きみの血を

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種別
長編
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あらすじ

2002年12月31日 きみの血を (ハヤカワ文庫NV)

ある米軍駐屯地で、精神科医でもある少佐が一通の手紙の差出人である兵士を訊問した。文面があまりに異常だと思われたからだ。兵士のジョージは、少佐から手紙の内容を問いただされると態度を急変させ、コップを握り潰して彼に飛びかかろうとした。ところが、傷ついた自分の手から流れる血を見るや、いきなりそれを吸いはじめたのだ。ジョージの異常な行動を生んだ秘密とは?幻想的SFで知られる巨匠の幻の傑作登場。(「BOOK」データベースより)

評判

きみの血をの評価:

7.00/10点 レビュー 1件。 C ランク

書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点7.00pt

きみの血をの総合評価:

8.50/10点 レビュー 10件。

感想一覧

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Amazonレビュー

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.9
(5pt)

(2017年―第7冊)やがて見えてくる主人公の姿に衝撃を受ける、手ごわい怪異譚

在日米軍基地で兵士のジョージ・スミスは郵送しようとした書簡の文面を質された途端に異常行動をとり始める。ジョージは上官を殴りつけた結果、本国アメリカへ送還されて精神科医のフィリップ・アウターブリッジ軍曹の診断を受けることになる。果たしてジョージが出そうとした手紙には何が書かれていたのか…。
---------------------

 この小説はアウターブリッジ医師と、彼にジョージの診断を命じたアル・ウィリアムズ大佐の間に交わされる往復書簡、そしてジョージ自身の手記を中心に構成されています。
 シオドア・スタージョンといえば、ここ10年ほど『不思議のひと触れ』などの新訳などが出て日本でも再び注目を浴びるようになったSF作家、幻想作家です。ですが、この『きみの血を』は、古なじみであることをうかがわせる医師と大佐の手紙のやりとりを読んでいても、どこがSFなのか、なにが怪異譚なのか、そもそもお話は一体どこへ向かっていくのか、なかなか判然としません。そうこうするうちにジョージ自身の不幸きわまりない生い立ちが綴られはじめ、両親の死や叔母夫婦に引き取られた幼少期などは同情に値するとは思うものの、これまた何がこの物語の要諦であるかが不透明なままです。

 むしろこの語り手たちが――物語の開巻部で「これは作り話(フィクション)」だと声高らかに宣言していたとはいえ――<騙り手>でなのではないかという疑念が読み手の私の中に徐々に湧き上がってくるのが分かります。<フィクション>を前にして読者が当然持ち合わせるべき心構えを根底から否定されるような不思議な気分に襲われます。

 そして終盤、ジョージがしたためた問題の手紙の文面が明らかにされるのですが、その内容自体はさして読者に驚きを与えないでしょう。むしろジョージが年上の逢引相手であるアンナとの間でどのような行為に及んでいたのかが、それとなく示唆されるくだりに至って、そのおぞましさに衝撃を覚えるはずです。その行為はこの小説のなかでは明確には書かれていません。そのことをアンナから聞き取ったルーシー・クイッグリー譲の報告書簡に暗に示されるだけ――「この行為は二十八日の周期でもたれます。ジョージはきっと、動物的な嗅覚によってそれを嗅ぎあてたのでしょう。」(217頁)――ですから、このくだりを読み逃すと物語の核心を取りこぼすことになります。

 この小説がアメリカ本国で発表されたのは1961年です。当時このジョージの行為-―念のために言うと、吸血行為ではありません――を法的に厳しく罰していた州は多かったはずです。今もってこれを禁じている州がわずかに残っているとも聞いています。そうした法律のない日本でもその行為は異常なものとみなされるでしょうが、禁断の行為だからこそ、それはどことなくタナトスと背中合わせであるがゆえの甘美なエロスを感じさせる要素があるのかもしれません。<異常>が与えてくれる甘美を描くこの小説は確かに異様ではあるけれども、実は<生>を賛美する、すぐれた寓話なのではないかという気がしてきます。なかなか手ごわい怪異譚です。

 最後に、翻訳について付記しておきたいことがあります。
 頁を繰り始めてすぐ、この翻訳が異常ともいえるほどに読みやすい、流れるような和文で綴られていることに気づきました。翻訳者の山本光伸氏の名にはお目にかかった記憶がありませんでしたが、検索してみたところ、独自の翻訳学校を設立されたベテラン翻訳者だと知りました。同氏には『誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか』と『R・チャンドラーの『長いお別れ』をいかに楽しむか―清水俊二vs村上春樹vs山本光伸』という翻訳論(ともに柏艪舎刊)に関する著作があるそうで、機会があればぜひ手にとってみたいと思いました。
きみの血を (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: きみの血を (ハヤカワ文庫NV)より
4150410275
No.8
(5pt)

(2017年―第7冊)やがて見えてくる主人公の姿に衝撃を受ける、手ごわい怪異譚

在日米軍基地で兵士のジョージ・スミスは郵送しようとした書簡の文面を質された途端に異常行動をとり始める。ジョージは上官を殴りつけた結果、本国アメリカへ送還されて精神科医のフィリップ・アウターブリッジ軍曹の診断を受けることになる。果たしてジョージが出そうとした手紙には何が書かれていたのか…。
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 この小説はアウターブリッジ医師と、彼にジョージの診断を命じたアル・ウィリアムズ大佐の間に交わされる往復書簡、そしてジョージ自身の手記を中心に構成されています。
 シオドア・スタージョンといえば、ここ10年ほど『不思議のひと触れ』などの新訳などが出て日本でも再び注目を浴びるようになったSF作家、幻想作家です。ですが、この『きみの血を』は、古なじみであることをうかがわせる医師と大佐の手紙のやりとりを読んでいても、どこがSFなのか、なにが怪異譚なのか、そもそもお話は一体どこへ向かっていくのか、なかなか判然としません。そうこうするうちにジョージ自身の不幸きわまりない生い立ちが綴られはじめ、両親の死や叔母夫婦に引き取られた幼少期などは同情に値するとは思うものの、これまた何がこの物語の要諦であるかが不透明なままです。

 むしろこの語り手たちが――物語の開巻部で「これは作り話(フィクション)」だと声高らかに宣言していたとはいえ――<騙り手>でなのではないかという疑念が読み手の私の中に徐々に湧き上がってくるのが分かります。<フィクション>を前にして読者が当然持ち合わせるべき心構えを根底から否定されるような不思議な気分に襲われます。

 そして終盤、ジョージがしたためた問題の手紙の文面が明らかにされるのですが、その内容自体はさして読者に驚きを与えないでしょう。むしろジョージが年上の逢引相手であるアンナとの間でどのような行為に及んでいたのかが、それとなく示唆されるくだりに至って、そのおぞましさに衝撃を覚えるはずです。その行為はこの小説のなかでは明確には書かれていません。そのことをアンナから聞き取ったルーシー・クイッグリー譲の報告書簡に暗に示されるだけ――「この行為は二十八日の周期でもたれます。ジョージはきっと、動物的な嗅覚によってそれを嗅ぎあてたのでしょう。」(217頁)――ですから、このくだりを読み逃すと物語の核心を取りこぼすことになります。

 この小説がアメリカ本国で発表されたのは1961年です。当時このジョージの行為-―念のために言うと、吸血行為ではありません――を法的に厳しく罰していた州は多かったはずです。今もってこれを禁じている州がわずかに残っているとも聞いています。そうした法律のない日本でもその行為は異常なものとみなされるでしょうが、禁断の行為だからこそ、それはどことなくタナトスと背中合わせであるがゆえの甘美なエロスを感じさせる要素があるのかもしれません。<異常>が与えてくれる甘美を描くこの小説は確かに異様ではあるけれども、実は<生>を賛美する、すぐれた寓話なのではないかという気がしてきます。なかなか手ごわい怪異譚です。

 最後に、翻訳について付記しておきたいことがあります。
 頁を繰り始めてすぐ、この翻訳が異常ともいえるほどに読みやすい、流れるような和文で綴られていることに気づきました。翻訳者の山本光伸氏の名にはお目にかかった記憶がありませんでしたが、検索してみたところ、独自の翻訳学校を設立されたベテラン翻訳者だと知りました。同氏には『誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか』と『R・チャンドラーの『長いお別れ』をいかに楽しむか―清水俊二vs村上春樹vs山本光伸』という翻訳論(ともに柏艪舎刊)に関する著作があるそうで、機会があればぜひ手にとってみたいと思いました。
きみの血を (ハヤカワ・ミステリ 1147) Amazon書評・レビュー: きみの血を (ハヤカワ・ミステリ 1147)より
4150011478
No.7
(5pt)

やがて見えてくる主人公の姿に衝撃を受ける、手ごわい怪異譚

在日米軍基地で兵士のジョージ・スミスは郵送しようとした書簡の文面を質された途端に異常行動をとり始める。ジョージは上官を殴りつけた結果、本国アメリカへ送還されて精神科医のフィリップ・アウターブリッジ軍曹の診断を受けることになる。果たしてジョージが出そうとした手紙には何が書かれていたのか…。
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 この小説はアウターブリッジ医師と、彼にジョージの診断を命じたアル・ウィリアムズ大佐の間に交わされる往復書簡、そしてジョージ自身の手記を中心に構成されています。
 シオドア・スタージョンといえば、ここ10年ほど『不思議のひと触れ』などの新訳などが出て日本でも再び注目を浴びるようになったSF作家、幻想作家です。ですが、この『きみの血を』は、古なじみであることをうかがわせる医師と大佐の手紙のやりとりを読んでいても、どこがSFなのか、なにが怪異譚なのか、そもそもお話は一体どこへ向かっていくのか、なかなか判然としません。そうこうするうちにジョージ自身の不幸きわまりない生い立ちが綴られはじめ、両親の死や叔母夫婦に引き取られた幼少期などは同情に値するとは思うものの、これまた何がこの物語の要諦であるかが不透明なままです。

 むしろこの語り手たちが――物語の開巻部で「これは作り話(フィクション)」だと声高らかに宣言していたとはいえ――<騙り手>でなのではないかという疑念が読み手の私の中に徐々に湧き上がってくるのが分かります。<フィクション>を前にして読者が当然持ち合わせるべき心構えを根底から否定されるような不思議な気分に襲われます。

 そして終盤、ジョージがしたためた問題の手紙の文面が明らかにされるのですが、その内容自体はさして読者に驚きを与えないでしょう。むしろジョージが年上の逢引相手であるアンナとの間でどのような行為に及んでいたのかが、それとなく示唆されるくだりに至って、そのおぞましさに衝撃を覚えるはずです。その行為はこの小説のなかでは明確には書かれていません。そのことをアンナから聞き取ったルーシー・クイッグリー譲の報告書簡に暗に示されるだけ――「この行為は二十八日の周期でもたれます。ジョージはきっと、動物的な嗅覚によってそれを嗅ぎあてたのでしょう。」(217頁)――ですから、このくだりを読み逃すと物語の核心を取りこぼすことになります。

 この小説がアメリカ本国で発表されたのは1961年です。当時このジョージの行為-―念のために言うと、吸血行為ではありません――を法的に厳しく罰していた州は多かったはずです。今もってこれを禁じている州がわずかに残っているとも聞いています。そうした法律のない日本でもその行為は異常なものとみなされるでしょうが、禁断の行為だからこそ、それはどことなくタナトスと背中合わせであるがゆえの甘美なエロスを感じさせる要素があるのかもしれません。<異常>が与えてくれる甘美を描くこの小説は確かに異様ではあるけれども、実は<生>を賛美する、すぐれた寓話なのではないかという気がしてきます。なかなか手ごわい怪異譚です。

 最後に、翻訳について付記しておきたいことがあります。
 頁を繰り始めてすぐ、この翻訳が異常ともいえるほどに読みやすい、流れるような和文で綴られていることに気づきました。翻訳者の山本光伸氏の名にはお目にかかった記憶がありませんでしたが、検索してみたところ、独自の翻訳学校を設立されたベテラン翻訳者だと知りました。同氏には『誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか』と『R・チャンドラーの『長いお別れ』をいかに楽しむか―清水俊二vs村上春樹vs山本光伸』という翻訳論(ともに柏艪舎刊)に関する著作があるそうで、機会があればぜひ手にとってみたいと思いました。
きみの血を (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: きみの血を (ハヤカワ文庫NV)より
4150410275
No.6
(5pt)

やがて見えてくる主人公の姿に衝撃を受ける、手ごわい怪異譚

在日米軍基地で兵士のジョージ・スミスは郵送しようとした書簡の文面を質された途端に異常行動をとり始める。ジョージは上官を殴りつけた結果、本国アメリカへ送還されて精神科医のフィリップ・アウターブリッジ軍曹の診断を受けることになる。果たしてジョージが出そうとした手紙には何が書かれていたのか…。
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 この小説はアウターブリッジ医師と、彼にジョージの診断を命じたアル・ウィリアムズ大佐の間に交わされる往復書簡、そしてジョージ自身の手記を中心に構成されています。
 シオドア・スタージョンといえば、ここ10年ほど『不思議のひと触れ』などの新訳などが出て日本でも再び注目を浴びるようになったSF作家、幻想作家です。ですが、この『きみの血を』は、古なじみであることをうかがわせる医師と大佐の手紙のやりとりを読んでいても、どこがSFなのか、なにが怪異譚なのか、そもそもお話は一体どこへ向かっていくのか、なかなか判然としません。そうこうするうちにジョージ自身の不幸きわまりない生い立ちが綴られはじめ、両親の死や叔母夫婦に引き取られた幼少期などは同情に値するとは思うものの、これまた何がこの物語の要諦であるかが不透明なままです。

 むしろこの語り手たちが――物語の開巻部で「これは作り話(フィクション)」だと声高らかに宣言していたとはいえ――<騙り手>でなのではないかという疑念が読み手の私の中に徐々に湧き上がってくるのが分かります。<フィクション>を前にして読者が当然持ち合わせるべき心構えを根底から否定されるような不思議な気分に襲われます。

 そして終盤、ジョージがしたためた問題の手紙の文面が明らかにされるのですが、その内容自体はさして読者に驚きを与えないでしょう。むしろジョージが年上の逢引相手であるアンナとの間でどのような行為に及んでいたのかが、それとなく示唆されるくだりに至って、そのおぞましさに衝撃を覚えるはずです。その行為はこの小説のなかでは明確には書かれていません。そのことをアンナから聞き取ったルーシー・クイッグリー譲の報告書簡に暗に示されるだけ――「この行為は二十八日の周期でもたれます。ジョージはきっと、動物的な嗅覚によってそれを嗅ぎあてたのでしょう。」(217頁)――ですから、このくだりを読み逃すと物語の核心を取りこぼすことになります。

 この小説がアメリカ本国で発表されたのは1961年です。当時このジョージの行為-―念のために言うと、吸血行為ではありません――を法的に厳しく罰していた州は多かったはずです。今もってこれを禁じている州がわずかに残っているとも聞いています。そうした法律のない日本でもその行為は異常なものとみなされるでしょうが、禁断の行為だからこそ、それはどことなくタナトスと背中合わせであるがゆえの甘美なエロスを感じさせる要素があるのかもしれません。<異常>が与えてくれる甘美を描くこの小説は確かに異様ではあるけれども、実は<生>を賛美する、すぐれた寓話なのではないかという気がしてきます。なかなか手ごわい怪異譚です。

 最後に、翻訳について付記しておきたいことがあります。
 頁を繰り始めてすぐ、この翻訳が異常ともいえるほどに読みやすい、流れるような和文で綴られていることに気づきました。翻訳者の山本光伸氏の名にはお目にかかった記憶がありませんでしたが、検索してみたところ、独自の翻訳学校を設立されたベテラン翻訳者だと知りました。同氏には『誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか』と『R・チャンドラーの『長いお別れ』をいかに楽しむか―清水俊二vs村上春樹vs山本光伸』という翻訳論(ともに柏艪舎刊)に関する著作があるそうで、機会があればぜひ手にとってみたいと思いました。
きみの血を (ハヤカワ・ミステリ 1147) Amazon書評・レビュー: きみの血を (ハヤカワ・ミステリ 1147)より
4150011478
No.5
(4pt)
【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[]   ネタバレを表示する

真相はグロいが、ウマいなぁスタージョン。

あまりにも特殊な吸血鬼物ですね、これは。まず構成から変わっていて、ラストの真相が明かされるところまで吸血鬼も登場しなければ、それらしい場面も出てこない。事件を探る軍医と陸軍大佐との往復書簡や、渦中の人物による手記などが綴られていくのですが、とりたてて何も起こらないんです。しかし、何かある。どこかおかしい。裏に何か大きなものが隠れている。真相がどうなのか早く知りたい。しかし読ませますねえ。めっぽう読ませる。そしてラストの1対1の診断場面。いやあ、こういう事だったのかあ。なんかスゴイよ、この小説。薄い本で、大きな山場もなく、派手な装飾もない。しかし、なんだこの迫力は。すべての謎が氷解して、ようやく見えてくる手記の真相。けっこうグロいことになってんじゃん。これ、生理的にうけつけない人も多いんじゃないでしょうか。でも、それが生々しく描写されずに読者の想像に委ねてあるところが、この本のミソなんですね。う~ん、ウマいなあスタージョン。
きみの血を (ハヤカワ・ミステリ 1147) Amazon書評・レビュー: きみの血を (ハヤカワ・ミステリ 1147)より
4150011478

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