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さよなら妖精



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さよなら妖精の評価: 3.95/5点 レビュー 88件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.95pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全60件 41~60 3/3ページ
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No.20:
(5pt)

どんな時代でも訪れる現実の物語

1991年4月。日常を送っていた高校生たちが違う日常を過ごす少女と出会うことによって、日常の境界が曖昧模糊となっていくひと時を描いた物語。
当初この作家氏の評価も出版物も何も知らないでタイトルへの好奇心のみでこの本を手に取った(笠井潔氏のバイバイエンジェルとのタイトルの相似ゆえにと思われる)。読み始めると一切の無駄な描写を省いた簡易的かつ古典とも思える美しい文体を意識した文章に目を奪われた。そして次第に物語の登場人物たちのいい意味での没個性にはまっていった。
自分のくだらない文章でこの物語を細かく評価する気はありません。ただ、この物語をまったくの無関係な第三者に推薦する根拠としてどうしてもいたいことが一つだけあります。見知らぬ国で起きている悲劇への無関心、当然の中に隠れている不思議、思春期に訪れる自分への可能性の挑戦。全てまとめたそれらは、自分たちの歩んできた軌跡そのものではないのか、ということです。この物語の続きを歩んでいく決意を固めた人間、放棄した人間も等しくこの物語を読んで、今の自分を愛おしく思ってほしいです。
私たちは生きているからです。そんなことを思わせてくれた本でした。
さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)より
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No.19:
(4pt)

マーヤが実に魅力的

ユーゴスラヴィアからやってきた少女との偶然の出会い。
その少女マーヤと地元を見ることによって、日本という国を認識しなおすとともに、平凡だった日々にユーゴスラヴィアへの新たな扉が加わった。
日常ミステリーに分類されるのだろうが、基本的には青春小説だと思う。
青春小説に、日常ミステリーを少しだけ混ぜている感じ。
日々の生活に虚無感を感じていた主人公は、確固たる意志を持つユーゴスラヴィアの少女、マーヤに感化される。
このマーヤが実に魅力的なのだ。
外国人特有のズレ具合といい、その裏に潜む信念といい。
読んでいるこっちまで感化されてしまう。
ライトノベルのような軽い小説を読んでいたと思ったら、いつの間にか話題が深淵なものとなり、いつの間にか感化されていた。
数時間でさっと読めるので、気になる人はぜひ読んでみてください。
さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)より
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No.18:
(4pt)

妖精がくれたもの

米澤さんは今まさに気鋭の作家。このミス2010では作家別投票で1位の栄冠に輝いた。
時は1991年、日本。何気ない日常に現れた妖精は、異国の地からやってきた女の子だった…。
1年後、彼女の去った日本で主人公は思い出の中に彼女の故郷を探し求める。
主人公の日記を通した回想を中心とする本作は、青春小説としての瑞々しさを押さえつつ、
思春期特有の自己陶酔、内省的な側面を一人称で描き出す。所々に社会的な前提はあるものの、
国際情勢だとか歴史に疎い人でも堅苦しく思う必要はない。青春小説としてキャラ読みも可だ。
彼女は主人公に、読者である僕に何を残してくれただろうか。はっきりと記憶に残る小説だった。
さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)より
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No.17:
(4pt)

本格推理小説だったのか!

 タスキに書かれた「ボーイ・ミーツ・ガール・ミステリー」という意味が解らず、戸惑いながら読み始めました。はっきり言って退屈だった。登場人物には好感持てないし、ストーリーも(最初は)つまらないし…。ただ、僕もユーゴスラヴィアに多大な興味があり、戦後間もないボスニア・ヘルツェゴヴィナに単身個人旅行をしたくらいだから、そっちのほうで読むのを断念せずに済んだ。最後の方で、ようやくこの小説は「本格推理小説」だったと気付いたら、俄然全体的に面白くなった。
 ただ個人的な趣向かもしれないが「登場人物に好感が持てない」というのがネックで「★5」にはならなかった。米澤 穂信の描く 高校生程度の年齢の登場人物たちには、必ずこの手の ヒーロー&ヒロイン が登場する。他の作品の「ボトルネック」なんかだと、上手い具合にストンとハマる気がするんだけど。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.16:
(4pt)

マーヤというユーゴスラヴィアの女性キャラの魅力が、この作品を忘れがたいものにしている

 1991年(平成三年)4月、守屋路行(もりや みちゆき)と太刀洗万智(たちあらい まち)の高校三年生のふたりが、ユーゴスラヴィアから来た17歳の女性、マーヤと出会うところから、話は動き出します。
 日本語は上手なんだけれど、物事をしっかりと受け止めてから話すせいか、会話の端々に、「んー」て言葉が入るマーヤ。日本の文化や歴史、宗教やものの考え方などの本質に興味を持ち、質問し、どんどん吸収していくマーヤ。あどけなさが残る中にも、きりりとした芯の強さがうかがえるマーヤ。黒目黒髪の、この美しい異国の女性キャラが魅力的だったこと。それがこの作品を、後を引く、忘れがたいものにしていましたね。
 一方、太刀洗万智ことセンドー(守屋がつけたあだ名)の、日常の謎をいち早く解いて、実にそっけない種明かしをするキャラも、個性的であり魅力的でした。著者の後年の作品『ボトルネック』に登場する嵯峨野サキにつながる、「想像力」を働かせて物事の真実を見ることを重要視する女性。ただ、この作品では、マーヤという、スポットライトがよりくっきりと、強く当たっている登場人物がいたためか、押さえ加減で書かれていた気がします。それが、ややもったいなかったかな。
 マーヤがらみの小道具では、なんと言っても、紫陽花(あじさい)のバレッタ。マーヤの黒髪によく似合う、紫陽花を浮かし彫りにあしらったバレッタが、乾いたある音(ネタバレの恐れがあるため、ぼかして書いています)とともに、強く印象に残りました。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.15:
(5pt)

絶賛の言葉しか出ません

「犬はどこだ」に続いて読んだ米村さんの本ですが、これがまた素晴らしく、今年度に読んだ本の中でも三本の指に入るくらい面白かったです。
 古典部シリーズと同じく高校生が主人公ということで、もう少し軽い感じを予想していたのですが主人公の芯が熱くて、ぐっと心に入ってきました。主人公は、弓道部所属の高校三年生。彼と、友達の「センドー」こと大刀洗万智は梅雨前のとある雨の日の学校帰りに、不思議な少女と出会います。マーヤと名乗る少女は、単身で二ヶ月間この街の知り合いのところに下宿する予定でしたが訪ねてきてみればその人は既に死亡し、途方に暮れていました。彼は彼女をこれも友人で旅館の娘である白河に紹介、マーヤは旅館に住み込むことになりました。かくして、彼とその友人たちとマーヤの、短い、しかしこれ以上ないくらい大きな変化をもたらす二ヶ月間が始まるのでした。。
 ということで、その二ヶ月のちょうど一年後の回想シーンから始まるこの小説、青春ものというくくりでいえばまさに青春ど真ん中ですが、ただの青春恋愛ものではなく、ユーゴスラビア出身の将来政治家を目指す一人の少女をヒロインに据えたことで、主人公の悩み・葛藤・世界観の変化・恋の激しさが全ての面においてさらに際立ち、読んでいてやるせなく苦しくなるような小説に仕上がっています。恋愛的な要素もさることながら、成長物語としても素晴らしい出来です。
 間違いなし、文句無しにお勧めです。
 この小説を読んで改めて思ったんですけれど、同学年であれば、もうこれは仕方のないことだけれど、どうしても女性の方が早く成熟してしまっています。男子自身は気付いてない、馬鹿さ加減、気の回らなさ加減、子供さ加減が本当によく描けていて、それがまたぐっと読み手それぞれの昔を思い出させてくれてはまり込む要素となっています。是非読んでみて下さい。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.14:
(5pt)

たった一つの世界を生きる

〈セカイ系〉という言葉があります。
個人が社会や共同体といった中景を飛び越え、直接、
「セカイ」の運命と向き合うという物語群のことです。
そして、多くの場合、華奢な外見とは不釣合いな
戦闘力を有する「戦闘美少女」がヒロインとなります。
いわば、ある種のオタク的想像力や欲望の産物なわけですが、
本作において作者は、その枠組を取り入れた上で、
真逆の地平を目指しています。
日本人には、あまり馴染みのないユーゴスラヴィアから来た
好奇心旺盛な美少女・マーヤは、まさに題名の通り、異世界の
「妖精」といった感があり、その無邪気な振舞いからも、
いかにも「ラノベの住人」のような存在です。
物語の前半は、異邦人である彼女の瞳を通すことで、我々の
何気ない「日常」が再発見され、新たな意味づけがなされる、
という著者お得意の「日常の謎」的展開なのですが……。
後半、物語は一変します。
高校生が、国の違いを乗り越えることは
容易なことではないし、過ぎてしまった
時間を取り戻すことは不可能です。
無力な主人公の行動は、どこまでいっても
自己満足にすぎないのかもしれません。
しかし、たとえそうであったとしても、たしかに
マーヤとともに過ごした時間が存在し、同じ一つの
世界に生きる存在であることも事実です。
セカイを変えるのではなく、
変わらない世界といかに
理性的に向き合うか―
本作は、それを真摯に追求した作品です。
さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)より
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No.13:
(5pt)

「苦」くて「痛」いけど「苦痛」じゃない。

角川スニーカーで不発(それらも良作。単純に角川の戦略ミスによる)であった作者を、一躍注目作家へ押し上げた出世作。
甘みと苦みが共存した上等のチョコレートのような味わいを見せる米澤作品の中で、これはかなりビターで、胸がしめつけられるような印象深い後味を残す。
心を落ち着けて、じっくりと賞味したい作品だ。
結末を心に焼き付けたら、もう一度頭から読み返してみるとよい。
それまでさらっと流していた風景が違ったものに見えてくると思う。
ところで、そもそもこの作品は古典部シリーズの一つとして書かれていたものだという。
とすると、守屋が折木、文原が福部、白河が千反田、太刀洗が伊原だったのだろうか・・・それはそれで読んでみたい気もするが(笑)、しかしそうはならなかったことに感謝したい。卒業して少し疎遠になった後に回想するという効果的な舞台設定が無くなるのは惜しいので・・・
何はともあれ、素晴らしい作品であることは間違いない。文句なしの五つ星。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.12:
(5pt)

傑作

読了後のインパクトはかなりのもの。本当に素晴らしいの一言です。是非みんなに読んでいただきたい作品です。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.11:
(4pt)

目が開く

平凡で淡々とした日々に突然目の前に現れる
ユーゴスラビアから来た少女マーヤ。
特別目標のようなものをもって過ごしていなかった主人公の生活に
風穴をあけることとなります。
しかし劇的な何かがあるわけではなく、
マーヤと主人公やその仲間との普段の生活が話の主です。
マーヤは日本の文化に疑問をもち、事あるたびに
「哲学的意味がありますか?」と聞きます。
というわけで、推理はわりと日常的なことが題です。
推理一つ一つは軽く読めて楽しいですよ!
自ら「ただ生きているだけ」と言う主人公が
自分は今まで何を見てきた?何をした?何を知っている?と
生き方に疑問を持ち、それを打破しようと考えるところは、
私がそのようなことで悩んでいた時期だったので、
ものすごく共感してしまいました…。
話はユーゴスラビアの紛争の話にもつれ込んだりします。
でも日常の温かさを失わない、現実的なのに不思議な話でした。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.10:
(5pt)

今ここに共存している、という奇跡

1991年のある田舎町。何事にも無愛想で、程々にしか興味と行動を示さない高校生の主人公の前に、全てを新鮮に受け止める外国人の少女、マーヤが現れた。高校の同級生を巻き込んで、地味ながら新鮮に進んでいく国際交流。彼女が現れた理由が次第に露わになっていくなかで、主人公の心に変化が表れて…。
劇的な事件が起こるわけでもない、至って淡々とした展開ですが、描かれる淡々とした一日のシークエンスがとても味わい深く、爽やかさと暖かい懐かしさを与えます。自分はなんて何も考えていない子供なのだろうという幼さへの自覚と別れ、そして友人と無駄に過ごす日々のかけがえのなさの再認識。読んで頂ければ分かりますが、地味な内容に反して、読中読後感はとても鮮やかな空気に包まれました。ライトノベルや青春小説で片付けるには惜しい、心理的な世界の広がりを感じさせる出来です。ラストの衝撃と喪失感や女の子のクラスメイトは良くも悪くも村上春樹の影響が大きいですね。「羊をめぐる冒険」をほうふつとさせます。まあ現代の曖昧とした喪失感を表現した文章で、彼の影響を受けていない作家を探す方が難しいのですが。
ノスタルジックな演出も抑え目なので、青春小説は好きだけれど恩田陸はあまり嗜好に合わない、という方にお勧めなタイプの作品だと思います。これからが楽しみの作家さんです。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.9:
(4pt)

去り行く過去、残された今

 作者の出世作、というだけあって、優れた短編のようなスッキリした後味を残す佳作。父の仕事の関係で、短期に日本に滞在することになったという、ユーゴスラビアから来た少女、マーヤ。彼女と主人公達の触れ合いを描くのが本作だが、それは回想として語られるのであって、現在はマーヤは帰国し、そしてユーゴスラビアは内紛状態にある。彼女を心配した主人公達は、幾つかの共和国として成り立つユーゴスラビアの、どの国に彼女がいるのかを突き止めるために、彼女の過去の言動を日記から拾い出して推理しようという、表面的にはそういう進行となっている。この物語構造だけでも充分に斬新であり、同時に、消息を心配する友人として、たったそれだけのことしかできないもどかしさ、すなわち、マーヤがどの国に帰ったのかを突き止めると言っても、それがわかったからどうだというのか? それでも何かせずにはいられない、というメンタリティが作者独特の雰囲気を生み出しているといえる。要するに、青臭いのだ。物語の結末として、彼女は危険を承知の上で帰国したのであり、彼女の覚悟に対して主人公達は、あまりに子供であったことを突きつけられるしかないのである。これはそんな、細かい日常の謎に触れるミステリでありながらも、遠い国の少女を想う、青春小説である。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.8:
(5pt)

哀しいけれど…

日本の高校生たちが普通の町で偶然に出会った外国からの少女.
この少女がどこから来た(帰った)かというのが謎になっていて,
帰国後,その中の少年の日記を辿るかたちで物語は進んでいきます.
これだけだと『日常の謎』のような作品かと思いがちですが,
大半がこの少女と出会った少年たちのやり取りに割かれていて,
ミステリというよりも青春小説の要素が強いように感じます.
そして謎である少女の行方が解き明かされていくわけですが,
ここは,少女と過ごした思い出や会話からの言葉が次々とつながり,
まるでパズルが完成していくような気持ちよさがあります.
しかしその結論,そしてさらに明らかになる事実には,
ある程度予想できたとはいえ,なんとも言えない気持ちに.
また,クールで無愛想だった仲間の本当の気持ちと,
この短い出会いをきっかけにひと回り成長した少年の姿,
哀しいのですが,まさに青春ですがすがしい気持ちです.
どうぞじっくりと,思いを巡らせて読んでみてください.
余談ですが,少女が日本の習慣に戸惑うところが,
『日常の謎』としていくつか盛り込まれているのですが,
こちらについてはむずかしめというか少し期待はずれでした….
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.7:
(4pt)

高校生の男子

男女差なのでしょうか。高校生の男子の鈍感さ・独りよがりさが共感できないけれど、逆にそれがとてもリアルでした。
 ミステリとして、本当に謎が解けているのか納得できない点が多っかたけれど、ユーゴスラビアはソビエト圏だと思い込んでいたくらい無知だったのでとても勉強になりました。
さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)より
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No.6:
(4pt)

強烈な余韻を残す作品

「哲学的意味がありますか?」。1991年4月、ユーゴスラヴィアからやってきたと言う少女・マーヤとおれたちは出会った。彼女と過ごす謎に満ちた日常。そして、最大の謎を残したまま彼女は帰国していった…。
うーん…「忘れ難い余韻を残す」との言葉通り、読了後の余韻は強烈。
本作は、形から言えばミステリー小説である。ただ、どちらかと言えば、ミステリーの形を借りた青春小説と言った方が適当だと思う。
作品の形としては、私がこれまで読んだ米澤氏の作品『氷菓』『春期限定いちごタルト事件』などと同様、序盤は日常の謎を解き明かす、という感じの連作短編という感じで進み、中盤からそれらの中に散りばめられた伏線がはまって一気に盛り上がって行く…という構造をしている。
日常のやりとりを通じて、マーヤに惹かれていく主人公・守屋。しかし、もともと約束されていた別れ。そこへ発生するユーゴスラヴィア紛争。それでも帰ることを決意するマーヤと、自らの無力さ、傍観者でしかないことを知らしめられる守屋。そして、最後に明かされる真実…。マーヤの帰国の1年後、当時の日記を紐解きながら…という形式になっているのだが、序盤の日常の中にあるさりげない言葉が生きてくる辺りの構成は見事。
欲を言うなら、序盤の日常場面をもう少し。そこに描かれるちょっとした言葉やら仕種が持つ意味は、上述した通り。ただ、一つ一つのエピソードを全てミステリ仕立てにする必要はあったのか? いくつかは合った方が良いのだろうが、それら1つ1つには、それほどのサプライズがあるわけでなく、先に挙げた2作同様、もう少し派手さというか、動きが欲しかった。どうしても序盤が地味に感じてしまう。
読了後の余韻が強いからこそ、より期待してしまう。
さよなら妖精 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (創元推理文庫)より
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No.5:
(5pt)

青春小説の傑作である(;'Д`)ハァハァ

(;'Д`)ハァハァ  マジで読み終えた時 感慨にふけてしまった・・・。かなりの傑作小説だ。読後感が良い。そして読みやすい。異国の少女との出会い・・・そして高校の同級生・・・。キャラというか登場人物が立っていて とても面白かった。なんとも言えない青春小説ですた・・・。人間の描写が卓越しておる。これほどまでに素晴らしい小説が 何故 埋没されているのか・・・不思議に思う・・・。ぜひともお読みください?!
さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)より
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No.4:
(5pt)

「久々に学園小説読みたいなあ」という方にお奨め!

 他のレビューでも絶賛されているように、私もこの作品はとても優れた学園小説だと思いました。 読みながら、「そうそう、あの頃ってこういう感覚だった」と自分の経験(多分に思い込みや美化、誇張が含まれているけど)がじわーっと蘇ってきて、くすぐったい気分にさせられます。 少年マンガで高校生の主人公といったら「勉強はできないけどスポーツに熱中していて、熱血漢」というパターンばかりですが、本作品の主人公は「お前が何かに熱くなるところは想像できないな」と弓道部仲間に真顔で指摘(笑)されるくらい、「ほどほど、そこそこ」な感じで、かえって親近感が持てます。 ただ、主人公も含めた人物たちの知的水準の設定がチグハグな印象を受けました。 大人も知らないような風俗的知識を持っていたり、高尚・難解な表現を好んで使うことから、旧帝大・早慶狙いの地方有名進学校クラスだろうと思われるのに、そうかと思えばユーゴの(当時でも最低限の)地理的・社会的知識が弱かったり、知り合って間もない女の子を「お前」呼ばわりしたり…。  気になったのはその点だけ。それでも星5つつけちゃいます。
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No.3:
(5pt)

「哲学的な意味がありますか?」

あらすじは省かせてもらいます。ミステリ・フロンティアから、ということですが、確かにミステリー要素が入っています。異国の少女マーヤ、文化の違う彼女の視点から見た日本の日常に隠れている些細な謎、それを解いていく主人公。さらに、それらの謎が最後の展開へのヒントとなっていく構成。ミステリーにあまり詳しくない僕でもわかりました。ミステリーとして完成している、と。しかし、この作品の主は、ミステリーではないと思いました。ひとつのボーイミーツガールストーリー。そんな出会いが、些細な謎と大きなドラマを生み出しました。情景描写がとてもキレイで、頭の中に映像が出来上がりました。それも断片的な映像ではなく、ひとつの流れを持っていて。読んでいて非常に気持ちがいいです。主人公への感情移入はキッチリできました。それゆえ、痛い場面もありました。ちょっとしたミステリーと感動のドラマを、ぜひ。何かを感じてください。
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No.2:
(5pt)

思い出として刻まれる物語

 なにか、とんでもない失敗を、誰か大切な人にしてしまったことはないですか? そんなとき、あなたは何を思い、何を感じますか? 私は、思い出のひとつひとつが頭を巡り、そして、そのひとつひとつが突然意味づけられ、そして、その理解がもはや役に立たないこと、自分がしてしまったことは、取り返しがつかないという事実に圧倒されます。 ラストシーン、私は主人公とともに自分が何も理解していなかったことを知りました。そして、そのことをまるで自分のことのように感じました。物語の中のシーンとしてでなく、思い出として登場人物たちの言動が心をよぎりました。まさしく、何もわかっていなかったことの痛みを感じたのです。主人公とともに。 物語に、その登場人物に、ここまで感情移入できるのだと、「さよなら妖精」は教えてくれました。魅力的なキャラクターと彼らを活かす見事な文章の妙技です。
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No.1:
(5pt)

まろうどの物語に胸が切なくなる

突然現れた異国の少女。二ヶ月の間、彼女と共に過ごした時間を回想し残された謎と心に残った思いを探るミステリー。殺人も、密室も、世界も、日常の不可思議な謎も出てこない、それでも立派なミステリーだ。パズラーや推理物や、謎解きが好きなミステリー好きにはお奨めできないかもしれないが、小説、物語が好きな人に読んで欲しい、愛おしい本だ。東欧と言う未知の土地から現れた少女の好奇心に触れ、日常に一瞬ふいた新しい風のせいで、不安定で未成熟な自分に言葉にならない焦燥感を抱く主人公の少年の心情には、深く共感できる。彼が傷つきながら、同時に周囲の仲間逹を傷つけながら少しだけ成長の一歩を踏み出すさまには、胸が切なくなる。主人公の何者でもない自分の現状への焦りに風穴を開ける少女の、なんと禀とした事よ。十代の後半にこうした存在と出会いたかった。この物語にも、あの時出会いたかった。ミステリーであると同時にこの物語は、三つの恋のようなものの物語だと思う。主人公と行動を共にするクールな長い黒髪の少女のキャラクターの魅力は、それだけでのこの本の価値だと言える。そして最後になって伝わってくる彼女の心情は、主人公の気持ちとは別にゆっくりと鋭く心に染み込んでくる。彼女の想いを知り、改めて胸が苦しいほどに切なくなる。クールな彼女の想いが行動が、愛おしく感じる。上質な物語だ。静かに切ない気持ちにさせてくれる。そして切ないだけではなくて、一歩踏み出さなければならなかった少年の、幽かな希望に明日があるんだと、つらいけれど明日も生きていこうという想いを与えてくれる。ミステリーとしてではなく、物語としてお奨めする。
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