悪と仮面のルール

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悪と仮面のルールの評価:

3.57/5点 レビュー 53件。 B ランク

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平均点3.57pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全94件 41〜60 3/5ページ
No.54
(5pt)

作者の演出の巧みさに脱帽だ

長時間の飛行機の中で何か読もうと思って羽田空港の本屋を物色していてこの本を見つけた。昨年来この著者には興味を持っており、他の作品も読みたいと思っていたのでちょうどよかった。

 内容は、著者特有の刺激の強い毒々しい内容ではあるが、その伏線が結末に反映されていて、著者の作品としては珍しく爽やかな恋愛小説の感を抱かせた。また、文中で述べられている開発途上国の戦争に関する話は、作者の思うところを小説に託して述べたのだと思うが、その思想にも触れることが出来た。

 筋書きは、金持ちの親に歪んだ生活を強いられた男が、同居していた美しい少女を忘れることが出来ず、自身の顔を整形手術までして、大人になって美しく成長した少女(今は女性)を護る、という話である。読後感を爽やかにするための途中のおどろおどろしさだったのではないか、と作者の巧みな演出に脱帽したものである。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.53
(5pt)

作者の演出の巧みさに脱帽だ

長時間の飛行機の中で何か読もうと思って羽田空港の本屋を物色していてこの本を見つけた。昨年来この著者には興味を持っており、他の作品も読みたいと思っていたのでちょうどよかった。

 内容は、著者特有の刺激の強い毒々しい内容ではあるが、その伏線が結末に反映されていて、著者の作品としては珍しく爽やかな恋愛小説の感を抱かせた。また、文中で述べられている開発途上国の戦争に関する話は、作者の思うところを小説に託して述べたのだと思うが、その思想にも触れることが出来た。

 筋書きは、金持ちの親に歪んだ生活を強いられた男が、同居していた美しい少女を忘れることが出来ず、自身の顔を整形手術までして、大人になって美しく成長した少女(今は女性)を護る、という話である。読後感を爽やかにするための途中のおどろおどろしさだったのではないか、と作者の巧みな演出に脱帽したものである。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.52
(5pt)

「すべてを赦すことです」ゾシマ長老

『カラマーゾフの兄弟』のゾシマ長老「赦しておあげなさい。すべてを赦すことです」。
「邪」の道を歩まされ、殺人、顔整形までして他人になりすます文宏。武器売買、テロ支援他ルール違反
を繰り返し悪の限りを尽くしても赦されるのか。主人公の久喜文宏(別名・新谷弘一)が辿る「神」との
戦いである。『カラマーゾフの兄弟』の次男イワンいわく「神の世界を認めない。存在は知っているが
許せない」。

父久喜捷三から文宏は「邪」を子孫に残し、邪悪の連鎖により世界を不幸にせよ、と十一歳で宣告される。
同時期に、愛の対象となる香織が養女として久喜家にやってくる。文宏は香織が父や兄幹彦(久喜家の
相続者で武器ビジネスで莫大な利益をあげている。)に損なわれようとしていることを知る。
邪の道の第一殺人は、邸宅の地下に封じ込めて父を殺害する。顔まで整形し文宏は新谷弘一になりすます。
「僕(文宏)は消えたのだ」と自分の過去を抹殺したのである。そして、第二の殺人。高級クラブ勤めの香織
に付きまとう薬密売人(矢島)に付きまとわれていることを聴き殺害する。
 兄幹彦は「悪の本物のモンスター」であり、武器売買で「どんな戦争にも必ず利権がある」「人類史上、世界
は常に戦争で人間を殺しながら経済を活性化させてきた」と嘯きながら狂気に走る。また、久喜家の一族が
「JL]というテロ集団の支援者であることも解ってくる。そして、この兄も爆弾で自殺にみせかけ殺害。
第三の殺人である。

「悪」すなわち、久喜家の情欲の虜、武器売買利権、テロ支援等。「仮面」すなわち文宏が弘一へのなりすまし。
それぞれ「ルール」違反承知のえで物語がすすんでいく。香織との関係は、文宏であっても、弘一でも変わりなく
過去の二人の「愛」が続いていく。「あなたは、本当に幸せなのですか」と香織から問われ、「どちら」の答えを
求められたのであろうか。
中村文則作品の「愛」と「神」という大きなテーマが本作品でも問われている。そして、作品冒頭の「刑事の日記」
(紙片)が大きな意味を持つ。会田刑事の執拗な追究は『罪と罰』の予審判事ポリフィーリーがラスコーリニコフ
を追い詰めるような迫力がある。「あなたが久喜文宏であれば全てがしっくりくる」と云わせ読者をドッキリさせる。
本作品は会田刑事の「自分の人生を生きていないで脇役的な存在」だったとの告白文でもある。
新谷も同じような思いで海外へ旅立つ。「神」は愛する人のためにはすべてを赦し給うのか。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.51
(5pt)

「すべてを赦すことです」ゾシマ長老

『カラマーゾフの兄弟』のゾシマ長老「赦しておあげなさい。すべてを赦すことです」。
「邪」の道を歩まされ、殺人、顔整形までして他人になりすます文宏。武器売買、テロ支援他ルール違反
を繰り返し悪の限りを尽くしても赦されるのか。主人公の久喜文宏(別名・新谷弘一)が辿る「神」との
戦いである。『カラマーゾフの兄弟』の次男イワンいわく「神の世界を認めない。存在は知っているが
許せない」。

父久喜捷三から文宏は「邪」を子孫に残し、邪悪の連鎖により世界を不幸にせよ、と十一歳で宣告される。
同時期に、愛の対象となる香織が養女として久喜家にやってくる。文宏は香織が父や兄幹彦(久喜家の
相続者で武器ビジネスで莫大な利益をあげている。)に損なわれようとしていることを知る。
邪の道の第一殺人は、邸宅の地下に封じ込めて父を殺害する。顔まで整形し文宏は新谷弘一になりすます。
「僕(文宏)は消えたのだ」と自分の過去を抹殺したのである。そして、第二の殺人。高級クラブ勤めの香織
に付きまとう薬密売人(矢島)に付きまとわれていることを聴き殺害する。
 兄幹彦は「悪の本物のモンスター」であり、武器売買で「どんな戦争にも必ず利権がある」「人類史上、世界
は常に戦争で人間を殺しながら経済を活性化させてきた」と嘯きながら狂気に走る。また、久喜家の一族が
「JL]というテロ集団の支援者であることも解ってくる。そして、この兄も爆弾で自殺にみせかけ殺害。
第三の殺人である。

「悪」すなわち、久喜家の情欲の虜、武器売買利権、テロ支援等。「仮面」すなわち文宏が弘一へのなりすまし。
それぞれ「ルール」違反承知のえで物語がすすんでいく。香織との関係は、文宏であっても、弘一でも変わりなく
過去の二人の「愛」が続いていく。「あなたは、本当に幸せなのですか」と香織から問われ、「どちら」の答えを
求められたのであろうか。
中村文則作品の「愛」と「神」という大きなテーマが本作品でも問われている。そして、作品冒頭の「刑事の日記」
(紙片)が大きな意味を持つ。会田刑事の執拗な追究は『罪と罰』の予審判事ポリフィーリーがラスコーリニコフ
を追い詰めるような迫力がある。「あなたが久喜文宏であれば全てがしっくりくる」と云わせ読者をドッキリさせる。
本作品は会田刑事の「自分の人生を生きていないで脇役的な存在」だったとの告白文でもある。
新谷も同じような思いで海外へ旅立つ。「神」は愛する人のためにはすべてを赦し給うのか。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.50
(5pt)

とても面白かった。

漠然と伝わってきていた、人を殺してしまった後の苦悩が
実感を伴うように伝わってきます。
なぜ、人を殺してはいけないのか。
その理由が明確に表されている物語だと思います。
読んだ後も脳に残る物語でした。
本能を乗り越えて、人を想う気持ちに救われた物語でもありました。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.49
(5pt)

とても面白かった。

漠然と伝わってきていた、人を殺してしまった後の苦悩が
実感を伴うように伝わってきます。
なぜ、人を殺してはいけないのか。
その理由が明確に表されている物語だと思います。
読んだ後も脳に残る物語でした。
本能を乗り越えて、人を想う気持ちに救われた物語でもありました。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.48
(2pt)

ダメでした

小さな世界を描いていた、これまでの作品は結構好きでしたが、これはダメでした。

文章が上手いので、一気に読めますが、第二次世界大戦の話とか、軍需産業の話とか、とにかく薄い。
国際連盟脱退の話や、太平洋戦争多数ののエピソードなど、理解が薄く、かつ根拠のない自虐史観ベースで、物語に入り込むことを大きく阻害させられました。

大きな世界を描くことに挑戦するのはいいけど、あまりに参考文献が乏しいのではないでしょうか?

自虐史観ベースなので、ウォールストリートジャーナル10傑に選ばれるのも納得です。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.47
(2pt)

ダメでした

小さな世界を描いていた、これまでの作品は結構好きでしたが、これはダメでした。

文章が上手いので、一気に読めますが、第二次世界大戦の話とか、軍需産業の話とか、とにかく薄い。
国際連盟脱退の話や、太平洋戦争多数ののエピソードなど、理解が薄く、かつ根拠のない自虐史観ベースで、物語に入り込むことを大きく阻害させられました。

大きな世界を描くことに挑戦するのはいいけど、あまりに参考文献が乏しいのではないでしょうか?

自虐史観ベースなので、ウォールストリートジャーナル10傑に選ばれるのも納得です。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.46
(4pt)

うん、わかる・・・と思いながら

少女が出てくるまでは面白かった。
それ以降が長くていつまでもおわらない、いつになったら終わるんでしょうか?という疲労が出てしまいました。
さくっと終わりにできるのも小説家の文才を使ったらできるんじゃないかな。
もったいないです。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.45
(4pt)

うん、わかる・・・と思いながら

少女が出てくるまでは面白かった。
それ以降が長くていつまでもおわらない、いつになったら終わるんでしょうか?という疲労が出てしまいました。
さくっと終わりにできるのも小説家の文才を使ったらできるんじゃないかな。
もったいないです。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.44
(4pt)

閉塞感の果てに待つものは

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」が「悪と仮面」の双方に係るのか判然としないからだ(ちなみに英訳タイトルはEvil and the Mask)。内容から判断すればもちろん「仮面のルール」だが、「悪のルール」とも解しうる。「悪のルール」で機能する社会は、絶対的な悪を体現する個人によって動かされ、それに反逆した主人公は代償として「仮面のルール」に従うことになる。

「邪」の父との対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女との関係、莫大な財産、整形後の仮面の人生。下手をすれば、中二病的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、「仮面のルール」による息苦しさと相まって、物語全般に閉塞感をもたらしている。『掏摸』がやはりドストエフスキー的な悪の問題を取り上げつつ、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照的に、本作の物語のリズムは、主人公の生き方を反映するかのようにぎこちない。思弁的な深みも掘り下げられているとは言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説と同じ設定に立脚しながらも、非現実的な装いをより一層まとうことによって、他の作品にはあまりみられない、明るい光の差す答えを示すことに成功している。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.43
(4pt)

閉塞感の果てに待つものは

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」が「悪と仮面」の双方に係るのか判然としないからだ(ちなみに英訳タイトルはEvil and the Mask)。内容から判断すればもちろん「仮面のルール」だが、「悪のルール」とも解しうる。「悪のルール」で機能する社会は、絶対的な悪を体現する個人によって動かされ、それに反逆した主人公は代償として「仮面のルール」に従うことになる。

「邪」の父との対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女との関係、莫大な財産、整形後の仮面の人生。下手をすれば、中二病的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、「仮面のルール」による息苦しさと相まって、物語全般に閉塞感をもたらしている。『掏摸』がやはりドストエフスキー的な悪の問題を取り上げつつ、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照的に、本作の物語のリズムは、主人公の生き方を反映するかのようにぎこちない。思弁的な深みも掘り下げられているとは言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説と同じ設定に立脚しながらも、非現実的な装いをより一層まとうことによって、他の作品にはあまりみられない、明るい光の差す答えを示すことに成功している。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.42
(5pt)

非現実的な設定のもたらした光

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」は「悪」だけに係るのか「悪と仮面」の双方に係るのか判然としない(ちなみに英訳タイトルはEvil and the Mask)。内容からすると「仮面のルール」だが、「悪のルール」ともいえる。絶対的な悪を体現する個人が動かす社会は「悪のルール」で機能しており、そこから逸脱した主人公は代償として「仮面のルール」に従うことになるからだ。

「邪」の父との対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女との関係、莫大な財産、整形後の仮面の人生。下手をすれば「中2病」的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、主人公の選んだ「仮面のルール」の息苦しさと相まって、物語全般に閉塞感をもたらしている。『掏摸』がやはりドストエフスキー的な悪の問題を取り上げつつ、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照的に、本作の物語のリズムは、主人公の生き方を反映するかのようにぎこちない。思弁的な深みも掘り下げられているとは言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説と同じ設定に立脚しながらも、非現実的な装いをまとうことによって、他の作品にあまりみられない、明るい光の差すような答えを示してくれている。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.41
(5pt)

非現実的な設定のもたらした光

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」は「悪」だけに係るのか「悪と仮面」の双方に係るのか判然としない(ちなみに英訳タイトルはEvil and the Mask)。内容からすると「仮面のルール」だが、「悪のルール」ともいえる。絶対的な悪を体現する個人が動かす社会は「悪のルール」で機能しており、そこから逸脱した主人公は代償として「仮面のルール」に従うことになるからだ。

「邪」の父との対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女との関係、莫大な財産、整形後の仮面の人生。下手をすれば「中2病」的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、主人公の選んだ「仮面のルール」の息苦しさと相まって、物語全般に閉塞感をもたらしている。『掏摸』がやはりドストエフスキー的な悪の問題を取り上げつつ、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照的に、本作の物語のリズムは、主人公の生き方を反映するかのようにぎこちない。思弁的な深みも掘り下げられているとは言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説と同じ設定に立脚しながらも、非現実的な装いをまとうことによって、他の作品にあまりみられない、明るい光の差すような答えを示してくれている。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.40
(5pt)

非現実的な設定によってもたらされた光

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」は「悪」だけに係るのか「悪と仮面」の双方に係るのか判然と
しない(ちなみに英訳タイトルはEvil and the Mask)。内容からすると「仮面のルール」だが、
「悪のルール」と考えてもよい。絶対的な悪を体現する個人が動かす社会は「悪のルール」によっ
て機能しており、そこから逸脱した主人公は代償として「仮面のルール」に従うことになるからだ。

「邪」の父との対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女との関係、莫大な財産、整形後の仮面の人生。
下手をすれば「中2病」的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、主人公の選んだ「仮面のル
ール」の息苦しさと相まって、物語全般に閉塞感をもたらす。『掏摸』がやはりドストエフスキー的
な悪の問題を取り上げつつ、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照的に、本作の物
語のリズムは、主人公の生き方を反映するかのようにぎこちない。思弁的な深みも掘り下げられてい
るとは言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説
と同じ設定に立脚しながらも、非現実的な装いをまとうことによって、他の作品にあまりみられない、
明るい光の差しこむような答えを示すことに成功している。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.39
(5pt)

非現実的な設定によってもたらされた光

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」は「悪」だけに係るのか「悪と仮面」の双方に係るのか判然と
しない(ちなみに英訳タイトルはEvil and the Mask)。内容からすると「仮面のルール」だが、
「悪のルール」と考えてもよい。絶対的な悪を体現する個人が動かす社会は「悪のルール」によっ
て機能しており、そこから逸脱した主人公は代償として「仮面のルール」に従うことになるからだ。

「邪」の父との対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女との関係、莫大な財産、整形後の仮面の人生。
下手をすれば「中2病」的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、主人公の選んだ「仮面のル
ール」の息苦しさと相まって、物語全般に閉塞感をもたらす。『掏摸』がやはりドストエフスキー的
な悪の問題を取り上げつつ、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照的に、本作の物
語のリズムは、主人公の生き方を反映するかのようにぎこちない。思弁的な深みも掘り下げられてい
るとは言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説
と同じ設定に立脚しながらも、非現実的な装いをまとうことによって、他の作品にあまりみられない、
明るい光の差しこむような答えを示すことに成功している。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.38
(5pt)

非現実的な設定はなにをもたらしたか

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」は「悪」にかかるのか、「悪と仮面」にかかるのか(ちなみに英訳
タイトルはEvil and the Mask)。内容から判断すれば「仮面のルール」だが、「悪のルール」とい
ってもいいのだろう。絶対的な悪を体現する個人が動かす社会は「悪のルール」にしたがって機能し
ているが、それに抵抗した代償として、主人公は「仮面のルール」に従わざるを得なくなるからだ。

「邪」の父の対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女、莫大な財産、整形後の人生。下手をすれば
中2病的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、主人公を拘束する「仮面のルール」の息苦し
さと相まって、物語全般にいびつな印象を与えている。『掏摸』が同じようにドストエフスキー的な
悪の問題を取り上げつつも、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照的に、本作の物
語のリズムは、主人公の生き方を反映するかのようにぎこちない。思弁的な深みも掘り下げられて
いるとは言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説
と同じテーマを取り上げながら、非現実的な装いをまとうことによって、他の作品にはあまりみられ
ない、明るい光の差しこむような答えを示すことに成功している。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.37
(5pt)

非現実的な設定が可能にしたものとは

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」は悪にかかるのか、悪と仮面の双方にかかるのか(ちなみに英訳
タイトルはEvil and the Mask)。内容から判断すれば「仮面のルール」だが、「悪のルール」とい
ってもいいのだろう。絶対的な悪があるとすれば、悪を体現する個人を内包する社会は「悪のルール」
によって機能している。この「邪」に抗ってルールから逸脱した代償として、主人公は「仮面のルー
ル」に従わざるを得なくなる。

幼い主人公の「僕」と父の対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女、莫大な財産、整形。下手をすれば
中2病的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、主人公を拘束する「仮面のルール」の息苦し
さと相まって、物語全般にいびつな印象を与えていることは否めない。『掏摸』が同じようにドスト
エフスキー的な悪の問題を取り上げつつも、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照
的に、本作の物語のリズムはどこかしらぎこちない。また、思弁的な深みも掘り下げられているとは
言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説
と同じテーマを取り上げながら、ファンタジー的な装いをまとうことによって、明るい光の差しこむ
ような解放的な答えを提示することに成功している。
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790
No.36
(5pt)

非現実的な設定が可能にしたものとは

奇妙な題名が印象的だ。「ルール」は悪にかかるのか、悪と仮面の双方にかかるのか(ちなみに英訳
タイトルはEvil and the Mask)。内容から判断すれば「仮面のルール」だが、「悪のルール」とい
ってもいいのだろう。絶対的な悪があるとすれば、悪を体現する個人を内包する社会は「悪のルール」
によって機能している。この「邪」に抗ってルールから逸脱した代償として、主人公は「仮面のルー
ル」に従わざるを得なくなる。

幼い主人公の「僕」と父の対決、同じ屋敷で暮らす幼馴染の少女、莫大な財産、整形。下手をすれば
中2病的誇大妄想となりかねない現実離れした設定が、主人公を拘束する「仮面のルール」の息苦し
さと相まって、物語全般にいびつな印象を与えていることは否めない。『掏摸』が同じようにドスト
エフスキー的な悪の問題を取り上げつつも、スマートで緊迫した筋展開を繰り広げていたのとは対照
的に、本作の物語のリズムはどこかしらぎこちない。また、思弁的な深みも掘り下げられているとは
言いがたい。

本作はそれでも、幼児期の傷と歪みを抱えながら大人になりきれない青年という中村文則の他の小説
と同じテーマを取り上げながら、ファンタジー的な装いをまとうことによって、明るい光の差しこむ
ような解放的な答えを提示することに成功している。
悪と仮面のルール (100周年書き下ろし) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (100周年書き下ろし)より
4062163705
No.35
(3pt)

純文学とエンターテイメント

主人公の深層心理を事細かく描く純文学の内省的な姿勢を
貫きながらも、探偵や謎の犯罪組織、その背後で暗躍する強大な悪といった
クライムノベル、ノワール的なエンターテイメントのスリリングなプロットがあり、
なかなか実験的な作品ではあるように感じた。

大雑把にいえば、純文学とエンターテイメントの両立だろうか。
内向きな視点だけでなく、より広い視点を用いてテーマを追おうというのだろう。
カミュのオマージュからどうも抜けきれない印象があった、初期の「銃」や「遮光」
と比べると著者自身の独自の魅力が出てきた気もするが、どうだろう。判断は難しい。
プロットに工夫が見られる分、初期の人物描写の巧みさが
少し薄れてしまった気がしないでもない。(アメリカではノワールの文学賞を受賞し、
純文学というよりは、ノワールのポジションの模様)

今作の場合、悪の因果とその解放という複雑に絡めたプロットのためか、
主人公が悪の因果に巻き込まれるシチュエーションありきで
他の登場人物が動かされている印象が否めない。

物語の中核を成す久喜一族の存在だが、陰惨な戦争の記録、犯罪組織の保持などから
久喜一族が物語上悪を象徴する存在だということは伝わるのだが、
人物の内面に踏み込んだ描写が弱く、久喜という家系の異質さや凄みがいまいち伝わってこない。
過去の所業を詳細にまとめただけで「悪」を語ろうというのは、些か安直な表現ではなかろうか。

ヒロインである香織ももう少し描いてほしいところがあった。
主人公が全てを賭けてまで守ろうと思える大切な存在なのは分かるが、
探偵を通した描写しかない為に、彼女との結末にもカタルシスを感じることが出来なかった。

と、ここまで色々と書いてきたが、純文学とエンターテイメント、
彼の中でこれからどう組み立てていくのか、それにはとても興味がある
悪と仮面のルール (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 悪と仮面のルール (講談社文庫)より
4062776790