レッド・スクエア



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    初公開日(参考)1994年11月
    分類

    長編小説

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    レッド・スクエア〈上〉 (Mystery paperbacks)

    1994年11月30日 レッド・スクエア〈上〉 (Mystery paperbacks)

    『ゴーリキー・パーク』『ポーラー・スター』のアルカージ・レンコ捜査官がついにモスクワに帰ってきた。だが、久しぶりに見るモスクワはすっかり様変りしていた。共産党の解体、ルーブルの大暴落、そして組織犯罪の氾濫。闇市で、レンコの情報屋だった両替商が乗った車が爆破され、さっそく捜査に乗り出した彼は、背後にうごめくソヴィエト・マフィアを追ってドイツへ飛ぶ。そこにはかつての恋人イリーナのすっかり西側の人間になりきった姿があった。 (「BOOK」データベースより)




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    No.2:
    (5pt)

    レンコ捜査官シリーズの第3作です

    本書は
    米国の作家(推理小説家)
    マーティン・クルーズ・スミス
    Martin Cruz Smith(1942-)
    による推理小説
    ”Red Square"(1992)
    『レッド・スクエア』(ベネッセ 1994)
    (棚橋志行訳)の下巻です。

    著者スミスを
    世界規模で有名にしたのは
    ”Gorky Park"(1981)
    『ゴーリキー・パーク』
    (中野圭二訳)
    (早川書房1982 ハヤカワ文庫1990)
    です。同名の映画
    『ゴーリキー・パーク』(1983 米国)
    はこの小説が原作です。
    (日本では劇場公開はされず
    地上波での放映はあったようです)
    本書は
    『ゴーリキー・パーク』から数えて
    3作目に当たる連作(シリーズ)なので
    先に『ゴーリキー・パーク』の説明を
    簡単にしておきます。

    小説『ゴーリキー・パーク』の舞台は
    1980年頃つまり
    ブレジネフ政権(在任1964-1982)末期の
    旧ソ連・モスクワです。
    主人公
    アルカージ・ワシレウィチ・レンコ
    Arkady Vasilevich Renko は
    高名な将軍の息子という設定で
    職業は
    人民警察(The People's Militia)の
    主任捜査官(chief investigator)です。
    人民警察は単に
    民警(ミリツィア)とも言います。

    旧ソ連においては
    内務省の警察部門である民警と
    国家保安委員会(KGB)という
    2つの組織がありました。
    国家保安委員会
    (The Committee for State Security)は
    党・軍と並ぶ三大組織のひとつで
    そのロシア語表記の頭文字が「KGB」です。
    英語読みなら「ケー・ジー・ビー」
    ロシア語読みなら「カー・ゲー・ベー」です。
    米国ならCIAに相当する情報機関です。
    そのルーツは
    ロシア革命(1917)直後に設立された
    「反革命・サボタージュ取締全ロシア非常委員会」
    (頭文字をとって Cheka チェーカー)にあります。
    KGB職員を良くも悪くも
    チェキストと呼ぶこともあったようです。
    ちなみに
    ソ連軍の中にも情報機関があり
    「参謀本部情報総局」
    (頭文字をとってGRU ゲー・エル・ウー)と言い
    GRUはしばしば推理小説に登場します。
    戦前の日本で有名な
    リヒャルト・ゾルゲ(1895-1944)
    あるいは冷戦時代によく知られた
    オレグ・ペンコフスキー(1919-1963)
    はともにGRUの所属です。

    さてアルカージ・レンコは
    民警(ミリツィア)の捜査官なので
    日本で言えば警視庁・道府県警の
    刑事に相当すると思われます。
    ただし常に制服を着用しています。
    小説上で(あるいは実際上でも)
    ライバル関係にあるKGBにも
    制服はありますが職員は
    身元がばれない私服を好んだようです。
    「民警(ミリツィア)VS KGB」
    の対立の構図は
    あえて日本で例えるならば
    「刑事 VS 公安」
    の構図になるかもしれません。

    ゴーリキー・パーク
    つまりゴーリキー公園は
    実際にモスクワにある公園です。
    モスクワ川に沿って細長い敷地の中に
    観覧車やジェットコースターや池があるそうです。
    言わずもがなですが
    公園の名前は
    ロシア・ソ連の作家
    マクシム・ゴーリキー(1868-1936)
    に由来します。
    夏目漱石(1867-1916)の
    『坊っちゃん』(1906)において
    主人公「坊っちゃん」が
    教頭「赤シャツ」と画学「野だいこ」と
    釣りに行って、釣り上げる魚が
    「ゴルキ」
    という設定になっています。

    ‥ゴルキと云ふと
    露西亞の文学者見た様な名だねと
    赤シャツが洒落た。
    そうですね、丸で露西亞の文学者ですねと
    野だはすぐに賛成しやがる。(中略)
    おれの様な数学の教師に
    ゴルキだか車力だか見当かつくものか
    ‥『漱石全集』第二巻(岩波1976)
    (pp.286-287)というくだりがあります。

    そのゴーリキー公園で
    雪に埋もれた3体の死体が発見された
    ‥というのが冒頭の記述です。
    死体の顔は残酷にもそがれ
    指紋も消され
    身元を示す書類も一切ありません。
    現場には
    民警のレンコ捜査官と
    KGBのプリブルーダ少佐が
    鉢合わせします。
    もし遺体の身元がロシア人なら
    国内の犯罪なので
    民警の管轄となります。
    もし遺体の身元が外国人なら
    国家の安全に関する犯罪
    となる可能性があり
    本来ならばKGBの管轄になりそうです。
    「法医学研究所」(the forensic labs)
    (日本ならさしずめ科捜研)で
    病理医が遺体を解剖し身元を推定します。
    スーパーインポーズ法
    (頭部顔面の復元法)で
    顔面を復元したり
    特殊な歯科治療(根管充填剤GP)を
    確認したりして
    身元が判明して行きます。
    ‥続きは
    『ゴーリキー・パーク』
    でお読みいただけると幸いです。
    なお
    レンコ捜査官は
    ペトロフカ通りの
    モスクワ民警本部に報告に行きますが
    通常の勤務は
    モスクワ市検事局で行っています。
    たとえばモスクワ・◯◯警察署
    という呼称は登場しません。
    検事局がいわゆる警察署の刑事課に相当するようです。
    警察制度・司法検察制度が
    日本とは異なるので
    1対1には対応していないことが分かります。
    また
    映画版『ゴーリキー・パーク』では
    民警本部ないし検事局の部屋の壁に
    ユーリー・アンドロポフ(1914-1984)
    の写真が掲げてありました。
    KGB議長の写真が
    民警ないし検事局にあるはずはないので
    党書記長になった後のアンドロポフと思われます。
    すると映画版の時代設定は
    1982年以降1984年以前ということになります。
    (小説よりも2~3年後の設定)

    上に書きました通り
    本書『レッド・スクエア』は
    『ゴーリキー・パーク』で登場した
    レンコ捜査官(アルカージ・レンコ)
    シリーズ第3作です。
    時代設定は
    1991年8月ですから
    ソ連崩壊(その年の12月)の直前です。
    ベルリンの壁は既に崩壊(1989)しています。
    内容は
    ご自分でお読みになっていただけると幸いです。
    『ゴーリキー・パーク』にも登場した
    かつての恋人イリーナとの再会は
    果たしてどうなるのでしょうか?
    著者は
    読者(想定しているのは英語圏の読者)に対し
    モスクワの「赤の広場」のことを英語で
    "Red Square"
    と言う
    ‥程度の知識を前提としています。
    逆に
    英語圏の読者ならほぼ全員
    "Red Square"と言えば「赤の広場」
    ‥という知識はあるでしょう。
    (私のような)平均的な日本人は
    前もって
    「red」「square」を辞書で引いて
    意味を復習しておくといいかもしれません。
    後で(読了後)
    「いい題名をつけた」
    と納得できる気がします。
    余談ですが
    オードリー・ヘップバーン(1929-1993)の
    有名な映画
    『ローマの休日』の原題は
    "Roman Holiday" であって
    "A Holiday in Rome" ではありません。
    理由があります。
    "Roman"は「ローマ人の」ですが
    古代ローマ帝国では
    「パンと見世物」という言葉があるように
    剣闘士どうしが殺し合いをするのを
    娯楽として庶民が見物していました。
    転じて
    "Roman" には
    「他人の犠牲の上に立った楽しみの」
    という意味があります。映画では
    グレゴリー・ペック(1916-2003)らが
    ある意味「犠牲役」かもしれません。
    なかなか含蓄のある題名をつけたものだと
    その昔、大学のラテン語の先生がおっしゃっていました。

    「レンコ捜査官」に戻りますと
    「アルカージ・レンコ」シリーズは
    これまでに8冊出版され
    うち4冊が日本語に翻訳されています。
    原題は次の通りです。

    [1]"Gorky Park"(Random House 1981)
    [2]"Polar Star"(Random House 1989)
    [3]"Red Square"(Random House 1992)
    [4]"Havana Bay"(Random House 1999)
    [5]"Wolves Eat Dogs"(Simon & Schuster 2004)
    [6]"Stalin's Ghost"(Simon & Schuster 2007)
    [7]"Three Stations"(Simon & Schuster 2010)
    [8]"Tatiana"(Simon & Schuster 2013)

    邦訳は次の通りです。
    [1]『ゴーリキー・パーク』(中野圭二訳)
       (早川書房 1982)(ハヤカワ文庫 2008)
    [2]『ポーラー・スター』(中野圭二訳) 
       (新潮文庫 1992)
    [3]『レッド・スクエア』(棚橋志行訳)
       (ベネッセ 1994)上下2巻
    [4]『ハバナ・ベイ』(北澤和彦訳)
       (講談社文庫 2002)   

    マーティン・クルーズ・スミスは筆名です。
    生まれたときの名前は
    Martin William Smith
    マーティン・ウィリアム・スミスです。
    最初はマーティン・スミス
    という名前で書いていましたが
    ありふれた名前なので
    同姓同名の作家がいたため
    父方の祖母の苗字(surname)である
    Cruz クルーズ を third nameとして加え
    Martin Cruz Smith
    マーティン・クルーズ・スミスとしたそうです。
    他にも
    Simon Quinn サイモン・クイン
    Nick Carter ニック・カーターなど
    少なくとも6種のペンネームを持ち
    アクション物などを書いているようです。

    マーティン・クルーズ・スミス名義で
    "December 6"(2002)
    という作品があります。
    ("Tokyo Station" の書名でも出版された由)
    これは題名からも想像できるように
    日本軍による真珠湾攻撃
    (日本では1941年12月8日ですが
    米国や欧州では12月7日です)
    の前日を意味します。
    私はまだ読んでいませんが
    あまり評判がよくありません。
    登場人物がステレオタイプであるだけでなく
    そもそも日本についての知識も乏しいのに
    無理やり書いたような本らしいです。
    いわゆる「無知本」との指摘もあります。
    マーティン・クルーズ・スミスは
    ホームページを開いています。
    そこで
    "December 6"
    の紹介ページを拝見しました。
    貼り付けてある写真が2枚あります。
    1枚は「銀座線 浅草駅」と書いた提灯を背景に
    スミスが立っている写真。
    もう1枚は色紙に毛筆か筆ペンで
    漢字で「酔」
    かなで「マーチンさんへ」
    としたためてあるみたいなのですが
    写真自体が天地逆(上下さかさま)です。
    なんだか
    浅草寺あたりに大勢いらっしゃる
    インバウンドの
    おのぼりさんを連想します。
    あなたは
    漢字の上下も分からない作家が書いた
    日本に関する書物をどう評価しますか?
    『ゴーリキー・パーク』の作者として
    世界規模で最も優れた推理小説家である
    マーティン・クルーズ・スミスの
    最大の駄作が
    "December 6" かもしれないと危惧しています。
    レッド・スクエア〈下〉 (Mystery paperbacks)Amazon書評・レビュー:レッド・スクエア〈下〉 (Mystery paperbacks)より
    4828840729
    No.1:
    (5pt)

    レンコが失地回復したのが嬉しいシリーズ第3弾

    失地回復したレンコ捜査官がまた犯罪に巻き込まれ・・・というお話。

    前作で流刑の身になっていたレンコが捜査官に復帰しているのがまずめでたいと思いました。そしてまた犯罪に巻き込まれ捜査をし・・・という展開はシリーズ通りですが、相変わらず国家規模の謀略小説風にスケールが拡大する所もこのシリーズのファンにはたまらない魅力だと思いました。今回はドイツまで出向いて捜査をしたりと一国の枠を超える活躍をする当たりもこのシリーズの読み所だと思いました。

    更に、宿命の女イリーナと再会しますが、完全に西側の人間になっていて、レンコとの対面でも最初は冷酷な感じで出てくる所もなかなか衝撃でありました。この辺は著者のスミス氏の才筆だと思います。このペレストロイカ期のロシアの当たりに暗躍した民族系のマフィアに関しても十分リサーチされていて感心させられます。特に、チェチェン系の人が悪めに書かれており、チェチェン系の方には噴飯物かもしれませんが、当地で暮らしている方には綺麗事抜きで身に迫る物があった様です。チェチェン系の方が怒ったらすいません。

    フリクションで印象に残った文章に赤線を引いて読んだので引用すると、
    「遊んでいるサルを見つけたワニのような笑みをうかべて(以下略)」
    「”非暴力犯罪”っていうのは”ビジネス”の同義語にほかならない。犯罪者とビジネスマンを区別するものさしは、ビジネスマンには想像力があるってことだけだ」
    「そして冷凍庫には、チョコレートバー、ピンクの花とグリーンの葉の飾りのついたアイスクリームケーキ。以前はそこいらのミルクショップで売られていたケーキだが、いまでは高嶺の花となってしまい、よほどのことがないかぎり食卓には上らない」
    「共同住宅は民主主義にとっては致命的だな(中略)もちろん民主主義は共同住宅にとって致命的だ」
    「「わたしに注目したまえ、世界よ、そしてうらやむがいい。わたしはソヴィエトのパスポートをもっている」いまではだれもが、ただ脱出するためにパスポートを欲しがっている。そして政府はみんなから無視され、二十年間ひとりの客も訪れない売春宿で起こったような悪意にみちたいさかいの場へとなりさがった。」
    「”同士”という言葉のなかに、アルカージはブタに残飯をやるほどの感情しかこめていなかった。」
    「壁が崩れたときは、すっかり祝賀ムードが蔓延したよ。東と西のベルリンがまたひとつになる。夜這いが解禁になった一夜みたいな騒ぎだった。ところが、めざめてみれば、何年も恋い焦がれた女がポケットというポケットを探って財布も車の鍵もみんなちゃっかりせしめてたってっ寸法だ。」
    となりました。以上の文章にペレストロイカ期のソヴィエト周辺やドイツの混沌と混乱が読みとれると思いましたがどうでしょうか。

    作品の内容と関係ない事ですが、このシリーズ今の所4作翻訳されておりますが、出版社、版型、訳者がバラバラで読者が迷惑です。こういうシリーズの場合は全て版元や訳者を統一して頂きたいです。

    後の警察小説に多大な影響を与えたと思われる偉大なシリーズ第3弾。是非シリーズ順にご一読を。
    レッド・スクエア〈上〉 (Mystery paperbacks)Amazon書評・レビュー:レッド・スクエア〈上〉 (Mystery paperbacks)より
    4828840710



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