愚行録

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愚行録の評価:

3.60/5点 レビュー 104件。 B ランク

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平均点3.60pt

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全111件 101〜111 6/6ページ
No.11
(4pt)

万死に値する愚行は本当に存在するのかを問う物語

 都内で幼い子供二人を含む一家4人が惨殺される。物盗りの犯行か、怨恨か。事件を追うルポライターに、友人たちが語ったこの家族の「真実」とは…。
 様々な友人たちが一人称で語って聞かせる形式は、宮部みゆき「理由」、恩田陸「Q&A」「ユージニア」など話題作で幾度か目にしていますが、本書でもまだまだ有効に用いられていると感じます。
 被害者たちの人生は友人たちのフィルターを通した途端に、「真実」と私たちが名づけるものからはどんどんと離れていく可能性があります。それがどれくらい離れているのかは、まさに死人に口なし。私たちが他者を「知る」というのは、実は「他者像をこしらえる」という作業と紙一重でしかない虚しさを感じます。
 さらに言えば、彼らの来し方に散りばめられた愚行の数々、---ちょっとした意地悪や軽い嫉妬、利己的な恋愛感情や、苦笑するほどの執着心---そうしたものは私たちの人生にも大なり小なりこぼれ落ちているものです。誰の身にも覚えがあるそんな行為の数々は、歳月とともにやがて忘却や諦念にくるまれて記憶の引き出しにしまいこまれてしまうものでしょう。それが生きる上での大人の知恵であるともいえます。
 しかしそんな行いの一つ一つが、ひとたび一家が惨殺されたことによって、この一家が万死に値するか否かを問うための材料へと、にわかに変貌を遂げてしまいます。
 「あの人たちは何も悪いことをしていないのに…」。目を覆いたくなるような残虐事件の直後に、被害者を知る人たちがメディアのマイクに向かってこの言葉を口にすることがあります。この言葉に頷く私たちの心の裏には、一方で「殺されても仕方がないような行い」がこの世には確かにあるという共通認識が巣くっているのです。
 そんな心を見透かすような結末に、うら寂しい思いを感じるのは私だけではないはずです。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.10
(4pt)

人とは

こんなに醜い生き物かと思える。アラを探せばキリがなく長所も短所も紙一重。良いと言える人ほど、時に見せる何気ない一面がとても悪い印象にもなる。自分が観ている自分と他人が観ている自分がこんなに大きな隔たりがあるのだと改めて思わせてくれる。人の負の面が際立つ小説。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.9
(5pt)

オススメの一冊です。

まず一言。
面白かったです!
なかなか途中で止められず、一気に読み終えました。
今年に入って読んだ57冊目の本になりますが、いちばん印象に残りました。
変わった形式の作品ですが、本当に良くできています。
いろいろな人にインタビューしつつ進んでいく物語ですが、
それぞれの話にリアリティがあって、
恋愛小説と思って読んでも共感できる部分が多かったです。
実在する学校や企業名が出るのは大丈夫なのかしらとちょっと心配にはなりましたが、
そんなことはどうでもいいですね。
恵まれた環境ゆえにまわりからは素敵に見えた家族が惨殺されて、
関係者に話を聞いていくうちに、単純にかわいそうと思えた被害者が、
「もしかしたら殺されても仕方なかったかも」と次第に感じられていくことに、かなり怖さを覚えました。
もし殺されたのが自分だったら。
やっぱりこんなふうに色々言われてしまうんだろうなというのが、率直な感想です。
恩田陸の「ユージニア」にちょっと似た感じの作品ですが、
設定はもっと凝っているし、ラストもこちらの方が断然良かったです。
残り数ページになったときは、ちゃんと話が終わるのか焦りました。
わたしは最後の最後まで、本当に犯人が分からなかったです。
読み終わったときは、悲惨な内容のラストよりも、
そうだったか〜という、ナゾが解けたすっきり感の方が大きかったです。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.8
(4pt)

被害者の本質はどこに。。。

視点を変えると物事はまったく別の側面を映す。ある意味、人の評価(価値?)も他者が作る多種多様な(勝手な)思いの交差する場所にしか存在しない。今作も、第三者がインタビューで細部を明らかにするほど、殺された夫婦の人となりは曖昧となっていく。
様々なパーツが最後に集約される構成と、現代的と言える犯人の動機もよくできているが、自分が興味深く読んだのは、この顔の見えない被害者の描写である。
そして本作で一番不気味なのは、更に顔の見えないインタビュアーであることは言うまでもない。(個人的には恩田?「Q&A」と近い現代的な不気味さを感じた。)
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.7
(4pt)

ごめんなさいと謝りたくなります。

誰しもが持っている、嫉妬をこれでもかと見せつける作品。
心当たりありまくりで、ホント、申し訳ない、ごめんなさいと、読んでるそばから懺悔したくなったりました。
読後感もばりばりに悪いです、でも、読む価値はあると思います。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.6
(4pt)

「愚行」ならぬ「愚考」

恩田陸さんの「Q&A」のように、
インタビュー形式で構成されていて
いろんな人の証言を元に様々な角度からの真実が見えてきます。
同じ人の話をしていても、
人によって見方・感じ方はまったく違っていて
人の本質の不透明さが興味深かったです。
しかもそのインタビューもだんだんエスカレートしてきて、
あとになればなるほど不快な話がでてきます。
出身地・学歴・育ち・・・
人の価値をこんなことで評価するのはとにかく愚かの一言に尽きる。
この事件の根本にあるのは
すべてこういった歪んだ羨望感や嫉妬。
そんな心の汚らわしさこそが「愚行」ならぬ「愚考」。
読んでて本当に嫌な気持ちになるけど、
著者の狙いはそこのはず。
本筋である一家惨殺事件。
冒頭に出てくる幼児虐待の小さな新聞記事。
合間に挟み込まれた女性が兄に語りかける独白。
この3点の関連性が最後の最後でキレイに合致した時は
不快ながらも爽快でした。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.5
(5pt)

桐野夏生にはちょい負け

人々の善良さの裏にある悪意を、「藪の中」の手法で描く。
描写は宮部みゆきの「火車」や有吉佐和子の「開幕ベルは華やかに」を髣髴とさせる。新しい方法ではないが失敗ではない。
内容は桐野夏生の「グロテスク」を思い起こさせる。
ただし、女の悪意を描くことにかけて、所詮男の作家の筆ではかなうはずがない。
だから、貫井は女だけを描かず男のなかの悪意も描くことにしたのだと思う。
でもやはり桐野夏生には勝てていないなあ。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.4
(4pt)

この作品の伝えたかった事

粗筋等は省かせて戴きますが、結局はこの様な事件は簡単に起こりうるという事。六人のインタービューは単なるそれぞれの主観から形成されたある夫妻の虚像に過ぎない。六人のインタービューが重要視されているわけではなく、要するに一人の人間に対し見る人間、見方が違えばそれぞれの解釈があるという事。決して他人から恨まれる事のない人間などいない。完璧な人間などはいない。他者が存在する限り。恨み、恨まれ、そんな悪循環の繰り返し。本当に我々人間は愚かだ。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.3
(5pt)

爽快なまでの読後感の悪さ

タイトルは言語矛盾しているかもしれませんが、凄惨な描写があるわけでもなく心理描写の重なりだけで、ここまで強烈な印象を読者に残す筆者の力に圧倒させられました。
↓の方で、主人公の夫婦はポジティブなだけ・・と書かれていた方がいますが、そのポジティブの方向先や手段のあまりの稚拙さにタイトルの「愚行」が現れているのではないでしょうか?現代は欲望に素直であること、それだけでよしとされるような価値観がいつのまにかしみこんでしまっているのですね。
しかしかくいう私も登場人物たちの愚かさや弱さを軽蔑しながら読み進めていくうちに、ふと過去や現在の自分にも同じような部分があった、またはあることに気がつき、冷や汗が流れることが何度もありました。
というわけで読後感は最悪です。しかし作者の筆力に気持ちいいように振り回される快感はここ最近ないほどのものです。
AERAの特集を「くだらない・・・」と思いながらもつい手にとって読んでしまうようなあなたには特におすすめ。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.2
(4pt)

欲だけに支配される人間を覗いたみたいな、あと味の悪い作品

作品の構成から考えて、この本が下手ではないから★4にしたが
個人的には減らしたいのが本音だ。
育児放棄の新聞記事から始まるこの本は、インタビューと兄へ語る妹との二部構成で進む。読み進めるうちに育児放棄の事件とは違う一家惨殺事件のインタビューなのはまず分かる。が、兄に向けて語る妹は最後まで不明のままだ。
そのからくりは読み終わると分かるが、読後の印象は暗くなる。
『グロテスク』を連想させるけど、この本の方がもっと哀しい。
それは、男も女も姑息になっている本だからかもしれない。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878
No.1
(4pt)

人間の嫌らしさ

都内で起きた一家惨殺事件。被害者である田向一家を襲ったものは何か? 一家と関わりのある人々のインタビューが彼ら、人間の肖像を作り上げていく…。
いやー…「最悪に不快な読後感を残す話を構想しました」とは、著者のHPにあるこの作品の紹介文だけど、読了後、本当にそんな感じになった。
この作品の構成は実にシンプル。被害者である田向夫妻と係わり合いのあった人々に対するインタビューと、兄に語りかける妹の独白が繰り返される形。『理由』(宮部みゆき著)とか、『Q&A』(恩田陸著)みたいな形を思い浮かべていただければ良いと思う。
作中で語られる田向一家は幸せを絵に描いたような一家。真面目で優しく、ハンサムな夫。美人で、おしとやか、気立ては良いが、決して他者を不愉快にさせることのない妻。そして2人の子供達。彼らを語る人々も、決して彼らの事を嫌っているわけではない。しかし、その一方で、彼らの嫌な一面、負の面も垣間見える。勿論、話の中心となるのは一家なのだが、そこには語り手の側が持つ、野次馬根性であり、はたまた、劣等感であり、妬みであり、憧れであり…というような「負の感情」も凝縮される。一家の嫌な面を見せつけられながら、同時に語り手の嫌な面も目の当たりにすることとなわけだ。これで嫌な気分にならないことがあろうか?
もう一つのパートで語られる妹の独白もこれまた嫌ーな感じだ。そこで語られるのは、愚かな両親のもとに生まれ、虐待を繰り返された兄妹。両親を蔑みながら語られる日々もまた凄くいやーな気持ちにさせられる。
この作品、ミステリ作品として考えた場合の驚きはそれほど無いと思う。読み終わって「納得!」とか、そういう感じではない。むしろ、「人間の負の面を描く」というのがこの作品の主題で、結末だとかは、それほど重要ではないのかも知れない。驚きを求めて呼んだ場合、ちょっと不満が残るかも…。
とにかく、今すぐ、嫌な気分になりた人にお勧め。って、そんな人がいるのかは不明だが。
愚行録 Amazon書評・レビュー: 愚行録より
4488023878