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ルルージュ事件



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【この小説が収録されている参考書籍】
ルルージュ事件

ルルージュ事件の評価: 4.50/5点 レビュー 8件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全8件 1~8 1/1ページ
No.8:
(5pt)

大事なのは「物語」

いつか読もうと思って購入したものの、ページを開くたびに上下2段組のレイアウトにひるみ、本棚に置くこと幾年月。このまま永遠に放っておくわけにもいかず、えいやっと思い切って読み始めたら…あれれ、意外にもスラスラ読めて、しかも面白い。案ずるより産むが易しであった。

本書『ルルージュ事件』(1866年)は、世界初の長編ミステリとして知られている。そういえばウィルキー・コリンズの『月長石』(1868年)も最初はその長さにためらったが、読んでみると面白かった記憶がある。ということは、ミステリは理屈をどうこう言い始めてから、ちっぽけなものになってしまったのではないか、というようなことも思う。

1860年代にはディケンズの『大いなる遺産』があり、ユーゴ―の『レ・ミゼラブル』があり、いずれもミステリではないが圧倒的に面白い小説である。僕は、本書もそれらと同じ感覚で楽しんだ。もちろん殺人事件が物語の中心にあり、推理的な要素が入ってくるので長編ミステリ第1号と呼ばれるわけだが、そこが本書の面白さのポイントではあるまい。

一つの殺人事件を発端に、思いがけずさまざまな人がつながり、それぞれの喜怒哀楽がタペストリーのように織り成される。秘められた過去が暴かれたり、恋に身を焦がしたり、運命に翻弄されたりする。そういうドラマがよく描けているからこそ面白いのである。よくできたトリックとかロジックとか意外な犯人とかどんでん返しとか、そんなものではなく、大事なのは「物語」なのだと思う。
ルルージュ事件Amazon書評・レビュー:ルルージュ事件より
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No.7:
(4pt)

真犯人はだれかというところではたしかにミステリ小説

1841年、アメリカにあってエドガー・ポーが雑誌に載せた短篇「モルグ街の殺人」、それが訳者もいうように「近代ミステリの開幕を告げる記念碑的作品」と通常見なされています。

 本書『ルルージュ事件』は、フランスの小説家エミール・ガボリオ(1832-73)の作品で、1866年に新聞連載されたものですが、こちらは訳者によれば「世界初の長篇ミステリ」となるようです。

 まあ19世紀におけるこうしたミステリという物語ジャンルの誕生には、犯罪はじめさまざまな事件を報道する新聞や雑誌などジャーナリズムの発達、そしてその新聞や雑誌で紙面を埋め、広く読者を獲得しかつ長く購読させてゆくための面白い読み物の需要、いっぽうで警察や司法など社会の治安にかかわる国家装置の安定などさまざまな要因があったものと想像されます。

 最初に言えば、この作品をまずはおもしろく読みました。
 評者は、ガボリオというと未読ながらかつて旺文社文庫で出ていた『ルコック探偵』(松村喜雄訳)を思い出し、そのことから彼の小説では探偵ルコックが活躍するものだとばかり思っていました。
 しかしこの『ルルージュ事件』ではたしかにそのルコックは登場することは登場しますが、まったくの端役にすぎず、おもに警察に協力する素人探偵タバレ(渾名は「解明する」という意味の「チロクレール」Tire-au-clair)と予審判事ダビュロンが犯罪捜査を進めていく者になっています(小説を読むと、この予審判事juge d'instructionというのは、警察を使って証拠を収集したり被疑者に訊問したりする強い権限をもっていたものと想定されます)。
 いま述べたタバレは、物語の最初のあたりで登場し、殺人事件のあった犯行現場を見てデュパンやホームズ並みの推理をまず即座に披露し、読者はおぉっとなるのですが、そのあとしかし犯人推理では迷走してしまいます。しかもそのまま最後まで事件解決の主役になることはありません。

 また、物語展開上、事件関係者と捜査関係者にいくつかかなり密な人間関係がすでに設定されてあって、登場人物間のつながりにおいてあまりに偶然的すぎるものが利用されている、ようはご都合主義があるともいえ、それが、いかにも現実でもありそうだという物語の本当らしさをいくらか損なっているといえなくもありません。
 それはこの小説では登場人物がきわめて少ないということでもあるのですが、20世紀の推理小説家クリスティなどはむしろ登場人物が少ないと犯人は限られてきてすぐに分かってしまうのを避けるため、逆に怪しい人物を事件周囲に(必要以上に?)多数配置して読者をミスリードするようにしていたかと思います。

 事件の背景にある赤ちゃんのすり替えも古来よくあるプロットといえるかもしれません。また、ややメロドラマ的な話がプロットにからまっているのも19世紀小説ならではかもしれません。

 なお、興味深かったのは、最近読んだばかりの、イギリスのウィルキー・コリンズ(1824-1889)が書いたサスペンス小説『バジル』(1852年)において、死に際にある人物が最後に洩らすことばは証拠性をもつ真実として扱われるという記述があり、この『ルルージュ事件』においても、やはりある人物が死に行く際、「人殺し!」と言ったあと最後に犯人の名前をそえようとし、そしてそれが真実を明かす証拠になりえた、という話が出てきます(しかしどちらの小説でも当該人物は、鍵となるもっとも重要なポイントを口にせぬまま、さきに事切れてしまう)。
 今わのきわに洩らされることばには真実があり証拠性が担保されるという考えにはたぶんキリスト教的な背景があるのかもしれませんし、また、意味や使い方が代わってしまっていますが、現代推理小説における重要な物語アイテムのひとつであるダイイング・メッセージにつながるものなのかもしれないと思った次第。

 巻末の訳者解説によれば、日本でガボリオのこの小説は早くも明治21年(1888)に黒岩涙香の手によって『人耶鬼耶(ひとかおにか)』の題で、英訳書からの重訳でしたが日本語にされていたとのことです。ただし黒岩涙香のその種の翻訳ものについてよく知られているように、それは今で言うような翻訳ではなく、内容が部分的にカットされ、登場人物名も日本人名にするなどした翻案というべきものだったようです。また、ガボリオのその他の代表作も抄訳ながら戦前すでにいくつも翻訳出版されていたことを訳者はあきらかにしています。

 最後になりましたが、翻訳は、あたかもこの小説がもともと日本語で書かれていたかのような自然さがあって、たいへん読みやすいものでした。
ルルージュ事件Amazon書評・レビュー:ルルージュ事件より
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No.6:
(5pt)

面白かった。

事件にかかわる登場人物にそれぞれ事情があって、人情が絡んでくるお話です。昔の人は、こういう上流階級のスキャンダラスな物語を楽しんだんだろうなあと。
長々と心情を語る場面もあって、ちょっと退屈かもしれないが、終わり近くになるとだんだん手に汗にぎるような展開に。そしてびっくりさせられることも。エンターテイメントとしては十分です。
長編だから、ゆっくり読んでいるうちに、だんだん当時の雰囲気になじんでこの世界観に浸れるようになりました。
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No.5:
(5pt)

恋愛小説だったかも?

何しろ世界初めての長編推理小説とのことで、かれこれ200年も前の小説ですから古めかしくて退屈するかもと思ったのですが、とんでもない、当時の社会の様相もよくわかり、大変面白く一気に読み終わりました。
ひょっとしたら、恋愛小説だったのかも?
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No.4:
(4pt)

綺麗

とても状態も良く、綺麗でした。なかなかリーズナブルで購入出来てよかったです。
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No.3:
(4pt)

祝完訳、世界初長編推理小説

他の方も書かれている通り、世界初の長編推理小説であり、完訳も日本では初、という初ものずくしの小説であります。よって歴史的価値や資料的価値がとかく大きくクローズアップされがちですが、私個人としては今2010年代に読んで面白いかという観点で読んでみました。結果は今読んでも面白く、現代の推理小説として比較しても遜色なく評価されうる作品と思いました。更にはこの当時の社会風俗的な部分も興味深く期せずして資料的価値も高く評価されうる小説と思いました。特に作品内の登場人物の合理的、論理的であろうとする所に感銘を受けました。この時代でもやはり先鋭的な人は直観や偶然よりも合理主義的であったというところは今を生きる我々まで引き継がれていると思いたいです。今の推理小説と比べるといささか物足りない所もありますが、原著刊行から150年たっても面白く読めるのは相当凄いことに思えます。推理小説として、当時の世相を知るための風俗小説として今後も読み継がれていくのではないかと思いました。
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No.2:
(5pt)

推理小説史上記念すべき作品

まさか、出るとは思いませんでした。なんせ昭和10年〜22年まで抄訳や翻案しか出版されず、ほとんど完訳されていなかった。だから、古本屋を見て回っても先ず御目に書かれなかった。ネットでも3万を越えて取引されるほどマニアにはたまらない作品の一つです。お金の無い私にとって2625円はまさにお買い得品だった。あのエドガー・アラン・ポーが「モルグ街の殺人」を1841年に発表してその後24年後に発表された世界最初の長編推理小説と聞けばマニアで無い人もこの価値をわかってもらえるでしょうか。コナンドイルの「緋色の研究」にもルコックの名がポーのオギューストデュパンと並んで紹介されています。そういった意味で今回の完訳は推理小説の歴史を知る上で資料的価値もあるのです。今回の国書刊行会の業績に感謝すると同時にこれからも消え去った推理作家の完訳に力を入れてほしいです。とここまでマニアックな感じのレビューになってしまいましたが、推理小説マニアには聖書に近い作品だと分ってほしいです。
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No.1:
(4pt)

この長編はメロドラマかしら?/産みの親より育ての親、世間の人はそう言うが・・

世界最初の「短編」探偵小説は?ポーの「モルグ街」。では、世界最初の「長編」探偵小説は?ガボリオの「ルルージュ事件」。
エミール・ガボリオ(仏)。彼の作品及び彼のシリーズ探偵であるルコックは19世紀当時、世界中で人気を博しました。具体的な例をいくつか挙げると・・ロシアでは、トルストイが彼の愛読者であり、チェーホフは刺激されたかいくつかの探偵小説を手がけています。オーストラリアでは、ガボリオに触発されたファーガス・ヒュームが当時の大ベストセラー「二輪馬車の秘密」を発表。日本でも、黒岩涙香らによって翻案されたルコック物が好評だったようです。
探偵小説の歴史を見ても、行動型探偵のルコック刑事のキャラクターはクロフツの「フレンチ警部」やシムノンの「メグレ警視」らに受け継がれています。
さて、「ルルージュ事件」。1862年(「ああ無情(レ・ミゼラブル)」の出版された年)3月6日、某所でルルージュなる老婆の殺害死体が発見された。これには、三十年以上前にある名家で起きた赤ちゃんのすり替え事件が関っていて・・。(うーむ、今じゃ昼ドラかケータイ小説でもなけりゃお目にかかれない話ですね?)
本作でのルコック刑事は登場はすれどもただの脇役で、代わってこの事件に立ち向かうのは彼の師匠である警察の密偵・タバレ老人(こん畜生が、尻を思いっきり蹴飛ばしたくなるような天災型素人探偵)、予審判事のダビュロン(この方が本作で一番、切ない役回りかもしれません。嗚呼、クレール・・)、パリ警視庁のジェヴロール(このオッサン、どう見てもレストレード役と思いきや)です。この三人がそれぞれの立場で真相を追って行くのです。私が本作で特に驚かされた点は三つ。タバレの披露する演繹帰納(?)推理(これがルコックやホームズに受け継がれていったのですね)、当時すでに「アリバイ」という言葉があったこと、そして本作がルコック物で多用された二部構成(第1部「事件編」第2部「過去編」)でなかったこと。事件の「真相」は、終盤まで伏せられています(もっとも、分かる人にはバレバレかも。作者も隠すことにはあまり関心がないようだし)。
謎解きのみを期待する方に本書は退屈かもしれません。しかし、クイーンの「黄金の二十」や乱歩の「古典ベスト・テン」に挙げられているこのマイルストーン、一読の価値は確かにあると思います。どうぞ、19世紀フランスのロマン溢れるお涙頂戴劇(??)を堪能して下さい。
ルルージュ事件Amazon書評・レビュー:ルルージュ事件より
4336047561

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