ゲームの王国
評判
ゲームの王国の評価:
3.96/5点 レビュー 74件。 C ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全96件 21〜40 2/5ページ
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ゲームの王国の評価:
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時系列的に間隔が空いているという以上に、まるで別の物語のようにすら感じられる。
本書の二大主要人物と思しきムイタックとソリヤにしてからが、もはや別人に思えるレベル。
上巻で神童のごとき冴えを見せたムイタックは下巻では小難しい理屈をこね回す気難し屋の大学教授になっているし、他人の嘘を喝破すること鬼神のごときソリヤも、汚れ仕事もいとわない現実主義的な野党政治家になっている。
束の間の遊戯で直接対決したときのあの闊達な2人との、落差が激しい。
いや、落差というよりは「とても些細で微妙な差なんだけど、決定的に違ってしまった」というべきか。
全くの別人というわけでもないが、神算鬼謀、深慮遠謀という言葉がぴったりだった2人が、なんというか、ややもすると凡庸で冴えない大人になったと思うのは気のせいだろうか。
どちらも社会的には成功しているし、だんぜん優秀ではあるのだが。
また、上巻でひたすら描写されたクメール・ルージュの話が丸々過去のことになって置き去りにされていて唐突な気がするし、そもそもソリヤの父と思しきポル・ポトの末路に至ってはほとんど何の言及もない。
「上下巻」とはいうが、もしかして中巻を読み飛ばしたのか?と疑問が生じるレベルである。
まあ、本書のテーマのひとつが「改竄される記憶」なのだろうから、このぐらいの落差は作者によって意図的に選び取られた展開なのかもしれないが。
また、得てして神童というものは凡庸な大人になっていたりするものである。
(本書の二人は凡庸という評価からは程遠いが)
さて本書は、全体としてはおそらく「人生」とか「幸福」とか「生きることの意味」だとかいった、かなり形而上学的な諸問題を、非常にユニークな仕方で論じているようにも思える。
その点で、この物語はどんなにケチをつけようが、その最終的な価値じたいは決して毀損され得ない。
そもそも人生に意味などというものはないけれど、しかし人はそこにそれがあると錯覚しないことには生きていけない存在である。
そのありもしない「意味」というものをだまし絵のように浮かび上がらせるのが「ゲーム」や「ルール」といったこの世の仕組みないし構造であるとするなら、ムイタックはそのゲームやルールをメタ的に思考し、最適解となるような新しいゲームの在り方を模索試行し続けていて、ソリヤはむしろ既存のゲームにどっぷりと身を置き続ける中で、それでも実現可能な最善の選択をしようと藻搔いていたように読めた。
このとことん分かり合えたかもしれない才能ある二人が、運命のいたずらによって近現代史上の加害者と被害者に分かたれてしまい、以後その偶発性がずっと二人の人生を呪縛し続けるという基本構図は見えるのだが、なんというかその構図を回収する「佳境」というか「ドラマ性」が決定的に欠けている。
下巻ではようやくこの二人がゲームソフト上で対決するのだが、正直上巻における遊戯合戦の方が、才気あふれる子供が智略の火花を散らし合っている感じがしてワクワクした。
年のいったゲーマー同士が対戦ゲームでガチャガチャやってるのを見せられても、あまり盛り上がれない。
記憶の糸をたどり、それを心から楽しむことでキャラが強くなるという非常に特異なゲームシステムではあるが、やっているのはいくら魔法アリとはいえたんなるFPSの類である。
しかもその後に待っていたはずの肝心の現実での直接対決は、カンの凶行によってついに実現しなかった。
なんという肩透かしだろうか。
むしろ、個人的にはこのカンとWPやラディーとの対決ももっと読みたかったし、そうした展開の矢先に頭のおかしいヘモグロビン医師が話の腰を折ってしまうのも、どこかポストモダン小説のようで頂けない。
これだけの巨大質量、周囲の時空が歪みかねないレベルの小説を書いた作者に対してはまことに無礼千万なのだが、正直粗削り過ぎるのでもっともっと練り直して欲しいとすら感じる。
あとがきでは「9割削って1割残った」そうだが、その作業をもっともっと突き詰めることができるのではあるまいか。
この本の射程というか面白さは、まだまだこんなもんではないように思われる。