静寂 (ある殺人者の記録)
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1982年12月6日、カール・ハイデマンはこの世に生を受けた。だが、彼は極度に鋭敏な聴覚を持って生まれたため、周囲の音が彼の耳を突き刺し、大きな苦しみを与え続ける。両親は仕方なく彼を地下室に軟禁して育てるが、ある日、母シャルロッテが入水自殺してしまう。この日を境にカールは死こそが静寂という安寧をもたらすことを確信してしまう…。 ---------------------------- 私が敬愛するドイツ語翻訳者・酒寄進一氏が訳出した小説という情報のみをたよりに頁を繰り始めました。東京創元社から出た翻訳ですからミステリー小説かと思って手にしたのですが、オーストリア・ウィーン在住の作家による、なんとも奇妙な殺人者の一代記です。 謎解きの要素もなければ、殺人者はカール・ハイデマンだと最初から面が割れています。 1990年代から2000年代にかけて展開する物語でありながら、過疎の村に生まれ、やがて中世的修道院へと迷い込むカールの殺人鬼人生は、どこか現実離れしており、またドイツ語圏の物語ということで私は否応なく前世紀ドイツの連続殺人犯ペーター・キュルテン(1883-1932年)を連想してしまいました。 ただ、この小説の面白いところは、大衆小説風の口回しを排し、純文学的な言辞を選択して物語が紡がれているところです。となると酒寄氏の出番といえるでしょう。これまでも翻訳調を退けて流れるような和文でドイツ語圏のミステリーを数多く訳出してきた氏の真骨頂が発揮されています。一度として倦むことなく頁を繰り続けることができたのも、氏の訳業があったればこそ。 とはいえ、この単行本のカバー(前)袖にある、「純粋で奇妙な殺人者の生涯を描く研ぎ澄まされた傑作!」という言葉には、私は頷くことができません。感度が高すぎる聴覚を鎮めんがために始まった人殺しは、やがてカール本人ならではの正邪善悪の基準に則って行われる懲罰的な殺人へと一応の変貌を遂げます。殺害の対象は、人に不幸をもたらす不善の徒や、老病の苦しみからの解放を願っているかにみえる人々です。カールのもたらす死が、<世のため人のため>の装いを持つのは確かです。 ある登場人物が不慮の死を遂げそうになるとカールは必死の蘇生を試みます。 「こんな死はだめだ。ふざけるな」(199頁) ここにもカールならではの死の基準が色濃く表れるのです。 しかしそれでも所詮、殺生は殺生です。「純粋」と呼ぶのは無邪気に過ぎると思いますし、読者にわずかながらもそう思わせるだけの材料が、物語の中には見出しがたいというが私の率直な感想です。 ---------------------------- *298頁:「サンタ・ヴィータ養老院」とありますが、日本では「養老院」という言葉は「昭和38年(1963)老人福祉法の制定により、老人ホームと改称され」ています(デジタル大辞泉より)。ですから「養老院」を日本で普段使いの言葉として使うのは1960年以前に生まれた人だけでしょう。 | ||||
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題名を見たとき、パトリック・ジュースキントの「香水」(ある人殺しの物語) が頭に浮かびました。 「香水」の主人公はは鋭敏な嗅覚の持ち主、こちらは鋭敏な聴覚。大きな違いはこちらは現代のお話(中世のような雰囲気は濃厚だけど)。 | ||||
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