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AliceinAbyss さんのレビュー一覧
AliceinAbyssさんのページへレビュー数35件
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TVゲーム世代であれば、冒頭の5ページを読んだ時点で一つの真相を思い浮かべることができると思います。
もちろん本作ではそこからさらに一ひねり加えた第二の真相が提示されるのですが、結局その第二の真相も「奇想」というよりは「コ想(コロンブスの卵的発想)」であって、正直いまいちと感じました。 コ想は「一見しょうもないけど、よくよく考えたら思いつくことが難しい」発想であって、その評価ポイントは「思いつくことが難しい」点なんですよね。 実際に第一の真相は容易に見抜けたものの第二の真相に思い至らなかったので、本作を「コロンブスの卵だね」と評価することはできるんですが、やはり「第一の真相から派生しただけでしょうもなく見える」第二の真相は、物語としての面白さや謎解きの快感からは程遠いものと思います。 |
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通常のミステリが、例えば「樹木の傷跡」「風切り音」「靴跡の踏み込み」などを鑑みて「凶器は手投げ槍」と推理するという具合に“論理”を組み立てて真相を見出そうとするものであれば、本作は「背中に痣があり、そこに致命傷」「現場は川のほとり」「被害者は指輪を奪っていた」ことから『ニーベルングの歌』のジークフリートの伝承との合致に基づき「凶器は手投げ槍」と推理するという具合に“知識”を組み立てて真相に至ろうとする(犯人も同様の知識を有し、装飾過多の犯罪傾向があるとの前提で)のが一つの特徴である、と言えると思います。
また他にも連想式心理分析なる推理手法、例えば探偵の「スペイン喫茶(バル)に(ムンクの)叫びの絵が飾ってあったか?」との問いかけに、相手が「それはマクドナルドに飾ってありました」と答えようものなら、「この質問を否定するのは、暗殺者ハゲネがジークフリートから武器バルムンクを奪ったとの古典知識を無意識に連想する犯人特有のものだ。だから貴方が犯人だ」といった推理?も多用されています。 もちろんこれらは適当な例で、本作ではもっと高尚で複雑な知識の羅列と組み立てが氾濫しており、良く言えばその知識の奔流に圧倒され、悪く言えば煙に巻かれる形で特に違和感もなく、といっても理解度20~70%といった感じですが、本作を読み進みその作品世界にひたることができました。ところが数箇所まったく意味不明で理解度0%になる部分があり、そこでふと我に返ってしまい黒死館の夢と熱から醒めてしまったため、結局のところこの点数です。 余談ですが、このような知識の伽藍をメインに用いてなおミステリとして成立する作品を作ろうと試みたのが「夏と冬の奏鳴曲」をはじめとする麻耶雄嵩氏の初期作品群であり、一方で連想心理分析から背景知識(という煙幕)を除いたただのダジャレでもミステリが成立すると考えたのが某大説群なのかな、と本作品の影響力の大きさも感じました。 |
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短編集でジャンル的にはミステリ、ホラー、SFとバラエティに富んでいますが、どの作品も思考実験的な会話劇という形式なので統一感はあります。
ミステリに絞って評価すると、超限探偵Σの短編はネタとして嫌いではないですが、やはり別作品集に収録の「更新世の殺人」がとあるミステリ分野において白眉であるのと比較すると、真相の物足りなさは否めません。 そして惜しいと思ったのが「探偵助手」。 トリック、というか作中の仕掛け自体はとても斬新でユニークなもので、これを別の形で利用すれば個人的傑作になったかもしれないのに、最初からみえみえの真相の暴露になっているだけなのが非常に残念です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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前作と同じ児童養護施設「七海学園」を舞台に、保育士の春菜先生や児童福祉司の海王さんらが子供たちの様々な悩みや謎を解き明かしていく連作短編集。
こう書くと「日常の謎」系の本格ミステリと思われるかも知れませんが、人間大量消失事件やコメディチックな監禁事件など日常の謎を超えた様々な事件を扱うため、日常の謎系ミステリが苦手な自分も十分楽しめました。 また作中で児童福祉に関する諸制度や諸問題が上手に事件と関連付けて説明されており、社会派ミステリの側面も魅力的です。 そして最後に明かされる、作中冒頭で提示された墜落事件の真相は驚愕の一言。そのプロットの巧みさに唸らされました。 なお、これから本作を読まれる方は前作からの通読を強くオススメします。 |
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色んな方が同じ指摘をされていますが、殺人事件が蛇足中の蛇足。KING OF 蛇足。
もし、この殺人事件のみの筋立てであれば3~4点といったところ。 ただ。 これまた多くの方の指摘の通り、いろは48首の暗号が本当に素晴らしい。 暗号ミステリとしてだけで評価するなら10点です。 単純に暗号パズルとしての知的興奮のみならず、言葉の美しさという普段ミステリを読んでいると中々味わえない感動もおぼえます。 やはり竹本氏は「匣の中の失楽」などに見られるプロットの妙と、「狂い壁 狂い窓」に見られる言語的センスが魅力(両作は推理物としても十分面白いですが)の作家さんで、本作はその言語に関する知識とセンスが最大限に発揮された傑作だと思います。 |
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前作と比較すると本作はわりとオーソドックスな推理合戦もので、正直に言えば前作の仕掛け(論理学的目論見)のほうが「小説」としては数倍面白いです。
ただ前作はある推理の検討が不十分で(少なくとも自分にはそう思える)、そのため前述の目論見自体が成立しないように思われるので、ミステリサイトの点数的には本作のほうが上だと思います。 また本作の各推理はオーソドックスとはいえ、事件の背景や各キャラクターの様々な思惑によって推理合戦自体に思わぬ方向性が付与されており「ミステリ」として十分以上に面白い作品といえます。 それにしても奇跡の証明が目的である以上、上苙の推理が正解するのは奇跡が存在したときであり、そのため作中ではどうしても最終的には推理ミスをしている探偵に堕しているのが悲劇的というかなんというか。 |
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タイトルにある通り「妄想」、キッドの言を借りれば狂人なりの論理の解明、つまりホワイダニットに焦点をあてた中篇作品集で、それぞれ反重力、ノアの箱舟神話、西洋庭園に対する妄執に取り付かれた被害者たちの狂った論理はすこぶる興味深く面白いです。
またホワイダニットといえば蓋然性の問題となり論理性とは無縁になるものですが、本作はフーダニットをきわめて論理的に突き詰めてあり、本格ミステリのパズル的面白さも十分に楽しめます。 さらにさらに、被害者の「妄想」を補強する手段として各主題に対する衒学趣味が横溢しており、衒学趣味が大好物の自分にとってたまらない作品集となっているため個人的に満点の作品です。 |
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全員が大好きな推理作家さんという稀有なアンソロジー
・・・なのですが、正直各短編についてミステリーという評価枠内では期待はずれかな というのが感想です。 有栖川、法月両氏の作品はロジック物短編に特有のオーソドックスさが際立ってますし、山口氏の作品は趣味に走りすぎ(短編だし個人的には好きですが)と感じました。ミステリー作品集としての個人的ベストは、ツッコミどころ満載なもののアイデアが非常に秀逸な我孫子氏と、相変わらず挑発的な麻耶氏の作品でしょうか。 ただ「名探偵」がテーマとあって、綾辻氏を除くそれぞれの作家さんの抱く名探偵像みたいなものも見えて面白かったですし、綾辻氏の作品もそういった数々の名探偵を生み出した「京大推理研」を核に作家本人たちが言及しているという点で興味深かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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推理Ⅸまでは、トリックも含め物語としてそこそこ面白い(ただミステリ的には禁断のトリックなのでミステリ的評価は0です)と思ってたのに、真実Ⅹでやっちゃいましたね。
研究者じゃないので歴史的なことは知りませんが、最後で明かされる世界の秘密は、刊行当時としても映画「ホー○○マ○○○ン」で見たことある代物なのでインパクトはまったくなしです。 ラストの言葉遊びもそこで明かされる真相はともかく(真相もなんじゃそれですが)、文章じゃなくて独立した短文を使うのは作成が容易すぎて「○の中」などで感じるような作者の天才ぶりや拘りに対する驚きもありません。 ついでに指摘しておくと、「すりがバッグをつかむ」(ひったくりかな?)やら「被調理権」(カニバリズム!?)やら言葉の間違いが散見されるように、言葉遊びを多用するわりに言葉に対する意識が低いのも残念でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ミステリーではないですね。
そう思って読めば言うほど壁本でもなく、まったく面白くないわけでもありませんでした。 ただ推理の言葉遊びはそんなにレベルが高いわけでもなく、アナグラムを考慮したとしてもただのダジャレ・なぞなぞ100選に毛が生えた程度かと。 言葉遊びを追求するなら単発ネタを乱発するんじゃなく、野田秀樹さんの戯曲のように言葉遊びのそれぞれが有機的につながりながら物語そのものを押し進めるようでないと・・・ 自分が面白いと感じたのは、事件のベースを昔の○○に置いた発想の妙とそこから展開させたマンガチックな真相の2点だけです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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