羊と鋼の森
評判
羊と鋼の森の評価:
3.87/5点 レビュー 563件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全763件 441〜460 23/39ページ
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羊と鋼の森の評価:
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
調律は、絶対音階を持ち、緻密な調整を行う特別な仕事という印象を持っていました。子どもの頃、音楽的な素養もないと思われる父から聞かされていたのを思い出しました。父の言葉には、その職業が特別な才能を持つ人のみ就くことができる特別な職業だというニュアンスが含まれていました。
そんな調律師の世界を、透明感溢れる文体で描いたのが、この宮下奈都(みやしたなつ)さんの、「羊と鋼の森」です。
宮下さんは、まるでガラス箱の中に登場人物を入れて、それを外から覗いている様な透明感と空気感でこの物語を書いていました。主人公「外村(とむら)」も、自然の中で生活して来た純粋無垢の青年として描かれています。
先に「ガラス箱の中」と表しましたが、宮下さんの文が客観的で感情移入出来ないという意味ではありません。主人公の内面を覗くという意味ではガラスの外に居ながら主人公と同化する様な体験を得たと言った方がピッタリかもしれません。
調律という「試み」。敢えてここでは「仕事」と言わずに「試み」と言いたいですね。その「試み」の奥深さを表すには、この様に表す以外方法がないのではないかと思わわれる透明感のある秀逸な文章です。
この小説は、調律というものの神髄を、純粋無垢な主人公外村(とむら)青年の考えと彼を取り巻く様々な登場人物との会話によって、一つずつ一つずつ深めていこうとする「試み」でもあります。「音」、「音楽」というものを「よくぞここまで描き出そうとしましたね」と拍手を送りたいくらいです。
「『なるべく具体的なものの名前を知っていて、細部を思い浮かべることができるっていうのは、案外重要なことなんだ』《略》『でもさ、外村、お客さんにチーズみたいな音に調律してくださいって言われたらどうする』《略》『まずは、チーズの種類を確認します。ナチュラルか、プロセスか。それから熟成の具合を尋ねると思います』《略》『要するに、好みの問題なんだ。ピアノにどんな音を求めるのか、それはお客さんの好み次第だよ』ようやく話がつながった。《略》『やわらかい音にしてほしいって言われた時も、疑わなきゃいけない。どのやわらかさを想像しているのか。必要なのはほんとうにやわらかさなのか。《略》具体的にどんな音がほしいのか、イメージをよく確かめたほうがいい』」
弦を叩くハンマーの先端が羊の毛の固まりで出来ていて、それを針でつついて柔らかくするだけで、ピアノのキャスターの向きを変えるだけで、部屋のカーテンやテーブルクロスの有無だけで音が変わるなど、調律の奥深さ、難しさがびっしりと詰まっています。
2016年「本屋大賞」受賞作ですが、この透明感のせいか賛否もある様です。でも、これは評価に違わぬ傑作だと思います。宮下奈都さんの他の本も読みたくなりました。