■スポンサードリンク
龍くんは食べながら謎を解く: 名古屋駅西 喫茶ユトリロ3
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
龍くんは食べながら謎を解く: 名古屋駅西 喫茶ユトリロ3の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
名古屋めし食べてみたい人、名古屋出身の人にはたまらないシリーズです。じつは、多くの名古屋人もひきずりは食べたことなかったりします。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
名古屋の食文化「なごやめし」の紹介のようなミステリ本? 謎解きを楽しみながら、なごやめしの魅力も十分楽しめる。 名古屋から引っ越しされる人にこのシリーズをプレゼントしたら、 後日「食べに帰りたいです」ってお返事をもらいました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
第1作『 名古屋駅西 喫茶ユトリロ 』、第2作『 名古屋駅西 喫茶ユトリロ 龍くんは美味しく食べる 』に続くユーモア・ミステリー短編集です。 舞台となる喫茶ユトリロは昭和24年に名古屋駅西に創業し、今も昭和のたたずまいを残す店です。玉子サンドのモーニングが絶品で、それを目当てに、駅前商店街に暮らす常連客が大勢集います。名古屋のソウルフードの数々をネタに、客たちが持ち込む日常の秘密を解き明かすのは、ユトリロ店主の孫息子・鏡味龍(とおる)です。 ▽「小倉トーストと奇妙な会話の謎」 :名古屋へ観光にやってきた東京の大学生・南原雫は、たまたま入った喫茶ユトリロで他テーブルの人たちの話す名古屋弁が聞き取れず戸惑う。そのあと店内で足をくじいてしまい、医大生の龍の手当てを受ける。龍のことが心に留まるが、龍は雫と話したあと、どこかへ出かけてしまって戻ってこない。果たして龍はどこへ行ってしまったのか……。 名古屋弁の会話がもとになってある事件が秘かに解決されていくミステリーです。その謎解き物語は軽妙で、名古屋出身の私は十分面白く読みました。もちろん名古屋弁が全く分からない読者でも楽しめるでしょう。 今回取り上げられる小倉トースト自体は私も子どものころに食べた記憶がありますが、小豆をつぶさず煮た<つぶ餡>、裏ごしして皮をとった<こし餡>と異なり、<小倉餡>はこし餡に後から小豆の蜜煮を混ぜたものとは初めて知りました。 ▽「味噌煮込みと七宝の謎」 :音楽教師をしていた父を亡くした小川伊月は、葬儀のため東京から名古屋へ帰郷していた。幼いころ、父に連れられて喫茶ユトリロで「いつき」という名の若い女性と会った記憶がよみがえる。自分と同じ名を持つあの女性は、父にとってどんな女性だったのか……。 会ってはいけない女性と会ってしまったのではないかと、伊月は心にわだかまりを抱いていました。その女性の素性を、10年の時を隔てて龍が探し出す過程が、意外としっかり推理になっています。そして自分の知らなかった父の姿を見出す展開が心に沁みました。 「ひとつ、たしかなことがあります。御飯が美味しく食べられたら、たいていのことはうまくいきます」(108頁) 龍の台詞を聞いて、なんだかうれしくなりました。 ところで私は、七宝焼が愛知のものだと認識していませんでした。ウィキペディアを引くと、確かに尾張七宝なるものが立項されています。 また味噌煮込みうどんは伊月のように山本山のものしか私もなじみがありませんが、麺の固さは店によって千差万別だったとは。まだまだ知らない名古屋があるのですね。 ▽「ひきずりと好き嫌いの謎」 :2019年3月13日、街ゆく人がちらほらマスクをし始めたころ、平山萌は相談のためにユトリロを訪れる。相談内容とは結婚を考えている恋人の本間一真のこと。ユトリロの常連客でもある本間が萌の両親に挨拶に来た際、母の手料理のひきずりに入っていたかしわを吐き出してしまい、父の怒りを買ったのだ。だが一真は唐揚げが大好物なほど鶏肉好きなのに、かしわ肉を吐き出したのはなぜなのか……。 第1作『 名古屋駅西 喫茶ユトリロ 』の第六話「味噌おでんとユトリロが似合う店」に登場した常連客の<紳士さん>が再登場です。常連客同志のネットワークが事件解決へとつながっていく、江戸長屋の人情噺のようです。 ひきずりとは鶏肉のすき焼きのこと。ウィキペディアによれば「主に愛知県、特に名古屋市など尾張地方の郷土料理」だといいますが、まったくの初耳でした。 ▽「台湾ミンチと赤い靴の謎」 :2020年4月7日に緊急事態宣言が出されてしばらく経ったころ、東京で輸入食品や高級食材を扱うスーパー「カッツェ・クロサキ」の商品開発担当・小森玲奈は、名古屋の食品会社から「でらうま台湾ミンチ」なる商品を取り寄せる。そのおいしさにほれ込んだ玲奈は勤務先にプレゼンしようと追加注文をしたが、届いたのは小さな赤い靴だった……。 今回取り上げる「台湾ミンチ」は名古屋めしの台湾ラーメンにトッピングされているひき肉のピリ辛炒めのこと。それがどう赤い靴に化けたのか、その謎解きは率直に言ってあまり大した話ではありません。むしろお話の肝は、登場人物それぞれは互いにまだ気づいていませんが、ここまで読んできた読者に意外な人間関係が明かされるところにあるのでしょう。玲奈の姪っこが雫であること、雫はコロナ禍が落ち着いたら再度名古屋に行きたくて、玲奈を連れていきたいと考えていること、「台湾ミンチ」の販売主が龍のおじにあたる鏡味宣隆であることなどです。暮らしている場所が離れている彼らが、オンライン会議やLINEでつながっていきます。 「縁とは本当に不思議なものだ」(208頁) これはおそらくいずれ出る続編へのつなぎとなる掌編なのでしょう。 ▽「なごやんと知らなかった姉の謎」 :緊急事態宣言が解除されてしばらく経った2020年6月末、喫茶ユトリロ70周年を記念して敷島製パン(東京進出名はPasco)の菓子なごやんをオーダーメイド刻印して配られることになった。それを見た客の高宮亜香が突然泣き出す。自分が生まれる前に幼くして死んだ姉・美千子が写真の中で持っているのがなごやんなのだ。しかし亜香が姉の存在を知ったのはつい最近。亡母は何も語らずに逝った。それは一体なぜ……。 謎解きの過程は水際立ったというほどのものではありません。鶴舞中央図書館で調べものをするだけである程度、事件の輪郭は見えてきます。しかし、Pasco のHPで謳っているように、「なごやんはずっとそのままの味ではなく、少しずつ改良を重ねておいしくなってい」ることに照らして、この物語は龍が変化の兆しを見せ始めるところで終わります。 「低迷期ってのはいつか抜けるから」(219頁) 龍のみならず、コロナ禍で日本全体が低迷する中、それでもきっと夜は明けるという希望を感じさせる幕切れです。 -------------------------- 中日新聞の書評欄をまねて、もう一冊。 ◆日本経済新聞社『 名古屋のトリセツ 』(日本経済新聞出版) :日本経済新聞紙上で2019年8月から掲載した「ナゴヤのトリセツ」と、2019年10月から掲載した「データで読む愛知」の二つの大型企画を一部加筆して収録した新書です。 ジャムや卵ペーストに加えてバターを塗り、その上にあんこを載せた「小倉トースト」は、大正時代に名古屋市・大須の喫茶店で学生が始めたものだとか、台湾ラーメンは両親が台湾出身の名古屋の店主が1972年に始めたが、台湾産のニンニクが手に入らず、焼き肉店のタレに使われた唐辛子を入れたところ80年代に激辛料理ブームに乗って人気が出たなど、名古屋めしにまつわる歴史が紹介されています。 . | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!