歌われなかった海賊へ

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歌われなかった海賊への評価:

4.37/5点 レビュー 35件。 B ランク

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平均点4.37pt

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全5件 1〜5 1/1ページ
No.5
(3pt)

レッテルを貼らないことの難しさ

本書は、第二次大戦下ドイツにおける、反ナチス運動としてのエーデルワイス海賊団をテーマにしている。
そのような集団が存在したことさえ知らなかったが、どうやら若者たちが中心になって「反ヒトラーユーゲント」的に組織されたものらしい。

といっても、明確な思想に完徹された組織だった活動ではないらしく、ある意味では散発的なまとまりのないもののようだ。

本書で描かれるのは、それぞれ複雑な背景を持った、十代の青少年(少女)たちである。
素行不良だったり、ゲイだったり、いわゆるジプシーだったりと、ナチス政権下では「必要ないもの、存在してはならないもの」とされた者たちだ。

その意味では、民族ごと消されかけたユダヤ人の立場に少しだけ親和的である。

しかし、その彼らも明確な反ナチス思想というか、きっちり言語化された主張などがあってエーデルヴァイスの活動をしているわけではない。
むしろ、それぞれの抱える屈折に由来する違和感というか、純粋さというか、そうした明確な形の伴わない力によって、突き動かされているのである。

それが彼らの強みでもあり、また弱みでもある。

そんな彼らにとって、ナチスそのものが反発すべき敵であるのはもちろんなのだが、その活動を「心の底では嫌っている」とはいえ、表面上は波風立てず服従しているように見える一般の大人たちも、それと同じぐらい唾棄されるものに映る。

彼らは基本的には「いい人」なのだが、どこか欺瞞を抱えている。
特に、そうした人々が戦後になって自分はひそかに「反ナチ的」立場に身を置いていたのだ、とできる限り自身の立場を「取り繕って」語るような言説は、彼らにはとうてい許せないものなのである。

なぜなら、そうやって被害者のように語るその彼らこそが、本書のエーデルヴァイス海賊団の若者を見殺しにした当事者たちだからである。

この取り繕った言説というのは、ある意味ナチスの「プロパガンダ」と同じ穴のムジナであろう。
そこには偽りや打算があふれているから。

しかし皮肉なことに、そうした手法を毛嫌いする彼らだからこそ、逆に彼らの活躍は戦後全く「歌われなかった」のだともいえる。

分かりやすい、耳障りのよい紋切型の言説に落とし込めなければ、多数の人間の共感というものは得られないものだから。

マイノリティの集まりである海賊団は、その性質上、決して「一枚岩」になることがない。
だからこそ、その思想はどこにも定位できず、戦後奇麗にかき消えてしまったのではないだろうか。

逆に、ひどい偽りに満ちていても巧妙極まるナチスの思想は、この現代でもゾンビのように幾度となくよみがえってくる。

じつは、彼らが唾棄した「汚い大人」のやり口というのは、ある意味それぐらい懐が深い、百戦錬磨のものなのだ。

現在の民主主義活動やマイノリティ活動のほとんど全てが、現代ではかつてナチスが用いた宣伝の手法を多かれ少なかれ採用していることからも、それは伺うことができるだろう。

歌われるためには、だれかが積極的に謳わねばならないのだ。

ちなみに本書では、少数にアイデンティティを持つ少年少女の人物描写が今一つ真に迫っておらず、なんだかよく分からない集団が良く分からないまま一致団結して、それで中途半端に活躍したという印象がぬぐえない。

その辺りは本書の筆者の今後の課題ではあるまいか。
歌われなかった海賊へ Amazon書評・レビュー: 歌われなかった海賊へより
4152102756
No.4
(2pt)

うーん。微妙。昇華しきれていない。

前作が良かったので期待して読み始めてみたのだけど、ナチス政権下での少年少女たちの息苦しくも燃えるような反抗心を描いているのは良かった。
ただ、歴史小説というか、その時代背景を紹介するような内容の匂いが濃くて、面白くなかった。
学校の授業で見せられる勉強用の映画みたいな感じ。
「人間として言えない事もある」の内容も正直見え透いていたし、最後のオチも綺麗ではあるけど唸るほどではなかった。
歌われなかった海賊へ Amazon書評・レビュー: 歌われなかった海賊へより
4152102756
No.3
(2pt)

期待外れ

実際あったことを下地として小説にしたのでしょうが、現実感が出ていない。児童活躍物語風で感動がない。あまりに「同志少女よ・・・」のできと差がある。作者の2作目を待っていたが、期待外れでがっかり !!
歌われなかった海賊へ Amazon書評・レビュー: 歌われなかった海賊へより
4152102756
No.2
(2pt)

漫画のようで…

少年たちの殴り合いのシーンや、爆弾を少年たちが設置するシーンなどが、漫画のように描かれていて、史実を知りたいと思えば、ちょっとどうでもいいような気がします。要するに、と言ってしまえば4分の1以下で述べられそうな小説でした。高橋源一郎さんのラジオで紹介されていて、絶賛されていましたが、期待をしすぎて読んだのも失敗だったかもしれません。小説ですから、あらすじを書いてしまうのは御法度なので、ここには書きません。最後の最後に、「これはフィクションで…」というエクスキューズが出てきますが、最初に書いてあれば、史実を知りたいと思う多くの人が読むのを回避できると思います。若者向けに戦争を知るきっかけとしての読書ならお勧めなのですが、評価をきつくしたのは、『少年H』と同じ臭いがしたからです。登場人物が「もうすぐ戦争は終わる」とか「ドイツ軍がやっていることはおかしい」とか言って、あたかもリアルタイムに大局を知っているかのようなセリフ、Hを読んだときの既視感を感じました。
歌われなかった海賊へ Amazon書評・レビュー: 歌われなかった海賊へより
4152102756
No.1
(1pt)

「同志少女よ敵を撃て」の酷さがまぐれじゃなかったお行儀の良い駄作。ひょっとして「スウィングしなけれゃ意味がない」を読んでないのかしら?

「同志少女よ敵を撃て」のときにも感じたんだけれど、この人、小説を書くのが恐ろしく下手ですね。
どういうことかと言うと歴史的な事実や戦争の状況といった調べたことを物語にしたてることがまるで下手。
具体的に言うと、今回は1944年のドイツの田舎町が舞台なんだけれど、当時のドイツ国内の政治や経済の状況、全体的な第二次世界大戦の戦局といった歴史的な背景を物語の中に溶けこませることができていない。ヴェルナーという労働者階級の少年(父親が政治的な問題でゲシュタポに処刑された)が語り手なんだけれど、大局について読者に示す時に、いきなりナレーション状態になって、だらだらと調べたことが書かれている。そのたびに物語の流れがぶちぶちと断絶されてしまって、まったく物語に入り込めない。
あと、もっと致命的なのがヴェルナーを始めエーデルワイス海賊団の四人が、みんな、最近になってようやく見直されるようになってきた当時のドイツの状況や人々の考え方に対する最新の味方、単純にナチスが悪いのではなく、普通の人たちも悪かったという歴史感を、さも当然のように身につけていて、行動したり発言したりしている点がダメ。それは、後出しじゃんけんでしょうよ。
とにかく、作者が勉強したことを、登場人物の口を借りてとうとうと正論を述べる現在の作品、当時のドイツの雰囲気はまるで感じられないのは、描写力が劣っているだけじゃなくって、安いラノベもどきといっちゃうとラノベに失礼な文章力だけじゃなくって、根本的に物語を作るのが下手だからだと思います。
あと、エーデルワイス海賊団についてかくのだったら、佐藤亜紀の「スウィングしなけりゃ意味がない」を読んで、あの傑作に一矢報いるものでなきゃ書く意味ないと思いますよ。
歌われなかった海賊へ Amazon書評・レビュー: 歌われなかった海賊へより
4152102756