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iisan さんのレビュー一覧

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レビュー数653

全653件 21~40 2/33ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.633:
(7pt)

悪事のスケールが大き過ぎて、現実感ゼロ

よくもまあ、これだけ書き続けられるものだと感心する「イブ&ローク」シリーズの第56作。殺人の謎、人身売買組織の摘発をメインに据えたロマンス・ミステリーである。
N.Y.の寂れた街角で13歳の美少女の死体が発見された。一見、強盗のように見えたのだが、イブはそれを偽装と見破る。清純な仕立ての制服、それとは真逆のセクシーな下着、いずれもきわめて高価な特注品のようだった。わずかな手がかりを追うイブの捜査チームと、陰に陽にそれを助けるロークは執念の捜査で未成年の少女たちを飼育する「アカデミー」の存在を発見する。
巧妙に姿を隠す巨大な社会悪を暴く警察という謎解きミステリーの骨格を保ちつつ、窮地に陥ったヒロインが必ず大富豪の王子に助けられるロマンスの王道の展開。これを受容できるか否かで評価は真っ二つになるだろう。
シリーズ愛読者にオススメする。
232番目の少女 イヴ&ローク56 (mirabooks)
J・D・ロブ232番目の少女 イヴ&ローク56 についてのレビュー
No.632:
(7pt)

今回もまた、不可解な世界に連れて行かれた

妻が夫を金槌で殴殺するという、いかにもミステリーな始まりだが、終わってみればいつもの伊坂幸太郎魔術に惑わされた感じ。
伊坂ファンにならオススメ。
さよならジャバウォック
伊坂幸太郎さよならジャバウォック についてのレビュー
No.631: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

人間の理性なんて脆いものだと痛感する

2011年に発覚した尼崎連続殺人事件に想を得たクライム・フィクション。事件を起こした者、巻き込まれた者、捜査した者という複数視点から全貌を解明する構成だが、時系列が入り乱れるので最初はやや分かりにくい。
事件の細部の描写は丁寧で巻き込まれた者たちの理性が壊れる様やリンチの場面は読んでいて胸苦しくなる。しかしノン・フィクションではないのだから、もっと心理的な追究があれば良かった。これまでの著者の作品に比べるとワクワク、ドキドキが無いまま終わってしまった。
ミステリー、サスペンスとして読むには物足りない。
家族
葉真中顕家族 についてのレビュー
No.630: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

事件は派手だが、動機はしょぼい?

ディーヴァーが法執行官出身のマルドナードとコンビを組んだ新シリーズの第一弾。連邦捜査官の妹が襲われた事件を発端に連続殺人が発生し、大学教授でサイバー犯罪対策の専門家と捜査官が衝突しながらも真相を解明するバディ・サスペンスである。
国土安全保障捜査局の捜査官・カーメンの妹・セリーナが襲撃され、かろうじて逃げたものの助けに駆け付けた男性が重傷を負った。地元警察の反応の鈍さに苛立ったカーメンは捜査の管轄を無視して行動するのだが、犯人が残した携帯電話のファイルは暗号化されており容易に開くことができなかった。そこでカーメンは過去の因縁がある大学教授で敏腕ハッカーのジェイクに暗号解除を依頼した。気が進まないジェイクだったが暗号解除に成功し、事件がセリーナを狙ったもので、しかも前日に起きた男性殺害との連続殺人であることを発見する。しかも、ファイルの暗号化にはジェイクの仇敵のサイバー犯罪者が関わっていることにも気付いた…。
連続殺人犯を追う本筋だが、犯人が腕に蜘蛛のタトゥーがあるデニソンという男性であることは早々と明かされる。そこからはデニソンと、カーメン&ジェイクのコンビの知恵比べが中心になり、さらにデニソンの黒幕の存在も絡んできて、ストーリーは二転、三転する。まあ、いつものディーヴァーらしくどんでん返しがたっぷり、意表を突く仕掛けもたっぷり。ただ最後に真相が明らかになると動機の貧弱さに肩透かしをくらう。
リンカーン&アメリアのコンビニは及ばないものの、楽しめるバディ・サスペンスとしてオススメする。
スパイダー・ゲーム (文春文庫)
No.629: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

まさに「怪作」

一部ではジョルジュ・シムノンの後継者と言われるフランスの作家の2022年の作品。同年のゴンクール賞、ルノードー賞などにノミネートされたというが、位置付けが難しい小説である。折り返しの紹介文には「文芸スリラー」とあり、ネットでは「オフビート・スリラー」、「ひねりのきいたノワール」、「風変わりな推理小説」などと形容されているらしい。
結婚生活に危機を覚えた男が妻との関係修復を目論んでシチリア島にバカンスに出かけたのだが、なぜかやることなすこと悪い方向に転がり、とんでもない結末を迎えるというドタバタ劇。主役の男の言動、心理が謎だらけだが、一緒に行動する妻の方もかなりの変わり者で、二人とも常識はずれである。そこを面白がれるなら高評価になり、そこで波長が合わなければ読んで損をしたとなる。読者を選ぶ作品である。表紙のイラストが本作のテイストをうまく表している。
迂回
イヴ・ラヴェ迂回 についてのレビュー
No.628:
(7pt)

これはエッセイ?(非ミステリー)

一ページから十数ページまで長短さまざまな26本を収録した短編集。軽妙なオチのある作品があれば、淡々と事実を綴った(ような)作品もあり、統一したテーマがある訳でもなく読み続けていて落ち着かない。
それぞれの作品が開く扉、覗ける穴は天国への道か、地獄への奈落か。一番感じたのは人生への諦め、諦観だった。
訳者あとがきを先に読む方が理解しやすいかもしれない。
午後
No.627: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ヒロインの魅力が7割、ストーリーの面白さが3割

イギリスの人気作家グリフィスの「ハービンダー・カー刑事」シリーズ第3作。ロンドン警視庁に異動したカーが名門校の同窓会で起きた殺人の謎を解く、正統派の犯人探しミステリーである。
有名人が集まったマナーパーク校の同窓会で下院議員のゲイリーが死んでいるのが見つかった。現場に到着したカー警部は部下の刑事部長・キャシーが居ることに驚くが、キャシーも同窓生だったのだ。検視の結果、ゲイリーはドラッグによる死に見せかけた殺人であることが判明。犯人は同窓生だと判断し、カー警部は彼らの濃密な人間関係の中に動機を探すのだが、誰もが怪しく見え捜査は難航する…。
ヒロインのカーはインド系、独身、レズビアンというかなりのマイノリティーで、しかも表面的には穏やかだが内面は激情型の人物。捜査過程で漏らす心の内の本音が面白い。物語は21年前の事件が波及した多重殺人というよくある話だが、犯人探しはかなり難しい。帯の「意外な犯人に驚愕」とのセールストークはオーバーだが、いちばん怪しくない人物が犯人っていうセオリー通りかな。
英国謎解きのお好きな方にオススメする。

小路の奥の死 (創元推理文庫)
エリー・グリフィス小路の奥の死 についてのレビュー
No.626: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

すいすい読めて読後感は爽快(非ミステリー)

2005年に刊行された、著者お得意の銀行員物語。いつも通りの勧善懲悪、ハッピーエンドで終わる銀行内部の闘いは予定調和と言えばそれまでだが読みやすく、読後感も爽快なので、どなたにもオススメできる。
銀行仕置人 (双葉文庫)
池井戸潤銀行仕置人 についてのレビュー
No.625: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

犯人探しが大好きな人に

日本デビューの前作「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」が好評だったオーストラリア人作家の第二作。本作もまた、登場人物全員が怪しい謎解きミステリーである。
まぐれ当たりの処女作が売れただけの駆け出し作家であるアーネストが、なぜかオーストラリア推理作家協会の50周年記念イベントに招待され、ガールフレンドのジュリエットと参加することになった。旅は豪華な大陸縦断列車の貸切車両で、著名な作家たちと一緒だという。あわよくば、書き始められなくて焦っている新作へのヒントが得られるのでは、ひょっとして推薦文まで貰えるかと期待し、さらにジュリエットにプロポーズするチャンスと張り切ったアーネストだったが、早々に作家の一人が殺害され、またもや探偵役を果たすことになる。作家というクセのある人物揃いで、誰もが被害者を殺害する動機があり、素人探偵には雲を掴むような状態に陥った。そこに、第二の殺人まで発生し・・・。
前作の雪に閉ざされたリゾートから今回はオーストラリア大陸を縦断する長距離列車「ザ・ガン」の三泊四日の旅に舞台を移した犯人探し物語。信頼できる語り手が謎解きに必要な要素は全部並べ立てるフーダニットの王道に、タイムリミット要素が加味されたところが作者の腕の見せどころ。フェアプレーのための解説が少し煩わしいが、それも読者への挑戦を楽しんでいる故だろう。
謎解き、犯人探しマニアにオススメする。
真犯人はこの列車のなかにいる (ハーパーBOOKS)
No.624: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

こういう伊坂ワールドもあるのか〜。

猪苗代湖で開催される音楽とアートのイベントのパンフに、毎年連載された短編を集めた連作短編集。著者が好きな音楽と絡めて、ちょっとふんわりした人情噺とお得意のスパイ話をミックスしたファンタジー作品である。
こちらの世界とあちらの世界を行き来する扉の出現が伊坂ワールドといえばそうなのだろうが、いまいち乗り切れなかった。
マイクロスパイ・アンサンブル (幻冬舎文庫 い 57-2)
No.623:
(7pt)

全てが大時代的で、自分には合わなかった

ネロ・ウルフ・シリーズの中でも「アーノルド・ゼック三部作」と呼ばれる三部作の第一作。
ラジオ番組の放送中にゲスト出演していた競馬新聞発行者が絶命する事件が世間を騒がせていた。金欠に陥っていたウルフは自分から売り込み、調査を引き受ける。という犯人探しが主軸で、乏しい証拠にウルフと助手のアーチーが四苦八苦していると、さらに別の殺人事件の存在が分かり、ウルフは同一犯によるものと推理する…。
物語の展開がスローだし、挿入されるエピソードもシリーズ愛読者なら楽しめるのだろうが、ネロ・ウルフが初めての自分には少しも面白さが感じられなかった。最終的にはウルフと死命を決することになる宿敵・ゼックが数カ所、短時間の電話でしか登場しないのも拍子抜け。評価は6.5かな。
シリーズ愛読者、古典的ミステリーマニアにオススメする。
忌まわしき悪党
レックス・スタウト忌まわしき悪党 についてのレビュー
No.622: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

こんな謎を解けるのは作者しかいないだろう

デビュー作ながらイギリスで大ヒットし、映像化が進められているという犯罪スリラー。夢遊病、記憶喪失者の犯罪は裁けるのかをテーマにしながら犯人探しミステリーでもある。
友人二人が刺殺された現場で、ナイフを手にしたまま昏睡状態で発見されたアンナ。以後、容疑者でありながら四年間も眠り続けるアンナを裁判にかけたい英国政府は、犯罪心理学者のベンにアンナを覚醒させることを依頼する。ベンはこれまでに無い手法でアンナを覚醒させたのだが、アンナが目覚めると事件の様相は激しく変化し、事件捜査はますます混迷を深めていった…。
最後の最後に黒幕が判明し、全体像が分かるのだが、それまでのストーリー展開は逆転、逆転の連続で何が何だか・・・。ついていくのに骨が折れた。
謎解きミステリーではあるが、この事件の真相を解明できるのは作者しかいないだろう。むしろノワール・サスペンスとして読むことをオススメする。
眠れるアンナ・O (新潮文庫 フ 65-1)
マシュー・ブレイク眠れるアンナ・O についてのレビュー
No.621:
(7pt)

近代史警察ミステリーがオカルトものに変身

著者お得意の警察ミステリーと思って読み始め、中盤から終盤までは1930年代、満州国建国前の中国大連を舞台にした連続殺人事件捜査を楽しんでいたのだが、終盤になって一気にオカルト、怪奇ミステリーになっていた。
佐々木譲ファンであっても評価が分かれると思うが、これはこれで面白かった。
闇の聖域
佐々木譲闇の聖域 についてのレビュー
No.620: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

物語は面白いが、主人公が貧弱

アイスランドを代表するミステリー作家・インドリダソンの大ヒットシリーズ8作目。休暇中のエーレンデュルに代わり、いつもは脇役のシグルデュル=オーリ捜査官が主役となる社会派警察ミステリーである。
シグルデュル=オーリは旧友・パトレクルから「義理の姉夫婦が恐喝されているので助けてくれないか」と頼まれた。セックス・パーティで撮られた写真をネタに大金を要求されているという。何とか事態を収めようと恐喝者の元を訪れたシグルデュル=オーリは、恐喝者が倒れているのを発見したのだが、シグルデュル=オーリ自身も殴られ、犯人は逃走してしまった。恐喝者を追う警察捜査がメインで、そこにホームレスの男が謎の男を監禁している事件、空前の好景気に湧くアイスランドでの銀行絡みの金融犯罪が重なり、互いに絡み合いながら緊張感を高めていく。構成としては複雑だが、読者には徐々に相互関係が分かってくるので読みづらくはない。一点、物足りないのはシグルデュル=オーリの性格が魅力的ではないこと。人間味があると言えば、それまでなのだが。
しかし、エーレンデュルはいつ復活するのだろう?
シリーズ愛読者はもちろん、北欧ミステリーのファンにオススメする。
黒い空
アーナルデュル・インドリダソン黒い空 についてのレビュー
No.619: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

自分の推理力の貧弱さ、集中力の無さに打ちのめされた

それぞれで完結した4作品の最後に一枚の写真があり、そこに隠された真相を発見しろという「体験型ミステリー」。4作品、どれも短編ミステリーとしては魅力に欠けるが、連作で繋がっていること、挑戦的なネタ隠しがあることが売りの意欲作である。
冒頭にネタバレの「ヒントサイト」のQRコードがあるので、最後には作者がいう「真実」を知ることができたのだが、それ無しでは1作品も真相を見つけられなかった。
推理マニアにオススメする。
いけないII
道尾秀介いけない2 についてのレビュー
No.618: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

信じたいのに信じきれない、疑心暗鬼の密室の恐怖

「向かない」シリーズで人気爆発したホリー・ジャクソンのシリーズ外作品。大型キャンピングカーで出かけた6人の若者が携帯も通じない場所で銃撃され、閉じ込められる密室サスペンスである。
高校生のレッドは無二の親友のマディ、同級生のサイモン、高校は違うが同級生のアーサー、お目付役としてマディの兄のオリヴァーとその恋人のレイナの6人で大型キャンピングカーでキャンプ場を目指していた。ところが道に迷い、立ち往生したところを何者かにタイヤと燃料タンクを銃撃され、まったく動けなくなった。パニックになった6人に追い討ちをかけるように、銃撃犯からトランシーバーが届き、6人の誰かが秘密を抱えており、本人がそれを明かさない限り解放しないと命じられた。期限は翌日明け方まで、車から逃げようとしたら撃つという。誰が秘密を抱えているのか、仲良しのはずの6人の間で疑心暗鬼の神経戦が繰り広げられることになった…。
逃げ場のない状況での腹の探り合いという、よくあるワン・シチュエーション・サスペンスにタイムリミットの緊迫感が加わり、読み進めるにつれてスリルが高まっていく。さらに、6人のキャラクターがきちんと立てられており、なるほどこう動くか、こう言うかと納得できるエピソードで畳み掛けてくるところは上手い。ただ、主人公のレッドの秘密が仄めかしばかりでなかなか明らかにされないため、中盤ややダレ気味なのが惜しい。
「向かない」シリーズとは異なるテイストを楽しめるミステリーとしてオススメする。
夜明けまでに誰かが (創元推理文庫)
ホリー・ジャクソン夜明けまでに誰かが についてのレビュー
No.617: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

1940年代後半、パリとサイゴンでフランスの家族が織りなす大河ドラマ

第二次世界大戦後のフランス、ベトナムを舞台に繰り広げられる壮大な家族ドラマである。
ベイルートで石鹸工場を成功させたルイとアンジェエルのペルティエ夫妻はグズでダメ男の長男・ジャン、優等生の次男・フランソワ、同性愛者の三男・エティエンヌ、紅一点で末っ子のエレーヌの4人の子供を愛情いっぱいに育てていた。それぞれに個性的な4人だったが、成人するとみな、家を出るようになった。4人は兄妹として助け合う気持ちはあるものの、個性の違いからさまざまな波風は生じるのだが、ルイとアンジェル夫妻の大きな愛情に包まれて平穏な日々を送っていた。ところが、外人部隊員としてサイゴンで死亡した恋人を追憶してベトナムに移ったエティエンヌが、ある国家的スキャンダルに気が付いたことから、一家全員が驚くべき災難に巻き込まれてしまう…。
時代に翻弄される一族を描いたドラマであり、それほどの新奇さはないもののストーリー展開、キャラクター設定の面白さで800ページを超える大作もあっという間に読み終えた。
ミステリーや謎解きにこだわらず、大河ドラマとして読むことをオススメする。
欲望の大地、果てなき罪 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
No.616: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

銃から生まれた悲しみは銃で癒す。まさにアメリカン・アクション小説

英国・米国では国際謀略系のベストセラーを連発している作家の本邦初訳(?)。N.Y.P.D.の内務局に勤める刑事が、自殺とされた妻の死に関する謎を一人で解明していくアクション・ミステリーである。
謹厳実直で同僚と言えども不正は許さない内務局の刑事・ジャックに、ワシントンD.C.で敏腕記者として活躍している妻・キャロラインの行方不明が告げられ、翌日、キャロラインの水死体が発見された。検死の結果、精神的に落ち込んでいたキャロラインの自殺と発表された。何事にも前向きで活発な妻の性格を知るジャックには自殺は信じ難く、さらに翌日、妻の弁護士から届けられた資料を見たジャックは「妻は何者かに殺害された」と確信し、真相を解明しようとする。だが、関連する捜査組織は動かず、逆に妨害され、さまざま脅迫を受けた。窮地に陥ったジャックは弟のピーターの助けを借り独自の調査を開始する…。
法に従う警察官としての義務と妻の復讐を果たしたい人情の間で葛藤する主人公だが、最後はやはり西部劇からのアメリカン・ルールで、銃での決着に至る。本作での悪役は政府情報機関と親密な民間諜報・暴力会社で、イラク、アフガン以来の悪しき側面が露骨に現れている。
理屈抜きに力は正義というアクションもののファンにオススメする。
復讐の岐路
J・B・ターナー復讐の岐路 についてのレビュー
No.615: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

コレクターズ_アイテムというか、歴史的価値を楽しむ作品

警察小説の巨匠・ウォーのデビュー作。1947年刊行で長く未訳だったものが78年ぶりに初邦訳されたという歴史的価値がある作品である。
N.Y.の私立探偵・シェリダンが美人妻・ダイアナと共に元大スターの富豪・ヴァレリーからの招待状を受け取り、郊外にある大邸宅を訪れた。著名な弁護士、産業界の大物、上流階級の子女、コラムニストなど招待客は揃ったのだが、肝心のホステスのヴァレリーが姿を現わさない。疑問に思ったシェリダンが邸宅の周囲を探ると、庭から続く森の中でヴァレリーが殺されていた。大勢の人を招きながら殺されたのは何故か? 招待客はもちろん執事夫婦にも怪しい動機が見え隠れする事態に巻き込まれ、シェリダンは地元警察署長のスローカムに協力し、事件の謎を解いていく…。
犯人探しの私立探偵もので、時代の流行に乗ったハードボイルド風味が強い。同時に、最後に全員を集めて探偵が犯人を名指しする古典的な探偵ミステリーでもある。後年のウォーの警察小説に比べれば未熟な部分も多いが、発表された年を考えれば傑作である。
歴史的価値を楽しめるミステリー愛好家にオススメする。
マダムはディナーに出られません
No.614: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

意欲が先走って、小説の醍醐味が薄いかな

アメリカの犯罪史上最も有名なシリアルキラー、テッド・バンディ事件をテーマにしたノワール・ノベル。何かと称賛される加害者に対し、現代の女性の視点から徹底的に叩きのめそうとする意欲作である。
1978年1月の深夜、フロリダ州立大学の女子寮に何者かが侵入し2人が殺され、2人が重傷を負った。寮を管理運営する支部長のパメラは犯人と鉢合わせ唯一の目撃者となったのだが、当初の供述が変遷したため保安官からは信頼されていなかった。そんなパメラに、わざわざシアトルから会いにきたティナという女性が4年前に友人のルースが行方不明になった事件と今回の事件は同一犯だと告げた。ティナが見せた指名手配写真を見たパメラは「この男だ」と確信し、保安官に知らせたのだが、二つの事件は無関係だと断定された。事件で亡くなった親友・デニースのために犯人を捕まえたいパメラはティナと協力して犯人を追う決意を固めた…。
性差別が罷り通っていた1970年代アメリカで当たり前のように流れた犯人の容姿や知性を讃え、英雄視する風潮に対する怒りが全編にみなぎっている。それは、被害者は無名のままに忘れられ、歪んだ加害者像が独り歩きすることへの全面的な拒否表明として、最後まで犯人の名前を書いていないことに象徴されている。その問題意識の鋭さ、意欲は買うのだが、事件発生時と現在を行き来する構成が効果を発揮せず、読みづらいのが難点。
忍耐強いノワール愛好家にオススメする。
夜を駆ける女たち (ハヤカワ・ミステリ)
ジェシカ・ノール夜を駆ける女たち についてのレビュー