〈ミリオンカ〉の女 うらじおすとく花暦
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創元推理文庫で全4巻に渡る高城高全集が再発掘された時の衝撃はけっこう大きかった。戦後復興の時代に創始された国産ハードボイルドの嚆矢として仙台、札幌、釧路と、作家が新聞記者として渡り歩いた街の当時の独特の空気感を題材に短編作品を紡いだものだ。 その全集により高城高の名前がぼくらの世代にも知られるようになったためか、四十年以上の沈黙を破り、高城高は新しい世界の構築を始める。一つはバブルに沸くすすきの の黒服の男を描くハードボイルドで、これらはかつての短編世界を継ぐものと言っていい。しかしもう一つの函館水上警察シリーズは、開港仕立ての函館に材を取った歴史ハードボイルドと言うべき、独自でありながら非常に珍しい世界のものなのである。 連作短編集として、国際都市化すら明治の函館を描いた二作目『ウラジオストックから来た女』に登場するのが浦潮お吟、本書『ミリオンカの女』のヒロインである。ウラジオストックから故郷函館に一時的にやって来て幼女期の因縁の事件に蹴りをつけるという短編の一登場人物であったお吟という女が、ウラジオストックに帰ってからどんな生き様をしてゆくのか作者はもっと描いてみたいと思ったそうだ。 高城は『ウラジオストックから来た女』出版の一年後に現地に飛び綿密な取材を行う。そして七年後に本書を上梓、1935年生まれの作者は83歳という年齢で、この激動な満ちた極北の魔都ウラジオストックに躍動する、たくましく美しい女の人生を活写してみせるのである。 シベリア鉄道の終着駅のあるウラジオストック、1982年から1990年の街を背景に、ヒロインの美しい花暦や衣装、料理、乗馬やスケート、ジプシーたちの踊りや、始められたばかりの演奏会など時代の風俗が実に丁寧に綴られるかと思えば、奸計や裏切りに満ちた凄絶な暴力世界、無秩序な都市だからこそ群がってくる様々な国籍の人種、狩猟や捕鯨に夢中になる冒険者たち、といった巨大なスケールで、誰も見せたことのないこの街を現代に蘇らせてくれたのである。 長崎、遼東半島、満州、樺太、シベリア、そして函館、小樽などなどを行き来したは寄港してくる男女たちの貧しくもダイナミックな生き様や、当時の季節や空気の静と動を描き分ける確かな筆致を辿るにつけ、そこらの読み捨て小説の存在なんかどうでもよくなってしまう。 最終章で函館にお吟は立ち寄り、『函館水上警察』シリーズの準ヒーローと再会を果たす。さらにもう一作、を願ってしまうのは、高齢の作者に対して酷であろうか? | ||||
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