仮想儀礼

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評判

仮想儀礼の評価:

4.43/5点 レビュー 102件。 B ランク

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平均点4.43pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全173件 101〜120 6/9ページ
No.73
(5pt)

宗教の始まりはこんなものかも

失業した男二人がゲーム感覚で立ち上げてしまった宗教が、偶然からあれよあれという間に大きくなっていってしまう。 今に何かが起きると嫌な予感、こうでなくては小説は成り立たないのだが、がしながら上巻を丸一日で読んでしまった。上巻の終わりごろには嫌な予感が的中。不幸は後回し下巻は翌日に。
全くの金儲けで、自分たちの経済的安心のために始めた宗教がが、桐生という男をどんどん浄化させていく。気持ちの中では、「この馬鹿が」「何やってんだ」と相手を見下したりののしったりするのだが、教条には出さず、落着いた風を装っている。ここが金儲けのためなのか、それとも彼の本来備えている常識人なのか、頭の回転よろしく穏やかにことを進める。
それが読者と同じ支店なので、読むのが快適であった。
上下巻ともに四百ページ以上あるのに、読みやすくはらはらしながら一気呵成に読み終えた。


仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.72
(5pt)

濃くて素晴らしい読書体験

この本のすごいところはいろいろあると思いますが、
まるで人生そのもののように、悲喜劇が繰り返され、
それがごく自然に物語を織りなしているところが
もっとも感銘を受けた点です。

出だしは、なんだかある意味で安っぽいエンタメ小説
見たいな書き口ですらすらっと読めるような導入であるのに
偽宗教を興し、詐欺師をたびごとに自認する主人公の
心理描写が実に「常識的」でときに驚くほど真摯であり、
周囲の人物は”教団”に寄ってくる信者たち以外にも
それぞれに個性のある魅力的だったり腹が立ったりする
ところが描かれています。

だんだんに教団が大きくなっていくところは、読むと
「もうその辺でやめときなよ」といいたくなるし、
周囲との軋轢が生じては「違うんだよ」とかばいたくなるし
どんどんこの本の世界に入ってしまいました。

自分の体験しない違った人生・世界を体験するのが
読書の醍醐味だとすればこの本は僕にとってその見本です。
(なにしろ宗教にはまったく無縁ですし)

上下1200ページですが、苦にはならないと思います。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.71
(5pt)

宗教の始まりはこんなものかも

失業した男二人がゲーム感覚で立ち上げてしまった宗教が、偶然からあれよあれという間に大きくなっていってしまう。 今に何かが起きると嫌な予感、こうでなくては小説は成り立たないのだが、がしながら上巻を丸一日で読んでしまった。上巻の終わりごろには嫌な予感が的中。不幸は後回し下巻は翌日に。
全くの金儲けで、自分たちの経済的安心のために始めた宗教がが、桐生という男をどんどん浄化させていく。気持ちの中では、「この馬鹿が」「何やってんだ」と相手を見下したりののしったりするのだが、教条には出さず、落着いた風を装っている。ここが金儲けのためなのか、それとも彼の本来備えている常識人なのか、頭の回転よろしく穏やかにことを進める。
それが読者と同じ支店なので、読むのが快適であった。
上下巻ともに四百ページ以上あるのに、読みやすくはらはらしながら一気呵成に読み終えた。


仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.70
(5pt)

濃くて素晴らしい読書体験

この本のすごいところはいろいろあると思いますが、
まるで人生そのもののように、悲喜劇が繰り返され、
それがごく自然に物語を織りなしているところが
もっとも感銘を受けた点です。

出だしは、なんだかある意味で安っぽいエンタメ小説
見たいな書き口ですらすらっと読めるような導入であるのに
偽宗教を興し、詐欺師をたびごとに自認する主人公の
心理描写が実に「常識的」でときに驚くほど真摯であり、
周囲の人物は”教団”に寄ってくる信者たち以外にも
それぞれに個性のある魅力的だったり腹が立ったりする
ところが描かれています。

だんだんに教団が大きくなっていくところは、読むと
「もうその辺でやめときなよ」といいたくなるし、
周囲との軋轢が生じては「違うんだよ」とかばいたくなるし
どんどんこの本の世界に入ってしまいました。

自分の体験しない違った人生・世界を体験するのが
読書の醍醐味だとすればこの本は僕にとってその見本です。
(なにしろ宗教にはまったく無縁ですし)

上下1200ページですが、苦にはならないと思います。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.69
(4pt)

手練の一品だが・・・

良くも悪くも柴田錬三郎賞に相応しいベテラン円熟の傑作。ただ正直バランスは今一つ。後半が著者真骨頂なのはもちろんなのだが、作品としては前半の戯画タッチをとことん貫いて欲しかったところ。「教え」あるいは「救い」については、「ゴサインタン」の深みにはやや及ばないのでは?あと篠田氏に限らないが女流作家には「女(の怖さ)」は書けても「オヤジ(のキモさ)」は書けないのはないものねだりか?(もちろん男性大家の描く女性も同性から見れば噴飯ものが少なくないのだろうが)
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.68
(4pt)

手練の一品だが・・・

良くも悪くも柴田錬三郎賞に相応しいベテラン円熟の傑作。ただ正直バランスは今一つ。後半が著者真骨頂なのはもちろんなのだが、作品としては前半の戯画タッチをとことん貫いて欲しかったところ。「教え」あるいは「救い」については、「ゴサインタン」の深みにはやや及ばないのでは?あと篠田氏に限らないが女流作家には「女(の怖さ)」は書けても「オヤジ(のキモさ)」は書けないのはないものねだりか?(もちろん男性大家の描く女性も同性から見れば噴飯ものが少なくないのだろうが)
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.67
(5pt)

いかがわしい素材を確かな筆力で描出した

宗教をビジネスと割り切って、桐生正彦は新興宗教を立ち上げる。
 詐欺まがいのゲーム関連出版社と甘い見通しのために、家庭も職も失うゼロ・スタート。
それが確かな経営ビジョンでぐんぐん成長していく。上巻はサクセス・ストーリー。
宗教というよりビジネスの側面に光を当てている。清泉真法会は、日本人の宗教観を的確に捉え、ニッチにしっかりと食い込んでいく。
あたかも実在する、あるいは実在したいくつかの新興宗教のように。
 感情に流されない作者の筆力が、生臭い素材を、癖のない高級料理に仕上げた。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.66
(4pt)

誰か読んだ人、どうでしたか?

2009.6

上・下で1000頁弱の長い小説でした。

読み終えれるかな?と心配でしたが大丈夫でした。

うん。まぁ良かったかな。最後まで読めたし。★4ほどでしょうか

誰か読んだ人、どうでしたか? コレと言ってレビューは無いかも私。


仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.65
(4pt)

たぶん作者は小説と宗教を重ね合わせているのだが、通俗の域を抜けない恨みが残る

小林信彦『ぼくたちの好きな戦争』プロローグに、ベルガウル島で玉砕を覚悟した中隊長が、傍らの少尉に辞世の句の披露を促す場面がある。少尉からお先にと譲られ、ではと聞かせたのが〈環礁に寄せ来る波を眺めつつ皇国の栄祈らむ我は〉。続いて少尉が〈大君の御楯となりて捨つる身と思へどなほも神風を待つ〉と詠むと、次の行に「む、む」。これはお笑いコントの一つの定型だが、小林は説明抜きでその笑いを成り立たせるだけの歌を作っている。
 何でこんな話をするかと言えば、本書に落ちぶれた性格破綻の元・芥川賞作家が登場し、主人公の教祖がこの男に教団機関紙への短文寄稿を依頼する件りがあるのだが、期待せずに受けとったその文章について次のように描写される。「そこで使われていることばの一つ一つに、美しい狂気が宿っている」「明らかに普通の人間の文章力とは格段の差があった。ほとんど天才的と言っていいような、きらめきにあふれていた」「絶望の淵で聖泉真法会と出会う、その感動が、素人臭い泣かせではなく、煩悩から逃れられぬ人間の弱さと悲しさを通して主知的に描かれ、仏教説話をからませて、単なる告白録を越えた一編の物語として仕上がっている。しかも枚数はわずか三枚半だ」(上p198)。しかしもちろん、そこには男の書いた文章そのものは1行たりとも引用されていない(他方、宗教分野に強いらしい安藤という「ルポライター」(下p234)がいて、彼が教団について書いた文章は引用されている(下p263)。ただし引用の直後、主人公は「何もわかってねえ」と呟くのだが)。
 実はこの種の描写は小説にはよくあることで、確か村上龍が『コインロッカー・ベイビーズ』のハシの歌について、小説なら「その歌に聴衆は魅了された」で済むが、映画では嘘がつけないみたいなことを書いていた気がする。ただ、言葉の有するそのような虚構性というか、いやむしろ出鱈目さとか荒唐無稽さと呼ぶべきかもしれない性能に意識的であることは、ジャンルを問わず、現在を生きる作家が備えるべき美徳ではないだろうか。
 端的に言って、元・芥川賞作家の文章を空疎で無意味な形容を連ねて表象しようとする作家の言葉が、他の箇所では何らかの意味を持つ充実した表現や描写に到達していると考えるのは難しい。ただし、この小説の言葉がそのような知性や強度を欠いていたとしても、まさしくゲームのように、いったん中に入り込んでしまえば終わりまで駆け抜けたくなるように仕上がっているという意味では、達者だと思う。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.64
(5pt)

流れるような文章に乗って一気読みが可能

これだけ分厚い本で、しかも上下巻ともなると、内容はかえって薄いんだろうな、と思っていたのですが、どうしてどうしてw
無駄な文章や場面はまったくなく、しかもスムースに読み進めてしまえます。
これは明らかに作者の力量の凄さなのでしょう。
現代社会では宗教に限らず、株やパチンコ、競馬、酒、携帯電話?など個人がはまり込んでしまうものがたくさんあります。
宗教の話と思わずにぜひ一読して欲しい本です。

仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.63
(4pt)

どっ迫力

宗教の内容は難しくてわかりずらい。
が、とにかく、展開の速さ、えぐさに引き込まれる。
最後の終わり方も楽しめる。
集中したい人にはオススメです。
でも、宗教の説明が長いので、めんどくさがりやの方にはオススメできません。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.62
(5pt)

寝不足覚悟

最初 割に軽い感じで始まります、が、 段々事態が 大掛かりな事になっていきます、 どうなるの、どうなるのと 気になって 読み進めることになります、凄く面白いです。



内容は他レビューにゆずります、では 時間のゆとりをもって覚悟を決めて仮想儀礼の世界観へ 行ってらっしゃーい




迷ってるあなた、読みたまへ。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.61
(5pt)

アイタタタタ・・・

ページをめくるたびにアイタタタタ・・・、と目をつぶってしまうくらい痛い本です。こんなに痛い本をよく書かれるものだと恐れ入ります。主人公たちのこれからの生活にエールを送らずにはいられません。

仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.60
(5pt)

見事

新興カルトの運命を中心に据え、人々の心の動き、社会の思惑を交え描かれている。
構成も引きもリアリティも、作家がかなりの腕を持った人物であることを物語っている。それでいてエンタテインメントとして成立しているのだから凄いの一言につきる。


だがしかしここに描かれていることは新興カルトのみならず、『古参の』宗教にも当てはまる。実は由緒あるというアレらの宗教も新興カルトも大して変わらない構造なのだ。
信者総数が膨大で、内包する犯罪者の数よりも模範的な信者の数の方がいくらか多いという一点しか違わない。
解体することが出来ないほどに膨れ上がったカルト。それが古くから続く宗教の実体のひとつだ。

2000年頃に、『カソリックの教会関係者が孤児院の少年たちを強姦していた』というニュースが世界を駆け巡った。神父ら4000人以上の教会関係者の凶行。被害者数は1万5千人以上にものぼった。判明したものだけで。
さらにこの少年強姦は1600年代には書物にも残されている古くからの根深い問題だという。

人は道に迷うとき、事故や病気に見舞われたとき、とかく安易によりどころを求めがちなものだ。
しかし、それは仕方のないことだし何かを信仰することも時には役立つ。
だが信仰とはおうおうに麻薬的であることも把握しておかなければならない。

仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.59
(5pt)

力作ですよ〜

長〜い大作ですが
飽きさせず破綻なく最後まで持っていく筆力はお見事です。
主人公とその相棒の人物造形がうまくてリアルだし、
なにより二人のキャラに好感が持てるのでイヤにならずに読めました。
男性の作家なら必ず書きそうなありがちなハーレム的な描写もない。
世間のしくみもよくわかって書かれていて(著者は元公務員だそうですね)
とにかくげっそりするとこが少なかったです。
ラストの後味もよい。
ただどうでもいいことですが
女性の服装の描写が?????
ファッションに興味のない著者なんでしょうか。
くわしく描写されるほど、意味不明な感じになります。
オシャレでハデな服装を表現しているらしいのに
なんかすごくダサいカッコだったり。
ちょっと惜しい。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.58
(4pt)

リアルすぎて怖い

簡単なあらすじは、普通の公務員だった主人公が、ゲームのシナリオのアルバイトで小銭を稼いでいたが、ある担当者から乗せられて、脱サラする。公務員という安定を求めて結婚した奥さんはその時点で離婚。学生時代に少し体験したり勉強したりした宗教の知識で8000枚の壮大なシナリオを書き上げるが、その仕事自体が架空の話だったという事で、すべてを失ってしまう。

失意の中、自分をだました担当者と道で出くわし、なぜか共同生活が始まり、冗談でネット上に新しい宗教を立ち上げる。

最初は簡単な人生相談のようなメール対応だったのが、集会所を創ったりして人が集まりだし、バーチャルからリアルになっていく。

色々な偶然やラッキーが重なり、当初50人で食べていける、300人でベンツに乗れる…という軽い目標があったのだが、はるかにそれを上回る信者と金が集まる。

絶頂期を迎えたら、落ちていくのは世の常。別の宗教団体からの弾圧、妬み、脱税などの悪への誘い…。

そのような外的要因だけではなく、内部の信者の色々な問題が山ほど出てくる。

最終的に教団は社会から抹殺されてしまうのだが、話はそれで終わらない…。

オウムまで行かなくても、この話に近いような事は、知られていないだけで日常茶飯事で行われているのだろうと思えるくらい、リアルなストーリーに仕上がっています。

特に組織が崩壊してから、それでも残っていた信者たちの行動は、あのオウムのニュースで見た、トランス状態で体がゆらゆらしたり、バタンバタンのたうちまわったり…というシーンの再現。なぜあんなことになるのだろうと不思議に思っていたし、何かやらせではないのか?と思ったりしたが、この本を読むとあの状態に陥るのは無理もないというか、理解できるようになった。

この作者は、本当によく調べたと思う。世の中で実際にこんな事が起こっているのかもしれないと思わせる筆力には参った。

仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.57
(5pt)

宗教団体というものの危うさ

ビジネスのつもりででっち上げた宗教団体(聖泉真法会)ではあるが,徐々に軌道に乗り,一時は7000人の信者を獲得するまでに至る。その聖泉真法会の教えは,密教を参考にでっち上げたものとはいえ,「仏は自分の内にある」というもので,それなりに魅力的なものに感じた。入信するからといって従来所属していた宗教団体から離脱する必要はないなど,微温的な教義は,詐欺的な新興宗教とは一線を画している。
 そんな聖泉真法会であるだけに,上巻の興隆期は読んでいて応援したくなるほどだった。家族の誰からも必要とされない主婦,統一協会を思わせる団体に入って心がボロボロになった女性。そうした人たちが「癒し」を受けられる場としては,やはり宗教と,宗教で結び付いた仲間との生活しかないのだろう。
 そうであれば,正彦らのでっち上げた聖泉真法会は,それほど悪い存在ではなかったと思われた。
 人が宗教に頼らざるを得ない心理的・社会的状況や,宗教団体が本質的に持たざるを得ない危うさなどをリアルに描いた作品であり,分厚い上下巻ではあるが,一気に読み切ってしまった。

仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.56
(5pt)

何度も楽しめます。

この小説は三回楽しめます。
最初は喜劇として。食い詰めた元公務員と元編集者の二人がその場の思いつきで始めた新興宗教が軌道に乗り出すまで。
次に悲劇として。迷いの末に救いを求めた若い信者がさまよった挙句一人で死んでいくまで。
そして最後がホラーとして、既に主導権をなくした教祖が信者に引きずられるように事件を起こしながらさ迷ってラストに流れ込むまで。
とにかく長いですがそれだけのことはあります。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.55
(4pt)

仮想化された社会における現実的破綻

篠田節子さんの作品のなかでは、「ゴサインタン」、「弥勒」などの系譜に属する宗教ものといえるでしょう。内容が重いということも、共通しています。
主人公たちは金もうけを目的に軽い気持ちで新宗教を立ち上げますが、そこに「生きにくい系」の若者、超能力嗜好者、巨大教団の中年女性信者、不安を抱える中小企業の経営者などがこの順番に、吸い寄せられるように集まり信者になっていきますが、問題が発生し教団が社会からバッシングを受けるようになると、その逆の順番で信者たちが潮が引くように去っていきます。
てっとり早く教義をこしらえるために主人公がつくったのは、チベット仏教をベースにした密教系の教義でした。著者は「ゴサインタン」や「弥勒」でもチベット系密教をとりあげており、チベット仏教に対する関心が強いのでしょうか。
「ゴサインタン」では、自然発生的な小教団の中心になるネパール出身の女性は、神がかり的な能力を持っていましたが、今回の作品では教祖となる男性主人公がきわめて世俗的な人物であるのは現代社会の風潮を反映しているのかもしれません。
彼がむしろ理性的であり、ときとして良心的ともいえる人物であるため、かえってなすすべもなく、数人の女性信者たちの宗教的狂熱に巻きこまれ、破綻へと突き進んでいきます。
長編ですが、一気に読ませてくれます。「ゴサインタン」や「弥勒」に比べればやや軽めの読後感ですが、多くのことを考えさせてくれる力作であることはまちがいなく、読んで損のない作品だと思います。

仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.54
(5pt)

類稀れな筆力、素直に感動。読後感もよし。

最近は面白い小説に当たらずにすっかり小説の食わず嫌いになっていた自分だが、新聞の書評につられて手に取ってみた。

数ページで引き込まれ、下巻のラストまでほぼ退屈せずに読むことができた。

上巻ではもっぱら二人の失業者による宗教ビジネスの立ち上げ、それから思いの他とんとん拍子で拡張していく様を描写。下巻ではその劇的な衰退が描かれる。どっちの方向もできすぎ(たとえば何の信仰心もないはずの元役人は舌を巻くほどうまく教祖を演じ、信者側では勝手に奇跡のようなことが起こる)の感があるが、それは所詮「小説」だということで読者は納得するのだろう。実際には数年のスパンにわたるストーリーなののだが、主な出来事が凝集されているので上下にわたる長編だといってもさながらダイナミックなジェットコースターに乗っているように新興宗教体験(信者の側ではなく作り手の側から)ができる。
登場するキャラクター群もいわゆる「生きづらい系の」壊れかけた若者から孤独な金持ち、企業経営者まで多岐にわたり、それぞれのリアリティも伝わってくる。特に最後に残る五人の女性信者にはその狂信的な言動を超えて親しみを感じてくるほどだ。
また著者の仏教教義、儀式から法律、経営に関する素養、様々な土地の描写から確かな取材力とそれを物語の中での編集力もうならされる。
最後のくだりでは静かな感動さえ覚え、しばらくこの物語世界から離れることができなかった。お話の内容は全然ロマンチックではないのにね。。

こんな作家が日本にもいたんですね。今まで「直木賞作家」には裏切られてばかりいたので、素直に感動。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163