火星のタイム・スリップ

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評判

火星のタイム・スリップの評価:

4.31/5点 レビュー 13件。 C ランク

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平均点4.31pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全39件 21〜39 2/2ページ
No.19
(5pt)

やっぱフィリップ・K・ディックでしょ。

未来の火星植民地では、水不足にかこつけて水利労働組合が実権を握って居た。組合長のアーニイ・コットは権力者として君臨していたが、国連の火星再開発の投機の情報を入手するのが遅かったために、地位を失いかけない事態に陥った。そこで、偶然発見した時間を操れるマンフレッドという少年を使って、過去を取り戻そうと画策する。。。。。内容だけ書けば、ありふれたSFみたいだが、悪夢SFというものがあるとすれば、まさしくこれは悪夢そのもの。人間の現実認識と虚構のはざまを描き出したSFを超えたSFです。ぜひ読んでみて下さい。
火星のタイム・スリップ (1980年) (ハヤカワ文庫―SF) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1980年) (ハヤカワ文庫―SF)より
B000J87BN2
No.18
(5pt)

ディック本領発揮、文句無しの最高傑作

これは凄いSF小説だ。どちらかと言えば、自閉症を扱った重ぐるしい展開だけに、ラストはどうなるかハラハラしていたが、ディック一流の、大どんでん返しが鮮やかに決まり、ホットしたと言うのが正直な感想である。鬼才ディックには、毎回驚かされるが、今回は本当に最高傑作と言えるでしょう。
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.17
(5pt)

ディックの最高傑作…、と思います。

フィリップ・K・ディックは、現代の多くの作家に影響を与えています。日本のSFコミックにも。『攻殻機動隊』なんかね。そして、これらのコミックは、アメリカのSF小説に影響。ウィリアム・ギブスンのようなね。

「SFで好きな作品は?」と聞かれた時はいつも『火星のタイム・スリップ』と答えることにしている。しかし情けないことに、ずっう~~~と以前に読んだので、内容をあまり覚えていない。ただ、「とても感動した」ということだけ。が、とても深く深く心に残っている。で、もう一度読み直してみた。

この本のあらすじなんて書かない方が良いだろうと思う。ディックの作品のあらすじなどを書くととてもハチャメチャなコミック本のようなものになってしまうからだ。彼の作品にはたいてい「精神的に問題がある」人々が出てくるが、この本も「例にもれず」である。

わたしは、彼の伝記本も持っている。伝記の類はキライだが、英語の勉強と思って(いくら英語の勉強でも興味あるものを読みたいよね)、購入した。その本の作者によるとディックは双子として生まれたようだ。彼の双子の妹は、幼い時に死んでしまった。ディックの方が健康で妹の方は病弱だったのだ。

彼の母親は、母親として未熟だったようで、ディックの方を大切にした。そのため、妹は衰弱死したらしい。ディックはそのことを幼い頃から自分のせいだと思い始めた。彼の作品にはよく「生まれなかった双子の兄妹」が出てくる。生まれなかった双子はもう一方の身体の中に宿っている。映画『トータル・リコール』にも出てきたように。そんなこともありディックは精神的に問題を抱えるようになった。最後にはドラッグ中毒で亡くなっている。作家によくある話ではあるが。

彼の作品には同様に精神にダメージを受けた人々が書かれている。というか、メインは大抵問題を抱えた人々だ。分裂病、自閉症、偏執、多幸性などなど。『アルファ系衛星の氏族たち』では、地球バーサスアルファ星系の星間戦争の後、アルファ系衛星に取り残された病院の、精神疾患を持った人々が活躍するのだ。

『火星のタイム・スリップ』では、自閉症の10歳の少年が重要な役割を果たす。その彼の最後は涙なしには語れない、なんて。わたしも泣いてしまいましたよ~~~、「歳のせい」もあると思うが。

ディックが言いたいのは、「彼らこそ正常な人々である」ということ。つまりこの自然界からかけ離れてしまったストレスフルな人間社会では、「正常な人」なら正常な生活を送ることは困難だということ。こんな「人間らしくない」生活をなんの困難もなしにスムースに送れる人こそ「正常ではない」ということ。そんなところだと思う。

この本に「精神病とは必要にせまられてなされた発明である。」という一節がある。この社会のシステムに同調できない人々を「精神病」という言葉に押し込めたのだ。

火星には「ブリークマン」という原住民がいる。例の如く、人間は彼らを差別する。しかし、この誰にも心を開かない自閉症の少年は、ブリークマンだけを「美しい人間」とみなす。ブリークマンのこんな会話がある。

「この子の考えは、わたしには、プラスティックのようにお見通しです。この子にも、わたしの考えが手に取るように見えるでしょう。わたしたち、二人とも囚人です。ミスタ、敵地にとらえられた。」

フィリップ・K・ディックは彼の伝記によると、「純文学の作家として認めてもらいたい」という願望を生涯持ち続けた。しかし、彼の作品はまぎれもなく「現代文学」だ。わたしは、そう評価いたしますよ。しかし、もうディックには聞こえないかあ。
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.16
(5pt)

ディックらしい作品

巻き込まれ型の主人公は、困難な中でも最良の道を見つけようと努力します。救われる人もあり救われない人もあり、混沌はすっきりとは解決しません。
自閉症、起死回生、異星人・・・ディックの好む自らを投影したようなそんなガジェットが散りばめられた本作品は、いかにもディックらしい作品です。
再読に耐えることは間違いなく、破たんの少ないところも作品の完成度を高めています。
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.15
(5pt)

人間はいつも選ぶことの出来る場所が二つある。我が家と,他人のいる他の世界と

「ディック自作を語る」によると,質の面でも複雑さの面でも文学的価値の面でも,
評判の良かった「高い城の男」の次のレベルをめざした作品で,とても重要な本だと思っていたのに
まともな扱いを受けなかった,という。
 個人的には,B級SFっぽいタイトルで損をしているのではないかと思います。
本作品が例えば「パーマーエルドリッチの三つの聖痕」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
「流れよ我が涙,と警官は言った」のようなクールなタイトルであったならば,また違った評価を受けたかも知れません。
 しかし,間違いなく,本作品はPKディックの最高傑作です。
 この作品執筆当時,ディックは異常な精神状態に興味をひかれ,精神病に関する本を山ほど読んでいたという。
 そして,精神病の生存的価値,実用的有用性について検討し,精神病患者の現実,時間感覚が我々とは違うのではないか,
という考えのもとに,10歳の自閉症児マンフレッドの内的宇宙が描かれています。
 多数の魅力ある登場人物の心理描写と作品のプロットが見事に融合し,
ラストまで緊張感が途切れないディック作品の頂点を極めている本作品は,もっと広く読まれるべき作品だと思います。
 
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.14
(3pt)

火星は砂漠だ

ディック、1964年の作品。高評価を得た「高い城の男」レベルの作品をもう一度書こうとして意欲を持って書き上げたが、発表当時には全く反響が無くてディックは絶望に突き落とされたという。しかし今では彼の作品群の中でもベストと押すファンも多い。いつもながらディック流の奇妙なSF設定だ。自閉症患者は時間感覚に欠陥があり普通の日常的な現象の速さにもついていけない。故に時間に対して特殊能力を持った者が存在するというようなアイデア。火星にいる先住民はまるでネイティブ・アメリカンのような描き方をしている点も変わっている。少年は他者とは全くコミュニケート出来ず、時おり発するのは意味不明な言葉を繰り返すだけ。「ガビッシュ!」「ガブル!」〜そんな幼児語のような言葉が実はこの物語では実に重大な意味を秘めているというストーリー設定が絶妙だ。その他、タイム・トリップを読者にも体験させるような仕掛けもされていて、やはりディックはこの作品を趣向凝らして書き上げたという労力が感じられる。
 ラスト、感動的などんでん返しがあるのだが、自分はホラー的な感触を感じてしまいちょっとぞっとした。
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.13
(5pt)

シュールな火星だ

私にとってディックのベストです。
火星殖民の話ですが、この火星って、アメリカ開拓の延長線上にある、ウェストコーストのちょっと先っていう感じですよね。これ凄いシュール、もう以降の人には書けないよ。技術には完全に無頓着、舞台はLA郊外の住宅地としか思えない(この植民地は砂漠に作られたLAと似ている)。登場人物たちは、火星のテラフォーミングなどにはまったく関心がなく、彼らが心配しているのは、障害児の問題、仕事のこと(火星で食料品の家庭訪問販売員って凄いよこれ)、浮気のこと、だものね。本の主題は例の如く、自閉症の子供が感じる世界が現実世界を侵食していく話ですが、そんなのディックのお決まりのストーリーで全然驚かない、むしろこの火星植民地で展開されるソープオペラという舞台設定の方が衝撃が大きい。いやー、このシュールさ、ディックの中でもピカイチです。
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.12
(3pt)

悪夢の世界

不毛と荒廃と絶望に覆われた火星植民地。きれいな水は手に入らず、新鮮な自然食品も地球からの密輸に頼っている状態。そしてスクールによる徹底的な刷り込み教育。精神病患者が激増し、火星で生まれてくる子供の3人に1人は自閉症になって現実と関わろうとしない。

 火星一の実力者である水利労組組合長のアーニイ・コットは国連によるFDR山の開発を嗅ぎつけ、土地投機を企てる。しかし、それには開発地区の正確な位置をつかんでおく必要がある。アーニイは自閉症の子供に予知能力があると考え、マンフレッド・スタイナーという少年を引き取ったが、少年には想像を絶する悪魔的能力が眠っていた・・・・・・

 数あるディック作品の中でも特に難解な作品。はっきり言って私にもよく分からない。

 ただ言えることは、自閉症患者のマンフレッドはディック作品に頻出するアンドロイドと通じるところがあるということだ。それは、感情移入能力の欠如である。人間性を鋭く問うメタファーとしてマンフレッドは存在しているのだ。

 あと1つ言えることがある。死の匂いの立ちこめる、この悪夢の世界は、本当に怖いということだ。
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.11
(2pt)

サラリーマンっぽいSF

ディックの魅力のひとつは、主人公がサラリーマンなところだと思う。

悪役は会社の会長で、主人公は毎日会社に行かなくちゃいけない。

そんな庶民っぽさが、ディックの現実性であり優しさだと思う。

そんなディックのサラリーマンっぽさが最も発揮されてる長篇が、これ。

読みやすくて面白いが、独創性や爆発力はない。
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.10
(5pt)

やっぱフィリップ・K・ディックでしょ。

未来の火星植民地では、水不足にかこつけて水利労働組合が実権を握って居た。組合長のアーニイ・コットは権力者として君臨していたが、国連の火星再開発の投機の情報を入手するのが遅かったために、地位を失いかけない事態に陥った。そこで、偶然発見した時間を操れるマンフレッドという少年を使って、過去を取り戻そうと画策する。。。。。内容だけ書けば、ありふれたSFみたいだが、悪夢SFというものがあるとすれば、まさしくこれは悪夢そのもの。人間の現実認識と虚構のはざまを描き出したSFを超えたSFです。ぜひ読んでみて下さい。
火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (1966年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
B000JA9KMU
No.9
(5pt)

ディック本領発揮、文句無しの最高傑作

これは凄いSF小説だ。どちらかと言えば、自閉症を扱った重ぐるしい展開だけに、ラストはどうなるかハラハラしていたが、ディック一流の、大どんでん返しが鮮やかに決まり、ホットしたと言うのが正直な感想である。鬼才ディックには、毎回驚かされるが、今回は本当に最高傑作と言えるでしょう。
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
4150103968
No.8
(5pt)

ディックの最高傑作…、と思います。

フィリップ・K・ディックは、現代の多くの作家に影響を与えています。日本のSFコミックにも。『攻殻機動隊』なんかね。そして、これらのコミックは、アメリカのSF小説に影響。ウィリアム・ギブスンのようなね。

「SFで好きな作品は?」と聞かれた時はいつも『火星のタイム・スリップ』と答えることにしている。しかし情けないことに、ずっう~~~と以前に読んだので、内容をあまり覚えていない。ただ、「とても感動した」ということだけ。が、とても深く深く心に残っている。で、もう一度読み直してみた。

この本のあらすじなんて書かない方が良いだろうと思う。ディックの作品のあらすじなどを書くととてもハチャメチャなコミック本のようなものになってしまうからだ。彼の作品にはたいてい「精神的に問題がある」人々が出てくるが、この本も「例にもれず」である。

わたしは、彼の伝記本も持っている。伝記の類はキライだが、英語の勉強と思って(いくら英語の勉強でも興味あるものを読みたいよね)、購入した。その本の作者によるとディックは双子として生まれたようだ。彼の双子の妹は、幼い時に死んでしまった。ディックの方が健康で妹の方は病弱だったのだ。

彼の母親は、母親として未熟だったようで、ディックの方を大切にした。そのため、妹は衰弱死したらしい。ディックはそのことを幼い頃から自分のせいだと思い始めた。彼の作品にはよく「生まれなかった双子の兄妹」が出てくる。生まれなかった双子はもう一方の身体の中に宿っている。映画『トータル・リコール』にも出てきたように。そんなこともありディックは精神的に問題を抱えるようになった。最後にはドラッグ中毒で亡くなっている。作家によくある話ではあるが。

彼の作品には同様に精神にダメージを受けた人々が書かれている。というか、メインは大抵問題を抱えた人々だ。分裂病、自閉症、偏執、多幸性などなど。『アルファ系衛星の氏族たち』では、地球バーサスアルファ星系の星間戦争の後、アルファ系衛星に取り残された病院の、精神疾患を持った人々が活躍するのだ。

『火星のタイム・スリップ』では、自閉症の10歳の少年が重要な役割を果たす。その彼の最後は涙なしには語れない、なんて。わたしも泣いてしまいましたよ~~~、「歳のせい」もあると思うが。

ディックが言いたいのは、「彼らこそ正常な人々である」ということ。つまりこの自然界からかけ離れてしまったストレスフルな人間社会では、「正常な人」なら正常な生活を送ることは困難だということ。こんな「人間らしくない」生活をなんの困難もなしにスムースに送れる人こそ「正常ではない」ということ。そんなところだと思う。

この本に「精神病とは必要にせまられてなされた発明である。」という一節がある。この社会のシステムに同調できない人々を「精神病」という言葉に押し込めたのだ。

火星には「ブリークマン」という原住民がいる。例の如く、人間は彼らを差別する。しかし、この誰にも心を開かない自閉症の少年は、ブリークマンだけを「美しい人間」とみなす。ブリークマンのこんな会話がある。

「この子の考えは、わたしには、プラスティックのようにお見通しです。この子にも、わたしの考えが手に取るように見えるでしょう。わたしたち、二人とも囚人です。ミスタ、敵地にとらえられた。」

フィリップ・K・ディックは彼の伝記によると、「純文学の作家として認めてもらいたい」という願望を生涯持ち続けた。しかし、彼の作品はまぎれもなく「現代文学」だ。わたしは、そう評価いたしますよ。しかし、もうディックには聞こえないかあ。
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
4150103968
No.7
(5pt)

ディックらしい作品

巻き込まれ型の主人公は、困難な中でも最良の道を見つけようと努力します。救われる人もあり救われない人もあり、混沌はすっきりとは解決しません。
自閉症、起死回生、異星人・・・ディックの好む自らを投影したようなそんなガジェットが散りばめられた本作品は、いかにもディックらしい作品です。
再読に耐えることは間違いなく、破たんの少ないところも作品の完成度を高めています。
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
4150103968
No.6
(5pt)

人間はいつも選ぶことの出来る場所が二つある。我が家と,他人のいる他の世界と

「ディック自作を語る」によると,質の面でも複雑さの面でも文学的価値の面でも,
評判の良かった「高い城の男」の次のレベルをめざした作品で,とても重要な本だと思っていたのに
まともな扱いを受けなかった,という。
 個人的には,B級SFっぽいタイトルで損をしているのではないかと思います。
本作品が例えば「パーマーエルドリッチの三つの聖痕」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
「流れよ我が涙,と警官は言った」のようなクールなタイトルであったならば,また違った評価を受けたかも知れません。
 しかし,間違いなく,本作品はPKディックの最高傑作です。
 この作品執筆当時,ディックは異常な精神状態に興味をひかれ,精神病に関する本を山ほど読んでいたという。
 そして,精神病の生存的価値,実用的有用性について検討し,精神病患者の現実,時間感覚が我々とは違うのではないか,
という考えのもとに,10歳の自閉症児マンフレッドの内的宇宙が描かれています。
 多数の魅力ある登場人物の心理描写と作品のプロットが見事に融合し,
ラストまで緊張感が途切れないディック作品の頂点を極めている本作品は,もっと広く読まれるべき作品だと思います。
 
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
4150103968
No.5
(3pt)

火星は砂漠だ

1994年。人類の植民地となった火星は深刻な水不足が続いており、コロニーに住む移民たちは国連が配給する水を頼りに生活していた。だが、水利労組組合長アーニー・コットはその貴重な水を思うままに使える程の絶大なる権力を握っていた。最近、アーニーには気になる噂を聞いた。火星の砂漠にある未開発の土地が高値で売買されているらしい。どうやら国連では火星の大規模な再開発を計画していて、既に地球の投機家たちが不動産投資に動き始めていた。莫大な利益を得るチャンスを逃してはならない。アーニーは途方も無い計画をもくろむ。ある自閉症の少年が時間を超越する特殊能力を持っているという事を知り、少年を利用して過去へ戻り今や宝の山となった火星の荒地を自分が先に買い占めようと考えたのだが。

 ディック、1964年の作品。高評価を得た「高い城の男」レベルの作品をもう一度書こうとして意欲を持って書き上げたが、発表当時には全く反響が無くてディックは絶望に突き落とされたという。しかし今では彼の作品群の中でもベストと押すファンも多い。いつもながらディック流の奇妙なSF設定だ。自閉症患者は時間感覚に欠陥があり普通の日常的な現象の速さにもついていけない。故に時間に対して特殊能力を持った者が存在するというようなアイデア。火星にいる先住民はまるでネイティブ・アメリカンのような描き方をしている点も変わっている。少年は他者とは全くコミュニケート出来ず、時おり発するのは意味不明な言葉を繰り返すだけ。「ガビッシュ!」「ガブル!」〜そんな幼児語のような言葉が実はこの物語では実に重大な意味を秘めているというストーリー設定が絶妙だ。その他、タイム・トリップを読者にも体験させるような仕掛けもされていて、やはりディックはこの作品を趣向凝らして書き上げたという労力が感じられる。
 ラスト、感動的などんでん返しがあるのだが、自分はホラー的な感触を感じてしまいちょっとぞっとした。
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
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No.4
(5pt)

シュールな火星だ

私にとってディックのベストです。
火星殖民の話ですが、この火星って、アメリカ開拓の延長線上にある、ウェストコーストのちょっと先っていう感じですよね。これ凄いシュール、もう以降の人には書けないよ。技術には完全に無頓着、舞台はLA郊外の住宅地としか思えない(この植民地は砂漠に作られたLAと似ている)。登場人物たちは、火星のテラフォーミングなどにはまったく関心がなく、彼らが心配しているのは、障害児の問題、仕事のこと(火星で食料品の家庭訪問販売員って凄いよこれ)、浮気のこと、だものね。本の主題は例の如く、自閉症の子供が感じる世界が現実世界を侵食していく話ですが、そんなのディックのお決まりのストーリーで全然驚かない、むしろこの火星植民地で展開されるソープオペラという舞台設定の方が衝撃が大きい。いやー、このシュールさ、ディックの中でもピカイチです。
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
4150103968
No.3
(3pt)

悪夢の世界

不毛と荒廃と絶望に覆われた火星植民地。きれいな水は手に入らず、新鮮な自然食品も地球からの密輸に頼っている状態。そしてスクールによる徹底的な刷り込み教育。精神病患者が激増し、火星で生まれてくる子供の3人に1人は自閉症になって現実と関わろうとしない。

 火星一の実力者である水利労組組合長のアーニイ・コットは国連によるFDR山の開発を嗅ぎつけ、土地投機を企てる。しかし、それには開発地区の正確な位置をつかんでおく必要がある。アーニイは自閉症の子供に予知能力があると考え、マンフレッド・スタイナーという少年を引き取ったが、少年には想像を絶する悪魔的能力が眠っていた・・・・・・

 数あるディック作品の中でも特に難解な作品。はっきり言って私にもよく分からない。

 ただ言えることは、自閉症患者のマンフレッドはディック作品に頻出するアンドロイドと通じるところがあるということだ。それは、感情移入能力の欠如である。人間性を鋭く問うメタファーとしてマンフレッドは存在しているのだ。

 あと1つ言えることがある。死の匂いの立ちこめる、この悪夢の世界は、本当に怖いということだ。
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
4150103968
No.2
(2pt)

サラリーマンっぽいSF

ディックの魅力のひとつは、主人公がサラリーマンなところだと思う。

悪役は会社の会長で、主人公は毎日会社に行かなくちゃいけない。

そんな庶民っぽさが、ディックの現実性であり優しさだと思う。

そんなディックのサラリーマンっぽさが最も発揮されてる長篇が、これ。

読みやすくて面白いが、独創性や爆発力はない。
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
4150103968
No.1
(5pt)

やっぱフィリップ・K・ディックでしょ。

未来の火星植民地では、水不足にかこつけて水利労働組合が実権を握って居た。組合長のアーニイ・コットは権力者として君臨していたが、国連の火星再開発の投機の情報を入手するのが遅かったために、地位を失いかけない事態に陥った。そこで、偶然発見した時間を操れるマンフレッドという少年を使って、過去を取り戻そうと画策する。。。。。内容だけ書けば、ありふれたSFみたいだが、悪夢SFというものがあるとすれば、まさしくこれは悪夢そのもの。人間の現実認識と虚構のはざまを描き出したSFを超えたSFです。ぜひ読んでみて下さい。
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) Amazon書評・レビュー: 火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)より
4150103968