(短編集)

死者の奢り・飼育

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評判

死者の奢り・飼育の評価:

4.53/5点 レビュー 55件。 B ランク

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平均点4.53pt

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未読の方はご注意ください

全119件 41〜60 3/6ページ
No.79
(5pt)

まさに賛否両論、毀誉褒貶……当時の文壇を揺るがせた問題短篇群

悪いはずがない、大江健三郎初期短篇集。
 異常な題材、偏執狂的文体、これで大島渚や田原総一朗、武満徹、筒井康隆、井上ひさし、中上健次、村上龍、町田康、etc、錚々たる面子が圧倒された。 
 この凶暴極まりなく、ある意味で病的な想像力は、後の『日常生活の冒険』や『個人的な体験』、『万延元年のフットボール』、『洪水はわが魂に及び』という問題長篇群へと結実して行く。

 御本人がおっしゃる通り、“日本語の可能性を探求する実験”そのもの。
 『ピンチランナー調書』以降の作品群を指して、義兄の伊丹十三が、「実際、君の小説は、売れなくなって来ているじゃないか」という指摘もあってか、その壮大な試みは少しずつ萎んでしまうのだけれど。
死者の奢り・飼育(新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育(新潮文庫)より
B00IP4BY6W
No.78
(5pt)

瑞々しい寓話的初期傑作集

"死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡みあい、頭を押しつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている"1957年発表の著者デビュー作『死者の奢り』そして当時23歳で最年少での芥川賞受賞となった1958年発表の『飼育』含む本書は実存主義、時代の閉塞感を感じる寓話的な初期作品集。

個人的には、著者の『万延元年のフットボール』を課題図書にした読書会を開催する事もあり、勉強のために手にとりました。

さて、そんな本書は『万延元年のフットボール』や『同時代ゲーム』といった、既読の長編作品–どちらかと言うと難解な作品から入った私にとっては、比較して【無機質かつ瑞々しく】とても読みやすい印象を受ける初期の短編、屍体処理室の不条理なアルバイトを描いた『死者の奢り』脊髄カリエスの少年たちの哀歌『他人の足』黒人兵と寒村の子供たちとの悲劇『飼育』外国兵の理不尽な仕打ちと傍観者への侮蔑を込めた『人間の羊』など6編が収録されているわけですが。

まず、やはり中では、デビュー作にして、屍体と妊婦など様々な形で生と死を繰り返し対比させた『死者の奢り』ありがちな黒人兵と子供たちの心の交流を描くどころか"黒人兵を獣のように飼う"と家畜として扱う『飼育』が【内容や主題にインパクトがあって】印象に残りました。(しかし屍体処理のバイトって、私が学生時代にも都市伝説的に話題になったのですが。実際どうなんでしょうか?)

また、残りの4作品『他人の足』『人間の羊』『不意の唖』『戦いの今日』についても。それぞれに敗戦後の日本社会の閉塞感や世界的な影響を与えていたサルトルの【実存主義の影響を強く感じる不条理さ】そして、後期の作品にも繋がるような【閉じられた集落の異質さ】が感じられると共に、次第に【作品が洗練されていく変化】も伝わってきて興味深かったです。

著者作を読み始める最初の一冊として、また敗戦後の昭和の空気感漂う作品や不条理な寓話的な短編が好きな人にもオススメ。
死者の奢り・飼育(新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育(新潮文庫)より
B00IP4BY6W
No.77
(5pt)

希望を持ったり絶望したりする暇はない

東大新聞の懸賞小説で1等になった特徴のある顔立ちで色白の少年。学生の大江健三郎。
開高健とともに沈滞していた文壇に新風をもたらした存在。
23歳「飼育」で芥川賞を受賞。

「飼育」だけでなくどの短編もすばらしい。

以下 個人的に心に残ったところです。

「死者の奢り」

アルコール水槽に保存される解剖用の死体
妊娠した女子学生の下腹部の中
人間にちがいない液に浸る死と生

人を拒む生きている者より死者の世界に足を踏みいれたアルバイト学生の僕
生きている人間と話すのはなぜ困難なのか

「他人の足」

脊椎カリエス患者療養所の未成年者病棟
犬みたいに発情させられる看護婦の習慣

新聞が君たちのことを取り上げて報道するのは君たちが脊椎カリエスだからさ

自分の足の上に立っている人間はなぜ非人間的に見えるのだろう

「飼育」

敵の飛行機だ 敵がやって来た
黒人兵を獣のように飼う
僕らは衝撃のように黒人兵も笑うことを知る

戦争 血まみれの大規模な長い闘い 

黒人兵を焼くために集められた薪で書記は火葬されるのだろう

「人間の羊」

キャンプの外国兵から「羊」にされる日本人
人間に対してすることじゃない暴行

交番で不意の啞となる被害者
今度は「犠牲の羊」にされる

「不意の啞」

谷間の村へ入って来た外国兵を乗せたジープ
若い女たちは炭焼小屋へ待避し男たちは武器を畑の小屋へ運ぶ
決して彼らと争うな
負けた国の人間は虐殺されても不平はいえない

「戦いの今日」

戦争の肉体的な厭らしさ
戦争で犬のように殺される屈辱
われわれ日本の青年は戦線から離脱する
人殺しのジャップお前は俺たちの同胞じゃない
死者の奢り・飼育(新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育(新潮文庫)より
B00IP4BY6W
No.76
(5pt)

意識が無い死者、意識がある生者

「死者の奢り」を何度も読んでいるうちに、この小説では「意識」が重要なテーマになっているのではないかと思いました。

「死者の奢り」に登場する水槽の中の死体には意識が無く、完全な《物》になっています。

「死は《物》なのだ。ところが僕は死を意識の面でしか捉えはしなかった。意識が終った後で《物》としての死が始まる。うまく始められた死は、大学の建物の地下でアルコール漬けになったまま何年も耐えぬき、解剖を待っている」(p.18)。

その一方、生きている人間には、水槽の中の死体とは違って、意識があります。そして、意識がある生者には「粘液質の膜」があり、他者を拒絶します。

「あれは生きている人間だ。そして生きている人間、意識をそなえている人間は躰の周りに厚い粘液質の膜を持ってい、僕を拒む、と僕は考えた」(p.28)。

この小説では、水槽の中の死者たちが「意識がなく、条理に沿った存在」として描かれていると思いました。一方、「僕」や「女子学生」のような生者は「意識があり、不条理に巻き込まれていく存在」として描かれていると思いました。意識がないロボットはプログラムに忠実に動作しますが、意識に目覚めた人間は計算外の行動をしたり・心に壁を作ったりする…というのに似た現象が表現された小説だと私は解釈しています。
死者の奢り・飼育(新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育(新潮文庫)より
B00IP4BY6W
No.75
(5pt)

かつてのベストセラー。若い人も読むべきだ。

大江の硬い、しかしみずみずしい独得な文体。時間かけても読むことで本当の純文学の味わいを得られる。
死者の奢り・飼育(新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育(新潮文庫)より
B00IP4BY6W
No.74
(5pt)

読みやすくて好き

時間がある時に買って読んでみるといいと言われて、普段は全く本も小説も読まない人間でしたが買って読んでみました。
 文章もかたっ苦しくなくて読みやすく、内容がすんなり頭に入ってきました。少し暗いお話ですが、題材が特殊で個人的には好きでした。
死者の奢り・飼育 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (新潮文庫)より
4101126011
No.73
(5pt)

「えげつない」

大江健三郎氏は名前くらいしか知らなかったので、実際に読んでみたくて購入。

読了して一言で表すなら「えげつない」!

短編集と言え油断することなかれ。
どれもこれも凄まじいインパクトです。

しかしただのインパクトではなく、構築された上での描写ですからね。

もっと早くに出会いたい作家でした。
死者の奢り・飼育 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (新潮文庫)より
4101126011
No.72
(5pt)

まさに賛否両論、毀誉褒貶……当時の文壇を揺るがせた問題短篇群

悪いはずがない、大江健三郎初期短篇集。
 異常な題材、偏執狂的文体、これで大島渚や田原総一朗、武満徹、筒井康隆、井上ひさし、中上健次、村上龍、町田康、etc、錚々たる面子が圧倒された。 
 この凶暴極まりなく、ある意味で病的な想像力は、後の『日常生活の冒険』や『個人的な体験』、『万延元年のフットボール』、『洪水はわが魂に及び』という問題長篇群へと結実して行く。

 御本人がおっしゃる通り、“日本語の可能性を探求する実験”そのもの。
 『ピンチランナー調書』以降の作品群を指して、義兄の伊丹十三が、「実際、君の小説は、売れなくなって来ているじゃないか」という指摘もあってか、その壮大な試みは少しずつ萎んでしまうのだけれど。
死者の奢り・飼育 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (新潮文庫)より
4101126011
No.71
(5pt)

瑞々しい寓話的初期傑作集

"死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡みあい、頭を押しつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている"1957年発表の著者デビュー作『死者の奢り』そして当時23歳で最年少での芥川賞受賞となった1958年発表の『飼育』含む本書は実存主義、時代の閉塞感を感じる寓話的な初期作品集。

個人的には、著者の『万延元年のフットボール』を課題図書にした読書会を開催する事もあり、勉強のために手にとりました。

さて、そんな本書は『万延元年のフットボール』や『同時代ゲーム』といった、既読の長編作品–どちらかと言うと難解な作品から入った私にとっては、比較して【無機質かつ瑞々しく】とても読みやすい印象を受ける初期の短編、屍体処理室の不条理なアルバイトを描いた『死者の奢り』脊髄カリエスの少年たちの哀歌『他人の足』黒人兵と寒村の子供たちとの悲劇『飼育』外国兵の理不尽な仕打ちと傍観者への侮蔑を込めた『人間の羊』など6編が収録されているわけですが。

まず、やはり中では、デビュー作にして、屍体と妊婦など様々な形で生と死を繰り返し対比させた『死者の奢り』ありがちな黒人兵と子供たちの心の交流を描くどころか"黒人兵を獣のように飼う"と家畜として扱う『飼育』が【内容や主題にインパクトがあって】印象に残りました。(しかし屍体処理のバイトって、私が学生時代にも都市伝説的に話題になったのですが。実際どうなんでしょうか?)

また、残りの4作品『他人の足』『人間の羊』『不意の唖』『戦いの今日』についても。それぞれに敗戦後の日本社会の閉塞感や世界的な影響を与えていたサルトルの【実存主義の影響を強く感じる不条理さ】そして、後期の作品にも繋がるような【閉じられた集落の異質さ】が感じられると共に、次第に【作品が洗練されていく変化】も伝わってきて興味深かったです。

著者作を読み始める最初の一冊として、また敗戦後の昭和の空気感漂う作品や不条理な寓話的な短編が好きな人にもオススメ。
死者の奢り・飼育 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (新潮文庫)より
4101126011
No.70
(5pt)

希望を持ったり絶望したりする暇はない

東大新聞の懸賞小説で1等になった特徴のある顔立ちで色白の少年。学生の大江健三郎。
開高健とともに沈滞していた文壇に新風をもたらした存在。
23歳「飼育」で芥川賞を受賞。

「飼育」だけでなくどの短編もすばらしい。

以下 個人的に心に残ったところです。

「死者の奢り」

アルコール水槽に保存される解剖用の死体
妊娠した女子学生の下腹部の中
人間にちがいない液に浸る死と生

人を拒む生きている者より死者の世界に足を踏みいれたアルバイト学生の僕
生きている人間と話すのはなぜ困難なのか

「他人の足」

脊椎カリエス患者療養所の未成年者病棟
犬みたいに発情させられる看護婦の習慣

新聞が君たちのことを取り上げて報道するのは君たちが脊椎カリエスだからさ

自分の足の上に立っている人間はなぜ非人間的に見えるのだろう

「飼育」

敵の飛行機だ 敵がやって来た
黒人兵を獣のように飼う
僕らは衝撃のように黒人兵も笑うことを知る

戦争 血まみれの大規模な長い闘い 

黒人兵を焼くために集められた薪で書記は火葬されるのだろう

「人間の羊」

キャンプの外国兵から「羊」にされる日本人
人間に対してすることじゃない暴行

交番で不意の啞となる被害者
今度は「犠牲の羊」にされる

「不意の啞」

谷間の村へ入って来た外国兵を乗せたジープ
若い女たちは炭焼小屋へ待避し男たちは武器を畑の小屋へ運ぶ
決して彼らと争うな
負けた国の人間は虐殺されても不平はいえない

「戦いの今日」

戦争の肉体的な厭らしさ
戦争で犬のように殺される屈辱
われわれ日本の青年は戦線から離脱する
人殺しのジャップお前は俺たちの同胞じゃない
死者の奢り・飼育 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (新潮文庫)より
4101126011
No.69
(5pt)

意識が無い死者、意識がある生者

「死者の奢り」を何度も読んでいるうちに、この小説では「意識」が重要なテーマになっているのではないかと思いました。

「死者の奢り」に登場する水槽の中の死体には意識が無く、完全な《物》になっています。

「死は《物》なのだ。ところが僕は死を意識の面でしか捉えはしなかった。意識が終った後で《物》としての死が始まる。うまく始められた死は、大学の建物の地下でアルコール漬けになったまま何年も耐えぬき、解剖を待っている」(p.18)。

その一方、生きている人間には、水槽の中の死体とは違って、意識があります。そして、意識がある生者には「粘液質の膜」があり、他者を拒絶します。

「あれは生きている人間だ。そして生きている人間、意識をそなえている人間は躰の周りに厚い粘液質の膜を持ってい、僕を拒む、と僕は考えた」(p.28)。

この小説では、水槽の中の死者たちが「意識がなく、条理に沿った存在」として描かれていると思いました。一方、「僕」や「女子学生」のような生者は「意識があり、不条理に巻き込まれていく存在」として描かれていると思いました。意識がないロボットはプログラムに忠実に動作しますが、意識に目覚めた人間は計算外の行動をしたり・心に壁を作ったりする…というのに似た現象が表現された小説だと私は解釈しています。
死者の奢り・飼育 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (新潮文庫)より
4101126011
No.68
(5pt)

かつてのベストセラー。若い人も読むべきだ。

大江の硬い、しかしみずみずしい独得な文体。時間かけても読むことで本当の純文学の味わいを得られる。
死者の奢り・飼育 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (新潮文庫)より
4101126011
No.67
(5pt)

読みやすくて好き

時間がある時に買って読んでみるといいと言われて、普段は全く本も小説も読まない人間でしたが買って読んでみました。
 文章もかたっ苦しくなくて読みやすく、内容がすんなり頭に入ってきました。少し暗いお話ですが、題材が特殊で個人的には好きでした。
死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫)より
B000JARR3Y
No.66
(5pt)

「えげつない」

大江健三郎氏は名前くらいしか知らなかったので、実際に読んでみたくて購入。

読了して一言で表すなら「えげつない」!

短編集と言え油断することなかれ。
どれもこれも凄まじいインパクトです。

しかしただのインパクトではなく、構築された上での描写ですからね。

もっと早くに出会いたい作家でした。
死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫)より
B000JARR3Y
No.65
(5pt)

まさに賛否両論、毀誉褒貶……当時の文壇を揺るがせた問題短篇群

悪いはずがない、大江健三郎初期短篇集。
 異常な題材、偏執狂的文体、これで大島渚や田原総一朗、武満徹、筒井康隆、井上ひさし、中上健次、村上龍、町田康、etc、錚々たる面子が圧倒された。 
 この凶暴極まりなく、ある意味で病的な想像力は、後の『日常生活の冒険』や『個人的な体験』、『万延元年のフットボール』、『洪水はわが魂に及び』という問題長篇群へと結実して行く。

 御本人がおっしゃる通り、“日本語の可能性を探求する実験”そのもの。
 『ピンチランナー調書』以降の作品群を指して、義兄の伊丹十三が、「実際、君の小説は、売れなくなって来ているじゃないか」という指摘もあってか、その壮大な試みは少しずつ萎んでしまうのだけれど。
死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫)より
B000JARR3Y
No.64
(5pt)

瑞々しい寓話的初期傑作集

"死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡みあい、頭を押しつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている"1957年発表の著者デビュー作『死者の奢り』そして当時23歳で最年少での芥川賞受賞となった1958年発表の『飼育』含む本書は実存主義、時代の閉塞感を感じる寓話的な初期作品集。

個人的には、著者の『万延元年のフットボール』を課題図書にした読書会を開催する事もあり、勉強のために手にとりました。

さて、そんな本書は『万延元年のフットボール』や『同時代ゲーム』といった、既読の長編作品–どちらかと言うと難解な作品から入った私にとっては、比較して【無機質かつ瑞々しく】とても読みやすい印象を受ける初期の短編、屍体処理室の不条理なアルバイトを描いた『死者の奢り』脊髄カリエスの少年たちの哀歌『他人の足』黒人兵と寒村の子供たちとの悲劇『飼育』外国兵の理不尽な仕打ちと傍観者への侮蔑を込めた『人間の羊』など6編が収録されているわけですが。

まず、やはり中では、デビュー作にして、屍体と妊婦など様々な形で生と死を繰り返し対比させた『死者の奢り』ありがちな黒人兵と子供たちの心の交流を描くどころか"黒人兵を獣のように飼う"と家畜として扱う『飼育』が【内容や主題にインパクトがあって】印象に残りました。(しかし屍体処理のバイトって、私が学生時代にも都市伝説的に話題になったのですが。実際どうなんでしょうか?)

また、残りの4作品『他人の足』『人間の羊』『不意の唖』『戦いの今日』についても。それぞれに敗戦後の日本社会の閉塞感や世界的な影響を与えていたサルトルの【実存主義の影響を強く感じる不条理さ】そして、後期の作品にも繋がるような【閉じられた集落の異質さ】が感じられると共に、次第に【作品が洗練されていく変化】も伝わってきて興味深かったです。

著者作を読み始める最初の一冊として、また敗戦後の昭和の空気感漂う作品や不条理な寓話的な短編が好きな人にもオススメ。
死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫)より
B000JARR3Y
No.63
(5pt)

希望を持ったり絶望したりする暇はない

東大新聞の懸賞小説で1等になった特徴のある顔立ちで色白の少年。学生の大江健三郎。
開高健とともに沈滞していた文壇に新風をもたらした存在。
23歳「飼育」で芥川賞を受賞。

「飼育」だけでなくどの短編もすばらしい。

以下 個人的に心に残ったところです。

「死者の奢り」

アルコール水槽に保存される解剖用の死体
妊娠した女子学生の下腹部の中
人間にちがいない液に浸る死と生

人を拒む生きている者より死者の世界に足を踏みいれたアルバイト学生の僕
生きている人間と話すのはなぜ困難なのか

「他人の足」

脊椎カリエス患者療養所の未成年者病棟
犬みたいに発情させられる看護婦の習慣

新聞が君たちのことを取り上げて報道するのは君たちが脊椎カリエスだからさ

自分の足の上に立っている人間はなぜ非人間的に見えるのだろう

「飼育」

敵の飛行機だ 敵がやって来た
黒人兵を獣のように飼う
僕らは衝撃のように黒人兵も笑うことを知る

戦争 血まみれの大規模な長い闘い 

黒人兵を焼くために集められた薪で書記は火葬されるのだろう

「人間の羊」

キャンプの外国兵から「羊」にされる日本人
人間に対してすることじゃない暴行

交番で不意の啞となる被害者
今度は「犠牲の羊」にされる

「不意の啞」

谷間の村へ入って来た外国兵を乗せたジープ
若い女たちは炭焼小屋へ待避し男たちは武器を畑の小屋へ運ぶ
決して彼らと争うな
負けた国の人間は虐殺されても不平はいえない

「戦いの今日」

戦争の肉体的な厭らしさ
戦争で犬のように殺される屈辱
われわれ日本の青年は戦線から離脱する
人殺しのジャップお前は俺たちの同胞じゃない
死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫)より
B000JARR3Y
No.62
(5pt)

意識が無い死者、意識がある生者

「死者の奢り」を何度も読んでいるうちに、この小説では「意識」が重要なテーマになっているのではないかと思いました。

「死者の奢り」に登場する水槽の中の死体には意識が無く、完全な《物》になっています。

「死は《物》なのだ。ところが僕は死を意識の面でしか捉えはしなかった。意識が終った後で《物》としての死が始まる。うまく始められた死は、大学の建物の地下でアルコール漬けになったまま何年も耐えぬき、解剖を待っている」(p.18)。

その一方、生きている人間には、水槽の中の死体とは違って、意識があります。そして、意識がある生者には「粘液質の膜」があり、他者を拒絶します。

「あれは生きている人間だ。そして生きている人間、意識をそなえている人間は躰の周りに厚い粘液質の膜を持ってい、僕を拒む、と僕は考えた」(p.28)。

この小説では、水槽の中の死者たちが「意識がなく、条理に沿った存在」として描かれていると思いました。一方、「僕」や「女子学生」のような生者は「意識があり、不条理に巻き込まれていく存在」として描かれていると思いました。意識がないロボットはプログラムに忠実に動作しますが、意識に目覚めた人間は計算外の行動をしたり・心に壁を作ったりする…というのに似た現象が表現された小説だと私は解釈しています。
死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫)より
B000JARR3Y
No.61
(5pt)

かつてのベストセラー。若い人も読むべきだ。

大江の硬い、しかしみずみずしい独得な文体。時間かけても読むことで本当の純文学の味わいを得られる。
死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育 (1959年) (新潮文庫)より
B000JARR3Y
No.60
(4pt)

これから大江が始まる

これこそ原点で始まり、書くべきして書ける ロリに死に何でもありの大江作品、読ませるし色褪せない そりゃノーベル賞も取るよ と思わせるテーマ取りと変態性、革新性 美しさより過激や斬新、過激などという言葉よく似合う 現代でも面白いし読みやすいから本好き高校生くらいにもお薦め
死者の奢り・飼育(新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 死者の奢り・飼育(新潮文庫)より
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