きこまれて異世界に飛ばされた少年少女の物語。その世界には複数の惑星があり、それぞれ文明の進捗度が違っていて、互いの交流も限定的(遅れた文明圏を保護するため)。 それぞれの星は、現代の地球でいうと、異なる階層・階級を表現。高度に文明化の進んだ星、肉体労働の星、工場で強制労働させられる星…。うまくやっていけるのは一芸に秀でた者だけというのは現代社会と同じですね。そして、優れた者も興行師に搾取されるというのも、現代と同じ構造。ですので、異世界とはいっても、現代に生きる若者たちの境遇を描いていると読めそうです。 1巻では、数人が再会を果たします。しかし、大した出来事は起きません。また、各人は無力で抑圧され気味のため、自らの意思で動いている感じもなくて、さほどおもしろくはない…。イントロダクションの巻という印象です。続きに期待しています。 | ||||
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石川 宏千花さんという作家については正直過去の作品を一冊も読んだ事が無かったのだが、調べてみたら児童文学の世界で活躍されていた方らしい 講談社タイガで児童文学出身の作家さんというと本作の一か月前に刊行された、にかいどう青さんの「七日目は夏への扉」が大層気に入った事から 「ひょっとしたら柳の下にはもう一匹ドジョウがいるのでは…」とかなり甘い期待を抱きつつ拝読 物語は惑星ドゥカの首都ベーレーにある練習場で人気競技エアボードのプロ選手であるアッシュが練習を終え、ファンの声援やボーダー仲間の誘いを 後目に自宅マンションへと帰宅する場面から始まる。自宅のある最上階に辿り着いたアッシュは部屋のドアの前に見慣れない女が立っている事に気付く こんな所にまでファンが押しかけたのか、と戸惑うアッシュに近付いた女は「※※君だよね?」とアッシュに聞き取れないローカルな言語で話しかけてくる 「ペダ語しか分からない」と答えたアッシュだったが、女がもう一度発した「岩田波留斗くんだよね?」という言葉を耳にした瞬間、目の前にあった壁が 崩れる様な感覚と共に、アッシュ=岩田波留斗は全ての記憶を取り戻し、自分がどこから来たのか、何が切っ掛けでこんな状態になっていたのか、 全てを思い出すに至り、目の前で「探すの、大変だったんだよ?」と話しかけてくる赤いフレームの眼鏡をかけた女が十二歳の頃の面影を残した魚住二葉 である事に気付く。「十三匹分の猫の首を旧市街にある村田ビルディングの屋上から投げ落とし、その後自分も飛び降りれば異世界に行ける」という 「猫殺し十三きっぷ」という小学六年生にもなれば誰も信じない様な噂を実行に移している小学生がいる、というクラスメイトの菅沼文乃の強引な誘いで 犯人を探しに旧市街に向かった御図第一小学校六年一組の六人は村田ビルディングの屋上で都市伝説を実行に移そうとしたある人物に巻き込まれ、 転落した筈の波留斗が気付いた時には見知らぬ世界に辿りついていた。何日も田園風景の中を放浪した波留斗は「おばあちゃん」に拾われ、親と はぐれた可哀想な移民の子として養子となったが、少しずつ自分の飛ばされた世界について知るに従い、精神的な不安定さが強くなりパニック障害へと 陥った結果、精神科医の判断で記憶を凍結する治療を受ける事に。記憶を復活させる為の「着火ワード」に自分の名前を設定した波留斗にフルネームで 二葉が呼びかけた結果、記憶を復活させた波留斗は二葉にどうやって自分を探し出せたのかを尋ねるが、イベント会社に就職した二葉は社長の人脈を 駆使してあらゆる情報を検索、波留斗を始めとした村田ビルディングから転落した仲間を探そうとしてきたらしい。二葉は波留斗以外にも既に居場所を 突き止めた仲間がいると話すが、その一人・糸川音色は中心となる惑星キュアで「惑星キュアの至宝」と持て囃されるダンサーとして活動しているという 二葉は滅多にアポが取れないダンサー・ネイロにようやく会う約束を取り付けた事で近日中に会いに行くつもりだと波留斗に打ち明けるが… 非常に変わった読後感を受けたなあ、というのが読み終わっての第一印象。満足・不満足で言えば満足に近いのだが、何故自分が満足させられたのか それが読み終わった今でも不思議で仕方ない。基本的には明確に起承転結を持つストーリーを展開できているか、という判断基準をレビューする際には 用いているのだけど、その基準に従えば本作は間違いなく「不十分な作品」に違いないのである。何しろ、起承転結の、ほぼ「起」の部分だけしか無いに 等しい構成となっているのだから驚いた。にも拘らず、本作を読んで小生は「面白かった!」と感じたのだから自分でも訳が分からないのである 物語は13匹の猫を殺して、その首を投げ落とす事で異世界への扉が開くという都市伝説を実行しようとした小学生を追った小学六年生の男女六人が 屋上で飛び降りようとした猫殺しの犯人を助けようとして転落した結果、異世界どころか宇宙の彼方に飛ばされてしまったという状況から始まるのだが この第一巻においては転落~跳躍から5年の歳月が流れ、散り散りになってしまった少年少女たちが自分が辿り着いた状況からどの様にして 生き抜いて来たのか、という彼・彼女の「これまで」が仲間の一人であり、高い情報収集能力を持つに至った魚住二葉が彼らを探しだす旅の中で 仲間と再会して聞き出す、という形で描かれている 都市伝説を追っていたら宇宙の彼方にある星へと飛ばされた、という設定からして普通では無いのだけど、飛ばされた先の世界観も非常にユニーク 波留斗や二葉が飛ばされた世界は幾つもの惑星が「ゾーン」という一種のワープ装置で結ばれているのだが、文明のレベルは古代から未来まで 非常に幅広く、しかも高い文明を持つ中心の惑星・キュアの取り決めにより文明の発達が遅れた星へは高度な文明の齎した道具などを持ち込む事が 禁止され、保護区の様になった後発の星は宗教に支配された古代社会がそのまま残されているのである。そして現代日本で生まれ育った十二歳の 少年少女たちが、運が良ければ高度な文明の星に辿りつけるが運が悪ければ古代社会や発展途上の人権なんか微塵も無い残酷な世界に送り込まれ 五年もの歳月を生き延びねばならなかったという過酷な運命の分かれ道を辿った事が高度文明に辿りつけた、いわば「勝ち組」である二葉や波留斗たちに 突き付けられていくのである イベント会社に就職できた二葉や、田舎の惑星に流れ着いたが優しい「おばあちゃん」に拾われ、エアボートというプロスポーツの世界でスターになれた 波留斗と違い、二葉が見つけた仲間が過ごした環境は恐ろしく厳しい。中心惑星であるキュアで小学生の頃に習っていたバレエを活かして超人気ダンサー として活動していた糸川音色は初めは古代文明の星に流れ着いたが部族の祭で踊っていた所を古代芸術の研究家に拾われたがほぼ囚われの身の 様な生活を強いられ、田舎の惑星で建設会社の親方に拾われた長谷川歩巳は元々谷川俊太郎の詩を愛する様な優しい性格だったが荒くれ者たちの 中で生活する中で舐められない様に無理に刺々しい性格形成を自分に強い、砂漠の星・バルロンに飛ばされた菅沼文乃は従業員の人権など微塵も 認めてくれないブラックな食品工場で女工として働きながら脱出の機会を狙い続けてきた…まさにサヴァイバルといっていい人生を歩んできた地球人の 少年少女の「これまで」が明かされていくのである 「猫殺し」の犯人も含め、行方が分からなくなっている仲間がどうなってしまったのか、そもそも彼ら・彼女らは地球ではどんな生き方をしてきたのか、 伏せられた状態になっている部分は多いが、地球での過去も含めて読者の関心を刺激する様な絶妙な情報の出し方が実に小憎いばかりである 仲間を探し続ける二葉自身にも伏せられた部分が多く、再開した波留斗と音色がどの様にして音色の「飼い主」であるダラニエの下から脱出を図るのか、 波留斗がキュアの裏路地で出会い、誘拐されかけていた少年エースは今後どのように絡んでくるのか?次巻以降で展開できそうな伏線が山ほど 盛り込まれている。これだけなら消化不良の印象も強くなりそうなのだが、世界観も登場人物も魅力的過ぎて「今後どんな物を見せてくれるのか?」という 興味が上回ってしまうのである ただし、本作は講談社タイガを追うだけでは不完全な作品にしかならないらしい。講談社の児童文学レーベルである「YA! ENTERTAINMENT」で刊行 される「少年Nの長い長い旅」なる作品を読む事で初めて完全な物語となるとの事。こちらは音色がともに流されていた事が明かされた少年・五島野依が 主人公となっているとの事。シェアワールドの様な物として割り切るべきなのかもしれないが、個人的には最初から二つの作品を追い続ける事を 強いる様な刊行形態はどうなのか、という疑問が湧かないでも無い(「長い長い旅」はソフトカバーの単行本でお値段もちょっと張るし) 独特の世界観、魅力的な登場人物と彼らが過ごしてきた歳月を中心に据えた不思議な物語構成とオリジナリティと言う点では最近刊行されたライトノベル の中でも頭一つ抜けた存在感を感じさせてくれた。先月経験した「児童文学出身の作家さんならもう一つ当たりを狙えるかも」という甘い期待で手に取った 作品ではあるけれど、期待以上の物を見せてくれた。本作で伏せられていた部分を知る上でも「長い長い旅」も読まねばならない、というのは少しばかり 手間ではあるが、何とか読書時間を確保して追って行きたいと思わせてくれた一冊だった | ||||
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