少年Nのいない世界 02
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物語は最高です。が、電子で買うと挿絵が無い。 表紙イラストも読んでみようと思ったキッカケなのに。 とても残念。 | ||||
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「猫殺し13きっぷ」なる都市伝説を実行した結果、本当に異世界へと飛ばされてしまった小学生たちの5年後を追うシリーズ第二弾。 文明・文化の発展具合が異なる星系というユニークな舞台で散り散りになった彼らの再集結がどう動くのか期待しつつ拝読。 物語は村田ビルディングの屋上から惑星ランダ・シーに飛ばされた長谷川歩巳の肉体労働一色の日々の描写から始まる。 12歳でこのベーブルース時代のアメリカの田舎町の様な世界に送り込まれてからドムド建設に拾われ、 ヒョロヒョロのもやしっ子だった小学生が筋骨隆々たる逞しい肉体に変貌するほどに歩巳は変化していた。 それに合わせて詩を愛する大人しい性格もぶっきらぼうで本音を明かさず、揉め事を起こしがちな作業員の仲裁を任される リーダーシップを持つ若手のリーダーと目されるほどに変化を遂げていた。 そんな歩巳の日常はかつて異世界に飛ばされた仲間の一人、魚住双葉の訪問を受けて大きく揺らぐことに。 かつての仲間を集めようとする双葉の誘いを受けて五年続いた建設作業員としての過酷な日常と別れる機会を前にしながら 自分を拾ってくれたドムド建設の親方デラムからは次の現場から班長を任せたいという打診を受ける事に。 更には町で出会った芋菓子ぺダックを売る商売を始めようとする少女ビネとの出会いなども絡み、 歩巳は自分がこの荒々しい世界に否応なく適応している事を改めて思い知らされる。 班長昇進の打診にどういった返事を返したものかと考えあぐねる歩巳だったが、 そんな彼の前にドレンという同業他社の人間を名乗る男が接近し魅力的な条件を提示するが、 その打診を断った歩巳は謎の男たちから襲撃を受ける事に… おっと、意外な構成。 前巻の冒頭の終盤が「少年Nの長い長い旅」では異世界に飛ばされた六年一組の女子のリーダー格、 菅沼文乃の話となっていたので、この二巻は彼女を中心に描くのかと思っていたら 前巻中盤でちょっとだけ顔を出していた若干文明の発達が遅れた惑星で働く長谷川歩巳が中心の話とは。 物語は過酷な土木作業の世界で12歳から5年間働き続けていた歩巳が自分を含めた仲間を集めようとする 双葉の誘いを前に「この馴染みきった世界から去るべきなのか?」と悩む姿を徹底的に掘り下げている。 自分を拾ってくれた親方も含めた建設会社の仲間からは信頼され、現場から現場へと飛び交う中で 訪れた町では両親の助けを頼めなくなった少女の菓子売りを通じて頼りにされるなど歩巳自身の中で 「ぶっきらぼうだけど頼りになる男・アーミーン」としてのアイデンティティが大きくなる一方で かつての「弱い自分」を切り捨てる途上で見殺しにした仲間に対する罪の意識が膨れ上がり、 「このまま去る事が許されるのか?」、「何もかも忘れて長谷川歩巳に戻る事が正しいのか?」と 歩巳を徹底的に追い詰めていく…というのが主な流れ。 このシリーズで面白いのは異世界に飛ばされた仲間のうち、双葉や波留斗の様な 比較的進んだ=現代日本の常識が通じる社会に飛ばされて幸福な人生を歩んだ「勝ち組」がいる一方で、 「人権?何それ?美味しいの?」というとんでもなく過酷な世界に送り込まれた「負け組」がいるという事。 「勝ち組」はかつての12歳の自分をアイデンティティの断絶を起こすことなく育てることが出来たけど、 「負け組」たちは悲惨その物の境遇で「かつての自分」を押し殺して生きてきた事をこの二巻では 長谷川歩巳とアーミーンという二つのアイデンティティの間で激しく揺さぶられる主人公の姿を通じて描いている。 歩巳が素直に双葉の誘いに乗れない理由としてかつて作業員仲間からリンチに遭い、死に追い込まれた 同年代の少年を見殺しにしてしまった、という事情が明かされるのだけれども、 その罪の意識から歩巳が押し殺した「弱い長谷川歩巳」がかつて自分が見殺しにしたのと同じ状況を前に蘇って 「今度はどうするんだ?」と突き付け、断絶されたアイデンティティを統合する上で避けて通れない姿を描いている。 同じ様な問題は今回ちょっぴりしか顔を出さない文乃にも通じており、 アーヤはアーヤの人生を歩んでいる。 それはもう、菅沼文乃の人生では無かった。 という一文にはやはり「負け組」として12歳から食品加工工場で酷使され、 同僚にはした金で「夢」を売り続けてきた惨めな自分をかつての自分から切り離さなければ とてもアイデンティティを保っていられなかった少女の姿がよく表されている。 年端もいかない少年少女たちが経験してきた地獄の様な人生をアイデンティティの断絶と統合を通じて 読者に突き付ける語り口調は中々引き込まれる物があった。 安易に異世界で現代日本人が無双するようなお気楽物語には付き合いきれないが、これなら大いに「あり」である。 少しずつ仲間が集まる一方で歩巳を襲撃した勢力の存在や双葉の勤める会社の社長など、まだまだ 伏せられた部分は多く、これがどの様に明かされていくのか非常に気になる。 …気になるのだけど…「少年Nの長い長い旅」と合わせて読まないとこの物語世界はコンプリート出来ない、というのが 非常にしんどい…1000円オーバーで置き場所も取る単行本として刊行される作品を買い続けるってのは 使える本代も置き場所も限られた安サラリーマン読者には色々と辛い。 せめて同じ文庫版で出してくれたならともかく、単行本を買うってのは色々とハードルが高い。 作品世界はこの上なく魅力的で作者の力量も十分信頼するに足る、という事が分かってしまっただけに より一層、この超えなきゃならないハードルがしんどい…知らないうちに「長い長い旅」は二巻が出ちゃってるし、 もうすぐ三巻も出るらしい…文庫版がリリースされるまで待つしかないんだろうか…辛い。 | ||||
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