きみの血を
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種別
長編
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あらすじ
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評判
きみの血をの評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 C ランク
きみの血をの総合評価:
8.50/10点 レビュー 10件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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この小説はアウターブリッジ医師と、彼にジョージの診断を命じたアル・ウィリアムズ大佐の間に交わされる往復書簡、そしてジョージ自身の手記を中心に構成されています。
シオドア・スタージョンといえば、ここ10年ほど『不思議のひと触れ』などの新訳などが出て日本でも再び注目を浴びるようになったSF作家、幻想作家です。ですが、この『きみの血を』は、古なじみであることをうかがわせる医師と大佐の手紙のやりとりを読んでいても、どこがSFなのか、なにが怪異譚なのか、そもそもお話は一体どこへ向かっていくのか、なかなか判然としません。そうこうするうちにジョージ自身の不幸きわまりない生い立ちが綴られはじめ、両親の死や叔母夫婦に引き取られた幼少期などは同情に値するとは思うものの、これまた何がこの物語の要諦であるかが不透明なままです。
むしろこの語り手たちが――物語の開巻部で「これは作り話(フィクション)」だと声高らかに宣言していたとはいえ――<騙り手>でなのではないかという疑念が読み手の私の中に徐々に湧き上がってくるのが分かります。<フィクション>を前にして読者が当然持ち合わせるべき心構えを根底から否定されるような不思議な気分に襲われます。
そして終盤、ジョージがしたためた問題の手紙の文面が明らかにされるのですが、その内容自体はさして読者に驚きを与えないでしょう。むしろジョージが年上の逢引相手であるアンナとの間でどのような行為に及んでいたのかが、それとなく示唆されるくだりに至って、そのおぞましさに衝撃を覚えるはずです。その行為はこの小説のなかでは明確には書かれていません。そのことをアンナから聞き取ったルーシー・クイッグリー譲の報告書簡に暗に示されるだけ――「この行為は二十八日の周期でもたれます。ジョージはきっと、動物的な嗅覚によってそれを嗅ぎあてたのでしょう。」(217頁)――ですから、このくだりを読み逃すと物語の核心を取りこぼすことになります。
この小説がアメリカ本国で発表されたのは1961年です。当時このジョージの行為-―念のために言うと、吸血行為ではありません――を法的に厳しく罰していた州は多かったはずです。今もってこれを禁じている州がわずかに残っているとも聞いています。そうした法律のない日本でもその行為は異常なものとみなされるでしょうが、禁断の行為だからこそ、それはどことなくタナトスと背中合わせであるがゆえの甘美なエロスを感じさせる要素があるのかもしれません。<異常>が与えてくれる甘美を描くこの小説は確かに異様ではあるけれども、実は<生>を賛美する、すぐれた寓話なのではないかという気がしてきます。なかなか手ごわい怪異譚です。
最後に、翻訳について付記しておきたいことがあります。
頁を繰り始めてすぐ、この翻訳が異常ともいえるほどに読みやすい、流れるような和文で綴られていることに気づきました。翻訳者の山本光伸氏の名にはお目にかかった記憶がありませんでしたが、検索してみたところ、独自の翻訳学校を設立されたベテラン翻訳者だと知りました。同氏には『誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか』と『R・チャンドラーの『長いお別れ』をいかに楽しむか―清水俊二vs村上春樹vs山本光伸』という翻訳論(ともに柏艪舎刊)に関する著作があるそうで、機会があればぜひ手にとってみたいと思いました。