現代夜討曽我
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 | 1998年03月31日 現代夜討曽我 (光文社文庫―墨野隴人シリーズ) 名探偵・墨野隴人が帰ってきた!陽気な未亡人・村田和子は、親友・春日アヤメから怪事件の相談を受けた。妹・サツキの恋人・曽我十郎に「曽我兄弟に告ぐ。工藤家の800年の怨念、いまや、刃は血を求めている」との脅迫状が届いたのだ!仇討の予告か?ところが逆に、十郎と交際していたアイドル歌手・飛鳥七重のマネージャー・工藤の絞殺死体が、富士の裾野で発見された。彼のもとにも脅迫文が…。さらに第2の殺人!村田和子の恋する墨野隴人が名指す意外な真犯人!壮大なトリックと強烈なドンデン返しが仕掛けられた“墨野隴人シリーズ”―構想10年、推理界の巨匠が精魂こめた書下ろし第4弾!待望の登場! --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。 (「BOOK」データベースより) |
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| 終盤の「歌謡ショーの夜」での麻雀で、 七重が五筒の嶺上開花で上がった手は 「五筒開花」で、ローカルルールで 役満。五筒をその模様から梅の花に 見立てたものだという。 作者が意図していたかどうか分からないが、 小田原には曽我兄弟が育った土地に曽我の 梅林がある。 | ||||
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| 墨野隴人シリーズの４作目。主人公である村田女史の調子はますます悪化し、恒常的な飲酒、睡眠薬の濫用から幻覚にまで及んでいます。前作までの不審な点の数々はもしかするとシリーズを貫く縦糸となるような大きなストーリーの伏線だったのかもしれません。思えば、墨野の行動はいかにも不可解でした。 さて、単体としての本作品は、シリーズ中でも屈指の出来ではないかと思います。村田女史の受けた不気味な印象が読者にも伝わってくるような緊迫の展開でした。それだけに、底が割れてしまった終盤の展開が（墨野登場までは）ダレていたのは残念でした。終盤で村田女史の珍推理を読まされるのは、それが間違いであることが明白なだけに、やや苦痛です。 また、評価には影響させていませんが、本書の結末で墨野がとった行動には納得できませんでした。冷静になって事件の概要（被害者・犯行態様・動機）を考え直してみて、本当にこの結末で良かったといえるのでしょうか。ただ、最後に一抹の謎を余韻を残す構成は見事でした。 | ||||
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| 高木氏の墨野シリーズ第四弾。本シリーズは二作目が出版された頃知って、一作目、二作目と順番通りに読んで、三作目が出た時にもすぐに読みました。ところがその後、高木氏が大病で倒れてしまい、本シリーズも完結が危ぶまれる状態になってしまいましたが、高木氏は不屈の執念で快復し、神津シリーズの長編を二作、それに続き本作、更に墨野シリーズ第五作目を出版し、その作で墨野シリーズは完結。それと供に高木氏は作家活動からの引退を発表されたのでした。(後に引退を撤回し、更に何作かの小説を執筆されました。)そんな訳で本作は墨野シリーズ三作目からずいぶん長い年月が経って発表されたので、私自身書店でこの本を見た時には、「ああ、ようやく墨野シリーズの続編が読めるのか」と感激した事を覚えています。(しかしその後蔵書の整理などもしなければならず、本書も今回再びの購入となった訳です。) ところでこの墨野シリーズ全五作は、一作一作独立したミステリーでありながら、五作全体でも一つの大きなストーリーを構成する仕掛けになっており、その意味で作者がこのシリーズを完成させる事に非常な執念を持っていたのは良く分かります。ただ、第三作までとそれ以降の二作とはミステリーとしての完成度に差がある印象を受けてしまいます。内容の仕上がりにも、文章の完成度にも正直不満は残ります。やはり小説を執筆すると言う事は大変な精神力と体力を必要とする事で、大病後の高木氏は精神力はともかく体力の方はかなり無理をしていたのではと想像されます。特にこの四作目は構想自体が大病後に作られた可能性もあるので、完成度がもう一つになってしまったのは仕方ないかもしれません。しかし、このシリーズを完結させるまでは死ねないぞと言う作者の激しい気迫、小説家魂には圧倒されます。 とにかく墨野シリーズ全体は非常に面白いミステリーです。未読の方には是非一読をお薦めします。その際、全体が一つの小説でもありますので、必ずシリーズの順番通りに読んでください。念のために全作のタイトルを。「黄金の鍵」、「一、二、三 死」、「大東京四谷怪談」、「現代夜討曽我」、「仮面よ、さらば」の五作です。 | ||||
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