銀の虚城



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    初公開日(参考)1968年01月
    分類

    長編小説

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    銀の虚城(ホテル) (ハルキ文庫)

    1997年11月30日 銀の虚城(ホテル) (ハルキ文庫)

    名門東都ホテルへ入社した高村博は、社長の要請でライバルの大東京ホテルへ再入社したが、その目的は大東京ホテルを内部から撹乱し、評判を落とすことだった。高村は故意に二重部屋割をやったり、女優のスキャンダルを暴いたりと、ホテルをかき乱したが、使命を終えた彼を待っていたのは意外な運命だった。企業のエゴを鋭く告発した長篇社会派サスペンス。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。 (「BOOK」データベースより)




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    銀の虚城の総合評価:9.33/10点レビュー 9件。Cランク


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    No.9:
    (5pt)

    江戸川乱歩賞や日本推理作家協会賞を受賞している

    対して賞も取ってないとコメントしている人がいますが、とんでもない!
    江戸川乱歩賞や日本推理作家協会賞等、数々の賞を受賞したレジェンドです。
    銀の虚城、腐食の構造、高層の死角などカーにも劣らない密室トリックスターであり、西村京太郎より先にトラベルミステリーとの融合を果たしていた作家です。
    人間の証明、野生の証明、青春の証明の証明三部作でブレイクを果たし、ご存じの通り映画も大ヒットしました。

    銀の虚城は精巧なトリックと昭和のサラリーマンの悲哀を表現した(当時は社会派にくくられた)ミステリです。紙での出版はもう行われないでしょうが、電子で無料で読めます。電車でゲームをするなら無料のこの作品を読んだ方がためになる。そんな作品です。
    銀の虚城(ホテル) (角川文庫 緑 365-2)Amazon書評・レビュー:銀の虚城(ホテル) (角川文庫 緑 365-2)より
    4041365023
    No.8:
    (5pt)

    無名時代の森村誠一の傑作。55年経っても古びていません。

    長年に渡って私は、森村誠一を「『悪魔の飽食』という、『ノンフィクション』に偽装した『小説』を書いた男」としか認識していませんでした。

    偶然から、この55年前の、ホテルマンを主人公にした長編小説(初版は昭和43年〈1968年〉)を手に取って、一晩で読み終え、
    「森村誠一って、本当は凄い小説家だったんだ!」
    と認識を完全に改めました。

    昭和8年に生まれた森村誠一は、昭和33年に青学を卒業して10年以上ホテルマンとして勤務し、その経験を活かした、このホテル小説『銀の虚城』など数点を「青樹社」という無名の出版社から上梓しました。

    特に文学賞を受賞した訳でもない30代の森村誠一が自費出版に近い形で上梓したと思われる『銀の虚城』に対し、世間の反響は特に無かったようです。「これだけ凄い小説が、誰にも読んで貰えない」という世間の厳しさを感じました。

    森村誠一は、早大→松下電器で『課長島耕作』を書いた弘兼憲史、慶大→三菱銀行で『半沢直樹』を書いた池井戸潤の先輩と言えます。無名時代の森村誠一が書いた『銀の虚城』は、『課長島耕作』や『半沢直樹』よりむしろ優れているくらいなのですが・・・

    さて森村誠一は、この『銀の虚城』を上梓した翌年の昭和44年〈1969年〉に、路線を変えた小説で江戸川乱歩賞を受賞し、一気に人気作家に駆け上がりました。

    デビューから10年あまりで凄まじい数の作品を書きまくり、すっかりアイディアが枯渇した森村誠一が金を稼ぐために手掛けた『悪魔の飽食』を読んで、私は「森村某は取るに足らない売文家」と判定していた次第です(それはそれで正しいとは思いますが)。

    さて、この『銀の城』には
    「どんな糞客にも笑顔で対応しなければならないホテルマンを下人のように扱う流行作家」
    が登場します。読後に森村誠一の経歴、この小説を上梓した時点で森村誠一が未だ無名であったことを知り、合点が行きました。

    森村誠一が、憧れの「流行作家」になった後、ホテルマン、同様の立場のサービス業の人たちにどう接したのかが気になりますが・・・この『銀の城』は、本当に素晴らしいホテル小説です。この傑作を、55年が経過した現在も電子書籍として提供して下さっているKADOKAWAに敬意を表します。
    銀の虚城(ホテル) (角川文庫 緑 365-2)Amazon書評・レビュー:銀の虚城(ホテル) (角川文庫 緑 365-2)より
    4041365023
    No.7:
    (5pt)

    森村誠一の企業社会への憎悪、理解できます。

    ホテルのお客様への絶対服従への精神が反転して、ホテルの従業員同士の陰惨な人間関係に変わるところが私の職場も同じです。
    銀の虚城(ホテル) (角川文庫 緑 365-2)Amazon書評・レビュー:銀の虚城(ホテル) (角川文庫 緑 365-2)より
    4041365023
    No.6:
    (4pt)

    時代の空気を感じられる。なかなかのブラック企業っぷり。

    前の東京オリンピック1964年前後、高度成長期のホテルを舞台にしたお話。

    スパイとして競合ホテルに送り込まれた主人公が、競合ホテルを内部から攪乱する長編ではあるが、しんみりする客のエピソードや、同僚の友情、シェフの矜持など、短編連作っぽい感じ。

    主役はセフレを自分の作戦の道具として使い捨てるドライな面と、後輩のために奔走する頼れる兄貴的な面をもつ。半沢直樹のような清廉なヒーローではないが、いちサラリーマンが意地悪な上層部やモンスター客と闘い、読者の溜飲を下げるパターンとしてドラマ化できそう。

    ホテル王が時代劇の悪徳代官みたいで笑う。
    ******
    「万一の場合を考えて、何の物証も残さないようにしておくのだ。いざとなれば彼ら二人を捨てればすむことよ。たかが、新人社員の一人や二人、ものの数ではないわ」
    「万事心得ております」
    ***引用おわり***

    ホテルマンの経験のある著者の怨念をぶつけているような箇所も。
    ネットもクレカも普及していない時代、巨大ホテルの繁忙期のチェックイン、アウトは戦場のようだったという。
    *******
    ……こうなるとお客という感じはしなくなった。討っても討っても攻め寄せる執念深い敵の大軍のように見えてくる。確かに血走ったクラークの目は客を見る目ではなかった。
    「さすがに、二千室となると凄いな」……
    ***引用終わり**

    勤務評価については、上司を「秘密警察」と言わせている。
    ****
    …中略…鵜の目鷹の目でアラを探して、評価をマイナスして行く減点法だ。…中略… それに課長は憲兵や秘密警察のように我々を監視している。…中略… オーソドックスな客を装うのであればまだしも、ことさらに意地悪く、不良客のような柄の悪さでからむ。それに挑発されて少しでも従業員側に失言や、態度の崩れがあろうものなら、鬼の首でも取ったように〝摘発〟する。日々の業務の到る所にこのような罠が仕かけられ……
    ***引用終わり**

    当時、モンスター客という表現があったか知らないが、横柄・理不尽な顧客については、
    *******
    接客業者なら誰でも味わったことがある、客に対する殺意に近い憎悪感、それをぐっと胸の中に怺えて、終始にこやかなスマイルを浮かべて接遇しなければならないこの職業の鉄の掟。
    ***引用おわり*****

    スパイの主人公も最後はしっぺ返しをくらう。その原因は、高度成長の結果、日本がIMFの8条国に格上げされ、国際資本取引の自由化にさらされたこと、といったあたりも当時の世相が反映されている。
    銀の虚城(ホテル) (角川文庫 緑 365-2)Amazon書評・レビュー:銀の虚城(ホテル) (角川文庫 緑 365-2)より
    4041365023
    No.5:
    (5pt)

    「日本アルプス殺人事件」と「銀の虚城」の2話を収録!

    「銀の虚城」
    1968年に青樹社より刊行されました。青樹社の那須英三編集長により「大都会」「幻の墓」と出版したものの、まったく売れず那須氏は頭を抱えてしまった。「うちだけでは読者が広がらないから、他社からも出したほうが良い」と言われ、紹介された出版社に持っていくと「小説になっていない。小説の“いろは”から勉強しなさい」と酷評された。やむなく那須氏が引き取り青樹社から出版された因縁の作品です。

    本編は、都内に於ける巨大ホテルのトップを争う話です。主人公の高村は、社長命で極秘に身分を偽りライバルホテルのホテルマンとして潜り込み、意図的にトラブルを起こし競争相手のホテルの信用を失墜させる工作に携わる事になります。その見返りとして復社した時には、高位の役職が与えられる事になっており忠実に役目を果たそうとします。しかし、それは虚城だったのです。

    実に悪辣な手段ですが、むしろユニークに書かれて、ホテル内部の裏事情を、面白可笑しく描いています。ホテル内部のトラブルは数々有りますが、森村氏の実体験の様です。ホテルマン時代の鬱屈した不満を、すべてこの作品に爆発させている様にも思えました。ただ、個人的には“深夜の婚礼”の章と“東京の休日”の章は、泣けてしまいました。

    1967年の「大都会」から、世に名が知れ渡るまでの不遇の時代の作品ではありますが、酷評するのは、容易いけれど、この時森村氏の才能を発掘するのは、広大な雪原の中に落とした小さなピッケルを探すほど困難だったはずです。

    那須氏は「ここまで書いても良いのかな?」と森村氏は、社会の巨悪や悪癖に熱い怒りの炎を燃やしていたと言います。後々、本格的な社会派小説を作る事を予想していたのではないでしょうか。那須氏は雪の中に小さなピッケルを見つけていたのだと思います。

    本作後、森村氏が大輪の花を咲かすまであと僅かです。しかし、この時にはまだ、角川春樹という人物が森村氏のこの時期の作をすべて読んでいたという事は誰も知りませんでした。

    本作品は森村氏にとって通過点、又はスタート前のウォーミングアップに過ぎない時期に書かれたものであったと言えるでしょう。ですが森村誠一文学の価値を知るうえでは重要な一作だと思います。

    「日本アルプス殺人事件」
    1972年光文社から出版されました。「週刊小説」の峯島正行編集長から、当時の週刊誌連載は15~16枚の原稿が相場であったものが、80枚の依頼を受け、夜が明けるのも度々ありながら書き上げた作品です。

    1969年に「高層の死角」で江戸川乱歩賞を受賞しました。しかしながら当時は、松本清張氏の推理小説ブームも下火になり、乱歩賞を受賞したものの、とりわけ執筆依頼が増えた訳ではありませんでした。

    しかし「新幹線殺人事件」を発表した頃から執筆依頼が増え、やっと順風満帆な作家活動を送れる様になった頃でした。出せば売れる森村氏にも、そんな時代が有ったのだと思わされてしまいます。

    冒頭の出だしから、ショッキングな事件が3件起こります。北アルプスで山岳スキーを楽しむ男女が、スキー板を外す転倒をして救助を待つ間に女が凍死してしまう事故。二つは、東京の高層ホテルで火災が発生。ヘリで脱出する男女が、掴まった救助梯子から男が女を蹴り落とす事件。三つ目は、北アルプスの乗鞍岳に向かう車が、突然の吹雪で、男女を乗せたまま立ち往生してしまい、これも、女が救助を待つ間に凍死してしまう事件です。

    冒頭30頁に、男女の謎めいた事件が3件起こり、これが、本編を通し常に伏線となっています。冒頭の伏線の張り方では「東京空港殺人事件」や、不遇の時代の作品「分水嶺」などに顕著にみられます。

    特に強烈に印象に残るのは、デビュー間もない不遇の時代に書かれた「分水嶺」の冒頭部分です。「東京原宿のアパートで女が、ガス自殺した。しかし大都会ではありふれたことであり、大したことでは無かった」。次に「同じ日、病気療養中の夫が失踪したと届け出があったが、大都会では、ありふれたことであり、大したことでは無かった」。三つ目「北アルプスの穂高岳山頂から一人の男が墜ちて死んだ。しかし、山ではありふれたことであり、大したことでは無かった」とあります。

    この三つは、ラストで見事に物語の結末を結ぶことになります。本作品でも、この「分水嶺」と同様の試みが行われているのが読み取れます。冒頭のこの様な書き出しを読んで、「分水嶺」の様な面白い話が続くのだろうと思うとワクワクしてしまいます。

    本作品は、アリバイ崩しの推理小説です。容疑者の官吏が事件当時に、北アルプスに登山中で犯行現場には存在することが全く不可能な完璧なアリバイが有ることです。それは登山行をフィルムに残し時系列的に遡ると必然的に犯行時刻には北アルプスに居たことが証明される仕組みとなっていたのです。

    フィルム・アリバイトリックでは、松本清張氏の「時間の習俗」が有名ですが、本作では、更に巧みな高度のアリバイテクニックになっています。

    本事件の捜査指揮に当たるのが、他の作品でも度々登場する那須警部です。青樹社の編集長で無名の時代の森村氏を見出してくれた、那須英三氏をモデルにしています。少ない奉金の警察官でありながら、休日には、ポールモーリア等のフレンチミュージックを聞きながらパイプをくわえる姿など、現実の那須英三編集長の面影を数多く書いています。

    乱歩賞受賞後、順風満帆の作家生活を送っていた森村氏も那須英三編集長には感謝の念が絶えなかったことが読み取れ、嬉しく読みました。森村氏の趣味だった登山を扱った作品は多数ありますが、その中でも優れた作品だと思います。
    森村誠一長編推理選集〈第5巻〉日本アルプス殺人事件,銀の虚城 (1977年)Amazon書評・レビュー:森村誠一長編推理選集〈第5巻〉日本アルプス殺人事件,銀の虚城 (1977年)より
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