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手紙
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手紙の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.16pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全427件 181~200 10/22ページ
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東野圭吾さんの作品はこれが初めてです。この作品から大ファンになり今は読みまくっています 自分のために犯罪を犯してしまった兄を弟が捨てる苦悩が書かれています とても感動モノです | ||||
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主人公(弟)の設定が現実味がなさすぎる等のレビューも見受けられますが、作家はあえてこういう設定にしたんだと思う。なぜなら、そうしないと犯罪者の家族がどれだけ大変かということが、分からないから、能力があってもこうなってしまう可能性があるということがよりわかりやすく伝わるからである。そしてあくまで小説であって、ノンフィクションではないということを考えると、設定自体は何ら批判を受けるべきものではないと思う。ただあくまでも個人の考え方次第なので、様々な意見があっていいと思う。小説としての評価ですが、素直に面白く、一気に最後まで読めた。弟の心の変遷も理解できるし、徐々に兄を疎んじるのも良く理解できた。弟の為を思って、犯罪を犯した兄、そんな兄に申し訳ないと思いながらも、何故そんなバカなことをしたのか・・・。弟は頼んでないと言いたかったでも言えなかった、兄の気持ちがわかったから。ただ、星一つ減点なのは、兄の動機部分をもっと掘り下げても良かったのではないか?これではただ単に兄はただのバカな犯罪者で、またお金に困ったら同じ事を繰り返しそうな気がする。(バカな犯罪者なのは確かだが・・・)最初は平仮名が多かった兄の手紙が、徐々に漢字が増えていったのは良かったのに、最初の犯罪の部分があまりにも簡単に書かれているので若干残念。あとは、弟に最後まで一緒にいてくれる女性が何故彼の事を好きになったのかがいまいち不明。どうも一目惚れっぽいのだが、重要な役割を占める人だけにもっとそういった部分を掘り下げても良かったと思う。実は、この作家の作品は全く読む気が起きなかったのだけど、ここ立て続けに読んでる。何の予備知識もなく読むのが一番いいかもしれない。実際、この話の内容すらも知らずに読んだ私。こんなに人気があるとも思ってなかった。 | ||||
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罪を犯した者やその身内が受ける差別や偏見について、とても考えさせられる内容でした。昔から学校などでは「差別や偏見はいけない事で人は皆平等」と教わってきましたが、実際はどうなのかという問いについてこの本では極めて現実的に書かれていると思います。ぜひ教科書に載せるなどして本作のテーマについて考えてもらいたい。私自身も考えさせられました。重いテーマなので気軽に読めるタイプの作品ではありませんが、気づくとその世界にどっぷりはまり込んでしまう辺り作者の文章力を実感します。また剛志からの最後の手紙やラストシーンでの直貴の心理描写には思わず涙が出てしまいました。東野さんの作品のなかでも特にお勧めしたいです。 | ||||
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個人的には、兄が金を切望し強盗に至るまでの心理描写がより欲しかったのと、終末が、で、どうなるのですか??という終わり方だったのでその2点が物足りなく感じました。ですが、物語り全般を通して犯罪者本人ではなく、その弟に焦点を当て、犯罪者の身内として世間の風当たりにさらされ生きてゆく様子が切々と描かれていく。どんなに兄の存在を隠し、真面目に誠実に生きてゆこうとしても、いつもどこからかその存在が明らかになり、自分の夢や希望を取り上げられてしまう。読んでいても救われない気持ちで一杯になりそうになるが、夢を一緒に追いかけた寺尾や、いつもどんな時の彼であっても一緒にいて励まし、最後には家族となった由実子、と少数ではあるが周りの境遇ではなく直貴自身を見てくれる存在があったことに感動します。社長の言葉については賛否あるようですが、私は何が言いたいのか、どうしてそういうことが言えるのか疑問であり、よくわかりませんでした。 | ||||
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映画を観ていたが、間違えて借りてしまい、そのまま読み進めた。 映画を観ていたせいで、読書は気楽に割りと早くできたが、はっきり言って、本書の方が映画よりもぜんぜん深かった。 東野さんってすごいですね。どんな人生経験をしてきたら、こんな小説が書けるんだろう。。 犯罪加害者家族の差別に関する内容だけど、差別というワードのつくあらゆることに通じる、根源的な内容を問いかけいたように感じた。 被差別者と感じる人間が陥りやすい思考にメスをいれ、かなり冷淡に「社会性」をキーワードに論じていっている。 私が特に感動したのは324ページの次の一節。 「自分の現在の苦境は、剛志が犯した罪に対する刑の一部なのだ。犯罪者は自分の家族の社会性をも殺す覚悟を持たねばならない。そのことを示すためにも差別は必要なのだ。未だかつて直貴は、そんな考えに触れたことさえなかった。自分が白い目で見られるのは、周りの人間が未熟なせいだと決めてかかっていた。これは理不尽なことなのだと運命を呪い続けていた。 それは甘えだったのかもしれない。差別はなくならない。問題はそこからなのだ。そこからの努力はしてきただろうかと考え、直貴は心の中で首を振った。いつも自分は諦めてきた。諦め、悲劇の主人公を気取っていただけだ」 以上、長い引用になったが、改めてみても私の心を打つ。差別という言葉を被差別者が発すること自体、僕は敗者の弁な気がする。直貴に社長が問いかけたように、社会性の絆を一つずつ自分の力でつむぎ直す作業せずして、「差別」という言葉は、被差別者にとっては、何も意味をなさない。単なる「諦め」「弱音」「敗北」の言葉でしかない。本書を読んでそう感じた。東野さんの本題とは違うが、こういう読み方もあったと感じてもらえればうれしいです。ただ。本書は、名著だと思う。東野さんの本を始めて読んだのので、ほかの本も読んでみたいと思った。 | ||||
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DVDも見たけど、本の方が感じるものが多くて全然感じ方が違った。 手紙ってのはただ自分の気持ちを文字に書いた紙ではない。 人権や差別についてもこの本から感じることが多かった。 差別を避けて生きていくのではなく、差別は当たり前でそれを含めた罪を 受刑者は受けなければならない。残された受刑者の家族はそういうもの。 情景がこの本から切々と感じられ、食い入るように呼んでしまった。 寝る前に読んだら寝れなくなります。 | ||||
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涙もろいので、しょっちゅう何かを観たり 読んだりして泣きますが、体が震えてページを めくる前に勝手にその内容を想像して、 声を出して泣いてしまったのは この本が初めてでした。 この物語のキーはタイトル通り手紙ですが、 ラスト、確実にこの『手紙』に 心揺さぶられます。 正直、途中まではなんの罪も犯していないけれども、 犯罪者の弟ということで彼に降りかかる 切ない結末は仕方ないだろうと感じていました。 ここで描かれている社会が彼に対してしてしまう 過剰な接し方も仕方のないことで、それでも 認めてくれる友人はいるし、 彼は人に恵まれているじゃない、 と感じていました。 でも弟は腑に落ちていない。 自分だって正々堂々生きる権利はあると 思い、頑張っている。 そしてそんな彼に社長の言葉が彼に降りかかる……。 この社長の言葉は東野圭吾の心情だと思えてなりませんでした。 耳が痛いほどの現実でずっしりと心に響いてきました。 罪を犯すことは社会的な死を選ぶこと―。 犯罪が繰り返されているこの世の中で このお話しはある意味身近であり、 とても生々しかった。 最後の最後の一文は泣いてるのに さらにさらに追い討ちかけるように泣かされます。 さすが評判通り。 名作です。 | ||||
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殺人事件が起こった場合、専らマスコミにクローズアップされるのは、悲しみに打ちひしがれる被害者の家族の状況だ。加害者の家族が、夜逃げ同然に行方をくらますこともある悲惨な状況は、我々も、ときにマスコミの報道で知ることもあるのだが、この作品は、そんな加害者の家族が、事件後、どれほど過酷な運命と対峙していかなければならないのかを真正面から描いた、東野圭吾最盛期の不朽の名作である。 強盗殺人事件の加害者の弟である主人公の武島直貴は、その後の人生のあらゆる岐路で、理不尽としか思えない差別で、その人生を台無しにされていく。しかし、そうした差別を行っている人たちの大半が、実は、どこにでもいる平均的な一般市民であり、また、そうした差別の大半が、それなりに理解できるものであり、自分自身が当事者になった場合に、絶対に同じ対応はしないと自信を持って言い切れないものであるところが、一層、事態の難しさと、やるせなさを感じさせてしまうのだ。 作者は、不当な扱いを受けた直貴の勤務先の社長の意見として、おそらく、作者自身の持論と思われる、加害者の家族には過酷とも思える独特の理論を展開させている。こうした考え方には、当然、賛否両論があると思うのだが、この作品は、そうした考え方を通して、我々は犯罪加害者の家族とどう向き合うべきか、犯罪加害者の家族はどう生きるべきかを、読者に強烈に問い質してくる極めてメッセージ性の高い作品なのだ。ぐいぐいと読者を引き込んでいく作者の構成力と展開力の上手さ、「私は手紙を書くべきではなかったのです」という言葉の本当の意味が明らかになるラストの感動の深さも、圧巻だ。 最近の作者の作品は、ルーティン・ワーク化している面があり、深い感動を味わえる作品がなくなってきているので、作者の最も油の乗り切っていた時期の最高傑作といっても過言ではないこの作品を、ぜひ味わっていただきたい。 | ||||
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弟の大学進学の資金のために、ある家に盗みに入り、衝動的に殺人を犯してしまう兄。加害者側の家族である弟を主人公とし、強盗殺人犯の弟というレッテルを貼られ、周りからの差別や偏見を受ける苦悩を描いている。 主人公の気持ちもよくわかるが、周りの人々の気持ちもわかってしまうのが悲しい。自分は、周りにそういう人がいた場合、すんなり受け入れることができるか、と考えると率直に「ハイ」とはいえないのである。攻撃するわけではなく、守ってしまうと思う。変に気をつかってしまうような。 お兄さんの手紙は、とても気持ちのこもった手紙であるが、それを次第に弟が捨てていく描写が出てくる。とても悲しくなるが、同時にしょうがないのかもしれないとも思ってしまう。 罪を犯すときは、自分の周りの家族や友人が受ける差別や偏見を含めて罪であることを忘れてはいけないってことだね。法に裁かれるのは当人だけかもしれないけど、社会的に裁かれるのは当人だけではないのである。 | ||||
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この本を読んだ後、涙が出ました。とても深く、そして重い作品です。犯罪を犯した遺族の人生を描写しているのですが、そこには色々な障害があります。その障害を乗り越えるためのアドバイスをしてくださる方もいます。(私はそのアドバイスが本当に心に染みたんですが) しかし、それでも彼はこれからも苦しんでいくのでしょう。答えはないのです。 最後のimagineの終わり方は、何度読んでも泣けてきます。 読後いつまでも残る余韻、、、東野さんの本の中では白夜行と1、2を争う秀作だと思います。 | ||||
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「読んで泣ける本」と聞いたので本書を買ってみました。 泣くことはなかったけれど、考えさせられる本でした。 私にも10年以上会っていない兄弟がいます。会おうと思えば会える距離に住んで おり、喧嘩したとかでもないのですが、年賀状のやり取り程度しかなく、何か特別 な用事がないと会おうということにならないのかな、と不安もあります。 本書の設定は加害者の家族を取り巻く環境(=人生)への影響について、偏見、差別 を考えさせられる内容になっています。しかも、主人公を通じて読者が偏見や差別の 当事者となっている可能性のある社会に対して、どのように読者は考えるのか? 仕事や社会生活を通じて、きれいごとを言う人も多いけれど、人間の性悪説みたいな ものを感じます。私も仕事なんかで人格を否定されるようなことを言われたことが あるけれど、そういうあなた自身は完璧な人間なのですか? | ||||
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犯罪加害者の弟、直貴。 非常に重たい問題だ。それを小細工一切なしで真正面から受け止めた作品。 彼をとりまく環境を、ひたすらリアルに描いている。 綺麗事は一切ない。道徳なんて関係ない。 そこには、ひたすらに本音で接する人々がいる。 P173「直貴には幸せになってほしいと思ってはいる。だが、自分は関わりたくないのだ。誰か別の人間が助けてやればいいのに―それが本音なのだ」 こんなことが書いてある小説が、他にあるだろうか。 幸せをつかみかけては、それが台無しになる。 これの繰り返しだ。 だがそんなことを繰り返しながらも、状況は確実に変わってゆく。 大枠で見ればテーマはひとつだが、さまざま要素が絡まり合ってくる。 P319「我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる―すべての犯罪者にそう思い知らせるためにもね」 差別の正当化とも言うべきこの発言は、非常に印象的でした。 とにかく、読者を物語に引き込む力がすさまじい。 では、あなたならどうしますか? そして考える。 その結論はすでに本に書かれているのだ。 自分もこの人達と同じような行動をとるだろうなー、と考えてしまう。 読者を当事者にする。これこそが読書の魅力でしょう。 娯楽としても楽しめるように、最後の結末もショックが緩和されるように作ってある。 素晴らしいですね。 それでもやはり、読んだあとは落ち込みました。 | ||||
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次から次へと読み進みたくなる筋書きで、東野作品は初めて、且つ読書スピードが遅い私でも一気に読めました。背景も知らずに読み、メッセージを探ろうと深く読んでいたわけでもないのに、心に響いたし、結果として考えさせられる小説でした。 加害者やその家族が被害者(の家族)にわびる。当然のことだと思います。服役者が、刑務所から自分の家族や被害者の家族に手紙を書くのも、当たり前の事だと思っていました。でも、それが受け取った人間にどういう物理的・心理的影響を与えるのか、考えが及んでいなかった事に気づかされました。家族をいっとき助けるつもりの犯行がかえって、どれだけ長期間家族を苦しめる事になるのか。贖罪のつもりで刑務所から手紙を毎月書くことが、受取人に及ぼす影響は?結局、服役者は何故手紙を書くのか?最終的に、加害者家族と被害者家族それぞれが取る行動は・・・?この本は小説であり、あくまでもその一例と分かっていても、犯罪者とその家族、被害者とその家族の立場が少し分かるようになりました。 後ろめたい事も包み隠さず、差別や偏見の目と闘うという生き方や、もう少し広く言って正々堂々とした生き方は、大変な苦労を伴うし、世間では潔いと好意的に受け止められ、周囲の居心地を悪くすることも無いと思っていました。でもこれを読んだあとでは、そうとも限らないのではないかと思います。社会の中で、自分にとっても他人にとっても居心地良く過ごすためには、別の方法もあるのではないか。そしてその生き方を貫く方がむしろ、相当な痛みも伴うのだろう、と。 幅広い人に読んでもらいたい本です。 | ||||
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最初に、もしこの本を人に薦めるかと聞かれれば、答えは『はい』です。421頁(東野作品としては珍しくもない厚さですが)を一気に読んでしまいました。生意気な言い方ですが一読の価値のある本だと私は思います。ただ、東野作品を『放課後』『魔球』の頃から読ませて貰っている一読者としては、この作品を感動作品と形容するのもちょっと違うかなと言う気がします。氏の多くの作品のように、理不尽な運命の渦に巻き込まれ翻弄される人間の苦闘、そして人生の奇麗事でない現実に読む者の心が鷲掴みされるとでも言うのでしょうか。特にこの作品は犯罪加害者家族の目線で描かれていますが、彼に遭遇する様々な人間の姿がそのまま私たちの姿でもあり、読者にただの傍観者である事を許さない厳しさを感じさせます。最後に、これは文庫本の良い所ですが、井上夢人氏の解説も参考にされると更に作品が面白くなると思います。 | ||||
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作者は実際にこの弟のような境遇に立った事があるのだろうか?と思える位に 犯罪者の肉親としての立場を緻密に描き切ったと感じました。 ささやかな、やっと手に入れたと思った幸せがことごとく壊れていく。 そしてその境遇に立たされる弟に対して罪悪感を抱くこと以外何もできない 犯罪者の兄。 そして「差別はね、当然なんだよ。」というくだり。。 テーマは重く悲壮感が漂います。しかしとても面白い。 それは弟が人間としてどんな困難な局面に対峙しても立ち上がり成長していく 物語、そしてその弟の成長だけを生きがいとし、深い悔恨と懺悔の気持ちを 抱きつつ兄もまた成長していく、二人の愛の物語だからだと思う。。 | ||||
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有名なこちらをおくらばせながら読んだ。もっと早く読めばよかった。この作家を毛嫌いしていたが、このような作品を書いた人の小説は、全て網羅したくなった。すばらしい。の一言。内容も、構成も、余韻も。そして考えさせられた。 | ||||
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兄が殺人者ということで差別を受け続けている弟の話でした。幸せを掴みかけたらダメになり、それの連続でした。読みながら「あっ!」て独り言いってしまいました。差別はなくならないことが前提で生活していくことの重要さを感じました。今のイジメ問題も同じことかなぁ・・・。イジメはいつの時代も誰に対してもあるものですよね・・・。 | ||||
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「秘密」ではサイドストーリーとして描かれた加害者家族の物語を真正面から描いた力作。差別を扱った内容は重いが、ぐいぐい引き込まれた。 強盗殺人犯の兄が刑務所から主人公である弟に宛てた手紙を中心として様々な手紙が出てくるが、なかでも主人公が兄に送った最後の手紙がリアルで心打たれた。 加害者家族に焦点を当てる一方、被害者家族は序盤に軽く触れるのみで終盤近くまであえて描写しない構成がよかった。気が滅入る内容だが、どこか妙な爽快感(あまり適切な表現ではないが)を感じたのは、卑屈になったり無力感に負けたりしながらも、基本的には真面目に苦悩し続ける主人公の心情を淡々と丁寧に描いているからだろうか。 | ||||
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憎むべきは犯罪、それを犯す人間、と前置きしとく。東野作品の、一つの方向性における最高峰。読み手を選んでやむをえないし、教育的な意味で取り上げるのには賛成しかねるわ。知らなければならなくなったときに知ればいいんだこんなこたあ。世間知らずの甘ちゃんが、ちょっと答えの出しにくい現実を見つけるたびに「ぜひ教材に」ってのは、作品の影響力というより正直ヒトの感性を侮っていると思う。 あえてひとこと、圭吾こんなもんやないやろと言いたい。☆4つも☆5つもつけられてたらあかんやろと。そういうやり方でこの挑戦的な作品にボクなりの賛辞を贈りたい。 いわゆるフィクション、いわゆる物語からここまで大きくはみ出そうというのなら、もっと面白くなくてよかった。由美子はいないし、寺尾も社長もいない、主人公の心もここまで強くないし、容姿にだって恵まれてはいない、そんな作品は全く面白くもなければ一人の読者もいない。誰も知らない場所で、どんな光も届かず、人が殺され人が差別される。それがぼくらのすべてのはずだ。それがこの社会、現実そのものだ。 そのクソ現実に、いまだに奇跡のようにあたたかさが宿っている。現実を知らない人たちが灯す明かりを頼りに、なんとかぼくらは生きている。だから主人公はもっと救われなくてよかったし、ぼくらはもっともっと困惑してよかった。迷い続けるよりは、偽りの光でも見えていたほうがいい、というのがこの作品のラストだと思う。いびつな解釈だと自覚して。 この世界はクソだ。はずみで人が殺されるし、意味なんかない悪意が渦巻いている。 そのことを、あたたかな家庭を持ってさえ、ボクはひと時も忘れない。 | ||||
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弟の学費のため、強盗殺人を犯した兄。刑務所から月に1度、弟・直樹のもとへ手紙が届く。直樹は、進学、恋愛、就職等ことあるごとに強盗殺人犯の弟のレッテルがつきまとう。到底、兄の手紙など、煩わしい過去を思い起こさせる材料に過ぎない。幾多の困難を乗り越え、やがて直樹は犯罪者の弟であることを無理に脱ぐことをやめて、いきようとした。だが、堂々としていることが果たして本当に潔いのか。愛する家族を守れるのか―。葛藤の末、直樹はある選択をする。全てを悟った兄と弟の思惟が複雑に交錯し、また直樹を支え続けたひたむきな妻の優しい心に感動する。犯罪者の家族が負う辛苦を痛烈に描き、犯罪者が背負うべき罪は、被害者への贖罪で終わらないことがよくわかる。著者は本書の中で、殺人の最大の悪は被害者の人生を奪うのは勿論のこと、人との繋がりを強引に絶ってしまうことと教えている。物語もさることながら、殺人行為は、自死であるとともに「社会性」の死という事実を顕然と示しており、犯罪の側面を見るにも恰好の良書である。 | ||||
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