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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数166件
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古典部シリーズ2作目。
1作目の「氷菓」を読んでいなくても読めますが、先に読んでおくにこした事はありません。 それよりも、古典ミステリに精通しているかどうかで、作品に対する印象が大きく違うように思います。 個人的には、この手の趣向は好きではありませんが・・・ ミステリ映画の結末を、途中までの原作、映像をヒントに脚本担当の意図を汲みながら推理していくというお話です。 正解を除くと、主人公・奉太郎を含めて4本の推理が提示されます。 (ミステリ好きにはどう見ても)密室殺人という状況を前にして、サスペンスやホラーといった、トリック云々よりドラマ性を重視した推理も含まれていました。 広義の定義では、サスペンスやホラーもミステリに含まれる訳ですし、破綻もしていないように感じました。 寧ろ2番目に登場した、自称ミステリマニアの推理の方が、面白みがなく、最も基本的とも言える見落としを指摘され却下されています。 ミステリマニア気取りの連中(読者含む)に対するアンチテーゼのようにも受け取れましたけど・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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池井戸潤さん初読。
作者は元銀行マンだけあって、業界の内情や、派閥による歪な人間関係をリアルに描けており、読み応えがあります。 主人公は、派閥という枠に拘らず、媚びず、自分の信念の赴くままに突き進むタイプとして描かれています。 組織に受け入れられる人間ではないという事になりますが、巨大な組織に立ち向かう個人という意味で、その資質は十分だと思いますし、この構図自体が日本人が好むところではないでしょうか。 また、驚くのは、当然のように金融専門用語が飛び交うのですが、読み辛さを感じなかった事です。 筆力があるとも言えるのでしょうが、やはり、付け焼刃的な知識によらない造詣の深さが、それを可能にしているのかなと思いました。 ドラマ性のある題材で、しかもそれを深く描き切れる下地があって、更に筆力もあるのですから、高評価も当然かも知れません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「言葉の意味はわからんがもの凄い自信だ」
は、キン肉マンに登場するアデランス中野さんの言葉ですが、 この作品、というかこのシリーズは、 「なんだかよくわからんが(恐らく)もの凄い話だ」 な気がしています。 この作品単体の評価は難しいと思います。 因みに、私はこのレビューを書く時点で「麦の海に沈む果実」→「三月は深き紅の淵を」の順に、この2作品のみ読了しています。 この「三月は深き紅の淵を」がシリーズの出版順では1番早く、起点となっている(はず)と思うので、やはり最初に読むべき作品だとは思うのですが、順番云々よりも、このシリーズは他の恩田陸作品と色々関連している作品だという事を知った上で読んだ方がいいと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ハードボイルドと言われると確かにそういう感じもしますが、暴力的なシーンの描写もないし、性描写もありません。
主人公である澤崎が、思索型でなく行動型の探偵なのは間違いないにしても、本来ハードボイルドとして象徴的な、反道徳的、冷酷非情、精神肉体的に強靭等の側面を持っているかと言うとちょっと違うかなと。 そもそも、この作品の最も秀逸なところは、そのタイトルの意味であり、 物語のほぼラストまで、自分(のミス)が少女を殺してしまったのかもしれないという自責の念、苦悩を抱えながら行動する澤崎の心理描写を中心に展開していきます。 それは、非常に人間味に溢れ、冷酷というより暖かみすら感じるものであり、私が抱くハードボイルドの印象とはかなり異っています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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連作短編です。
生者を主人公とした4編と、「ツナグ」役の少年を主人公とした1編の計5編という構成になっています。 生者が死者に会えるのは1度切り、同じく死者が生者に会えるのも1度切り。 そして両者の再会を仲介するのが「ツナグ」です。 辻村氏の作品は、兎に角人物造形が深くページを割くという印象があって、それが辻村氏独特の世界観を産み出していると感じています。 なので、短編では、その威力が発揮できないのではと、読む前は危惧していたのですが、心配無用でした。 でも、やはり読後のカタルシスという意味では、長編作品に軍配を上げたいですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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消費税が導入された当時の作品で、消費税に対する不満という時代を反映したとも思える動機が、掘り下げて行ったら、実は重い問題がぶら下がっていたというお話。
それを考えると、この作品の主眼は「その問題」にあるのかとも思えますが、今読むと結構デリケートな問題だったりもしますね。 「社会派ミステリ」としての側面も兼ね備え「本格」との融合がなされた作品と捉える事も出来るのでしょうが、個人的にはイマイチかなという印象です。 この作品の社会派の部分から発せられるメッセージは、そもそも題材にも問題がある上に、本格部分の相も変わらぬ豪腕ぶりとがアンバランスで、空振り感が否めませんでした。 吉敷シリーズは初読でしたが、基本御手洗シリーズと同じなんですね。 最早ファンタジーとも思える謎を次から次へと登場させ、読んでいる方がどう回収させるのか不安になります。 それをファンタジーで片付けないのが御大の凄いところですが、中にはそれはちょっと・・・というのもありますね。 手順を踏まなければならない刑事と突飛な発想も許される探偵という立場の違いもあり、過程の面白味という意味では御手洗シリーズの方が上かなと思いました。 |
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関西弁の登場しない有栖川有栖さんの作品は初めて読みました(笑
黒幕はさておき、被害者を殺害した犯人が予め読み手に分かっているので、所謂倒叙型作品といえるかも知れませんがちょっと違います。 倒叙型作品によくある犯人視点で犯人の心理状態の変化のトレースが主眼となる物語ではないです。 普通では有り得ない被害者=刑事=幽霊が視点人物として、証拠を追う事が主眼になる作品で一線を画します。 ただ、非現実的な設定で全編通してコミカルに描かれていますので、従来の倒叙型小説の行き詰まる心理戦が好みな方には物足りないかも知れません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
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「想像は人を喰らう」
という作中の言葉に示される通り、ちょっとしたボタンの掛け違いが悲劇を生むのですが、現実にも起こりそうな話で怖いです。 第3者の立場から見れば、このような思い込みは、時に間抜けにすら感じるものですが、 血の繋がらない他人を片親に持つ2組の兄妹、兄弟。 ある日突然、自分達と(戸籍上では家族である)他人との仲介役であるはずの存在(血縁関係がある方の親)をなくしてしまう。 また彼らが全て物事の分別に未熟な未成年である事。 ある意味特殊な人間関係が複数存在するという違和感こそありますが、読者に「思い込みも已む無し」と納得させるだけの設定になっています。 タイトルの「雨」に象徴される通り作品を通して非常に暗いです。 視野を狭め判断を誤らせる大雨。 そんな雨が流れを作り、一方の流れがもう一方を巻き込み、どんどん低みへと濁流となって流れていき、止める事ができない。 未熟な精神が生み出してしまった化け物ともいえる濁流に、少年達は為す術もなく追い詰められていきます。 作者が読者を騙すテクニックに優れた作家である事は承知していながらも、読中は重苦しさを感じずにおれません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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伊坂さんの作品の中では、珍しく世界観も日常的であり、気楽に読める作品ではないかと思います。
何しろ、主人公達が難しい話を始めようものなら、 「なんてことは、まるでない」 と、話の流れを打ち切ってしまうのですから(笑) 大学生達が繰りなす青春小説としての体裁をとっていますが、タイトルの砂漠に対して大学時代をオアシスと比喩しているように、作者は大学生をただ生暖かく見守っているようには思えません。 大卒社会人と学生さんでは、読後の印象が違うかもしれないですね。 個人的には、大学生にお薦めしたい本です。 今作にも、お馴染みの型破りキャラとして西嶋という男が登場します。 西嶋は「あのね、俺達がその気になればね、砂漠に雪を降らす事だって、余裕でできるんですよ」 と嘘ぶく訳でなく、真剣にそう語る男。 これまでの伊坂作品において、こういう型破りキャラは、読み手にナイスガイという印象を与え、伊坂自身も愛し「こういう奴いたら最高でしょ」的なメッセージを発していたように思います。 確かに彼は、風貌はいまいち冴えないようですが、行動や思考は、滑稽とも思えるが一貫しており、キャンパスNo.1の美人を彼女にし、幾度と無く奇跡を起こして友人の危機を救います。 各所のレビューでも軒並み「最高」との評価が多いようですが、どうなんでしょう。 私は、伊坂さんは彼を「ダメ男」として描いている気がしましたが。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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教師のサイコパスものです。
主人公であるサイコパス蓮実が、学校を舞台に大量殺戮を行うのですが、彼にとってこれが初犯ではありません。 これまでに、学生時代の親友、恩師、両親といった、最も親しくあるべき人達を殺してきています。 とんでもない殺人鬼です。 蓮実はIQが異常に高いという事もありますが、苦悩する場面というのが殆ど無く、決断が速いです。 物語に中だるみする箇所もなく、次から次へと矢継ぎ早にという表現がぴったりで、読み手も休む間がありません。 上巻・下巻に分かれる結構な長編作品ですが、意外と一気に読めてしまうのはそのためだと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「政治への無関心に対する警告」、もっと巨視的に言うと「流されず自分の考えで判断する事の大切さ」がテーマかと思います。
不景気だったり失業率が過去最高を記録したりと不安だらけで先行きの見えない社会情勢を打破するべく登場したカリスマ政治家・犬飼。 ムッソリーニに比喩される彼の元、大衆は一斉に同じベクトルを示し大きな流れを生み出す。 超能力を有する兄弟が、そんな状況に不安、疑問を感じ、立ち向かっていくという物語。 その超能力ですが、それを武器に、破茶目茶に大暴れする訳ではなく、兄が「他人に自分の意図通りの事を話させる腹話術」、弟が「10分の1以下の確率勝負に必ず勝利する」という、巨大な流れに対し一個人が何ができるのかと考えた時に如何にもショボイのですが、これが何とも伊坂氏らしい。 持っている能力も違うが、同じ方向を向きながらも、兄が「考える人」、弟が「考えない人」と、取り組み方が正反対なのも面白い。 また、安藤に相反する考えの持ち主として、ドゥーチェという店のマスターを登場させているが、二人の会話を通して数多くの伊坂語録を登場させます。 中々読み応えがあります。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「メルカトルかく語りき」がアンチフーダニットに特化した短篇集だったのに対し、この作品はアンチミステリなのは当然の事、メルの鬼畜っぷりがよりクローズアップされた7つの作品からなる短篇集になっています。
重要なのは、この作品の中で発生する7つの事件は、作者がわざわざタイトルに示した通り、メルカトルと美袋のために用意された事件であって、島田潔や御手洗潔のために起きた事件ではないという事でしょう。 この辺、しっかり割り切って読めれば面白いといえるのではないでしょうか。 辻褄は(ほぼ)合ってます ところで、集英社文庫の表紙のイラストがメルのイメージなんでしょうか。 個人的には「メル=イケメン」という設定に一番驚愕・唖然としています。 チビ・デブ・ハゲのイメージしか持てていなかったので・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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